ガンダムビルドデューラーズ   作:ぬぬっしし

2 / 6
どうも
お待たせしたかもしれません
果たしてこんな僕の話の続きを心から待っていた人がほんとにいるかはわかりませんが
本当に、本当にお待たせしました
第一話書き直しから3ヶ月。一回目の投稿からは約11ヶ月。そうほぼ1年弱経ってしまいましたが、やっとのやっとで第二話です…………本当に申し訳ありません

そんなお待たせしてしまったものに見合ったものとなっているか、正直自信はないのですが
それでも!!!!!!なんとかこれにて連載再開!!!!!と胸を張って、改めて言えます
まだまだ物語は始まったばかりです、どうぞ見守ってください

……あ、どうか暖かい目で……お願いします……


第二話 掴むための第一歩

薄暗い部屋に、僅かに摩擦の音が響く。音の大きさも、リズムも不規則に。

止まったかと思えば、息を吹きかける音とともに再び鳴り響く。

誰かの言葉が飛び交うわけでもなく、ただそれは黙々と進められ──

 

「ユウ、こんな遅くまで何やってんだ」

「!?」

 

──一人の声に遮られた。

慌てて机の上に教科書の類を乗せて隠す。

 

「べ、勉強……だけど」

 

ユウは嘘をついた。しかしあからさまに顔に表れていることは、ユウ自身も理解している。

あまり慣れないことはするもんじゃないな。そう思った。

 

「はは、そうか」

 

しかし、父親に説教を食らうということは免れた。とはいえど、普段から特段強く叱るような父親でもないから、とユウは調子こいているようでもある。

そんなユウをニヤニヤしながら見つめるヒロ。

 

「はぁぁ……今日のところはやめておいたほうがいいかなぁ」

「それが賢明だろうな」

 

ユウはぽりぽりと頭を掻いた。時計の針は夜の11時を指している。

 

「ちなみに、どうなんだ?現状は」

「どうかなぁ、この一週間でなんとか治しきりたいけど……」

 

ヒロの問いにユウは答える。

その手にはヤスリと、プラ板が貼り付けられたガンプラの胴体があった。

ユウは以前の戦闘で破損した場所や、欠けたパーツの修正を行っているのだ。

 

「うーん……なんとか手伝ってやりたいもんだが……」

「兄ちゃん、何してくれるの?」

「わからん」

 

はぁ、とため息をつく。

ヒロはプラ板の扱いには慣れていない。

 

「あ、塗装はできるぞ!多分な」

「スプレー塗装やったことあるの?」

「ないが」

「ないのかよ」

 

はぁぁ、とさっきより深く息を吐いた。

ヒロは筆塗りの方が慣れているらしいのだ。

 

「まぁやらせろって!練習すりゃなんとかなるし……どっちかが家にいないときとかでも作業進められるだろ?」

「そ、そうだけどさ」

「それに……任せっきりはなんか嫌だからさ」

 

ヒロがにかっと笑顔を見せる。

ヒロはきっと、前の戦いで傷ついたんじゃないかと自分を気遣ってくれているんだ。ユウはそう思った。

そんな気遣いを無下にはできないし。

 

「じゃあ……頼んじゃおうかな」

 

何より、嬉しい。

向けられたヒロの拳に、ユウも拳をこつんとぶつけて応えた。

 

 

 

 

それから一日二日と経つと、アポロンはある程度もとの形に戻ったのだった。

「パテなんかは使わないのか?」と度々ヒロに聞かれるが、ユウにはあの指に張り付く扱いづらさが好まなかった。というか面倒だ。

そんなユウはどうやってアポロンを修繕したかというと、なんと傷にプラ板を縦向きやら横向きやらで差し込んだり置いたり。

上から瞬間接着剤で強制的に埋め込み、硬化後に形状を整える、という、お世辞にも丁寧とは言えないというか、なかなか荒っぽい手法を取っていた。

とはいえ、だ。

 

「……いい感じだよな」

 

それでも「瞬着とプラ板とヤスリさえあればなんとかなる!!」なんて宣言の通り、アポロンがアポロンたるものとして、ここに復活したのだ。

ユウは達成感を強く感じている。

 

……感じている、のに。

 

「何かが足りない……何だろう」

 

 

 

 

 

技術系の大学に通うヒロはここ最近、空いた時間ができるといつも一人上の空、というか考え事をしている。

ヒロにはこの間のガンプラバトルが、忘れられないほど脳裏に焼き付いていた。

だからこそ、いつも考えてしまう。

ユウのことを。

 

あいつは十分に、十二分に強い。

実際、模擬戦だと油断していた自分は、あっさり負かされてしまった。正直再戦したい。

そんなユウでさえ、苦戦してしまう相手がいたのだ。

だからこそ、ヒロはずっと考えていた。

 

「あいつがもっと強くなるためには、何が必要なんだろう」

 

何かが足りない。足りなかった。

そう感じてしまうのだ。

けれどいくら考えたところで、答えがすぐに見つかる訳じゃなくて。

こんなとき、昔の自分はどうしていただろう。

 

「……いいものから……パクる?」

 

これは創作においての話であるが、いい技術をとっていくというのは、ある種基礎とも言える。

しかしそれをどう活かせるか、ができないと、ただのパクりになってしまうのだ。

 

「……そうだ!」

 

思い立ったヒロはユウに連絡を取ろうと、携帯電話を取り出す。

新規メッセージ、2。

 

 

『兄ちゃん、今日の講義?終わったらオーツカ集合』

『……さすがに急すぎかな』

 

 

「……ははっ」

 

まるで自分の考えを見透かされているようだ、ヒロはそう思った。

いや、兄弟やはり似通った思考回路を持っているのかもしれない。

ヒロはキーボードに文字を打ち込み、ユウに返信をするのだった。

 

 

『奇遇だな、俺もそのつもりだった』

 

 

 

 

 

オレンジ色に輝く陽の光は、直接受けると非常に頭が痛くなる。

今自分の周りを歩き、通りすぎていく人達は、気にしないのだろうか。

なんてどうでもいいことを考えながら、ヒロは目線を右へ左へ。

制服姿のユウを目に留めたヒロは、ユウのところへ向かって走っていく。

 

「待ったか?」

「待ちくたびれちゃったね」

「許せよ」

「許したげる」

 

普段通り、他愛もない会話。

ただそんなユウの目を見て、ヒロは改めて確信した。

やはり今日ここへ来た目的は、ユウも自分も一緒なのだ、と。

 

 

 

 

 

夕方となると、退勤や下校の時間となり、GPデュエルの筐体のあるこの店には人がたくさん集まってくる。

塾に行く前に一戦!とか、飲み会前に一戦!とか、そういうのだろう。

 

ユウとヒロはというと、今日は一戦!とはいかず。

何故ならそもそも、ガンプラを持ってきていないからだ。

 

では何のためにここへ来たかと言えば、

 

「あの百式、動きブレてんな」

「対称的にあのジ・Oはすごい……重量級のガンプラを、ああも繊細に扱えるなんて」

 

ガンプラバトルの様子を、見に来たのだった。

あの日の戦いに、アポロンに、何かが足りないと感じた二人は、ここに来てヒントを得ようとしていたのだ。

 

右側に見えるのは、どうやらテスタメントガンダムと、ゴッドガンダムの改造機体との戦いのようだ。

テスタメントガンダムといえば、1/144スケールキットとしては未発売。それを作り上げてしまうなんて、素晴らしい腕の持ち主だ。ユウは最初に技術力の高さに感心した。

 

クローモードに可変させたテスタメントのディバインストライカーが、相手のゴッドガンダムのカスタム機の頭部に掴みかかる。

ギシギシと音を立てながら、ゴッドガンダムは身動きを取れなくなってしまった。

あれではトリケロスで串刺しにされてしまう。そうユウもヒロも思ったが……

 

「何だ!?」

「本気か……!?」

 

ゴッドガンダムのカスタム機が、掴まれた頭部を引き剥がし、機体本体が勢いよく下降、そして再び上昇した。

自ら首を千切るような決断をしたのだ。

モニタが使えなくなったために、ゴッドガンダムのデューラーは筐体の中を動くガンプラを直接見ながら戦っている。

動揺しているテスタメントは、残された頭部を放り投げ、接近する。

ここからは完全近接戦闘だ。

とはいえ、モニタから映像を見ることができなくなったゴッドガンダムのデューラーの方が、圧倒的に不利に見える。

が、

 

「ハイパーモードだ……!」

 

……ガンプラバトルとは、そう簡単なものではないのだ。

 

ゴッドフィンガーが決まると、テスタメントは爆散した。

 

「……すごかったな」

「うん……すごいや、今のは」

「こういうのが楽しいよな……ガンプラバトルは!」

 

バトルの一部始終を見ていたユウとヒロは、心の底から興奮していた。

 

「とっさの判断というか……やり方次第でどんな戦況だって変えられるんだ」

「あぁ、よーくわかったな」

 

ユウは、これも手札のひとつにできるかもしれない、そう思った。

 

 

次に目に入ったのは、78とνガンダムの戦い。

大型かつ強力であるνガンダムの攻撃を見事にかわし、対応できているガンダムが印象的であった。

 

「技量とちょっとばかりのカスタムで、ガンプラバトルの戦力は大きく変動する。ガンダムとνガンダムとの戦いで、ガンダムが追い付けてるあれなんかが、顕著に出ているな」

「確かに……すごいなあのガンダム」

 

ガンプラバトルにおいては、原作における機体の登場年代はバトル上の強さに反映されることがない。プラモの作り込み、要求される操縦スキル、またはセンス。それらによってガンプラの性能が左右されるのだ。

強力な武器を作ったり、デューラー本人が操縦を極めることで、νガンダムにノーマルなガンダムが勝てる可能性も十分にある、ということである。

 

ついにνガンダムのビームライフルを破壊したガンダム。

この調子だと、本当にガンダムが勝つかもしれない。

するとその時、

 

「そうかあれが……!」

「すっかり忘れてた……νガンダムには、"アレ"があるんだ」

 

νガンダムの背面から、6基のフィン・ファンネルが一斉に射出された。

それぞれが異なる軌道を描き、射撃形態に可変する。

いくつか避けきるも、動揺したガンダムは数発フィン・ファンネルによる射撃を受けてしまう。

そこへνガンダムが、ニュー・ハイパーバズーカを構える。

 

爆発と共に、νガンダムのデューラーの勝利が表示された。

 

「……オールレンジ攻撃か」

「あぁ、確実に強みにはなる」

 

本体を含めた多方向からの攻撃となると、それは強力なものだ。

しかし、初心者のユウには疑問も生まれる。

 

「あれ、GPデュエルって、ファンネルみたいなのはどうやって動かしてるんだろ」

「まぁ基本はフルオートだな、自動で動いてくれる」

 

まぁゲームである以上、当たり前か。ユウはそう思ったが、

 

「ただ、そんなのよりもちゃんと戦況を判断して正確に攻撃できる"マニュアル"なんてモードもあるけどな」

 

マニュアルだなんて。まるで車みたいだ。

つまりは、ガンプラ一機とファンネルひとつひとつを、デューラー一人で動かそうというのか。

 

「いや、サポーターの操縦も、オールレンジ攻撃の類いなら認められてたりするんだ」

 

サポーター。

GPデュエルにおいて、デューラーの隣で指揮や状況把握、作戦指示などをする立ち位置だ。

ユウは、ヒロにこの立ち位置についてもらおうと思っていたところだった。

 

「はぇー……」

 

初戦は一人で戦ったが、今度ガンプラバトルをするとき、この制度をうまく使うのもよいだろう。

 

 

向かって左側。

ここに来てから最初に目に入ったバトル。

百式対ジ・O。

 

「百式、なんであんなフラついてると思う?」

 

ユウはヒロに問いを投げかけられた。

 

「瞬発力というか、適応力とかはあるから、操縦技術の問題じゃない。となると……」

 

ユウの目にひとつのキーが目に入った。

 

「……あれ、バインダーがない」

「何?」

 

よく見ると、通常百式の背面には2基あるはずのウィングバインダーが、どうやら破損しているようだった。

姿勢制御が上手くできないのかもしれない。

 

「バインダー……姿勢制御か……」

 

ヒロが一人呟く。

 

「兄ちゃん?」

「なぁユウ、この前の戦いで、機体の動作に不満はなかったか?」

 

聞かれて、少し考える。

 

「……ほんのちょっとだけ機動にグラつきがあった……とか?」

「……それだ」

「へっ?」

 

ユウは「大したことないし、ほんのちょっとだけだ」と付け加えるが、今のユウをさらに強くさせるには、その「ほんのちょっとだけ」の差を埋めていくのが大切なのだ。ヒロはそう考えた。

 

「なあ、見えてこないか?アポロンが巨大なバインダーを2基、引っ提げて戦う姿が」

「戦う姿が……えーっと……」

 

 

宇宙空間。

遠く離れた相手が、こちらへ接近してくる。

それと同時に、アポロンからも相手へ接近していく。

少しの動きのロスも許したくない。

グリップを強く握りしめ、軌道をブレのない一本の筋のように捉え、真っ直ぐ真っ直ぐ真っ直ぐ…………

 

ぶつかる……!!

 

 

その瞬間──

 

 

 

「……!!」

「これだ……!!!」

 

実際に、ガンプラバトルが行われていたわけではない。

ただ実際の操作感を、ユウとヒロが脳内で想像していただけに過ぎない。

 

しかし、捉えたビジョンは二人ともしっかりと共有していた。

 

──さっきのνガンダムだ。

 

「……飛んだよね」

「あぁ、確かに飛んだ」

 

アポロンの強化案。それはもうすぐ、形となりそうだった。

 

「見えたぜ……"完成形"が……!!!」

 

 

 

 

 

本当はあまり大きな声では言えないが、ユウはときどき授業中にまったく別のことをしている場合がある。

ペン回しに挑戦していると、隣の席の女子の足下に落として恥をかいたり、窓に映る雲を、ずっと見つめていたり。

今日の場合、それが落書きだったのだ。

先日ヒロと捉えたビジョンを、忘れる前に形にする。

そのために、大まかなイメージを書き起こすのだ。

 

「背中から横向きに生えた3mm軸にアームを接続し、それを経由してバインダーがマウントされる。その際、干渉する部分を……いや、ここは塗装パターンの変更を……」

 

……あまりの独り言の多さに、周辺生徒から変な目で見られ続けている、ということに気づくのは、もう少しあとのことだ。

 

 

 

 

 

「お、やってるな」

 

ヒロが部屋に入ってくると、机に一人向き合うユウの姿があった。

 

「デスクライトぐらい、ちゃんと点けとけよ?目が悪くなる」

「へへ、もうなってる」

「バカたれが」

 

そう返しながら、ユウはただずっと作業を続けていた。

開かれたパーツの中に、何かワイヤーのようなものをぐるぐると巻いている。

 

「……なんだそれ、リード線か?」

「そうそう」

「にしてもこれ、どうすんだよ」

「できてからのお楽しみね」

「戦うときには言ってもらわないと困るなぁ、俺だってどうしたらいいかわかんないのに。というか、塗装前に中にハメてていいのか?」

「うっわうっかりだ」

 

どう考えても、塗装後に中に仕込むものだろう。ヒロはひっそりとそう思っていたのだ。

 

机の上に散らばったパーツをじっくりと眺める。

 

「もしかして、ここに置いてあるのはもう塗装できるやつか」

「そうだよ、関節色だけね」

「任せとけ」

「心配だなぁ」

 

実はいらないパーツなんかでスプレー塗装の練習をしていた(ユウには内緒で)ヒロが、パーツとスプレーを持ち出し、ベランダへ向かっていった。

 

そうこうしているうちに、全てのパーツの作業が完成した。

ユウもヒロを追って、パーツとレッドのスプレーを持ってベランダへ行く。

 

「ちゃんと吹けてる?」

「もちろんだ、兄ちゃんなめんなよ?」

「の割には、スプレー近いんじゃない?あと雨戸に近づき過ぎかな。色ついちゃったらどうすんの?」

「まぁスプレーとかユウの持ち物だし、押し付けるかな」

「あのなぁ……」

 

冗談混じりの会話に、お互い思わず吹き出してしまう。

今日はよく晴れていて、気分も最高だった。

 

 

 

 

 

「これで、一旦完成か?」

「そうだね、これがアポロンガンダムの……」

 

「……真の姿だ」

 

改めて組み上げられたアポロンガンダムを眺めて、二人で呟く。

背中からアームが伸び、大きなバインダーが接続されている。

腰から新たに提げられたホルダーには、ハンドガンが二丁装備された。中距離のとっさの射撃に対応できるようにしたのだ。

これだけでも、随分とシルエットが変わる。

 

「なんか、強そうになったよね」

「当たり前なんじゃないか?」

「へへ、当たり前だよね」

 

「こいつ使って戦えるの、楽しみだ」

 

 

 

 

 

その週の終わり。昼間からユウとヒロはいつものオーツカへ向かった。

今日こそは、ガンプラバトルの日だ。

 

「おぉー、やっと見つけたぞぉ」

 

いざ行かん、というところで突然、背後から声をかけられる。

高校生くらいだろうか。

 

「え、えっと……?」

「あぁ、名乗らないとだよねぇ、えーっとねぇ……」

 

呑気と言うかマイペースというか、突然現れたその人は、自己紹介を始めた。

 

「エイジ。ノダ・エイジって言うんだ、よろしくねぇ」

 

とりあえず、会釈をしてみる。

……が、

…………なんだろう、この人。

 

ふわふわしているというかなんというか……気が抜けてしまいそうだ。

 

一体なんの用だろう。ユウは尋ねてみた。

 

「こんなとこで声かけてるのに、わかんないのかねぇ?」

「わ、わかんないですけど……」

 

 

 

 

 

「ふふ、ユウさんだったよね、どれが好きかなぁ?」

 

何が始まるのかと思えば、店内で普通にガンプラ探し。

……いや、目的がある訳じゃないから探しているというより漁っているというべきか。

 

「に、兄ちゃんさ」

「……なんだよ」

 

頭の先から音符マークを生やしているエイジをよそに、ユウがヒロに小声で話しかける。

 

「……悪い人って訳じゃなさそうだけどさ、ほんと目的がわかんないんだよね」

「俺も同感……あれ、」

 

するとヒロは、エイジが腰から吊り下げているものに気がついた。

 

「なるほど……?」

「兄ちゃん?」

「おぉーお二人さんやお二人さんや」

 

何かに勘づいたヒロとユウに、エイジが話しかける。

 

「ユウさんヒロさん、この中だとどれがお好きですかー?」

「そーうですね……あ、ディバイダーとか好きですね」

「おおっ、いいね兄ちゃん」

「ディバイダー!すごく強そうですよねぇー」

 

そうしていると、気がつけば10分近くガンプラを見ながら、3人でぐだぐたと話していた。

思いの外時間の経過が速かった。

 

「ふふふー」

 

しばらくすると、エイジが突然笑い始めた。

やはりペースが掴めない人だ。

 

「どうしたんです?」

「いやぁ、やっぱりお友達とガンダム談議するのは楽しいですねー」

 

どうやら既にユウとヒロはお友達認定されているようだったが、エイジが嬉しそうなのでそこに突っ込むことはなかった。

なんだかずっとふわふわしてはいるが、もしかすると内に秘めたガンダム愛は強い人なのかもしれない。

 

ここで突然、ヒロが自分から口を開く。

 

「もしかしてあの……エイジさん?は、俺達とガンプラバトルをしに来たんじゃないですか?」

「……兄ちゃん?」

 

するとエイジは、うーんとしばらく考えてから、頭の上に電球を灯らせた。

 

「そうそう!お話楽しかったからついつい忘れちゃっててねぇ」

 

ズボンのベルトに手を回し、何かを取り出す。

ヒロはその存在に気付いていたのだ。

 

「それは……!?」

「……」

 

決闘(デュエル)だ、アポロンガンダムのウチヤマ・ユウさん?」

 

その手にあったのは、白と黒のガンプラだった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「1ヵ月くらい前だったかなぁ、お二人さんの戦いをたまたま見たのは。あれほどシビれる戦いを見たのは、ひさびさだったよー」

「その時から、俺達と戦ってみたかったと……?」

「そういうことだねぇ」

 

GPデュエルの筐体を挟んでヒロとエイジが話している間、ユウはずっと不思議に思っていた。

こんな初心者の自分を見て、戦ってみたいと思う人がいたなんて。

 

「ひとつだけ面白いことを教えてあげますよ。こいつ、あの時がガンプラバトル初戦だったんです」

「それはそれは……!なんとも、心の奥から燃え上がってきそうなほどワクワクしちゃいますねぇ」

 

自分が誰かに挑まれるほどの土俵に立てているなんて。

 

「随分と弟さんに自信があるんですねぇ」

「もちろんです」

 

きっぱりとヒロが言う。

 

「でも、あの時の相手は油断をしていた。言っちゃえば、ナメてたように見えたんです。ボクは違いますよぉ、本気でかかっちゃいますから」

「望むところで──「えっと……」

 

ヒロとエイジの会話に、ユウが割って入る。

 

ずっと不思議に感じていた。今の自分と戦おうとわざわざ思うなんて。

それと同時に……

 

「俺だって、今すぐにでも戦いたくてウズウズしてるんですよ。あなたは俺を目的として来た。俺達と戦うことを望んで来た。そんなの早く、受けて立ちたいに決まってるじゃないですか」

「ユウ……」

 

最初に想像していたのとは、全く違うバトルの開始の形。

それでも、今この瞬間、こうして決闘を挑まれている。

自分を、対等またはそれ以上の強敵として、戦おうと見てくれている。

そんなの、

 

「勝ちたいに決まってるでしょ……ね?」

「……当然だな、やるぞユウ」

 

自然とヒロの隣に立ったユウは、二人で目線を通わす。

 

「ふふふ~……それじゃあほんとのほんとに手加減ナシだからねぇ──」

 

突然、エイジがそのぼさぼさと伸びた自分の前髪を、全て手で後ろへと持っていった。

オールバックとなりピンと立ったその髪型が、明らかにさっきまでとは違う何かを感じさせた。

 

「──瞬速で行くぞ」

「……!!」

 

変わった。

確実に相手は、本気だ。

 

ユウとヒロも、もう一度互いに目を合わせる。

 

「サポートとはいえ、全力を尽くさせてもらうぞ」

「任せるからね」

「お前がちゃんと戦えないと、意味ないだろう?」

 

ユウの隣へ立ち、その肩にそっと手を置くヒロ。

 

 

[Eiji's Mobile Suit

   Gundam Vual Dober

    VS.

  Yu's Mobile Suit

     Apollon Gundam]

 

 

カードキーを差し込むと、機械音声とともに表示が現れる。

相手のガンプラは、どうやらウヴァルの改造機体らしい。

表示の現れたその真下。ぼわっと淡く緑色に輝く筐体から、地面となるホログラムが形成される。

今回のステージは……市街地。中心には平面の広場が見える。

 

「エイジ、ガンダムウヴァルドーベル、行くぞ!」

 

エイジの手元にあったガンダムが、ひとりでに動きだした。

 

「例のギミックは、必要になったときに最高のタイミングになるように必ず俺が三つ数える。それまで余計なことはするなよ」

「わかった」

 

コントローラの奥の台座に、新しく完成したアポロンガンダムを置く。

背中のアームから伸びるそれが、機体のボリュームをわかりやすく増していた。

 

「アポロンガンダム!」

「行きます……!!」

 

台座から駆け足で、アポロンはドーム状の中へと向かった。

 

 

 

 

 

距離が離れている。

今の場所からは、相手を確認することができなかった。

 

 

[READY?]

 

 

[BATTLE START]

 

 

表示が浮かんだ瞬間に、互いにグリップを前へ倒す。

背部のスラスターを一斉に点火させ、高速で前進するアポロン。

しばらく先まで一本道が伸びているため、直線で移動をしている。

 

「久しぶりだけど、確実に安定してるよ」

「効果はそこそこってもんだな」

 

背部に取り付けられたバインダーの有用性が、ユウにもヒロにも感じられた。

 

途中、ビルに突き当たる。

方向を変え、迷路とも言える道路を進む。

どこだ。

相手は今どこにいる?

以前とステージ設定が異なるだけで、ここまで最初の行動が変わるのか。ユウは驚きつつあった。

するとそのとき、

 

「ユウ上だ!」

「!?」

 

投擲されたと思われる何かが上空で突如炸裂し、アポロンを襲った。

慌てて姿勢を低くし、ビームシールドを天面に向け展開する。

 

「グレネードか……」

「早めに近づいた方がよさそうだね」

「その通りだ……!!」

「何!?」

 

ユウに言葉を返してきたのはヒロではなかった。

 

「後ろに回り込まれた!避けろ!」

「間に合うもんかよ……!!」

 

煙が渦巻き、辺りを視認できずにいるアポロンの背後に、影が迫った。

 

「間に合わせない……!」

 

立ち上がろうとしていたところで姿勢を崩される。ドーベルの膝蹴りを喰らったようだ。

膝アーマーから電撃が走る。

 

「起き……上がれない」

「こんなとこで終わられちゃ困るよユウさん」

「言ってろ……!」

 

右足を大きく踏み込ませ、地面を這うアポロン。

粉塵が漂う中、なんとかドーベルから逃れることができた。

起き上がり、改めて相手を目に留める。

 

第一印象は、「細い」。

ただでさえ装甲が欠けているウヴァルから、さらに装甲を省いたように見える。両腕などが顕著に現れていた。

しかしその繊細さを感じさせんとするほどの下半身の力強さが、確かにあった。

大きく張り出した脚部こそが、さっきの攻撃の正体だろう。また、腰回りに武装が集まっている。

ちらちらと見える背面には、スラスター類が集中しており、まさに身軽さを体現したかのような機体であった。

そのビジュアルは、さながら武装した飛脚と言ったところか。

 

かっこよくて、強そうで。やはりそんな相手とこうして戦えるのは、ワクワクする。ユウはひしひしと感じていた。

 

しかし、油断はしていられない。

こちらから攻めるか。

もしくは──

 

「──!?」

 

考えている間に、ドーベルがアポロンに迫った。

右サイドアーマーにマウントされていたビームダガーを振りかざし、アポロンを切りつけようとする。

が、ヒロの呼び掛けに咄嗟に反応したユウはうまく回避する。

次はこちらの番だ。

 

勢いよく飛び上がってから、ボレーキックのような形で目の前の相手を狙う。

──避けられた。

しかしこれでは終わらず、外した反対側に向かってかかとの刃を展開し、体に逆回転をかける。

が、またもや回避されてしまった。

 

その身軽さを惜しみ無く活かされ、全く攻撃が当たる気配がない。

 

リアアーマーのサーベルラックに手をかけ、引き抜くより先にドーベルに接近する。

しかしその瞬間、ドーベルの左手から何かが放たれた。

またもやグレネードだ。

体勢を変え急速後退するも、相手のサイドアーマーに内蔵されたバルカンがグレネードを貫き、爆発する。

またもや視界が靄に包まれた。

 

だが、機体にダメージが行き届いていない限りどうということはないのだ。

引き抜かれたビームサーベルの赤い刃が、体を大きく捻るアポロンともに白煙を切り裂いた。

今度こそ、攻撃体制に入る。

 

ロボットサイズとしてはとても狭く感じる道路上で、睨み合う二機が並び立つ。

今一度、足を地面に踏みつけ、加速する。

右手に握られたビームサーベルはより一層出力を増し、激しく輝く。

ドーベルはファイティングポーズだ。

 

相手が何かまた攻撃を仕掛けてくるのはわかっている。

だが、前にしか進めない。そうやって戦うことしかユウにはできない。

 

両手で構えたビームサーベルを大きく振りかぶり、叩きつけるかのごとく振り下ろした。

また避けられた。

背後に回られたドーベルにダガーを突き刺されそうになるが、直前で上体を反らしこれもまた回避する。

近距離の攻防戦……いや、守りではなく互いに避け合っている。

 

幾度となく、そのビームサーベルを振りかざした。

しかしそれと同時に、幾度となく避け続けられた。

 

これでは状況を変えることができない。

ユウは隣にいるヒロを見つめた。

ヒロも苦しい顔をしている。

 

しかし、余所見がいけなかった。

気がついたときには、ドーベルのビームダガーが、アポロンの右手に握られていたグリップを貫いていた。

思わず手を離す。

先に武装をやられてしまった。

 

前にしか出られない。

だからこそ、今この瞬間だけ切り抜けられたら──

 

「ユウ、後ろを取ってからもう一度ビームサーベルだ」

「後ろを取れったって、それが出来ればここまで苦戦なんかしちゃいないよ……!!」

 

とは言いつつも、武装を手にしないまま相手の懐へ飛び込む。

ドーベルがアポロンの背面をおそらく捉えたであろう瞬間、

 

──ハンドガンだ!!!

 

そう、ヒロに目で訴えかけられた気がした。

 

攻撃されるより先に、勢いをつけたまま足元へ滑り込む。

ドーベルのビームダガーのリーチでは足りない範囲へ潜ったと同時に、サイドアーマーのハンドガンを二丁取り出しドーベルの背中へ向ける。

 

「何……ッ!?」

「もらった!」

 

三、四発、短い光線が発射される。

一発だけドーベルのバックパックを直撃し、瞬間姿勢を崩すことに成功するも、二発目以降の攻撃は、相手特有の瞬発力で回避されてしまう。

 

相手のリアアーマーに設けられた5つのバーニアが火を吹く。

しかし、確実に相手の間合いは取った。

 

もう片方のビームサーベルを引き抜き、ふらつくドーベルに接近する。

しかし同じ行動を取り続けると、相手に読まれてしまう。

突然大きく違った攻撃を仕掛けることで、相手を油断させることができるかもしれない。ユウはそう考えた。

 

接近してから、一瞬振りかぶる素振りを見せ、ビームを展開したままサーベルのグリップを放り投げる。

もちろん投擲する武器ではないため、当たるか当たらないかは一か八かだ。

しかしその僅かな可能性を信じ、ユウは止まらずドーベルに向かって走り続ける。

相手は驚いた様子ではあったが、やはり避けられてしまった。

──それでいい。

持てる推力を尽くし加速したアポロンが、避けるドーベルをさらに避け、ドーベルに当たることなく地面へ突き刺さろうとしていたサーベルのグリップを握り直した。

そんな行動を取るなんて、きっと相手は考えられるはずがない。

旋回し、戸惑うドーベル目掛け今度こそ刃を向ける。

今まさに当たる……といったそのとき、

 

「防がれた……!?」

 

ビームサーベルを握った右腕は、一本のロッドと思わしきものに止められた。

その華奢とも言える腕からは考えられないほどの力で、形勢は逆転させられてしまう。

 

「チェインシャフト……。ドーベルの主武装だ、覚えときな……!!」

 

右サイドアーマーにさっきまでマウントされていた巨大なロッド"チェインシャフト"が、ドーベルの手に握られた。

明らかにリーチが長い。さっきのような懐に飛び込む戦法は無理だろう。

 

「ビームサーベルじゃ……対応しきれないかもしれない」

「大丈夫だ、そんときは脚がある。自慢の脚がね」

 

ヒロの心配をよそに、ユウは前を見た。

──面白くなってきたじゃないか。

 

今一度グリップをしっかり握ったのを確認すると、大きくジャンプをして上からドーベルに迫る。

 

てっきりガードをしてくるかと思っていたが、そのチェインシャフトで思い切り薙ぎ払われる。

 

「っ……!!」

 

予想以上の力強さでアポロンは吹き飛ばされ、ビル郡に突っ込んでしまう。割れた窓ガラスのエフェクトが舞う。

その衝撃で、思わずビームサーベルを手放してしまったのだろう。どこか遠くへ飛んでいったのが見えた。

 

「マズい!」

「どうしろって……!?」

 

破壊されたビルに倒れ込むアポロンのもとに、ビームダガーが先端にマウントされたチェインシャフトを振り回すドーベルが現れる。

 

すぐ目の前まで迫ったドーベルの腕を両腕で押さえる。

……しかし、やはり強い。

 

だからといって、負けるわけにはいかない。

相手の攻撃を必死に防ぐアポロンの両腕から、ビームシールドを展開させる。

防御用の兵装とはいえビームのため、γナノラミネート装甲のない相手の腕はビームを受け赤く光り、今にも溶け落ちそうに見える。

 

「こんなとこじゃ戦いにすらならない……広場へ誘い込むんだ!」

「わかった!」

 

瞬間生まれた隙で、ビルとドーベルから離れ、飛び上がるアポロン。

スラスターを一斉に吹かし、全力での加速。数あるビルの上を走って、飛んで。

 

それでも、地上を走るドーベルに追い付かれそうになる。

 

「地形活かしちゃう?兄ちゃん」

「時間稼ぎならできるぞ」

 

ギリギリまで接近されたところで、ちょうど左足をついていたビルの角を、そのかかとの刃で破壊する。

 

砕けた破片のエフェクトが大量に降り注ぎ、ドーベルの動きを止めた。成功だ。

 

それを確認したら、再びアポロンはビルの上を飛び続ける。

……しかし突然、足場が崩れた。

 

「なんで!?」

 

バランスを崩しそうになるが、咄嗟に点火したスラスターによって、なんとか着地する。

 

──自分達よりも前に、ドーベルがいた。

 

「……瞬速だって言ってんだろ」

 

とんでもない速さで追い付いてきたドーベルは、心なしか赤みを帯びているようにも見えた。

 

もう逃がさない。

ガンダムの目に、そう訴えかけられているようだった。

 

息を飲ませる間もなく、ドーベルが一気に距離を詰めてくる。

一方のアポロンは手持ちの武装もほぼなく、また避けるしかできない。

それでも、限界が近づいてくる。

 

結果的に、広場まで誘い込めたのは幸いと言えようか。

一気に身動きが取りやすくなるがそれはまた、相手にも余裕を与えてしまうことにもなる。

そうなる前に、形勢逆転を考えねば。

 

「余所見をするなっ!!」

「ぐっ……!!」

 

頭ばかり働かせている間に、相手に隙を見せてしまった。

チェインシャフトが下から振り上げられ、アポロンはさらに遠くへ飛ばされてしまった。

 

「おい、左腕が……」

 

ヒロの声を聞き、機体を確認する。

先程の攻撃をまともに受けたのがこの腕だったのだろう。使い物になりそうにない。

 

 

「兄ちゃん……?」

 

ヒロがユウの前に乗り出した。

そして鋭い眼差しをアポロンにしばらく向けたあと、後ろへと戻った。

ニヤリと上がったその口角を、ユウは見逃していなかった。

 

「ユウ、今相手がいるところまで一直線……走れるか」

「いけるよ」

「それと……そろそろカウントだ」

 

 

 

「どうした、こんなところで終わりじゃないだろう」

 

エイジからの声。

まだまだやるぞ、と言った具合に、ドーベルはもうひとつ右腰にマウントされているチェインシャフト同士を合体させ、さながらソードインパルスのように持ち上げ、振り回し、構えた。

 

こんなところで終わりな訳がない。

当然だ。

だって──

 

「──勝ちたいから……なッ!!!」

 

機体を起こしたユウは手元のグリップを目一杯傾ける。

反動を感じるほどの加速に、鳥肌が立つ。

……やっぱりアポロンは凄い。

 

ドーベルもその巨大化したチェインシャフトをこちらに向け、接近してきた。

アポロンが何もしなければ、おそらく攻撃を仕掛けてくる。

アポロンから攻撃をすれば、真っ先に避けられる。

そう、持ち前の運動性を活かして何度も何度も避け続けられる。

 

互いに接近する。

 

どうすれば。

 

青白い光を放ちながら加速するアポロン。

 

どうしたら。

 

大地に足を踏みつけ、全力で駆けるドーベル。

 

どうすれば相手に……

 

 

ドーベルより手前に、白い何かが見えた。

あれは──

 

「ユウ、カウントだ!!!」

「!!」

 

ヒロの声を聞きはっとする。

 

「見えたよアレが……使えばいいんだろう」

「あぁそうだ。とにかくぶつかる勢いで迫っていけ……そしてあれを使うんだ」

 

アポロンはさらに速度を上げた。

徐々にドーベルが近づいていく。

 

「3!!」

 

右手でハンドガンを掴み、照準を向ける。

ドーベルまで40センチ。

 

「2!!」

 

それに気づいたドーベルはやはり回避行動をとる。

すれ違う形になったドーベルは、さっきと全く反対方向にいることになる。

そして……

 

「1ッ!!!」

「飛ばす!!」

 

背中の二枚のバインダーが、勢いよく飛び出した。

 

「何だと!?」

 

それと同時にユウの隣に、小型のグリップが現れた。

待ってましたと言わんばかりに、ヒロがそれを握る。

 

有線遠隔兵器となったバインダーは、黒いリード線を尻尾のようにしながら、退こうとするドーベルを追う。

 

一方のアポロンは、少し前に遠くへ飛んでいってしまったビームサーベルのグリップを回収する。

 

ドーベルの背後を取ったソードビットが、地面に突き刺さる。

 

「ッ……!!」

 

動揺しきっていたドーベルはそれに躓いてしまう。

バランスを崩したところで、ソードビットのコードがドーベルに巻き付く。

 

「もう逃げらんねえぞ……!」

 

ヒロ、自慢気である。

 

アポロン背部のソードビット基部が、一気にコードの巻き取りを始める。

 

逃げられないドーベルをそのまま、こちらに引き寄せて──

 

「これで!!」

「終わりだ……ッ!!!」

 

ゼロ距離となる直前に、ビームサーベルで胴体フレームから切り裂く。

 

ソードビットがバインダー形態に戻ると、相手はアポロンの背後で爆散した。

 

 

 

[Battle Ended

  Winner

 Yu's Mobile Suit  Apollon Gundam]

 

 

 

 

表示が現れるとユウは思わず嬉しくなって、

 

「っっしゃあ!!!!」

 

声を上げてしまった。

子供みたいに。

そうしたら、ヒロも一緒に、

 

「やっっっっ……たぁあああ!!!」

 

……子供みたいに、声を出していた。

 

 

 

筐体の反対側へ、ユウとヒロが向かう。

 

「えっと……」

 

自分も同じとはいえ、相手のガンプラを傷つけながら戦う。

だから、

 

「ありがとうございました」

 

礼儀くらいは忘れたくない。

 

「俺、まだ二戦目なのに……すごく楽しかったです」

 

この前の相手には退けられてしまったけども、右手をエイジに向けた。

 

「……こちらこそ、ユウさん達ほど派手な戦い方する人と出会うのは初めてだった」

 

握り返してくれた相手の顔は、笑顔だった。

 

「それが、君達の強さなのかもしれないな」

「強さ……?」

 

エイジは、満足げにふっと笑った。

 

「それにしても驚いたなぁ、バインダーがあんな風に飛び出すなんてねぇ」

「えっへへ……」

 

しゅん、と立ち上がっていた前髪が倒れ、最初の口調に戻った。

非常にオンオフが表れやすいのだろう。

 

 

 

 

 

「ははっ、連絡先交換しちゃった」

「こりゃ完全に友達認定されたな」

 

エイジがいなくなったあとのオーツカで二人、ユウとヒロは語らいの時間を過ごしていた。

 

「想像通りの出来だ、俺達があの時見たビジョンのまんまだった」

「それを言うなら、最高のタイミングで最高のコントロールをしてくれた、兄ちゃんだってすごいよ」

 

お互い、こうしていると嬉しくて仕方なくなる。

今回は紛れもなく、二人の勝利だった。

 

「次に備えて、また考えないとな」

「そうだね」

 

ふと、ヒロが店の壁を目にする。

そんなヒロの目線を追って、ユウもまた目にする。

 

「……全国大会?」

 

第14回GPD全国大会。

ポスターに書かれていた文字。

疑問形で呟くが、返事がない。

 

「……兄ちゃん?」

「え、あぁ……いや、何にもない」

 

少しだけ不安そうな表情をしていたけど、大丈夫だろうか。

ユウは少しばかり心配をした。

 

でも、

 

「全国大会……かぁ」

「ユウ?」

 

ここまでくると、目指したくもなる。

自分の思う、かっこよくて強い、自分だけのガンプラ。

そんなガンプラで、頂を目指してみたいと思うのは、男子であれば当然とも言えよう。

 

「なんか、第一歩を改めて踏み出せたって感じ、しない?」

 

うーんと少し考えたヒロは、笑顔で答えた。

 

「……そうだな」

 

 

まだまだ、強くなるために。

ユウとヒロのガンプラバトルは、ここから始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……兄ちゃん、どうしたの?」

 

店を出て突然、ヒロの顔が強ばった。

 

同じ方向を向くと、ちらりとこちらの様子を伺った誰かが、去っていくのが見えた。

その指には、紫色の指輪が。

 

「……トロさん?」

「いや、違う」

 

やはり、そうだったのか。

そう呟いた声は、ユウに聞こえることはなかった。

 

 

一歩を踏み出したと同時に、

 

闇も、こちらへと迫ってきていた。




なんだかんだで一話より長くなってしまいましたが

……何かがユウ達に迫ります、なんでしょうか。

戦闘シーン、もしかしたらちょっとくどかったかもしれません
それでもユウとヒロの二人で勝利を勝ち取ってほしくてですね……「サポーター」という立ち位置になったヒロくんは指揮だけじゃなくて、ビットの操作もすることになりました
そんなヒロくん、どうやら何か勘づいているようですが………………次回をお楽しみに……
今後はこのようなことがないようにいたしますので!!!!!!!!せめて3ヶ月に一話は上げたい!!!!!

最後まで見ていただいてありがとうございました!!!!


作者Twitter↓
@nushi_shinymas

劇中登場のガンダムウヴァルドーベル作者↓
@11h30m26s_Rabo
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。