ガンダムビルドデューラーズ   作:ぬぬっしし

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お前はマトモに連載する気あるのかと
お思いでしょう

本当に申し訳ない
モチベあるときには書けるんですけどないときには一切書けないんです

実際この3話、書くの自体は4ヶ月ほどかかってるのですが
うち半分ぐらいは昨日書いてます、昨日のモチベが異常だったので

そういう感じです

あ、自己紹介を忘れていました

サボり魔 ぬぬっししです
果たして誰かに待ってもらってすらいたのかわかりませんが
何はともあれ第三話です
それではどうぞ……


第三話 再燃の灯火

電車を降りてから数分自転車を走らせると、いつもの模型店にたどり着く。

この間購入した、ガンプラを腰から提げることができる専用のホルダーを誇らしげに眺め、ウチヤマ・ユウは入店した。

 

「やぁユウくん、学校帰りかな?」

「店長、こんばんは」

 

こんばんは、と言うにはまだ陽が沈みきっていないな、と口にした後からユウは思う。

 

「すっかり、ガンプラバトルの虜じゃないか」

「なんというか……本当ですよね、でも今日は買いに来ただけなので」

「そのわりには──」

 

そーっと首を伸ばすように、ユウの右腰に目をやる。

 

「随分とやる気満々だね」

「あはは……なんか、手放せなくって」

 

いつの間にかユウは、どんなときもアポロンを手元に置いておくようになっていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

ちょうどテスト期間が明け、ユウはすっかり解放感に浸っていた。

……忘れてはいけないが、それでも一応受験生である。

 

積まれた箱をぼーっと眺める。

特に何も考えず、ただ素組みをしたい。そんな気分。

 

「お、Gセイバーとか再版されてたんだ」

 

中々古いキットのために、再版がかかるとネット上では軽く盛り上がったりする、レアキットである。

一度手を伸ばそうとしてみるも、

 

「うーん……」

 

古いが故に、ガシガシと動かすには向いていなさそうだな。そう思って手をひっこめた。

やる気さえあれば可動改造とかもしてみたい。なんて思いつつ目線を少し左へずらす。

 

「この辺でいいかもな」

 

ビルドカスタムの辺り。

低価格帯でありながらもバリエーションは豊かであるため、気軽に手が出しやすく、なおかつ使いやすい。

可動アームなんかがセットされたものを選ぶと、そのままレジへ行こうとした。

よくよく思えば、素組みで作るガンプラを買うつもりだったのに、改造に使いそうなものを手にしていたことに気がつく。

まあここは、欲しいものを欲しいときに買うべし、だ。

 

……が、

 

「ん、」

 

一度箱をもとの場所へ戻す。

少しばかりの尿意を感じたユウは、一度トイレへ向かうことにした。

 

 

 

 

 

「清掃中」の看板をよそに、個室にひとり。

激しい水の音とともにせっせと用を済ませたユウは、すれ違いざまにちらりとこちらに目を向けていた清掃員に軽く会釈をし、トイレを後にしようとする。

 

いや、全然ちらりではない。

ガン見だ。

それも、腰のホルダーを。

 

すると相手はユウと同様のホルダーから、キラリと金色に光るひとつのガンプラを取り出し、こちらに見えるように構えた。

かっこつけているように見えるが、これは言わばガンプラバトルのお誘いである。

 

……かっこつけていることに変わりはないかもしれないが。

 

 

 

 

 

トイレを出た二人はそのまま、GPDの筐体へ向かった。

もちろん互いに初対面であるが、ここに立った時点でそんな情報は意味を持たなくなる。

自分も相手も、デューラーである。

それだけだ。

 

[Yu's Mobile Suit

   Apollon Gundam

    VS.

  Futo's Mobile Suit

     HYAKU-SHIKI]

 

カードキーを差し込むことで、相手と自分の情報が現れる。

清掃業者の青い制服を身に纏った相手は、イヌハラ・フウトと言うらしい。

 

2、30代ほどの男は、何故か自信に満ちた目でこちらを見つめている。

が、ユウが一切の反応も見せないことでやり取り?は終了してしまった。

 

 

円形の台座にユウがアポロンを置く。

しかし以前と違い、機体の赤に対して目立つ青色の「GNソードⅡブラスター」を右手に装備していた。

相手も同じようにガンプラを置く。

適度にディテールが追加され、塗装も丁寧。情報量と説得力に長けたいいガンプラだった。

 

……ってよく見るとあれ、この前ジ・Oにやられてた百式じゃないか。

そんなことに気づいたユウは、こほんとわざとらしく咳をするような動作をし、グリップを握ってから、

 

「ウチヤマ・ユウ、アポロンガンダム、行きます!」

 

己のガンプラを、そのバトルフィールドへと侵入させた。

 

 

 

 

 

ステージ設定は宇宙。

思えばユウは今まで、地上でしか戦ってこなかった。慣れない操作感に耐えうるかどうか、実際は計り知れない。

 

[READY?]

 

まぁ、やってみるしかないだろう。

人差し指から小指まで、ウェーブさせるように折り曲げてグリップを握り直す。

 

[BATTLE START]

 

合図と共に動き出す。

地上でかかっていた重力という概念が存在しない宇宙空間で、バーニアを吹かして適当な地点へ移動する。

左側面よりフォアグリップが展開され、両手でライフルを構えた。

 

「落ち着いて……相手の位置も、動きも見て……」

 

射撃モードとなったディスプレイでは、黄金色に輝くそれを見逃すことなく捉えていた。

 

「それと少しだけ……軌道の先を撃つ……!」

 

深く息を吐いてから、ロックオンされた敵機に向かってトリガーを引く。

高出力の目映い光線が、そのバレルから放たれた。

 

 

 

 

 

「ん、エイジさんからのメール?」

「そうそう、なんか突然俺の分析みたいなことをし始めてさ」

 

数日前のこと。

ヒロはユウと一緒に、ひとつの携帯電話の画面に注目した。

 

『ハンドガンの扱いが雑に見えたよー、射撃の基礎から練習してみるともっと強くなれるかもねぇ』

 

「一応、アポロンは格闘特化のつもりなんだけどな……」

「まあでも、経験として練習しておいても損はないかもな」

 

以前の戦闘の中でエイジは、ほんの僅かな弱点に気づいていたらしい。

しかしながらユウの言う通り、アポロンガンダムは近接特化型のガンダムであって、ハンドガンはあくまで保険。

さすがにそれがわかっていないということはなさそうだから、何か意味があるのかもしれない。

 

「教えてやるから、しばらくこいつ使ってみろよ」

 

するとヒロがジャンクの箱から、GNソードⅡブラスターを取り出し、ユウに手渡した。

そうして今に至る。

 

 

 

 

 

「外した……!?」

 

アポロンがライフルから放った攻撃は、敵機の百式に見事にかわされてしまった。

相手の機動力はそこそこ。特筆するほどずば抜けて速いわけでもない。

しかし、これでは……。

 

再チャージを始めるアポロンガンダム。

GNドライヴ搭載機でないために武装との相性が悪い、というガンプラバトル特有のある種厄介な特徴があるために、これまた時間がかかる。

接近されては落ち着いて撃つことができないため、距離を開くように相手から遠ざかる。

 

相手のビームライフルによる射撃が飛んでくるも、それは難なく避けていく。

 

うまく相手の背後に回り込めた。

 

「もう……一回!」

 

 

 

 

 

「とりあえずは深呼吸な」

「深呼吸」

 

GNソードⅡブラスターを持ったアポロンが、ヒロの操縦桿で動かされる。

位置を決め、膝立ちの体勢をとってから、ぐっとライフルを構えた。

 

「相手の動き方、パターン、現在の位置。ある程度把握するんだ」

「動き……位置……把握……」

 

銃口の向く先には、サンドバッグ扱いのプロペラントタンクが、高速でうろうろしている。

 

「整理がついたら……動きの先を見て撃つ」

「先を見て──」

 

フルチャージ状態のビームは太い帯のようになり、辺りに衝撃波を与えつつプロペラントタンクを貫いた。

 

「すっげえ……」

「まぁこう……先読みの加減とかが一番難しいんだ、練習して勘を掴むしかないな」

 

射撃によるガンプラバトルも経験していたらしいヒロの話を、ユウは興味深そうに、黙々と聞いていた。

 

 

 

 

 

かれこれ4、5発ほどだろうか。

 

「先読みって……そうそうできるわけないじゃん……!!」

 

ユウ自身も驚くほど、当たらない。

 

「──!?」

 

気がつけば相手のビームライフルの射撃が、左肩を掠めていた。

 

「ええい……」

 

本領を発揮できず、弾もなかなか当たらない。

ユウはむしゃくしゃしながら、元の場所を離れ高速で敵機に接近し、

 

「″刃″ついてるんだからさ……」

 

ライフルを持った腕を大きく振りかぶり、銃身下部に装着されている熱刃を、敵機の百式の脇腹に回し、食い込ませ、そして

 

「こう、したほうが……早いよなぁ!!」

 

上半身と下半身で真っ二つに切り裂いた。

 

 

[Battle Ended]

 

 

無機質な機械音声が鳴ると同時に、ホログラムによる世界がキラキラと輝きながら消えていく。

最終的に、近接戦闘に持っていっての勝利であったために、練習にはならなかった。

 

 

「君のガンプラ、かっこいいね」

 

バトルが終わってから、相手に話しかけられる。

初対面であってもなくても、戦いを終え、筐体を降りた時点で、そこからは互いを高め合う仲間となるものだ。

 

「あ……!ありがとうございます!!」

 

ユウは自らの作ったアポロンガンダムが好きであった。

そのため、誰かにこうして好感を持ってもらえると、何とも言えない幸福感と達成感に包まれる。

 

互いの全力を尽くし、持てる力を持ってして戦いきる。

残ったものがどうであれ、戦いが終われば、互いを尊び、労り、認め合い、その戦いに感謝する。

そうして、ライバル同士がそれぞれを高め合うことができる決闘──ガンプラバトルの沼に、ユウは徐々にハマりつつあった。

 

 

 

しばらくユウのアポロンや、相手の百式について語らい、アドバイスなんかをし合いつつ、ユウは相手と別れ、帰路に就こうとした。

するとその時、

 

「そうだユウくん、一つだけ」

 

丁度今違う方向へ行こうとしている時、再び声をかけられた。

 

「……?」

「忠告というかなんというか、最近変な輩がこの辺のGPD筐体設置店をうろついてるって噂があるんだ。一応気を付けてな」

「は、はあ……」

 

変な輩。

あまりにも情報量が少なすぎたため、どうせ噂は噂だろうと思いながらも、改めて駐輪場へ向かった。

 

 

自転車を漕いでいる途中で、すっかり忘れていた「ガンプラを買う」という目的を思い出してしまったのは、これまた別のお話。

 

 

 

 

 

「遅かったじゃないか」

「ごめん、こいつの練習してた。兄ちゃんは早かったんだ」

 

家に帰ると、部屋には兄のヒロが。

ユウはGNソードⅡブラスターを持たせたアポロンを、ヒロに見えるように置いた。

 

「で、成果はどうよ」

「全く」

「マジかお前……」

 

ヒロは呆れたような顔をした。

何故かユウも呆れたような顔をした。

 

「先を読むとか相手を捉えるとか、至難の技過ぎるよあれ。できるわけないって」

「それがガンプラバトルをするやつの言うことか」

 

センスというかなんと言うか、長けているところと圧倒的に欠けているところの差が激しい。

戦闘スタイルといった形で補うこともできるが……。

 

「適応力はゼロだな」

「うんんん…………」

 

これでは、予想外の相手や状況が迫った時に対応がしづらい。

 

「全国大会、気になってるんだろ?」

 

ヒロの言葉に、ユウは静かに頷いた。

 

「ちょっとずつでいいからさ、頑張ってみようぜ」

「……そうだね」

 

今後のことを考えると、やはり手数は多いに越したことはない。

できる限り、練習していこう。ユウはそう思った。

 

 

 

 

「変な輩?」

「そうそう、なんか今日対戦した人に言われたんだ」

 

ユウはプラ板片手に、ヒロは携帯片手に話している。

 

「詳しいことはわかんないけど、なんか危なげっぽいよ。あくまで噂だけどさ」

「……危なげ、か」

 

 

しばしの沈黙。

ヒロは瞬間、険しい顔をしたようにも見えたが、

 

「な、なんか物騒だな。情報量がなさすぎてアレだけどな」

 

ふっと、いつもの表情に戻った。

 

「そうなんだよね、まあ気にするつもりもないけどさ」

 

そう返すと同時に椅子ごと体を机と正面に向かせ、作業を再開する。

 

今ユウが行っているのは、いわゆるスクラッチというものだ。

 

 

 

 

 

「忘れ物ない?」

「ないない」

 

朝。

度々ユウとヒロは、家を出る時間が一緒になっていたりする。

 

「今日もガンプラバトルしていくのか?」

「そうだね、帰りに時間あったら」

 

ユウはカバンの中に、ケース入りのアポロンガンダムを忍ばせた。

 

「ほらほら、行こ」

「おうおう」

 

急かすようにしながら、ユウは部屋を出て、階段を降りる。

 

 

ヒロが一人残った部屋。

 

目を閉じて、深呼吸をする。

 

クローゼットを開けると、普段は鍵をかけており開けることのない引き出しがあった。

そこへ久々に鍵を挿入し、中を目にする。

 

「……変わってない、よな」

 

少しばかりの安堵。

 

しかし、ヒロの表情はまた強ばる。

決意の表情であった。

 

「……お前をこうして元に戻したことを、いつかまた後悔するかもしれない」

 

優しく語りかけるかのように呟く。

 

「それでも、アイツを守るためにも、もう一度──」

 

それは、かつての戦友に話しているかのようで。

 

 

「──俺に力を貸してくれ」

 

 

手にしたものは、白、赤、青、黄。

 

その姿は、紛れもなくガンダムであった。

 

 

 

 

 

学校にて、休憩中のユウ。

アポロンの製作のときに掴んだ感覚を活かし、武装をスクラッチしようと考えていた。

 

現状出来ている刀身部分に合わせて、柄と鞘のデザインをスケッチから思考する。

……スケッチと言っても、本当にお粗末なものであるが。

 

「セイくんはすごいよなぁ」

 

『ガンダムビルドファイターズ』の主人公、イオリ・セイ。

ガンプラに活かすために絵を多少を学んでいたとかなかったとか。

その辺、ユウは全くである。

 

しかしながら、結論を出すのは立体造形。スケッチの段階では、あくまでなんとなくでよいのだ。

 

「ん、次移動か」

 

休憩時間が終わりに近づくのを確認すると、次の授業が行われる教室へ向かおうとする。

 

教科書、ノート、そしてスケッチ。

積んで抱えて、教室を飛び出す。

 

「──!?」

「うわっ」

 

……飛び出したのがいけなかった。

 

そう!

ユウはドアの向こうに誰かがいると、ビビって腰から崩れ落ちてしまう

ドがうん千個ほどつきそうなビビりなのである!!!!!

 

……ガンプラバトル以外においては基本的に。

 

「……大丈夫?」

 

扉の向こう側にいた彼女は、そう声をかけてきた。

 

「まぁ……うん、大丈夫。ごめん」

 

尻餅をついていたその腰を持ち上げ、ばら撒いた教科書やノートを拾う。

目の前にいた彼女もそのまま手伝ってくれる流れになったのだが、

 

「何これ、刀?」

 

スケッチを見られた。

見られたといって害があるわけでもないが。

 

「そう、刀」

「ふーん……」

 

自分から聞いておいて、案外どうでもよさそうだな、と思ったのは置いておいて。

それよりも、

 

「ウチヤマくんすっごいビビりじゃん」

 

なんてユウは言われてしまった。

ユウ自身としてはそんなことは自覚しかない。

しかしながらなんだこいつは。初対面だろう。

よくそんなことが言えたものだ。

 

「否定はしないけど……ってか、なんで名前知ってんの」

 

ユウは彼女の名前を知らない。

しかし彼女はユウの名前を知っている。

多少の恐怖心はある。さほど名の知れるほどの行動をこの学校で起こしたつもりもない。

そこで返ってきた答えは、

 

「……同じクラスじゃん、何言ってるん……??」

 

しまった。ユウはそう思った。

関わりのない人間は半分ほど名前を忘れがちなのだ。

 

「……ふ」

「…………ふ?」

 

「ぷっ……はははは!!何何?変なのー」

 

終始バカにされ続けていることに気づいたが、ユウはあえて堪える。

 

「アタシさ、おもしろそうな人が好きなの」

 

立ち上がった彼女が言う。

 

「キミね、なんかおもしろい」

「褒め言葉には到底聞こえないけどな」

「そんな褒めてるつもりもないからね」

 

いちいち引っ掛かるやつだ。

そう思いつつも、ほんの少しだけ笑ってしまった。

 

 

 

「これ、もしかしてガンプラバトルのやつだったりする?」

「え、」

 

拾い上げたスケッチを指差して言う。

もちろん図星である。

 

「そう……だけど」

「ふーん……」

 

さっきとは僅かに声のトーンが違った。

興味がさっきよりはあるのか、はたまた他の何かか。

その表情は、真剣にも深刻にも見えて──

 

 

「あ」

「あ」

 

 

響くチャイムの音。

授業開始の合図。

気がつくと教室には誰もいなかった。

 

 

「移動教室なのっ、完全に忘れてた……!!」

「アタシも……っ!!あーーマズい!!!」

 

チャイム後二人の廊下爆走。

遅刻確定どころか現在進行形で遅刻している。

 

「そういやお前、名前は……っ!」

「そっかそっかっ、おんなじクラスメイトのことなーんにも知らなかったんだもんね……っ!!」

「ぐぬ……」

 

「アズマ・ツバキ!」

 

隣で走る彼女は、そう名乗った。

 

 

「「遅れてすみません!!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

学校帰りは遊びの時間だった。

暇さえあれば模型店へ行き、ガンプラバトル。

たまに店を変えては交流し、それの繰り返し。

自覚があるかどうかはともかく、ユウ自身の能力は確実に成長していた。

 

下校前のホームルーム。

携帯の画面を点けると、新着メッセージが。

 

『今日は早く終わりそうだし、一緒に行くか?』

 

ヒロから。

もちろん、ガンプラバトルの話。

 

『うん、行こう』

 

そう返すといつも、ユウはどこか上機嫌であった。

 

 

 

 

 

「兄ちゃん、上!!」

「あぁ……!!」

 

アポロンの背部バインダーが切り離され、さながらファンネルのように宇宙空間を駆ける。

頭上から降り注ぐ弾丸の雨を切り裂き弾き、一切の被弾を無くした。

 

「上手すぎでしょ」

「当たり前だ、俺を誰だと──」

 

称賛の言葉を伝えると、ヒロからの言葉が途切れる。

 

「……兄ちゃん?」

「あ、あーいや、何も」

 

不思議そうに隣を見つめるユウ。

 

「……何だ?」

「いや、何も」

 

本人達は気づいていないかもしれないが、こういったときの受け答えは兄弟共に似ている。

長く付き合いがあると、やはりそれだけ影響を受けるということなのだろうか。

 

「対象が移動してるぞー。ユウ、練習だ」

「了解っ!」

 

サイドアーマーのホルスターが展開し、ハンドガンを手にする。

 

以前のGNソードⅡブラスターのような長距離射撃の装備ではないにしろ、少なくとも射撃の練習にはなるのだ。

 

両腕を構え、

 

「さーて……うまく当たれよ……俺の先読み……ッ!!」

 

相手が近づいてきたところで、引き金を引く。

 

 

「うおっ!?」

「やればできるじゃねえか……ユウ」

 

誰よりも一番ユウ本人が驚いてしまったが、きちんとその銃弾は相手に命中した。

被弾し相手が怯んだところで、ビームサーベルを引き抜き接近する。

これで、勝利は目に見えた。

 

 

 

 

 

何日も何日も。用事がなければほぼ毎日のように、ユウはガンプラバトルを楽しんでいた。

不在の日もあったものの、大半はアシストとしてヒロもいた。

射撃に関しては未だ納得はいかないものの、度重なる戦闘によって、最初と比べると随分と精度が上がっている。

 

まさに、順風満帆といった感じであった。

 

 

 

 

 

「ウチヤマ、今日暇か?」

 

日の暮れ始め、ヒロは友人に声をかけられた。

 

「悪い、先客だ」

「まあ薄々気づいていたさ、弟さんとガンプラバトルだろ?人気だよなぁ」

「他人事みたいだな、なんか」

 

大学の門を抜けると、ヒロはいつも駅まで歩きになる。

そしてそれは、その友人も同じであった。

即ち、一緒に帰るというわけだ。

 

「俺はしたことないからなぁ、ガンプラバトル。昔からの付き合いがある友達がやってるみたいなんだけど」

「推されてるのか?」

「いーや全然。推されてるのはガンダムAGEだけだな。せっかく作ったガンプラ、壊れたら大変だからって」

 

ヒロはその友人のことは知らない。

それでも、その気持ちは嫌というほど理解できた。

 

「……そうだよな、壊れたら……大変なんだよ」

「でもやってるんだろ?弟さんと」

「なんだかんだで、結局楽しいんだよ。自分が作ったガンプラが動くのって。矛盾してると言われたらそれまでだけどさ」

 

「そういうものか」

「そういうもん、だ」

 

ヒロは少しだけ自慢気そうだった。

 

「お前も、いつかわかるようになるかもな。カツラギ」

「興味自体はあるからな。いつか手を出すかもしれない」

 

カツラギ。

それがヒロの友人の名であった。

 

「なんなら、今から一緒に来てみるか?アイツはすげえぞ」

「はは、凄い自信だ」

「当然」

 

ヒロはまたしても自慢気だ。

 

 

 

[…駅間で人身事故のため、列車に大幅な遅れが発生しておりま…]

 

 

「……あれ、電車遅れてるのか」

「本当だ」

 

ホームの電工掲示板を見て、ヒロとカツラギが呟く。

 

「ユウに連絡しておかないとな……今日は先に始めておいてくれ……っと」

 

 

 

 

 

「マジか、大丈夫かな」

 

届いたメッセージを見て、ユウが呟く。

 

「先やっておいてって言われたし、とりあえず入るか」

 

オーツカ模型の駐輪場にいたユウは、ひとまず店内に入る。

陳列されたガンプラに惹かれつつも、目的の筐体へ向かった。

 

そこには、何やらいつもと違う雰囲気が広がっていた。

 

バラバラに裂かれた機体。

細かく分解された機体。

頭を抱えたデューラー達。

 

一つの筐体をそんなものが囲んでいたら、誰でも異常だと感じるであろう。

 

「何だ、えらく荒っぽいのがいるのか……?」

 

もしかすると、このときのユウは絶好調だったために多少調子に乗っていたのかもしれない。

ユウはそこに一人立つデューラーの相手をしようとした。

 

「……気を付けろ」

「え……?」

 

踞っていた一人が呟いた。

 

「奴は……ただ者じゃない……」

 

ただ者じゃない。

 

その言葉を聞いて、ユウはますますスリルを感じてしまった。

 

そんなに強い相手なのか。

逆にここで勝ってしまえば──

 

「──めっちゃかっこいいでしょ」

 

ユウは立ち止まることなく、立ち位置についた。

 

さあ、相手はどんなデューラーなんだ。

フードを深くまで被った男がカードキーを差し込むと、その相手の情報が現れた。

 

「なるほど、勝率8割……なかなかだね」

 

イメージ通り、とんでもない奴だ。

だが、

 

「こっちだって……!」

 

ユウは勢いよくカードキーを差し込んだ。

 

そう、ユウは現状無敗である。

度重なるバトルの中でも、(危なっかしいところは多々ありつつも)確実に勝利を収めてきたのだ。

そう易々と、負けるつもりはない。

 

 

[Yu's Mobile Suit

   Apollon Gundam

    VS.

  013's Mobile Suit

     Providence Gundam」

 

 

相手の機体はプロヴィデンスガンダム。

「機動戦士ガンダムSEED」においてラスボス機体として登場した、劇中最強の機体のひとつだ。

屈強たるそのオーラに、ユウは怯むことなく立ち向かう。

 

「さぁ……いくぞ」

 

ひんやりとした金属製のグリップ。

あぁ、これだ。この感覚がたまらなく興奮をそそる。

 

「ウチヤマ・ユウ、アポロンガンダム……行きます!!」

 

円形の台座に置かれたガンプラが、ふわりと浮き上がり、ホログラムで形成されたバトルフィールドに突入する。

そしてそれは相手も同じで。

 

「……」

 

何も言わず、ガンプラを置く。

メモリーカードのようなものを筐体に入れるのが見えたが、気のせいだろうか。ユウはそう思った。

 

ニヤリと口角を上げた相手が、グリップを動かす。

ツインアイが光を放ち、アポロンと同じくバトルフィールドへ突入した。

 

紫色の宝玉が光る指環が、ユウの目を惹く。

 

「あの指環って……」

 

どこかで見た記憶があるが、どうだっただろう。

しかしそんなこと、今はどうだってよかった。

 

とにかく目の前に、相手がいる。

決闘が、迫っている。

 

ニヤリと笑ったのはユウも同様であった。

 

「へへっ……ちょうどいいよ。こいつの強さを試せるいいチャンスだ」

 

バトルフィールド内に侵入したアポロンは、これまでとほんの少しだけ様子が違った。

ハンドガンが内蔵されていたサイドアーマーのうち左側に、巨大な刀の鞘がマウントされていたのだ。

 

ついに完成した専用太刀。アポロンガンダム、実質の第三形態。

初陣にふさわしい戦いにしてやる。

 

[READY?]

 

見慣れた表示。

覚悟もいつしか楽しみになっていた。

 

[BATTLE START]

 

ついに始まった戦い。

ユウの性格上、真っ先にアポロンを相手のもとへ走らせる。

一方のプロヴィデンスは全く動きを見せない。

 

「それじゃあただの的でしか──」

 

勢いをつけてリアアーマーから引き抜いたビームサーベルは、予期せぬ方向からのビームに突如貫かれた。

 

「何……ッ!?」

 

全く想定のしていなかった出来事。

焦りを隠せず、ひとまず機体を後ろへ下がらせる。

 

 

地上設定のステージであるのにも関わらず、無線のドラグーンが、浮遊していた。

 

「あり得ないでしょそんなの……」

 

アポロンガンダムのソードビットは、ナラティブガンダムと同様、内部に切り離し可能なコードと推進器が搭載されている。

しかしながら通常のファンネルやドラグーンは、地上ステージでは使用できないはずだ。

では、どうして……?

 

 

「いいよいいよ……そんじゃこっちも……!」

 

背部バインダーの上半分を切り離し、コードを尾にして射出する。

ソードビットとなったバインダーが、プロヴィデンスのドラグーンへ一直線に向かった。

しかし今回の場合はサポーター不在のため、自動操作になる。マニュアル操作と比べると精度はやはり落ちるのだ。

 

ドラグーンはビットで対抗させつつ、アポロン本体は今一度加速する。

 

「オールレンジ攻撃は封じたんだ……だから戦えッ!!!」

 

アポロンがそっと鞘に手をかける。

同時に相手のプロヴィデンスも、複合兵装防盾システム「MA-V05A」の先端からビームの刃を形成する。

ビーム対実体剣。

マトモに切り結ぼうとするとビームに焼かれて溶けそうなものだが、

 

なんとそれは、見事なつばぜり合いをやって見せた。

 

「驚いたか……対ビームコーティングを施した、こいつ専用の刀に……ッ!!!」

 

あろうことかその太刀は、ビームサーベルの刀身すらも切り裂いた。

そのままの勢いで相手を真っ二つにしてやろう。

ユウはそう決めたが……

 

「こっちは……固すぎる!」

 

その装甲の強度は、明らかに通常のMSのそれではなかった。

製作の際に、パーツ一つ一つの厚みを増しているのか。

何て呑気に考えていると、相手のビームライフルから至近距離で射撃を受けた。

 

「うあっ……!?」

 

久々の被弾。

ソードビットのプラットホームの片側が損傷した。

しかしそれだけならまだ──

 

「しまっ……!」

 

再びの多方向からの攻撃。

ドラグーンはソードビットになんとかさせていたはずだが……

 

「……何だこれ」

 

ユウが見たもの。

それは攻撃によって落ちるのではなく、突然グニャリと形を変え、無惨な姿となって落下するビットであった。

 

「さっきから全部全部……おかしすぎるでしょこれ」

 

奴はただ者ではない。

その言葉に、一切の嘘がなかったことがわかる。

 

相手は明らかに、異常だ。

 

 

ビームを展開しながら接近してくる大型のドラグーン。

左前方にそれを確認したユウは太刀を左手に持ち変え、ぐっと飛び上がった。

 

「そろそろ切らせてくれ……アポロンガンダムッ!!!」

 

大きく振りかぶり、空中で斬り込む姿勢をとる。

 

が、急加速してきたドラグーンが左腕に突進。

太刀を手放してしまうと同時に、左腕がひしゃげてしまった。

 

為す術もなく、そのまま墜落するアポロン。

ここで言う為す術もなくというのは比喩でもなく、事実であって。

 

「……!?おい何だよ、何で動かないんだ!?」

 

まだ動けそうな状態であるのにも関わらず、アポロンはこちらの操作を受け付けなくなってしまった。

 

「っていうか……なんか暑くないか……?」

 

筐体が明らかに熱を発している。

どう考えても普通じゃない。

 

「こんな戦い、どうかしてるに決まってる……。一回中止を──」

 

ディスプレイ上のメニュー項目。

それを開くために、ユウは何度もタッチするが、

 

「……フリーズしてる!?」

 

機体だけではなく、そもそも筐体自体が操作を受け付けていない。

……否。

 

相手のプロヴィデンスは、着々とこちらへ向かってきているのだ。

つまり、自分の操作だけ受け付けていない、ということ。

考えられるのは……

 

「相手の意図的な…………?あっ」

 

 

『最近変な輩がこの辺のGPD筐体設置店をうろついてるって噂があるんだ。一応気を付けてな』

 

 

「あれってまさか…………ッ!!」

 

ふと思い出される言葉。

間違いなくこいつのことだ。

 

そう思うとユウは、相手に対して徐々に憎悪の感情が芽生え始めた。

それは自分が理不尽に攻撃されていることに対しての、半ば八つ当たりのようなものでもあった。

 

「動けッ!!言うこと聞いてくれよ!!!負けるにしたってもっとあるだろ!?」

 

どうにかならないものかと、目に映るものをとりあえず動かしてみる。

 

「納得いかない……戦うなら正々堂々じゃないのか……?この……ッ!!」

 

手元のグリップを思いきり引く。

引きちぎってしまうのではないかというほど。

すると、

 

「あ」

 

 

[*** STOP: 1x3057318A (0x10437943)

 

 

 

 

 

                    ]

 

 

突然ディスプレイに現れたのは、真っ青な画面だった。

 

 

「……嘘だろ」

 

文字通り為す術がなくなったユウ。

筐体の熱からか、心なしかバトルフィールドが赤くすら見える。

ゆらゆらと歩き寄るプロヴィデンス。

 

ああ、そうだな。

こんな理解の及ばない負け方をすれば、今周りにいる人達のようにもなる。

ユウはそんな彼らの気持ちがわかり始めたのだ。

 

 

プロヴィデンスの足音。

 

 

ここで終わりか。

 

 

迫る足音。

 

 

調子に乗るとすぐ終わってしまうな。

 

 

誰かの足音。

 

 

そう思いかけたユウ。

 

 

 

いや、違うだろ……!?

 

「俺本当は負けたくない……絶対こんなのに負けたくないんだよ……!!!」

 

思いきるに思いきれない状況。

誰かがいれば。

一人じゃなければ。

誰か……誰か……!!!

 

 

 

 

 

「!?」

 

射撃と爆発の音。

 

ふと顔を上げる。

 

 

「ガン……ダム……?」

 

白を基調とした、ベーシックなトリコロールカラー。

四本のブレードアンテナ。二本のビームサーベル。

ビームライフルと赤いシールドを装備した機体。

 

それまでそこにいなかったガンプラが、確かに、そこにいた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「……よく持ち堪えてくれた、ユウ」

「その声……?」

 

ひどく落ち着く、聞き馴染みのある声。

心の底からきっと待ち望んでいた声。

自分の立ち位置の真横。

普段ならサポーター用として現れる場所。

 

そこに立っていたのは、紛れもなくヒロだった。

 

「兄ちゃん……!?」

「遅れて本当にすまん、戦えるか?」

「え、あ、あのっ」

 

ユウは状況の整理が未だ追い付いていない。

 

「バッ……!?何したんだこれ!?」

「お、俺だってわかんないけどさ……!!とにかく動かなくなってて……」

「ったく……よいしょッ!!」

 

ヒロはユウ側のディスプレイを力を込めて叩いた。

 

なんと表示が復旧したのだ。

 

「いつの時代の家電だよ!?」

 

ツッコミを入れる余裕が生まれたことに、少しだけ安堵を覚えるユウ。

とはいえ、

 

「……聞きたいこと、山ほどあるんだけど」

「全部終わってからだ。わかるな?」

「……うん」

 

まずは、目の前の脅威を退けなければならない。

 

 

「さあいくぞ……プロメテウスガンダムッ!!!」

 

ヒロの呼び声に呼応するかのように。

久々の戦いを喜ぶかのように。

 

プロメテウスガンダムの瞳は、緑を放った。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




ありがとうございました
第三話「再燃の灯火」でした

言い訳のようですが内容自体はかなり前から固まってますし今後の話ももう決まってます、
言い訳じゃないです、ちゃんと考えてるんです
言い訳じゃないです

言い訳です


ところでなんですが
自分で書いているときに思ったのですけどもね

途中無理やり動かそうとしてブルースクリーンがぼんっと出てくるシーン
なんかこれ見覚えあるぞと思ったらあれですね、ぼくらのウォーゲームですね
知ってる知ってるって感じです

それはそうとして

1話2話と比べるとあえてペースを上げてみたのですが
伝わりましたでしょうか
それもその通りええそうです、だらだら書いててもこんなペースじゃ完結しないんですよ僕の場合
サボってばっかですし

ねえほんともう、しっかりしてほしいところですが

ですから気持ちとしては第四話も早々に上げようと思ってます
だって気になるでしょ、この続き


……気にならない?
そっか……


そんじゃ今回はこの辺で……続きは気長に待ってね……


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@nushi_shinymas
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