ばんぎす!暴食もんすたー!   作:Yamateras

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私の名前...ナンデシタッケ?


帰還、孤独に。

さて、かなりゆっくりした、お腹も満たされた。

 

 

「おい、そろそろ帰るぞ?日が暮れちゃうからな。」

 

 

私は果実を齧っている彼女に話しかけた。

 

 

 

筈だった。

 

何処にも彼女の姿がない、音も匂いも残っていない。

 

「...?...おい、何処に隠れてるんだ?。」

 

...

 

返答はない。

 

 

「...わ、私はあの集合場所にいるからな...!」

 

 

 

そう言いながら、来た時に決めていた集合場所に向かった。

 

ここで待っていれば必ずやって来るはずだ...

 

 

 

--数時間経過

 

一向に彼女は現れない。

 

心臓の音が身体中を埋める。

 

 

私が目を離したから...?

 

 

彼女は何処へ消えたのか...?

 

 

彼女は...生きているのか...?

 

 

自分を責めたい気分でいっぱいだった。

 

 

どんなにどんなに残りたくても、あと数分で船は出てしまう。

 

 

そして、ツアーの契約書には書いてあるのだ。

 

 

「如何なる理由があれども、時間内に飛行船に戻ること。」

 

 

置いて行かれれば、十中八九命は助からない。

 

何も無い中、夜明けまでこの島で過ごすことは恐らく不可能だ。

 

昼には見られないほどのモンスターが動き出し、島への侵入者は万全の準備が無ければ彼らの餌になる。

 

そんな中にあの子を置いていくなんて、とても考えたくは無かった。

 

彼女が居なくなってから7時間ほど経過した、昼に来たのでもう既に夜の帳が下りている。

 

あと数分、それしか時間が無い。

 

私は迷わず、孤島の中に走っていった。

 

 

「くっ...どこだ...!」

 

 

大声を上げて探す訳にもいかない、モンスターを呼び寄せるという恐ろしい結果に繋がるからだ。

 

極限の消音をしながら、島中を探し回った。

 

 

しかし、私はあまり発見したくない物を見つけてしまった。

 

 

「これ...は...ぅぐ...」

 

 

そこにあったのは小型モンスターの死骸だった。

 

首はひしゃげ、腹は開かれ、足はもげていた。

 

腐り始めているのだろう、辺りには腐臭が漂っていた。

 

傷口から見て、かなりの力を持ったモンスターにやられたものだろう。

 

この場所はまずい...

 

そう思った刹那...

 

 

私の身体は言う事を聞かなくなった。

 

 

 

「...っ...!?」

 

 

身体に流れる強烈な電流、痺れ。

 

この島に巣食う、海の竜ラギアクルスだ。

 

振り向いたその時には、既に電気の玉が飛ばされ、私はその場に仰向けに倒れている。

 

逃げ出さなくては、そう思ったが、指先すらまともに動かない。

 

 

私はそっと、自分の人生の終わりを悟った。

 

先程走ったせいか、興奮して頭があまり回らない。

 

錯乱した意識の中、こちらに寄るラギアクルスに目をやれば...

 

 

映ったのは、ラギアクルスの姿だけでは無かった。

 

 

口は裂け、背中の筋肉は隆起し、獰猛なオーラが溢れた...

 

 

恐暴竜、イビルジョー。

 

ここの生態系の頂点だろうか。

 

薄れゆく意識の中で...

 

 

ラギアクルスの倒れる音と、あの子の優しい声が、そっと耳に入った気がした。

 

 

 

 




ワタシハ...ダレ!?

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