そして、朝、ウサギは目覚めてみると、体にぴったりとフィットするスーツのようなものを着せられて布団に寝かせれていた。
「 これはなんだろう? なんか脱げないし、張り付いてるのか? 」
そう思いつつも、取り敢えずは朝ごはんだとそのまま、柾木家の皆が集合するリビングにウサギは向かった。
だが、取り敢えずはトイレである。
朝起きての恒例行事は早々に済ませて置かなければと、ウサギはトイレに直行した。
しかしここで、問題が発生した。
「 ションベンができない 」
で、ある。
だってこのスーツ脱ぐに脱げないし、社会の窓的なものがないのである。
一体どうしたら?
焦っているウサギに追い打ちを掛けるようにトイレにノックがされた。
「 おーい誰か入ってるかー 」
魎呼である。
「 はいってますー 」
ウサギは弱りながらも声をかけた。
どうしよう。
魎呼さんに社会の窓どこでしょうか? なんて聞いたらただの変態なのではないのか?
「 あー長くなりそうかー 」
「 い、いやそういうわけではないんですけど 」
そんなしどろもどろな返答に魎呼は耐えられなかったのか信じられない行動に出た。
「 何か問題でもあったのか? 」
魎呼はトイレのドアノブを開けるもなしにウサギのいるトイレ側へと身を透過させて上半身を突っ込んできた。
寝巻き姿の魎呼は可愛いと一瞬思ってしまったが、ウサギはこれにはびっくり、腰を抜かして洋式トイレに腰を打ち付けてしまった。
「 な、何がなに? 」
「 あ、びっくりした? ごめんごめん。で、どうしたんだよ。前も後ろも出さないで出すものでないだろう 」
「 あ、そこはすんなり聞いちゃいます? 」
ウサギはあんまりにも自然に聞いてくる魎呼に負けて、素直に話すことにした。
すると
「 キャハハハ。 」
と大笑いで返してくれた。
「 なんでぃそんなことかよ。私が教えてやるよ~ 」
といって、ウサギは色々とされてしまうのであった。
ウサギは思う。
介護を初めて受ける患者の気持ちが初めてわかったと。
というか、18歳の男に 「 シーってしましょうねー 」 はないと思う。
まあ、さすがに出すときは出て行ってもらうことには成功したのですけども
と、こんなゴタゴタはあったものの。
なんとか、砂沙美とノイケの手料理にありつけたウサギであった。
あーお婿に行けないかもと思ってしまうウサギはきっと悪くないであろう。
「 ねえ、ウサギおにーちゃんどうしたの? なんか魎呼おねーちゃんもなんか怪しく笑ってるし 」
「 いやー食事中に教えるのはちょっとはばかられるネタなんで勘弁して下さい砂沙美ちゃん 」
もそもそと食べながら言うウサギ。
本来ならおいしい食事でガッツリいきたいとこだけど、食欲がうまくわかないウサギであった。
その姿は、小動物が怯えながら食べる姿に似てると思ったのはこの食卓を囲むウサギ以外の全員一致の見解であった。
「 「 ごちそーさまでした 」 」
柾木家の朝食が終わる。
そんな皆揃っての今日のごちそうさまは妙な空気の中で行われたのであった。
「 で、ウサギ殿どうしたんだい? 」
取り敢えずは落ち着いたところで、鷲羽は代表してウサギ問おた。
するとウサギ、年甲斐もなく目に涙をうかべ、鷲羽に抱きついて訴えた。
「 わぁーん鷲羽ちゃん、トイレとかトイレとか大変だったんだよー 」
とのことであった。
それに、訝しむ鷲羽。
そして、思い当たったのか、あーそんなそんなことかと納得して、嫌な笑みを浮べかた。
「 で? 誰に手伝ってもらったんだい? 」
「 ひゃい。りょ、魎呼さんです。 」
「 ぶ、ぶはははははははははっは 」
だから、魎呼はあんなニヤニヤしてたんだね~そう思い我慢できずに吹き出す鷲羽。
「 わ、笑わないでよ。た、大変だったんだから 」
「 そうだぜー鷲羽。ウサギのやつ漏らしそうな顔して涙目で訴えてやがったんだぜ 」
魎呼は鷲羽を避難しつつも鷲羽と大差なく大笑いしだした。
その様子にウサギはすっかりへそを曲げてしまい、隅っこで兎のように丸くなった。
「 あーウサギさん? 大丈夫ですよ。人間出すものは出さないと体に悪いですし、恥ずかしがらなくても 」
「 そうだよーウサギおにーちゃん。ね♪ 阿重霞おねーちゃん 」
「 ごほん、そ、そうですわね。大丈夫ですわよ。ウサギさん 」
「 おしっこは我慢するといけないんですよー 」
と、そんな様子でいるウサギのそばによって、しゃがみ励ますのはノイケと砂沙美。
そして、若干しもねたに照れたのか阿重霞が後に続いた。
美星はおしっこを我慢しないことの大切さを語りだした。
そんな様子がまた、鷲羽や魎呼のツボを刺激して笑いが加速する。
「 あーもう! 鷲羽ちゃん、魎呼 」
と、さすがにまずいと思ったのか、天地が間に入った。
だが、笑いというのはそう簡単に制御できるものではない。
だからウサギは鷲羽と魎呼が落ち着くまで耐えるしかなかった。
「 あはは、ひーごめんごめんツボに入りすぎたよ。ほら、魎呼ちゃんもあやまんな 」
「 ひーすまん、すまん。でも、面白かったぜー 」
「 ひどいですよ魎呼さん 」
「 でも、あたしが教えなかったらヤバかったろ? 」
「 うーそうです。ありがとうございますー。 」
「 魎呼それ、強制的お礼を言わせるっていうんだよ 」
「 なんだよ天地ー私なりに頑張ったんだぜ。体は子供っぽくて貧弱そうなのに、あれは大人なもんをスーツからボロンって出してやるのをさー 」
そんなことをはっきりと言う魎呼の言葉に顔を真赤にして何も言えなくなるウサギ。
それを聞いて、同じように顔を染める女性陣。
「 魎呼さんウサギさんにそんなハレンチなことを堂々となさったのですか! 」
「 なんだよ、阿重霞ー。じゃあ、お前だったらどう手伝ったのさ! 」
「 そ、それはそのう…… 」
「 ほれ、いってみ 」
「 だから 、えっとですわね。 」
「 で? 」
「 だから、ゴニョゴニョですから 」
「 聞こえない、聞こえない。あー聞こえない! 」
魎呼は阿重霞をおちょくりだした。
それに、限界を迎えたのかムキーと、喧嘩が始まろうとしたが、それを止めたのが以外にもこの場面で面白がるはずの鷲羽であった。
「 あー二人共、ストップだよ。まあ、今回は私が悪いってことで矛先をおさめてくれないかい? 」
「 わ、分かりました。 」
「 チェッいいところだったのに 」
「 魎呼ちゃん 」
鷲羽から魎呼に向けて殺気のようなものが発せられた。
魎呼は慌てて飛び跳ねてネコのように毛を逆立てた。
「 もうまったく、魎呼ちゃん私のかわりご苦労さん。本当はウサギ殿が目覚めてから、トイレの事とかも含めて色々とレクチャーするつもりだったんだよ。途中まではウサギ殿が寝ている部屋に私も一緒に寝ていたぐらいなんだから。まあ、私もウサギ殿と一緒で、朝は出すもの出さないといけないしその間に起こってしまった不幸な事故だと思って今回は許してくれないかい? ウサギ殿 」
「 許すも許さないも、大丈夫だよ鷲羽ちゃん。かなり恥ずかしかったけど、魎呼さんには嫌な役をやらせちゃったし、本当は文句なんていう資格ないんだよ。 」
ウサギは自分も悪かったと反省して改めて魎呼に向き直りお礼を言った。
「 有難う魎呼さん 」
「 いーってことよ 」
「 それと、阿重霞さん僕のために怒ってくれたんですよね。ありがとうございます。 」
「 いえ、ウサギさんが色々とご納得されたのでしたら私としても問題ありませんわ 」
「 んーうまくおさまったね。よかったよかった。でだ、ウサギ殿、いろいろ説明するからよくおきき 」
そう言って、鷲羽は今ウサギに着せている体にフィットしまくりなスーツに付いて説明し始めた。
つまるところ、今現在ウサギは生体強化したの影響で、まだ体をうまく動かせなくなっている状態だということ、それをどうにかするのが今着せられているボディースーツであり、体の対応の仕方によって、体にかけている負荷を軽減してボディースーツ無しで生活できるように導いてくれる便利アイテムであるとのことであった。
「 でもこのスーツ、トイレの時の対応なんかはわかったけれどお風呂とかどうするんだい鷲羽ちゃん 」
「 心配はいらないよ。GPアカデミーの宿舎には服を着たまま体を洗える機械があるから、当分はそれで済ませられるはずだよ」
「 服を着たままか……。お風呂は入れないの? 」
「 どうしても入りたい? 」
「 いや、服を着たままってのが想像つかなくて、なんというか、暖かいお湯にゆっくり浸かるのがすきなんだよね 」
「 そういうと思ったよ。ウサギ殿、このスーツはコンパクトに腕輪に変換できるんだよ♪ ここをこう押して、変換♪ っていうと 」
次の瞬間、ウサギに着せられたスーツは分解して腕輪になった。
なったのだが、ウサギはマッパになっていた。