「エネルギージェネレーター出力安定」
「エンジン加圧順調です。内圧バランス異常なし」
「超空間ジャンププログラムロード」
オペレーターたちは次々に艦情報を復唱しだした。
この雰囲気に興奮する西南。
ウサギも西南の隣の座席でベルトを固定しジャンプを待った。
そして、10カウントが始まった。
「3、2、1、ジャンプします。」
「…ジャンプ終了、超空間航行にいこうします」
艦のスクリーンにはキラキラとしたものが猛スピードで過ぎていく幻想的な映像が現れた。
「綺麗でしょう、超空間航行時に発生する摩擦による発光現象を、今スクリーンに映し出しているのですよ」
そんな艦長の言葉に納得しスクリーンの映像に感動しているウサギをよそに、西南は葛藤のさだなかに身が置かれていた。
一体何が気に入らないのか西南は「え? こんなもんなの」 とつぶやいている。
「どうしたんだい西南君」
ウサギはらちがあかないと西南にといかけた。
「だって、ワープなんですよ。こう、ものすごい衝撃があるとか、見えちゃいけないものが見えちゃうとかそんな展開を予想していたのに」
「はは、気持ちはわからなくもないけど常識的に考えていつもそんな状態を被らなきゃいけない移動法だったら使えない技術でしか無いと思わないかい?」
「そうですよ西南君、安全を目指している私達からしてみればそんなことが起きたら異常事態ですよ」
そんなウサギと艦長の言葉にしぶしぶ引き下がる西南。どうやら地球にあるSF作品に変に刺激されすぎたようだった。
「さて、第一段階のジャンプは終わりました。もう楽にしてくださって結構ですよ。」
「そうですか、西南君電話できるんじゃないかな」
「は!そうでしたウサギさん、俺電話してきます。」
そう言った時だった。
クルーの一人から悲鳴のような声が漏れた。
「緊急事態です。対ショック防御姿勢をとってください」
その言葉から間髪入れず、すさじい雷にもにた轟音と衝撃がウサギたちを襲った。
艦内にエマージェンシー音が鳴り響く。
衝撃に耐えられなかったウサギ、西南はわけも分からずブリッジの至る所を転がされた。
「一体何ごとですか!」
艦長の声がブリッジに響き渡る。
「同空間上にエネルギーの反応を感知しました!」
「な! ニアミスですか!? 」
艦長の顔が蒼白になった。
「エネルギーと質量比から大型の戦闘艦と思われます。」
「超空間航行維持できません! 通常空間に離脱します」
その後GP艦は船体に無数の焼けただれた跡をつけて通常宇宙空間に実体化した。
そんな慌ただしいなか、ウサギは西南の体を支えるように立ち上がらせると座席に座らせた。
「西南君何が起こっているかわからないけど、取り敢えず僕らはシートベルトをしっかりしめておとなしくしていよう」
「そうですね。何もできないのは悔しいですけど」
そういって、西南はシートベルトを固定し始めた。
ウサギもそれに習い取り付ける。
それにしても、GPアカデミーに入学しにいくのがこんなに大変なこととは思わなかったとウサギは口を漏らした。
そんな心を不安定にさせるウサギとそして周りをキョロキョロと見渡してせわしない西南を安心させようと思ったのか、美兎跳は二人に近づき二人の頭をなでた。
「心配しなくても大丈夫よ。よくあることなんだから」
そういう美兎跳は堂々としたものであったが、艦長は違ったようでわめき声を上げた。
「美兎跳様こんなところでニアミスなんて何千億分の一もありませんよ!」
「ふふ、じゃあ大当たりね♪ 」
「ああ…そんな大当たり嬉しくありませんよ」
艦長は美兎跳の返事に気力を奪われるもクルーに指示を出した。
「船体の被害状況と現在のいちを教えて下さい」
「セイル部にわずかに損傷がありますが数時間で修理が可能です」
「現在位置は座標FNの78750.1290です」
その知らせに艦長は苦虫を噛み潰したかのような渋面を作った。
「よりによって海賊多発地区に紛れ込みましたか、船体の被害が少なかったのがせめてもの救いですね。即急に復旧してこの地区を離脱しましょう。修理班に急がせてください」
そんな指示を飛ばしている艦長と指示に従うクルーたちを見つめてぼーっとする二人が居た。
言わずもがなウサギと西南である。
「なあ西南君宇宙に海賊っているんだね」
「ええ、なんかそれこそSFってな感じですよね」
「それにしても宇宙に出る海賊って一体何を生業にしてるんだろうね? 美兎跳さん教えてもらえますか?」
「えっとねぇ簡単に言うとね、船艦をおそって積み荷をとっちゃうっていうお仕事をしている人達よ」
「はあ、とっちゃう人達なんですねぇー」
「そうなのよぉ」
なんてのんきに二人は話しだした。
それをよそに西南はこれは自分のせいなのでは? と考え始めていた。
そんな三人に艦長は頭を下た。
「こんなことになって申し訳ない。こちらの不手際でジャンプのさいの座標入力ミスがあったようだ、ウサギ君、西南君ももちろんですが、美兎跳様も乗っていらっしゃる中でこのようなことになってしまった。いわばあなた方は大事な荷物だというのに…GPのメンツにかけて無事アカデミーに送り届けますから」
そう艦長はいって笑った。
そして事後の対応に追われるブリッジ。
そんな中、先ほど無重力状態を経験したときに、西南が気づかず触れたパネルが赤く点滅していることに誰も気づくものはいなかった。