『ガガ…ガ…あな、…ガガ…は…ガ…大事な荷物です。GPのメンツにかけ…ガガ…届けますから』
座標FN 78750.1290付近を航行していた一隻の海賊船は通信傍受システムにおマヌケな奴らが引っかかったと喜んだ。
それはまれに見る、ありえないレベルの確率の幸運であったからだ。
しかも今日は何ひとつの戦果もなく、もう諦めてしまおうという瞬間であった。
「GPの大事な荷物だって! 」
海賊艦の艦長である年配の男マーロンが叫んだ。
「発信源近いです。識別信号GP艦と確認」
「護衛はあるのか?」
「ありません。輸送艦一隻だけです。」
「囮じゃないのか?」
「セイフティーゾーン内に反応がありませんからいけるのでは?」
「たとえ相手が囮でもこちらはいつでも逃げれる状態ってわけか」
マーロンは笑った。
間抜けなGP輸送艦は大事な荷物を積んで海賊闊歩する宙域に入り込んだのだらそうなるのは当然だった。
「久しぶりに巡ってきたチャンスをものにしないなんてありえねぇ…。全速前進、目標オマヌケGP艦! お前ら何が何でもものにするぞ!」
同じ頃、別の海賊艦の艦長もGP艦を補足していた。
同じ通信を傍受していたのだ。
「いただきだ! 間抜けなGP輸送艦を補足しろ! 」
更に別の艦でも
「おえ、逃すんじゃねーぞ!」
「大事な荷物ってなにかかしらん♪ 」
「いただきだぜー」
さすが海賊多発区域という感じであちこちから声が上がった。
その数ざっと十数隻。
四方八方あらゆる方向からウサギたちが乗るGP艦へと、飢えたハイエナの群れのように海賊たちは一斉に動き始めた。
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そんなことになっているとは知らないGP艦のクルーと艦長たちはその場の宙域にとどまり、艦の復旧を急いでいた。
「ウサギ君に西南君申し訳ないですが時間が少しかかるのでさっき美兎跳様に案内された休憩室まで戻って休憩していてくれませんか?」
艦長は慌ただしくなったブリッジに何も手伝わせれれない子供二人を休憩室に一度隔離することにした。
もはやいまは素人にかまってはいいられない状況であったからだ。
それを察した二人は素直に休憩室に引っ込むことにした。
そして西南は休憩室にもどるやいなやすぐに電話を地球にかけ始めた。
ウサギはそれを見ながら微笑ましそうにし、またお茶でも飲もうと準備をし始めた。
それにしても、西南が電話口でしきりにもちだす霧恋という人物は一体どんな人なのだろう思うウサギであった。
そして、西南の電話が地球につながった。
「はい正木です。」
海が電話口に素早く出た。
「海! 霧恋さん帰ったか! 」
「あー西南か。姉貴ならお前の所行くって血相変えて飛び出していったぜ」
「エェ! 家に!?」
「ああ、今日お前が学校を休んだって言ったらずいぶん慌てたみたいで、お前のうちに電話かけておばさんと何か話してさ…20分ぐらい前のことだからそろそろお前の家つくんじゃね? 」
その言葉を聞くやいなや西南はガチャンと勢い良く電話を切ってその勢いのまま自宅の電話番号をジーコジーコと入力しだした。
そして、西南の妹である吉子が電話口に出た。
「はーい、毎度ありがとうございます山田商店です。」
「吉子! 霧恋さんは」
「なーにお兄ちゃん? いきなりかけてきて霧恋さんってもーあいかわらずねー」
「いいから霧恋さんったら霧恋さんだよ吉子! 来てるだろそっちに」
「よくわかったね。海君にでも聞いたの? さっき来てお母さんと話してたみたいだけど」
「それだったら早く霧恋さん呼んでおくれよ!」
「ちょっとまって! 今お客さんいっぱい来て大変なんだから…あ、それ売れ残りですから30円でいいですよ」
そういう吉子の言葉でセイナは気づくいつもよりというかありえないほどに混雑しているいままでこんなことなかったのではないだろうか? こんな光景自分は見たことがないと西南は思った。
西南の脳裏に母である今日子の言っていた言葉が思い出された。「お前がいないと店の売上が良い」 たしかそんなことであったはずだった。
こんなにも違うのかと西南は思い知らされた。
だがしかしこれでめげていたらせっかくの霧恋さんとのお話を逃してしまう。
西南は必死だった。
「なあ、頼むよ吉子お願いだからお母さんを呼んで、霧恋さんを電話に…」
「もう! お母さん、お兄ちゃんが呼んでるー」
吉子は母を呼んだ。
そうじゃないと思う西南。
母さんを呼んでいるのではなく母さんに霧恋を出すように伝えてほしいと言っているんだと叫ぶ西南、だがそれも虚しく電話に西南の母がでた。
「今すんごい忙しいんだけどねー」
「わかるけど、わかるけど霧恋さんがそっちにいったって海から聞いて、吉子も母さんと霧恋さん話してるって言ってたんだ早く霧恋さん呼んでおくれよ!」
「ああ、そういうことね。霧恋さんだったら帰ったよ」
その母の言葉に西南は打ちひしがれてうなだれ、落ち込んだ。
ウサギはその西南を見つめることしかできず、せんべいを口でわった。
ここは電話が終わるまで我関せずを貫こうと決めたウサギであった。
それにしても西南君はタイミングが悪いというか運がないというか『たらい回しの刑』とはこのことだろうウサギは口には出さず思った。
そんな西南に光明が照らしだされた。
「霧恋さんだ! 」
「え! だから霧恋さんは帰ったって言ったろう」
「違うよ、霧恋さんいるよ、母さんの後ろ、後ろだよ! 」
「うしろ? あれまあよくわかったね。まったく霧恋さんのこととなると眼の色変えるというかなんというか、変なセンサーでもくっついてるのかね? 」
「いいから、母さん霧恋さんにかわっておくれよ」
「わかったよ。おーい息子が霧恋さんと話がしたいって出てもらえるかい」
そして、西南念願の霧恋が電話に出た。
西南の顔が見るからにだらしなく鼻の下が伸びる。
「もしもし西南ちゃん」
「き…りこさん…」
電話はそこまでで急に切れた。
突如通信エラーが発生したのだ。
『ただいま、第一級非常事態が発令されました。よってこの回線の通信を遮断しました。なお非常事態解除まで通信ができません』
そんな無情なアナウンスが電話から伝えられた。
「ああ霧恋さんとの電話が、電話が…」
泣き悲しむ西南。
そんな西南にウサギは励ますように肩に手を置いた。
せんべいを口でくわえげっ歯類のようにかじりながら。
そんなウサギに毒気をぬかれた西南は落ち着きを取り戻した。
「ウサギさんそのおせんべい僕もください」
そう言ってウサギからせんべいを受け取ろうとしたとき、艦が轟音とともに激しく揺れた。
窓の外を見ると光の束がいくども現れては消える。
せんべいから口を離したウサギはその光の束と轟音に目と耳を傾けた。
「戦争でもしてるのか? 」
ウサギはこの状況に薄ら寒いものを感じていった。
「第一級非常事態ってアナウンスがありましたよね」
「ああ、あったね西南君」
「どうしましょうか? 」
「取り敢えずブリッジに行ってみようか? 」
自分は歳上なのだからとウサギは西南を不安にならせないようできるだけ笑顔で提案した。
そして、辿り着いたブリッジはひどい修羅場に陥っていた。