「クククッハーははは!」
海賊艦艦長マーロンはごきげんであった。
「いい仕事するぜ予想屋」
とマーロンはジャンプ航路予想の専門家に声をかけた。
「GPの最新ランダムジャンププログラムはすでに解析が終わっていましてね、マーロンさんいくら逃げようとあっしにかかれば追いつくのはたやすいことですよ」
「そーかい、じゃあまた跳ぶようだから任せるわ」
マーロンは金貨を弾き予想屋に渡すと、次のジャンプ先の予想を促した。
そしてまたしても、GP艦は海賊を振り切れないでいた。
ランダムジャンプを連続使用したにもかかわらずこの結果とは! と艦長は嘆いた。
その原因を美兎跳は予測し答えた。
「起動予測されているんでしょうね。あの人達連携していくつかのパターンでジャンプして穴を潰してるのよ」
「そんな! 確率的に考えて一回目それで予測できても、二回とも的中させるなんてありえませんよ」
「じゃあきっとジャンププログラムも解析されているのねーきっと」
「一週間前に配布されたばかりのプログラムなんですよ! なんでこんなことになるんだ」
艦長の泣きそうな声がブリッチに響き渡った。
そういっても何もしない訳にはいかないと艦長は次の手を実行しようと美兎跳に提案した。
「こうなったら直接ランダムジャンプの座標をデタラメに手動入力しましょう」
「そーねぇ、でもランダムジャンプの数値入力はそれ専門に訓練を受けた人が行うものだからねぇ」
「ええ、我々皆その訓練を受けていません。ですが海賊たちに予測されてしまうだろうGPグセは持っています。なのでいっそのことなんの訓練も受けていない地球のお二人に任せてみませんか?」
「そうねぇ、それしかなさそうね」
そんな話を突然ふられた素人二人は困惑した。
「僕宇宙船の動かし方なんて知りませんよ」
「俺、俺もなんにも知らないんです。だから役立たずで…」
そういう西南に艦長は西南の肩を力強くつかみ役立たずではないと励ました。
そしてこの状況ではこれ以上ない適役であると口説き落としたのである。
そして、ウサギにランダムジャンプの数値入力は入力するだけなら簡単なものであると答えた。
「本当に僕と西南君でいいんですね? 」
その言葉に艦長並びにクルーたちは頷いた。
「西南君やってみようか? 何事もチャレンジしてみるのもいいかもしれない」
「はい!」
そうして二人はランダムジャンプ入力画面の前に立った。
「どうしようか交互に入力していこうか?」
「そうですね。」
「じゃあまずは西南くんがさきで」
「いいんですか?」
「やってみたそうにしていたろ? この入力一回で逃げきれるわけ無いのは美兎跳さんとか、艦長の言う言葉から予想できるしね。」
そういってウサギは西南に先を譲った。
そして西南は素早く座標ボタンをデタラメに、オペレターの簡単な操作方法説明を聞いて入力した。
そして決定ボタンを押した瞬間、再び艦はランダムジャンプを開始した。
そしてなぜか、何故か海賊達の群れのどまんなかにジャンプしていた。
「ヒィィィー」
クルーの悲鳴が発せられた。
しかもさっきから追ってきている海賊たちも続々と現れ始めた。
「早くもう一回ランダムジャンプです。GPグセがないお二人でも所詮は素人。プロの予想屋にすぐさま解析された結果がこれですが、何回もやっていれば効果はあります。いそいで」
「ウサギさん! 」
「了解西南君」
そしてウサギによるランダムジャンプが始まった。
その結果、何故か目の前に大きな大きな星ぐらいあるのではないかと思うだるまが出現した。
「 「ぎゃーーーーーーーーーーー」 」
「おれ資料でしか見たこと無いぜ」
「ああ。あれ、ダ・ルマーギルドの本拠地じゃ」
「しぬ、死んでしまう」
「あらあら」
艦長とクルーたちのムンク状態になった叫びが艦内にこだました。
絶対単機では来てはいけない大海賊の本拠地ダイダルマーにオンボロになった輸送船がノコノコ来てしまったらしい。
美兎跳はあいも変わらず笑っているが、驚きに目を丸くしていた。
「大きなダルマさんですねー。ね♪ ウサギちゃん」
「そうですね~。なんかだるまから大量に船が来ているような感じがするんですが、あ、またレーダーに反応があるみたいですよ」
「え!?」
艦長は嫌な汗ダラダラになりながら計器をのぞきこんだ
「さっきから追い回してくる海賊たちの反応ですね」
「そのようです艦長。しかも先ほど西南くんが突っ込んだ海賊たちの群れも続々とこちらの方にジャンプアウトしてきます。」
「も言う一度ランダムジャンプです!」
その言葉をうけて今度は西南が数値を入力し始めた。
そして、三回目の正直とはならなかった。
海賊海賊海賊たちの群れである。
「敵艦多すぎて識別の把握すらできません」
「全てこちらにに向かってきてますぅ」
クルーたちは泣きながら報告した。
「ずいぶん賑やかになったわねー」
「なんでこんなことに。しかもダ・ルマーギルド本部なんていままでGPが探し続けて、ずっと見つけられない存在であったはずなのに」
「おれって運が悪いんだよな」
ポツリと西南はつぶやいた。
その言葉になにか思い当たったのか艦長は引きつった情けない顔を見せた。
「ではもしかして西南君のお母様が『寝ているうちに連れて行ったほうが被害が少ない』とおっしゃっていたのはつまり…」
「たぶん…こういうことになるからじゃないかと」
そういって西南は申し訳無さそうに頭を下げた。
ブリッチは謝られてもどうしようもないよ! っていう空気が漂ったが、あるクルーの一人がボソッと言った。
「なあ、西南っていう子が確立変動が高い子だというのはわかったけど、ウサギの方はどうなんだ? 」
「ダイダルマーを引き当てるぐらいだからなー」
そんな言葉に一斉にウサギの方へ皆の視線が向いた。
「ウサギさんも俺とおんなじなんですね。いやそれ以上の不幸を背負っているんですね」
「せ、西南君そんな僕は不幸なんていままでこんな大当たり引いたこともことも? あれ」
「やっぱり心当たりあるんですか? 」
そんな西南の言葉にウサギは思う。
異世界に突然来てしまったのはたしかに不幸だ。
そんな確率、引こうとしても引けない。
だが、異世界にきたから普通に歩けるようになった。
これは幸運か?
よくわからないとブツブツ呟くウサギをみて、西南はすごく苦労したんだろーなと、勝手に想像しだして目に涙を浮かべた。
その感情がみんなに感染して、周りが急に暖かくなって励ましの言葉を次々周りがウサギにかけ始めた。
「み、皆さんどうしたんですか!? 僕ってそんなに不幸?」
そんなウサギの態度に温かい目線を送る皆
「一体何なんだ!」
ウサギは叫んだ。
「まあまあ、ウサギ君。確率変動なんて宇宙では珍しくないですから、次はウサギ君の番ですよねランダムジャンプの設定お願いします。」
「機関がそろそろ限界なのでこれがラストジャンプです」
オペレーターの一人はさらりと最後のチャンスだぞとほのめかした。
それに周りのクルーは生唾を飲み込んだ。
「あの、そこまで色々言われたら怖くて設定できないんですが」
「何言っているんでか、ダイダルマーを引き当てたんです、しかもこの海賊祭り、これ以上変なことはないですよ。もう思い切ってラストジャンプいっちゃってください」
艦長はなんだか悟りを開いたかのように清々しい笑顔でウサギを促した。
だがウサギ、体が震えて力が出ない。
無意識におそれを感じているようだった。
そんなウサギを見て美兎跳は背後からウサギを包み込むように抱きしめた。
柔らかい女性の感覚がウサギの心を解きほぐす。
「美兎跳さん…」
「ふふ怖くないわ、一緒に入力しましょ」
そういって美兎跳はウサギの手に自分の手を添えた。
温かい手に力をもらい、思い切ってウサギはランダムジャンプの設定を行い決定ボタンを押した。
その時ウサギの背中がわずかに発熱した。
それに気づく美兎跳。
ウサギはそれに何も気づいていないのか集中して計器をじっと見つめつづけていた。
そんなウサギの背は今だ熱を発し続けて温かい。
美兎跳にとってそれは居心地が良いものであった。
だからウサギを放す理由もないと、しばらく抱きしめ続けた美兎跳だった。
そしてラストランダムジャンプが始まった。