「西南くんあれ、覆面っていうんだっけ?」
「あの顔を隠すほっかむり、前が見えるんでしょうか?」
ウサギと西南は突如水穂につれられてやってきた、4人の女性の服装を見てヒソヒソと呟きあった。
なんと、4人の女性は全員顔を覆い隠すようなフード? のようなほっかむりをしていて、怪しさ抜群であったのだ。
そんな二人のヒソヒソ声は水穂ならびに4人の女性にも聞こえたようで、ウサギと西南は気付かないが口元をひくひくとさせていた。
そこへとどめをさしたひとがいた。
美兎跳である。
「お目々がきっといいんですよー。ウサギちゃんに西南ちゃん♪ あと、いないないばーってできるでしょ」
どうやら二人の内緒話は美兎跳にも聞こえていたようなのである。
そして、そんな美兎跳の言葉に耐えられなくなったのか、いや何かのツボに入ったのか…4人は思わずブッと息を吹き出し、必死に口元を抑えて笑い出した。
そんな女官達の様子を見て、水穂はため息をつくと、パン! と手の平を打ちたたき注目を集めた。
「えーと、四人ともはしゃぐのはおしまいです。先に進めないったら」
「す、すみません水穂様。」
珀蓮は必死に取り繕ってこたえた。
「まあ、今回のはしょうがないとします。ウサギ君に西南君、この服は儀礼的な樹雷の民族衣装のようなものと思ってほしいな。あとこの服ちゃんと前が見れるように設計されているのよ」
「そ、そうなんですか、なんかすみません」
ウサギは小さい声だったんだけどなーと思いつつ、気まずくなった空間をどうにかするべく謝罪した。
西南も感じることがあったのか、同様に頭を下げた。
美兎跳はというと4人の女性に近づいていって、ほっかむりをじっと見つめだした。
見つめられている女性たちはなにやら落ち着かない様子。
そんな4人そっっちのけで、美兎跳は真剣に彼女たちを見くらべ思案しだした。
そして、なにやら思いついたのか、拳を作り、ポンと手のひらを叩いた。
「ウサギちゃんに西南ちゃん、きっとこの服、フードのところが透けるのよ」
何を真剣に悩んでいたのかと思えば、ウサギたちが疑問に思っていたことに答えてあげたかったらしい。
そのため、ウサギと西南の謝罪ムードな雰囲気にきづもせずに、美兎跳はどこまでもマイペースにこのホッカムリの謎解きを行っていたのである。
とても、健気といえなくもない。
そんな美兎跳はあってる? あってる? と答えの回答をぴょんぴょん跳ねながら水穂にせがんだ
「あーもう、美兎跳様。合っていますから話をしてもいいでしょうか?」
「えへへ、合ってるってー。ウサギちゃん、西南ちゃん。」
「あ、ありがとうございます。美兎跳さん」
ウサギと西南は苦い笑顔を顔に貼り付けながらも美兎跳にお礼を言った。
「ふふ、じゃあ水穂ちゃん、お話お願いね。」
美兎跳はまんぞくしたのか水穂にさきをうながした。
「はあ、コホン。えーこの4人の女官が美兎跳様ならびにウサギ君、西南君の接待をさせていただきます」
「 「接待?」 」
ウサギと西南は首を傾げた。
自分たちのような平凡な一般市民を接待とは一体どういうことだろうと、仰々しさを感じたためだった。
「ふふ、二人共大丈夫よ。瀬戸様が迎えてくださるってことだもの」
不安そうにしていると美兎跳がフォローに入った。
「でも、美兎跳さん俺、大事な話がというか、地球に連絡したいのですが」
西南はというと、よからぬ事が起こる気配を感じたのか、西南は瀬戸という人物に合うことを渋り、必死になにか理由がないかと考えたすえの行動をとったのだった。
だが、現実は無情だった。
「西南君それは残念ながらできないですよ。現在この宙域は海賊達の通信封鎖を行っている影響で超長距離通信ができないのですよ。」
「ほ、本当ですか! 艦長さん」
艦長の陰謀ではないかと一瞬思ってしまうが、そんな無駄なことこの状況でするわけがないと思い、西南はうなだれた。
そんな、状態の西南をみて水穂は瀬戸様に会いたくないのだろうけど、諦めてねー。と思いつつ心のなかで謝罪した。
瀬戸が会うと言っている以上水穂には何もできないのだ。
「西南君、べつにとって食われるわけでもないだろうし、それに悪いことはしてないんだ。ついていくだけ付いて行ってみようよ」
「そう、ですよね。僕達悪いことしてないですよね?」
「そうさ! ただ、数値を僕と西南君とで互いに入力しあったら、海賊たちが勝手についてきただけだよ」
といって、ウサギはカラカラと笑った。
この状況にウサギはやけになっていた。
こうなったら自分たちではどうしようもないのだ、ここは悪いことはしていない、それだけが胸を張れることだとウサギは自分に言い聞かせていた。
考えてみれば、裏の権力者相手に対抗できるカードがそれしか無いと思ったからである。
それは、西南も同じで、二人して、悪いことしてない、悪いことしてないと、念仏のように唱えていた。
そんな二人の行動に、水穂はどれだけ瀬戸のことを耳打ちされたのか想像して、哀れに思うのだった。
実際、今この場にはいないが、ブリッジのクルーからさんざんウサギと西南は瀬戸の噂を聞かされ脅されていた。
たとえば、、神木家の情報部と水鏡の情報収集能力と分析力は樹雷皇のもつものをうわまわり、瀬戸にとってなにも知らない他人でも、調べようと思えば相手の情報丸裸にし放題だとか。
樹雷王の阿主沙ですら、瀬戸にとってはいつでも丸裸し放題で、情報筒抜けだから、何もできなくていつも怯えているとか、銀河連盟のお偉方も弱みを握られまくって、尻の毛はもうないとか、そんなようなことである。
まあ、それはともかく、この二人を瀬戸さまのところに美兎跳とともに連れて行かせて大丈夫か艦長は不安になった。
だが口を出せば、藪蛇である、素直に送り出すことにした。
ウサギの言うように、艦長は彼らは何も悪いことはしていないのだから罪には問われないだろうと考えて、まあ、二人は数値を入力しただけであり、頼んだのは自分たちなのだから。
艦長は後に提出しなければならない状況レポートの内容に、その旨をちゃんと記そうと思ったのであった。
そして、準備ができたメンバーたちは次々と艦長に見送られ、連絡艇へ乗り込んでいった。
だが、水穂だけは乗り込まず、艦長の隣に立っていた。
「あれ? 水穂さんは乗らないのですか?」
水穂にウサギは問いかけた。
「ええ、まだ後処理が残っているからね。この先のことはあなた達につけた接待役に全て任せてあるから安心してね。」
「わかりました」
「それと4人とも、自己紹介、慌ただしくて私から詳しく紹介しなかったけど、やっといてね」
「心得ております。水穂様」
「じゃあ、お願い」
そういって、水穂はGP艦艦長と去っていった。
さっそく連絡艇に乗り込んだメンバー達は自己紹介を水穂の勧めどおり始めることにした。
円滑なコミュニケーションとは人の名前を知ることから始まるのである。
接待役4人は次々とフードを外した。
するとどうだろう、息を呑む美女たちが現れた。
思わず生唾を飲んでしまう男二人。
そんな男の子達を見て美兎跳はあらあらと微笑むのだった。
「私は珀蓮はじめまして」
一番最初に頭を下げ自身を紹介したのは、薄青色したストレートヘアのいかにも真面目そうな学級院長っぽい女性であった。
「私は火煉よろしくおねがいします」
彼女は小柄で、ボーイッシュ小麦色の肌と赤毛が特徴的な活発そうな女性であった。
「翠簾と申します。不束者ですがよろしくお願いいたします。」
まるで、嫁入りに来たかのような挨拶をした彼女は眼鏡っこであり、緑の髪をした女性だった。
その女性が身につけるメガネは銀縁であり、どこか真面目そうな理知的なイメージが有るのだが、いかんせんどこか雰囲気が天然というか、ベクトル的に美兎跳ににているそんな印象を受けるぼーっとした女性であった。
そして、最後の一人の自己紹介が始まると思ったのだが、どこにもいなかった。
「あれ?ウサギさんもうひとりいましたよね?」
「ああ、銀髪のきれいな女性がいたね。」
そうウサギがいった時だった。
「綺麗だなんて照れてしまいますわ」
そう言うと耳元に息を吹きかけ、ウサギを背後から抱きしめる女性がいた。
背中越しにわかるやわらかすぎる圧迫感が、ウサギを背をピーンとこわばらせた。
「ふふ、玉蓮ともうします。」
玉蓮はそういって、すっとウサギから離れた。
その彼女の顔はイタズラが成功した者の顔であり、退廃的で、けだるそうな目が特徴的で、美しい絹糸のような銀髪を生やした女性であった。
玉蓮の色っぽさというか、艶っぽい雰囲気に顔が赤くなるウサギであった。
そんな、嬉し恥ずかしな自己紹介を終え、ウサギ達いっこうは連絡艇の案内を受けていた。
「この船、木でできているんですか?」
ウサギはどう見ても丸太をそのまま船にしたとしか思えない連絡艇をみていった。
「ええ、樹雷はキロ単位の巨大樹が茂る星でして様々なものに木を使っているんです。ほら、今見えている、瀬戸様の船の水鏡なんかはいい例ですね。あの船の外装となる部分は、装飾がある所以外ほぼ継ぎ目なしの一本の木から作られているんですよ」
「まじですか! スッゲー」
珀蓮はウサギと西南のそばに控え色々と説明をしてくれた。
どうやら珀蓮は、4人のリーダー的存在らしい。
残りの3人はというと、なぜか、美兎跳を囲むように一緒にいた。
まるで、見張っているようだとウサギは思うのであった。
そして、それは、後に正解だと知ることになる。
西南はというと、連絡艇の外から見える水鏡のある部分をずっと興味深そうに注視ししていた。
それに気づいた、さすがの接待役の珀蓮は西南にといかけた。
「水鏡の中心に浮かんでいるものが気になりますか?」
「あ、はい珀蓮さんあれは宝石かなんかだとも思ったんですけど、時々震えて、揺れたりするんです。だから水かな? ッて思ったんですけど」
「あたりです西南様。あそこで泳げたりするんですよ。なかなか不思議な気分になれるんです。泳いでみますか?」
西南はその様子を想像して思った。
きっと宇宙遊泳が楽しめていいだろうと。
だが、それと同時に自分の不運を考えると勝手がわからないぶん何かが起きることは確実で、何かの危険を察知するのは不可能だろうと考えた西南はその誘いをなくなく断った。
「さあ、間もなく水鏡に到着しますよ。その後ゲストハウスに案内するので、ご休憩と、西南様がしたいとおっしゃっていた地球へのご連絡はその時に。その後に瀬戸様が挨拶される予定です。」
「了解です」
ウサギはそのことに了承し、西南は地球に連絡できることを飛び上がって喜んだ。
そして、水鏡に搭乗したウサギ、西南は突然目の前に現れた自然環境に驚きを示し、開いた口が元に戻らないほど、呆然としてしまった。
なんと、この場は連絡艇から見た外見にはふさわしくないほど広大で、ただっぴろい居住区と言ってもいいほどの規模があるであろう場所であったからだった。
ちょっとその辺の森や林にピクニックにきたといっても誰も否定しないだろう。
川が流れ、緑豊かに木が生い茂り、動物たちが放し飼いにされているそのさまは、ここが本当に宇宙船のなかなのか自信を失わせるむちゃくちゃな環境であった。
そんな呆然とするウサギと西南に珀蓮は丁寧に説明してくれた。
「ここは水鏡の力で、亜空間に固定された直径10キロほどの球形空間なんです。ですから厳密に言えばここは水鏡の中ではないのです。そうですね、ちっちゃな地球にでもいると思っていただければいいと思います」
その説明にウサギと西南はついていけなかった。
小さな生命が維持できる星が亜空間に固定されていると言われても、自分たちはどう対応すればいいのかわからない。
なので、早々に考えることを放棄した二人は、居心地がいいところにいながら宇宙に出れると簡単に理解することにし、二人は、この気持のいい自然を見わたした。
「お気に召しましたか?」
「ええ、とっても」
ウサギは両手を上に上げ、伸びをしつつ答えた。
「気持ちいいですよね。ウサギさん」
「そうだね。西南君、美兎跳さんもそう思いませんか?」
そういって、美兎跳がいるだろう方向に目線を移動させたが、美兎跳はどこにもいなかった。
「美兎跳さ~んどこにいるんですかー」
そうウサギが大声を上げた時、接待役が慌て、珀蓮が叫んだ。
「うそでしょ、さっきまで一緒にいたのに。玉蓮! ウサギ様達の案内おねがい。火煉、翠簾」
そういって珀蓮は血相を変え二人を連れて、美兎跳を探しに飛び出していった。
後を任された玉蓮は、ウサギと西南の間に立つと、二人の手を握りこっちですと歩き出した。
西南は不安そうにして「俺たちも探したほうがいいんじゃ」 と玉蓮に手をつながれ、顔を真赤にしながら言ったが、玉蓮はなんの心配もいらないと二人をゲストハウスに案内するのだった。
西南はこのときおもった、自分もかなり不幸というめんで特殊だが、美兎跳もなにかしらの特殊性があるのだと妙なところで感心したのである。
まあ、それはウサギにしてもそうかもしれないと西南はちらっと同じように玉蓮に手をつながれゲストルームへつれていかれるウサギの姿を見て思った。
若干の安心とともに。自分だけではないのかもしれないとそう思って。
「こちらがゲストルームになります。ごゆっくりおくつろぎください」
玉蓮に連れて来られた場所はログハウスのようで、外壁はツタや苔で覆われ、家の中心には巨木が大黒柱に使われ、全体を曲線で構成している。
その姿はまんじゅうのような形の家だった。
そして、西南のお目当ての電話は…またしても黒電話であった。
流行っているのか? とウサギは思わずにはいられない。
「では、瀬戸様が来るまでご自由になさっていてください。わたしはお茶など用意いたしますので、地球への連絡などもしてくださって構いません。では、失礼します。」
そういって、玉蓮はキッチンに向かっていった。
ウサギは座席に座り、お茶を待つことにし、西南は電話に飛びつくようにしてダイヤルを回し始めた。
だが、何度想い人の霧恋に連絡を入れてもいっこうにつながらなかった。
ツーツーという音だけがするのである。
それは話し中を意味する音であり、いくら西南がダイヤルをかけても話し中であった。
一方その頃、瀬戸はというと嫌な笑みをニヤニヤと浮かべながら通信モニターに映る相手を見据えていた。
だがそれは映像は乱れ、相手の顔が判別できないほどであり、唯一相手の音声だけはまともに聞こえるものだったのだが。
それもそのはず、この通信は盗聴防止通信であったため回線が他とは特別なのであった。
そんな特別な回線から聞こえる声の持ち主は、西南がさっきから電話をかけている、愛しの相手、
正木霧恋であった。