天地無用! オリ主 活動中   作:雪芽乃 菜々菜

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第24話

数分後ウサギたちは瀬戸のもとにつながる転送ゲートの前にいた。

 

西南はいっこうに落ち着きが無い。

 

かとおもうと、ニヘニヘと気持ち悪くだらしない顔をしだした。

 

「霧恋さん霧恋さん、おれ頑張ります。」

 

とか言って虚空を見つめて言う始末。

 

そんな西南をみてどれだけ霧恋って人が好きなんだと思うウサギ。

 

恋は盲目だとよく言うが、まさにそれなのかもしれない西南であった。

 

そんな西南に玉蓮は頑張ってくださいと優しく声をかけた。

 

その様子を見てウサギは苦笑した。

 

「西南君、僕もいるし今回の件は一蓮托生だ。なんの慰めにもならないだろうけど、怒られたりしたら、一緒に頭を下げるよ」

 

「ウサギさん…はい!」

 

「あら、元気になったみたいですね。」

 

「不安ですけどウサギさんいますから」

 

「いや、そんなに僕を頼りにされてもほんと頭下げるしかできないよ。」

 

「ふふ、ではお二人共決心はつきましたか? 此処から先、私はお伴することを許されていないので、心を強く持ってくださいね。さあ、こちらへ足を乗せてください一瞬で瀬戸様の元へいけますから」

 

ウサギと西南はゴクリと生唾を飲みつつ、決心して足を踏み出した。

 

そして、目の前が真っ白になったかと思うと目の前の景色が一変した。

 

そこは皇家の樹を中央にいただく水鏡の心臓部だった。

 

まるで、劇場の舞台のような外観にウサギたちは驚きを示した。

 

「ようこそ水鏡へ、ウサギ殿、山田西南殿」

 

二人を迎え入れたのはとても美しい女性であった。

 

彼女は優しい微笑みを浮かべウサギたちに自己紹介した。

 

「はじめまして、私が神木・瀬戸・樹雷です」

 

ウサギたちはその女性の物腰の柔らさを見て、とてもGP艦で出会った艦長やクルーたちの言うような、鬼姫にはとてもじゃないが見えなかった。

 

優しげな雰囲気、凛として、それでいて威圧感のない声。

 

なぜ、恐れなければいけないのかが二人は理解できなかった。

 

ウサギたち、特に西南は恐怖と緊張がときほぐれるのを感じ、とても心地よいように思った。

 

そんなリラックスムードな二人をよそに、そばに仕える兼光は瀬戸の笑顔を悪魔の笑みだということを理解していた。

 

というのも、これは瀬戸のもつ才能であり、他人をだますことなど瀬戸にとっては赤子の手をひねるより簡単なことだったからだ。

 

そんな術中にはまる二人へのとどめとして用意されているのが兼光である。

 

そのことを理解している兼光は顔をこわばらせた。

 

そんな兼光をよそに、西南は不思議な感覚を瀬戸に抱いた。

 

どこか懐かしい感じが…瀬戸に初めて会った気がしないのだ。

 

そんな無言で瀬戸だけを注視する西南に瀬戸は語りかけた。

 

「どうなさったの? そんなに熱心に見つめられたら照れてしまうわ」

 

「い、いえすいません。はじめまして、山田西南です。」

 

西南は慌てて頭を下げた。

 

「ホホホ、そう固くならないで西南殿。であなたは?」

 

瀬戸はウサギに先を促した。

 

「はじめましてウサギと申します。」

 

そう言ってウサギは頭を下げた。

 

「ウサギ殿ですね。家名はないのですか?」

 

「家名? ですか、すいませんがわかりません。ただ、ウサギと呼んでください。」

 

ウサギは瀬戸に答えながら思った。

 

そういえば、西南にも山田と言う苗字がある。

 

ほかの出会ってきた人たちに家名のない人はいなかったとウサギは思った。

 

ウサギには家名がない。

 

何故だろう?

 

しかも何故今までそんなこと考えもしなかったんだろう?

 

なにもかもわからない。

 

ただこの世界に来た時、目の前は人参畑で自分がウサギだと思ったのは確かである。

 

ウサギは頭を抱えてひとり悩みだした。

 

「う、ウサギさん!」

 

西南は心配そうに寄り添った。

 

ウサギは西南を気にしながらも、突如襲ってきた激しい頭痛のため、取り合うことができない。

 

そんなうめき出すウサギを見てなにやら悪く思ったのか、瀬戸は謝罪し、ウサギの背をいたわるようになでた。

 

「何やら事情がおありのようですね。一先ずその話題は置いておきましょう。ですから今は深く深呼吸してみてください。落ち着くはずですわ」

 

「は…はい」

 

ウサギは何故こんなにも頭痛に苦しまなければならないのかわからないながらも、必死に落ち着こうと、瀬戸の助言どおり、頭を抱えながらも深く深呼吸した。

 

「大丈夫ですか、ウサギ殿? 医務室へご案内いたしましょうか?」

 

「いえ、なんとか大丈夫みたいです。」

 

ウサギは脂汗を額に浮かばせながらも瀬戸に頷いて返した。

 

実際、自分のことをあまり考えないようにすれば頭痛はそうおこらなかった。

 

「うちの医療システムを使うことはなんの遠慮もいりませんから、きつかったらおっしゃってください。」

 

「ありがとうございます。ただ、なんとか今は大丈夫みたいです。」

 

「そう…じゃあダメだったらすぐに言ってくださいね。」

 

「はい。あ、西南君も大丈夫だよ心配してくれて有難う」

 

「突然頭を抱えだすんですもん。驚きましたよ。俺」

 

そんな軽いやりとりをしだす二人を見て、瀬戸はほっとため息を漏らした。

 

どうやら本当にもう大丈夫らしい。

 

そう思ったため息だった。

 

「では、取り敢えず仕切りなおして私の部下を紹介いたしますがいいかしら?」

 

「ええ、もちろんです。瀬戸様」

 

ウサギは瀬戸を促した。

 

「じゃあ、こちらは私の部下で…」

 

「第七聖衛艦隊司令、平田兼光です。」

 

兼光はウサギがうめき出したりと、出会いのしょっぱなから問題が起きたことに心を乱しながらも、自分の仕事を全うしようと、こわばらせた顔をウサギと西南に向け、一礼した。

 

その様子は軍人というより、戦国時代の武将を思わせるものであり、ウサギと西南は圧倒され、瀬戸に失礼なことをしたら直ちに切ると言い出しそうな気配を感じさせた。

 

これこそ、瀬戸の策であった。

 

この対照的な二人が並ぶことによってウサギや西南は自然に瀬戸の方に依存し、瀬戸に対する警戒心を解いていくのである。

 

しかも、ウサギには悪いが、先ほどのハプニングは、瀬戸の優しさを若者二人に印象付けるにはぴったりであり、好都合だった。

 

それにここには水穂がいない。

 

もちろんそれもわざとのことで、より瀬戸への依存に拍車をかけさせる演出であった。

 

「さあさ、立ち話もなんですからどうぞこちらへ」

 

瀬戸と兼光に伴われウサギ達は先ほど乗ったゲートとはまた違うゲートに乗りいどうした。

 

そして転移した場所はいつこそ違うが先ほどまでいたゲストハウスと同じ巨大な居住区がある場所だった。

 

ただここは、ゲストハウスと全く印象を変えるかなり高い位置にある場所であった。

 

驚くべきはそびえる巨大な大樹であろう。

 

まさに天を支える世界樹のよう。

 

珀蓮たちに案内されてきた時は目線が下であったので、こんな巨大な木がまさかあるとは思わないウサギと西南であった。

 

「これがキロ単位の木なのかね。西南君」

 

「でしょうね。」

 

呆然とする少年と青年に瀬戸は席をすすめた。

 

そして、瀬戸は自ら茶をいれ、ウサギたちにすすめるのであった。

 

それに恐縮しながもふたりはお茶をすすった。

 

「今回は災難でしたわね」

 

そういう瀬戸の言葉に二人はそれぞれ気まずそうに反応した。

 

西南は今回のこともあるが、自分の名前が『さいなん』とよめることからの条件反射であった。

 

ウサギはというと今回の海賊たちのことと、よくわからないダルマのもとへとんだり、接触事故が起きそうなほど瀬戸のもとにジャンプしてしまったことなんかであった。

 

そんな二人の思うことを知って知らずか瀬戸はそのまま話を続けた。

 

「まずはお二人にお礼を言いたくてここに呼び出したのです。本当にありがとうございます。ウサギ殿、西南殿」

 

ウサギと西南はお互いに戸惑い、顔を見合わせた。

 

褒められることなんていつしたっけ? ってな感じである。

 

「なあ西南君、僕ら宇宙に来てから海賊たちとの追っかけっこしかしてないよね」

 

「ええ、ウサギさん。海賊が鬼だとして、次々増える鬼の群れから逃げる俺たち、まさに難易度はルナティックでしたね。」

 

「おゲームやる方? 西南君」

 

「もちろんです。」

 

こほん

 

兼光はゲーム談義になりそうな二人に向けて咳払いを一回した。

 

このまま、瀬戸の目の前で堂々と自分の楽しみ事で盛り上がれれば大したものだと思ったが、さすがに瀬戸が隣で兼光に目線で訴えをよこせば、対応せざるおえなかった。

 

「あ、すいません兼光さん瀬戸様もなんか盛り上がっちゃって」

 

「いいんですのよ。ねぇ、兼光。」

 

「ええ、まずはこちらのことを聞いてくだされば」

 

「じゃあ、えーっと、お礼ってなんのことなんですか?」

 

ウサギは、代表して瀬戸にきいた。

 

「その海賊達の追いかけっこが私達にとっておおきな利益になったのです。」

 

「利益ですか?」

 

首を傾げて西南は言う。

 

「ええ、そうです。その御蔭で私達は大量の海賊たちを捕らえることができたのです。その時のことはご存知でしょう?」

 

「まあ、西南君と一緒にスクリーンごしに見てましたよ」

 

「どうでしたか私どもの手際は」

 

「どうもなにも、すごいとしか言えない感じでしたね。」

 

「そうですよねウサギさん。よくあれだけの数の海賊たちを圧倒し、捕らえたって感じですよね」

 

「ふふ、私どもの艦隊は精鋭ぞろいですから、ですが、それはウサギ殿、西南殿があれだけのお膳立てをしてくださったからなんですよ。海賊たちの摘発というものは難しいもので、今回はその摘発のために、私は保有する全艦隊の4割を出撃させていたのです。しかし、それだけやっても、なかなか海賊たちの発見の報告はなく、たとえうまくいったとしても、摘発予想数はウサギ殿と西南殿が引き連れてきた数のたった1割から2割にすぎなかったのです。」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなんですよウサギ殿。これは我々の大艦隊以上の働きをたった1艦で成し遂げた。快挙とも言える奇跡的なことだったんですよ」

 

そう、瀬戸は両の手を広げてウサギと西南を褒めちぎった。

 

そのことに照れる二人、それをみて、ますます顔をけわしくする兼光。

 

(あーもうこりゃ瀬戸様の術中だ)

 

と心のなかで思うのはしょうがないことであろう。

 

そして、瀬戸は最後のとどめとばかりにしゃべるペースを上げ、場を最高潮に高めはじめた。

 

「きっとウサギ殿、西南殿の才能はGPで歓迎されるでしょう」

 

その言葉に西南は非常に大きな喜びを感じた。

 

いままで、この才能のことで、西南はのけものにされることはあっても、歓迎されることなどなかったからだ。

 

両親、そして海という友人や霧恋が、正木家の人達がいなければきっと自分はダメになっていただろうと思うほどに、西南は周りから嫌われていた。

 

ただウサギはというと、瀬戸に褒められて嬉しい、たしかに嬉しいが、どこか冷静な自分がいることに気づいていた。

 

国の大御所が喜ぶようなことってなんなんだ? と何かあると恐怖からか心が薄ら寒くなっていたのである。

 

そんな対照的な二人を瀬戸は興味深そうに見つめた。

 

一人は自分の言い方は悪いが、言いなりになりやすい良いおもちゃかも知れない。

 

だが、もう一人は少し苦労させられるかなと思うのであった。

 

まあ、この少しと言うのは大きな勘違いになることを瀬戸は知らない。

 

それはともかくとて、この少年と青年に宇宙に上がる覚悟を見せてもらわなければと瀬戸はおもい、

目線で兼光に合図した。

 

「こほん! ですが残念ですな。せっかくの所、申し訳ないのですが…実は純粋な地球人を

宇宙に上げることは銀河法で禁じられているのです。」

 

そのことに、ウサギと、西南は驚愕した。

 

せっかくここまで来たのに! である。

 

ウサギは何か瀬戸に裏があるとしても、宇宙という魅力的な場所からいまさら離れたくなかった。

 

そんな、思わず「え!」 と声を上げてしまう二人に兼光はさらに眼光鋭く話しかけた。

 

「地球はまだ恒星間航行する技術がない、初期文明の星です。一足飛びに与えられた超技術によって滅んだ星は多いのです。ですから、その段階にもきていない惑星の方を宇宙に連れ出すのは固く銀河法で禁止されているのです」

 

瀬戸は兼光の言ったことを裏付けるように黙ってゆっくりと頷いた。

 

「ウサギ殿と西南殿の才能は本当に有益ですが、それはつまり今回体験されたのでわかっているでしょうが、常に危険と隣り合わせということ、我々やGPの都合で危険な目に遭うというのはいささか、違うでしょう? 」

 

兼光のいうことは特に西南にとっては正論で、とても重いものだった。

 

西南はまた地球でいろんなことに怯えながら、守られながら生活するのかとおもった。

 

ウサギはと言うと兼光の言葉を聞き思案していた。

 

自分は本当に海賊たちをあんなに連れて行くような才能があったのかと。

 

一体僕は背中にあるものにしてもどうなってしまうのだろう。

 

そう思うと鷲羽や宇宙に送り出してくれた柾木家の皆のことが頭に浮かんだ。

 

僕は働かなくてはいけない。

 

どんな仕事だって困難はつきものだ。

 

それに、自分は戸籍すら無い。

 

地球にももどっても意味いのだ。

 

それになにより、鷲羽達が便宜をはかってくれたのにそれを台無しにするようなことはしたくなかった。

 

ウサギは覚悟を決めながら兼光の言葉を最後まで聞くことにした。

 

「ですから、我らが責任をもって、地球にお送りいたします。ただし、規則上宇宙でのウサギ殿、西南殿の記憶を消去させてもらいます。」

 

その言葉をかわきりに、西南は絶望で心が満たされた。

 

宇宙という場所は自分が必要とされていると思わせてくれた瀬戸がいるのに、あの自分がいなくなったほうがいいと思わせる地球に戻らなくてはならないのだから、その落胆は大きなものだろう。

 

ウサギも記憶が消去され地球に戻されるというのは衝撃的だった。

 

だが、ウサギには手札がいくらか存在した。

 

本人もどれくらいの力がそれに秘められているのかわからなかったが、鷲羽は確かに宇宙でつてがあるということを言っていたのをウサギは覚えていた。

 

ウサギとしてはあんなに小さい子供に頼るというのはなんとも情けない感じがしたが、今の自分はなんの後ろ盾もない。

 

それに、恥ずかしいさやプライドなんかでご飯は食べれないのである。

 

ウサギは鷲羽たちにめいいっぱい頼った後は、恩返しができればいいなと思った。

 

そんな思案しているウサギをよそに、瀬戸の話はクライマックスを迎えていた。

 

絶望に打ちひしがれている少年西南と、おんなじだろうと思われているウサギに瀬戸は命綱とも言える手を差し出した。

 

「たしかに、兼光が言ったようにあなた方の才能は危険と隣り合わせ、地球に戻れば少なくても今日のような命の危険はないでしょう。…それでもあなた方はGPにいきたいですか?」

 

瀬戸は今までの優しさあふれる目ではなくなっていた。

 

兼光以上の威圧感を発する眼差し。

 

半端な覚悟は許さないという厳しさがそこにはあった。

 

西南と、ウサギは瀬戸が鬼姫と呼ばれる理由を全てではないが、体で理解した。

 

西南は真剣に考えだした。

 

ウサギはもう決めているというか、ウサギには宇宙で働き戸籍を取り敢えずえるということしかあたまになかった。

 

なので、西南のような慌てようが今はまったくなかった。

 

鷲羽達に見送られて宇宙に出て地球にとんぼかえりなんてしたら鷲羽ちゃんたちに合わせる顔がなかった。

 

そんな、ある意味堂々としているウサギに瀬戸は不思議に思った。

 

ふつうの子ならこで、西南のように真剣に悩み決断するというのに、ウサギという目の前の青年はもう答えに達しているように見えると瀬戸は思うのだった。

 

対照的な二人を面白そうに見つめる瀬戸

 

そして、山田西南はというと、五分か、十分か悩み、ブツブツ思考しやっと自分の考えとの折り合いがついたのか、瀬戸に向かって顔を上げ、はっきりといった。

 

「俺、帰りたくありません!」

 

 

※※※※

 

 

西南は地球の安全よりも宇宙に希望をみいだしていた。

 

初めて、人に必要にされたそのことが嬉しすぎて、そのことを記憶消去されてしまうなんて嫌すぎた。

 

それは、霧恋への思いよりも激しく西南を駆り立てていた。

 

宇宙で必要とされながら生きていくということを西南は放棄したくなかったのだ。

 

その気持に瀬戸は答えた。

 

「宇宙では命の危険は誰も保証してくれないわ。助からないことなど珍しくもないのだから。宇宙に出ることを決めしまえばもう後戻りはできないのよ」

 

「それでも、俺は宇宙にいたい! どうかいさせてください」

 

西南は座席から起立し頭を勢い良くさげた。

 

瀬戸はこのとき強烈な快感を抱いていた。

 

少年の熱い決意。

 

あ~青春よね~。

 

瀬戸はこれが見たくてさんざん演技していたのだ。

 

だか、瀬戸には腑に落ちないことがあった。

 

ウサギが西南のようにこうならないのである。

 

ある意味瀬戸のように西南の決意を喜んだり、楽しんだりするそんな立場に居座っているようにみえる。

 

そのことに、瀬戸はむっとした。

 

自分の手のひらで転がらない人間とは、一体どんなくせものなのかと思ったのである。

 

それともこの青年は宇宙に出ずに地球にかえって行くことを望んでいるのだろうか。

 

もしそうであるならば、いくら才能があろうと瀬戸にとってはいらない存在でしか無い。

 

とてもおしいという気持ちはあるが、帰ることを選んでいるのならしかたがない。

 

だが早とちりということもある。

 

どちらにしてもこの青年の気持ちの確認だけはしなくてはいけない。

 

西南だけ確認できても意味が無い。

 

瀬戸は珍しく自分の思うとおりに行かなさそうな青年に牙がでそうになった。

 

それをはたからみる兼光は背中に冷たい汗をかいていた。

 

(おいおい。このウサギって子は一体何を考えているんだ? 西南よりはやく決断したかとおもったら、やけに瀬戸様あいてに堂々としている。自分は帰るとでも言い出すのだろうか? そうであるならば瀬戸様と関わらないぶん平和でいいだろうが、いまの牙が出かかっている瀬戸様あいてに変なことだけはいってくれるなよ)

 

兼光はせつにそうおもった。

 

愚痴を聞いたり、機嫌の悪さの矢面にたつのはできるだけ回避したい兼光であった。

 

「ふー。こほん! 西南殿の件はわかりました。その誠意あるたいどと、旅立ちに決意した意思に敬意を私は払いたいと思います。」

 

瀬戸はそう言うやいなや、兼光に特例申請の手配を告げた。

 

そのことに喜び、飛び跳ねる西南。

 

そのことを微笑ましそうに見つめる瀬戸。

 

だが、問題はまだ解決していない。

 

ウサギである。

 

先に西南の意思を確認できたとはいえ、今の状況は西南だけ宇宙に出ることが許可されたかたちである。

 

そのことにはさすがにウサギは焦るかと思いいたずらを仕掛けた子供のように瀬戸はウサギを見つめた。

 

そんな瀬戸にウサギはただ見つめかえした。

 

そのウサギの見つめる瞳に瀬戸は悪寒が走った。

 

瀬戸がウサギのことを一瞬にしても恐れたのである。

 

まるで、こちらが試しているのに、逆に試されているようなそんな感覚を受けたたのだ。

 

そのことがきっかけで瀬戸に火がついた。

 

あちゃーと、兼光が頭を抱えているが、瀬戸はどうでもよかった。

 

ただではかえさない。

 

そうきめて瀬戸はウサギに話しかけた。

 

「ずいぶんと冷静にしているけれど、記憶を消される覚悟がついたのかしら?」

 

「記憶を消される。地球に戻される。まあ、西南君と一緒に多少は驚きました。それは瀬戸様もおわかりになったでしょう?」

 

「ふふ、ええ。目をまんまるに開けていたわ。それで?」

 

「いや、僕は悩む必要がないって考えたら焦るのが馬鹿らしくなってしまって」

 

「どういうことかしら? 地球に帰ることにでもしたのかしら? まあ、あれだけの海賊たちでしたもの、これだけ不幸なことが起きる体質でしたらたいへんだったでしょう? だから地球に帰るっていってもとがめませんよ。ただ、徹底的に記憶だけは消しますが」

 

瀬戸はさっきまでの優しさはどこへいったのか、鬼が丸見えであった。

 

そのことに、西南はすくみ兼光のそばに避難した。

 

西南は兼光にどうにかできないか小さい声で言ったが、兼光にこうなったら誰も止められないと首を横にふられた。

 

そんなやりとりをする西南達をよそに、ウサギは特に考えるもなく口を開いた。

 

「なにか失礼なことでも僕は瀬戸様に言いましたでしょうか?」

 

そう面と向かって瀬戸に尋ねられるのはこの宇宙に何人いるだろうか?

 

しかも、鬼が出てきている瀬戸に…そのことに兼光は驚きを通り越して関心してしまった。

 

もし、宇宙に出ればこいつは化けると思ったのである。

 

それは瀬戸も同じだったみたいで、嫌らしい笑みを浮かべ、嬉れしそうにウサギにこたえた。

 

「ごめんなさい。たしかにウサギ殿は何も悪くないわ、で、ウサギ殿は決心はついたのかしら」

 

「ええ、決心は柾木家で、鷲羽ちゃんたちにお世話になっている時に十分時間をかけてしましたから」

 

その言葉に瀬戸は何も言えなくなった。

 

柾木家? それとも、正木? それよりも鷲羽!? 一体どういうことなの! そう思った瀬戸はウサギに問いただした。

 

「え? 鷲羽ちゃんしっているんですか? 色々つてがあるって言っていたけどこういうことだったのかな?」

 

ウサギがそういうと、瀬戸は兼光に問うた。

 

「兼光、鷲羽殿からなにか連絡あったかしら?」

 

「いえ、いまのところ私の把握しているところにそういった連絡は来ていませんが」

 

「そうよね。私の方にだって来てないわ。」

 

「至急調べさせますか?」

 

「そうね。でもまって、まずはウサギ殿に詳しく事情を聞きましょう」

 

そういって、瀬戸はウサギに鷲羽や柾木か正木かわからないが、つまりは本家か分家かの違いなのだが、馴れ初めをといただした。

 

そして、ウサギは今まであったことを瀬戸たちに話した。

 

もちろん、鷲羽から口止めされている背中のことは話さずにだが、そうしてウサギの話を聞き終えた瀬戸は好奇心むき出しの顔になりつつ、ウサギの言うことに納得そうにして頷いた。

 

「そういうことだったのですね。合点がいきました、西南殿は慌てふためいて、真剣にバタバタしながらも考えていたのに対して、あなたは取り乱すことはありましたが、次第に冷静になっていった。その理由がやっとわかりました。ウサギ殿の分も特例処理しておきます。兼光いいわね。」

 

「もちろんです」

 

「じゃあ、特例処置の完了通知が出るまで時間がかかりますし、GP艦修理にもしばらく時間がかかりますので、今日は泊まっていってください。」

 

そうして、ウサギと西南は瀬戸と兼光に付き添われ、船の中とは思えない夕焼けの中道を歩いた。

 

そのとき、瀬戸や先にであった水穂を知ってはいなかったのに知っている人の雰囲気があることを西南は感じたことを瀬戸らにはなした。

 

そのことに瀬戸は答え水穂が天地のおばさんであることを言ったりした。

 

そのことに驚く西南。

 

自分の知っている身近な人である天地は宇宙人側の人間だったのだ。

 

だから自分をGPに誘った雨音という人は疑いもせずに宇宙へ誘ったんだなと思う西南とウサギであった。

 

「そうそう、天地ちゃんを知っているなら、まあ、ウサギ殿は知っているだろうけれど、阿重霞と砂沙美という姉妹がいるのご存知?」

 

「ええ、よく知っています。海の村でよく会います」

 

「あの二人ね…私の孫なの」

 

そのことには西南だけじゃなくウサギも驚いた。

 

瀬戸の見た目から考えて、どうくらべても阿重霞なら姉、砂沙美なら母、といった年齢差にしかみえない、それが孫とは。

 

あまりの驚きに足元に注意を向けていなかったのか西南は地上に伸びた木の根っ子に足を取られ転びかけた。

 

かけたというのは、ウサギが西南をまるで勝手を知る母親のように受け止めたからだった。

 

「あ、ありがとうございます。ウサギさん」

 

「問題ないよこれぐらい。足元に気をつけて」

 

「はい」

 

その様子を見て、瀬戸は大事にならなくてよかったと胸をなでおろした。

 

「よく、西南殿がころんだことに反応できましたわね」

 

「まあ、なんとなく感じただけですから」

 

「なんとなく…ですか」

 

「ええ」

 

意味深な瀬戸とのやりとりに西南は気づくことなく、一人うさぎの対応に興奮して話しだした。

 

「なんとなくても気づけるなんてすごすぎますよ! 大抵僕の失敗は回避できないですから。自慢にもなりませんけど…」

 

たはは、と西南は頭を掻いた。

 

「辛くはないですか?」

 

「慣れていますから」

 

そう、恥ずかしそうに笑っている西南の顔を見た瀬戸は突然硬直し、まじまじと西南を見つめ始めた。

 

その行動に西南は不思議そうにして瀬戸を見つめた。

 

瀬戸は思う。今日はよく色んな意味で笑う日だと、いろんなことがありすぎて、とても嬉しい。

 

そう打ち震える瀬戸であった。

 

そうしていると、瀬戸は自分が呼んでおいた者の気配を感じた。

 

「ウサギ殿、西南殿、迎えがきたわ」

 

ウサギたちが瀬戸の指差すをほうを見ると珀蓮たち四人の女官が立っていた。

 

「あとお願いね。私やることがあるから」

 

「かしこまりました。さあウサギ様、西南様行きましょう」

 

瀬戸に珀蓮は一礼すると、二人を連れてゲストハウスに向かったのであった。

 

 

 

 

ただ、西南は先ほどの瀬戸の不思議な態度に後ろ髪ひかれ首を傾げながらではあるのだが…

 

 

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