抜きゲーみたいな個性を持った少年はどうすりゃいいんですか? 作:勇気生命体
俺はいつもとは違う時間に目を覚ます。空はまだ薄暗く、短針は5を指している。妙に気分が良かったのでベッドから降りた。お気に入りのベッドだ。古ぼけていて、いつもギシギシと音が鳴る。大抵俺しか眠らないことが安ホテルとの違いだ。俺は人がいると眠れないので、仕方ないともいえる。
俺はコンロに火をともす。これも俺のお気に入りだ。エッで始まり俺の想像通りの長さでチチチチと鳴く。だが今日の俺は焦らしプレイヤーだったようで、ボッと点火したところですぐに火を止めてしまった。目玉焼きよりも生で食べた方がいいと、ふと思ったのだ。生の方がいい。
俺は無味乾燥な部屋――彩と言えば18禁ヒーローのサインだけ――から出る。外はもう明るい。ずいぶん夏だね。水着で歩いてたら、他の人も便乗してくれるだろうか? 通報はしてくれるだろうが。
犬も歩けば棒にあたるという言葉通りに大抵の行動には結果が伴う。朝の散歩は3本の棒を俺に与えた。1本目はカツアゲチンピラの棒、2本目と3本目は激しい喧嘩をしていた不良二人の棒。朝の占いなど見ていないがとにかく今日は幸運だ。3本が3本とも不意打ちで触れることができた。直接触れさえすれば気絶するほどのビックバンを起こすことができる。奴らはみんな汁から汁を垂れ流して素敵な眠りについた。汁の色が白か黄色かなんて知ったこっちゃない。後から来る警察に確かめてもらえばいい。
いつの間にか足は雄英高校の近くまで、俺を運んでいた。ミッドナイト効果かもしれない。もしくは女子高生の甘い香りにつられたのかも。
嘘は人をセクシーに見せるかもしれないが、自分に嘘をついたところで何の意味もない。告白しよう。神野の事件のせいだ。オールマイトの引退は俺のような人間にも衝撃的だった。
俺以外にもそんな衝撃をいまだ持て余している人間が雄英高校の周りをうろついている。だが誰も必要以上に近づくことはない。あんな事件のあった後だ。警備は恐ろしく厳重になっている。事件を受けて生徒たちは全寮制になり、この中で住むことになったらしいので尚更だろう。
不意に雄英高校に侵入してみたいという強烈な欲求に襲われる。中に入って生徒が見てみたい。ミッドナイトが見てみたい。
そんな欲望を振り払うように俺は歩き始めようとして、肩を叩かれた。そこにいたのはどこか見たことのある男。
「少しいいかい?」
「……あ」
有名人は、どっかの社長の四ツ橋は、人当たりのよさそうな笑顔を俺に向けた。
〇
俺たちは俺たち以外に客の入っていない喫茶店の一番奥まった席に腰かけて、コーヒー飲み、俺はケーキも食べた。知的なジェントルとのブレイクはエッチと言えなくもないが、この四ツ谷という男からはそういう雰囲気が出ていない。実に残念だ。
二杯目のコーヒーを半分程度飲んだ時、四ツ谷がいよいよ威圧的な雰囲気を増して話し始めた。
「君は結構有名人なんだよ。叡智君」
「あなたには負けますがね」
「ふふふ、社長だからね。……だが君はヒーローでもヴィランでもなく、ましてはヴィジランテでもない。君は――」
「――
「――縛られてる人間だ」
確かに縛られるのはやぶさかではない。だが四ツ谷が言っているのはそういうことではないだろう。
彼は語った。淡々と、しかし力強く。
「
――俺は確かに個性ゆえにこうなったのかもしれない。誰もが俺の個性を認めてくれたのなら今頃どこかの誰かと机を並べていたかもしれない。そう思わなかった日がなかったといえば嘘になるだろう。
「――次は君だってか……」
四ツ谷は黙って俺を見ていた。俺も彼を見て、そして結論を出す。
「過去は変えられない……ぶっ放したものが帰ってきたら、そんなもんはホラーだ。個性のせいで虐げられた過去は変えられない。だが未来は違う。そうですよね」
「その通りだ。我々が異能の未来を変えなければならない」
思わず上がる口角を隠すこともなく、俺は四ツ谷に頭を下げる。彼は何も感じていないかの如く、ただ固まっている。
「ありがとうございます。ごめんなさい。あなたたちの思想は素晴らしいと思います。でも……しばらくはまだ一人でやりたい」
「…………そうですか。ではまた時が来たら共に戦いましょう」
「はい!」
俺は店を出た。四ツ谷はもしかしたら俺が彼の戦線に加わる気など少しもないことに気が付いていたかもしれない。あの場で殺されなくてよかった。死んだらどんなエッチなことももうできないのだから。
「ククク……」
踊りだしたい気分だったので、俺は踊りながら歩いた。そして抑えきれずに腹から笑う。悪意と喜びの混ざりあった笑い。改めて自身を見つめなおすことの大切さを学んだ。これは優越感だ。いままでの人生のうちほとんど感じたことのない優越感。
なにが異能の開放だ。まだそんなことを言っているのか。
俺には抗えぬ性癖がある。エッチなことがしたい。されたい。させたい。見たい。思い描きたい。
それは個性のせいなんかじゃない。俺がエッチなのだ。
俺は自分自身がとっくの昔に己を開放してやったいたことを知った。
俺は町を歩く。いつもと同じような風景など、すでにこの世のどこにもなくなっていた。
いまなら誰かと一緒に眠れる気がする――そう思った。
久々に小説書いて楽しかったです。しかしこの小説は私の予測変換をえらいことにするのでここで終了となります。特にえの予測変換がひどい。
異能解放軍編が大好きです。何度も言いますが、ヒロアカ世界の闇が見えるので大好きです。しかし、闇だけが好きなわけではありません。キャラもエッチだし、かっこいい(つまりエッチ)なので好きです。
私の倫理コードが正常に働き、思ったよりもエッチにできなかったことだけが心残りです。決してエッチが悪いのではありません。すべては私の勇気のなさのせいなのです。エッチを嫌いにならないでください。