少女は一人、静寂が支配する部屋の中で外に出るための準備をしていた。
「うーん……、なんか変な感じがする」
わかったことについて整理してみようと思う。
まず、この世界が何かがわかった。つまり原作が何かわかった。この世界は氷結鏡界のエデンの世界だった。
僕が目覚めた部屋に置かれてた前世?より少し近未来っぽい機械をいじっていたら、ここがクローンを造る違法研究所であり、この世界で一番の沁力を持ち、千年に渡りこの
そして、何故かは分からないが
僕が知っているのは原作の一巻と二巻程度。しかも二次創作でしか見たことはない。氷結鏡界のエデンを原作として投稿されている二次創作は少なく、また話数も少なかった。
だから原作では確か九巻くらいまで出てたけれど、知っているのは二巻程度まで。
こんなことになるなら原作をすべて読破していればと後悔するけれど、二巻まであるだけマシかと前向きに考えることにした。
そしてその後も少し情報を収集したあと、とりあえずここから出るために服と万が一のための武器を探した。
武器は日本刀…………?? 西洋の剣みたいに両刃ではなく、刀身も広くはなく日本刀と同じくらい、長さは一メートル程で、唾は日本刀とは違って西洋っぽい。
しかも刃はこの世界オリジナルの蒼く煌く氷の刀身、氷結境界の蒼氷を材質に用いたものだった。
一応僕は剣を扱ったことはあるから自衛程度なら問題はないだろう。
服は一応あるにはあったのだが、下着だけは見つからなかった。
上は黒いパーカーで下は黒いホットパンツを着ている。
下はスカートとかほかにもいっぱい種類はあったんだけれど、パンツないのにスカートとか無理です。というかパンツ履いてたとしてもスカート自体無理です。
ホットパンツの下は何も履いていないから変な感じがする。
でも何も着ないよりは断然ましだから!
「よし、まずは居住区にいこう!」
全身黒を纏い、背中には研究所にあったお金5万
研究所から出て初めて見た異世界の外の景色。
人の手が入ってきていない自然の世界。それだけなら前の世界でも探せばあると思うけれど、目の前には明らからに大きすぎる大樹とその上を飛ぶ2M以上はあるだろう生き物が空を飛んでたりしており、ここは異世界なんだなぁと再度深く実感させられる。
僕は前の世界とは違うものに興味を示しながら森のなかを歩き始めた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
森の中を歩いて3時間が経ったころ、僕は2メートル超えの狼5匹に追いかけられていた。
一時間前、運悪く狼の集団と出くわしてしまった。気がつかれる前に去ることができていれば今みたいにはなっていなかったと思う。
しかし、その時僕はその大きさに驚いてしまい、本当に聞こえるか程度の小さなものだったけれど声を出してしまった。
狼がどのくらい耳がいいのかは知らないけれど、さすがにあれは聞こえてないでしょ!!と言いたくなるほど狼の耳は性能抜群だった。
それ以降現在に渡って一時間以上も狼に追いかけられています。
本当ならば既に捕まっていてもおかしくないほどの速さで狼は追ってきているのだが、なぜか今の僕の体は思ったよりも速く走れて、前世なら全国大会とか余裕で優勝できそうなほどだ。
けれど、流石に体力の方はきついみたいで、もう体が重くて仕方がない。
「――っ!」
足が木の根に引っかかり体勢が崩れる。咄嗟に立て直そうとするものの、体が言う事を聞かずそのまま地面にダイブすることになった。
そのまま走って勢いでゴロゴロといくらか転がってようやく止まる。
痛たた……、と痛む箇所を手で押さえながら立ち上がり再び逃げるために走り出そうとするものの、結局走り出すことはできなかった。
なぜなら僕を追ってきていた狼が、見るだけ恐怖を感じさせるような濃紫色の霧を全身に纏った生物とは別の何か。
姿は僕を追ってきていた狼とほぼ同じ、違うところは全身に霧を纏っているため、体が見え隠れし、その見え隠れしている頭部には鮮血色に輝く二つの光が見えた。
そうそれは、この世界の敵、幽幻種……体内に魔笛を保有し、穢歌の庭に住むモノ。霧のような体の中にある核晶を破壊することで幽幻種を倒すことができるが、性格は非常に凶暴。
そして幽幻種が保有する魔笛がとても厄介なもので、相手の精神操作や腐敗、猛毒などとても危険だ。
幽幻種の魔笛は人だけでなく土や木、水すべてを侵食し紫色の煙を上げて腐敗させる。そしてそれは徐々に広がっていく。
■ ■ ′■ …… ■ ■ ′■ ■ ■ ′…・ ■ …… ■ ■
Oe/ Dia = U xeph cley, Di shela teo phes kaon
森に呪歌を思わせる奇妙な音色が響き渡った。
幽幻種の纏う霧よりも濃い色の光を放ち、幽幻種から霧が溢れ出てくる。
それは幽幻種の近くにいた、味方を殺され警戒していた残った狼たちを巻き込んで幽幻種を中心とした範囲内のすべてを侵食し、腐敗させた。
巻き込まれた狼たちは侵食されたところから紫色に変色され、そのすぐあとを追うようにドロドロと溶けていく。
その嫌な不快な、匂いがここまで風に乗って届いてきて吐きそうになるも我慢してなんとか耐えきる。
幽幻種は今の出来事が何事もなかったかのように、ゆっくりとこちらに実態があるのかわからない霧に包まれた足で、向かってくる。
やばい、逃げなくちゃ、でないと狼と同じ最後を味わうことになってしまう。
幽幻種のことは前世で物語として知っていたけれど、ここは現実で文字では表せない何かがあると知った。
そしてこの世界は本の物語の世界ではなく、原作など無い現実だと深く教えられた。