Afterglow〜Episode of Another〜   作:ある@誠心誠意執筆中

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申し訳ありません。前回書いた投稿予定日の日付、間違ってました...(本来12月25日だったのが22日となっていた)

次からは気をつけます。




それでは本編どうぞ。






第14話 結束

「どうしてここに......」

 

 

 

「決まってんだろ。連れ戻しに来たんだよ」

 

 

予想外の光景を目の当たりにした私に、流誠はそう答えた。

 

 

そんな一手先を読んだ流誠の心がけに、どれほど嬉しく思ったことか。

 

 

 

だが......

 

 

「......っ」

 

 

私にも皆の思いを無下にし、あのような行動を再びとってしまった責任がある。故にわざわざ迎えに来てもらう義理はない。それ以前に資格もない。

 

 

「私はまた逃げだした。それは、巴達が一生懸命に私のために考えてくれたことに対して目を背けたのと同じこと。こんな最低な私なんか放って、さっさと帰ってよ」

 

 

だからこの時だけは饒舌に、素直に自分を蔑み、自分がどれほど最低な人間かを流誠に知らしめた。

 

 

「そうか......」

 

 

それを聞いた流誠は、端的にそう答えた。

 

 

よかった。納得してもらえたみたいで──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、一緒に帰るぞ」

 

 

 

 

 

 

「......は」

 

 

 

 

 

違った。私の気のせいだった。

 

 

こいつは納得するどころか、俄然私を連れて帰ろうと重い腰を上げてこちらに近づいてきてきた。

 

 

「ちょちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 

 

「んだよ」

 

 

目と鼻の先の距離まで詰めて来た流誠は、どこか苛立たしげだった。というか近い。近すぎる。

 

 

「さっきの話聞いたでしょ!?私はみんなの思いやりを踏みにじった。それも自分の中でもうしないって決めてた身勝手な行動で!」

 

 

昨日モカと流誠と屋上で話していた際にも、もう逃げたりなんかしないと密かに決心した。そうやって現実から目を背けようとする己の心の弱さを戒めた。

 

 

 

だが今日、その釘を打ったはずの心の弱さがまたもや行動としてその姿を現した。

 

 

「わからないの......自分でやったことなのに、どうしたまたあんなことをしたのか......っ」

 

 

私はこの期に及んで、無責任極まりないことを言った。でも仕方がない、それが事実なのだから。これ以外にどう表現すればいいというのだ?このあたしの愚かしさを。

 

 

「......」

 

 

流誠は、依然私のすぐ目の前に立ち続けていた。きっと心の中では、心底私の愚かさに呆れているのだろう。その蔑みを言葉にして聞かせてほしい。聞いたうえで、あたしもそれらを脳内だけでなく全身で咀嚼し、なめずり、そして味わいたい。それが今の私にできる最大の贖いであるから。

 

 

 

 

 

「理由なんてわかんなくてもいいだろ。自分がどれだけ酷いことをやったのか......それを自覚してるんなら十分だ」

 

 

だが、沈黙を破った流誠の口から言い放たれたのはそんなものとは無縁のものだった。

 

 

「え......」

 

 

 

「お前がさっき言ってた通り、あそこでまた

飛び出してしまったのはいけないと思う。けど、そんなことをした理由まで考える必要はべつに無いんだぞ?本当にしなきゃいけないことは、自分の過ちを認めて、それを反省することなんだからな」

 

 

そんな流誠の言葉が都合よくも、励ましのように聞こえた。

 

 

「ぅ......」

 

 

今まで抑えてきた嬉しさや悔しさの感情が溢れ出して、嗚咽が漏れる。瞼の裏から込み上げてくる熱いものを堪えようと歯を食いしばり下を俯くと、自分の足が震えていることにようやく気がついた。

 

 

 

その光景にもうふたつ足が加わったところで、流誠は私に向けてこう続けた。

 

 

「あと、言いたいことがあるならちゃんと言えよ?じゃないと、自分がこれからどうしたいのかみんなに伝わらないだろ?」

 

 

 

「......!」

 

 

そうだ。私はまだ『結果』しか伝えられていない。重要なのはそうするための『過程』......

 

 

 

 

......私はまだ、バンドを続けるために父さんと向き合って話すと決めたことを巴たちに伝えられていない。

 

それに、みんな私のことを心配して待ってくれていることだろう。いつまでもそうさせるわけにもいかない。

 

 

 

 

 

でもまずは、今自分が本当にすべきことに気がつかせてくれた流誠に感謝の気持ちを伝えなければ。

 

 

「......流誠」

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

「その......あ、ありが、とう......」

 

 

俯いたままで、不器用なのも重々承知だ。それでも精一杯の気持ちを込めて、あたしは頭を下げた。

 

それに流誠は「ああ」と返事をしたあと、握った拳をこちらに差し出してきた。

 

 

「もう、迷うなよ?」

 

 

 

「......ん」

 

 

私も同じく拳を握り、それに打ち付けて応えてみせた。コツンと小さく軽快な音が鳴る。

 

 

「うっし!じゃあ行くか」

 

 

歯切れの良い拳骨同士のぶつかり合う音に満足したのか、流誠は軽く背伸びをして笑顔をつくってみせた。そのあと、私の背後にある扉へと歩き出した。

 

 

 

そんな流誠の後を追うようにして、私も歩み始めたのであった。涙を拭い捨てて、もう迷いはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あーよかったー......“あっち側”じゃなくてほんとによかったー......)

 

 

蘭を連れ病院に帰っている道中、俺はとあることに対して多大なる安堵感を抱いていた。それは蘭の逃亡先のことについてだった。

 

 

 

病院を出発してしばらくした際に、他の4人と蘭がどこへ行ったかよく話し合わなかったことをひとりでとても悔やんでいたのを思い出した。

 

 

だがいくら助け舟を探しても頼るあてなど周りにいるわけもなく、なくなく俺はもともと自信の無い勘に頼るほかなかったのだ。

 

蘭がいそうな場所として真っ先に挙げられたのが二ヶ所、高等部と中等部、そのどちらかの屋上。つまり選択肢が二つだけだったことが唯一の救いか。おかげで当てることができた。

 

 

 

 

ただ単に、無意識に中等部の方を避けていただけなのかもしれないが。まあ結果論だ。終わり良ければ全て良し......って、今は言えそうにもないが。

 

 

「流誠?」

 

 

 

「......あ、ああ。着いたのか」

 

 

 

「うん......ていうかさっきから表情硬いよ?」

 

 

 

「あーいや、すげえしょうもないことで考え事してただけだから。ほら、病院着いたことだし早く行くぞ」

 

 

 

「だからさっきからそう言ってんじゃん」

 

 

隠しきれない怪しさに疑念の目を向けられながらも、気づかぬうちに到着していた病院の玄関の自動ドアを抜け、つぐちゃん達の待つ病室へと向かう。病室は3階のエレベーターを出てすぐ左に曲がったところだ。

 

 

「悪い。待たせちゃって」

 

 

 

「お、やっと来たねー。して、約束の品はどこかなー?」

 

 

 

「はいはい。ほら、蘭。出番だぞ」

 

 

 

「......うん」

 

 

ドアを開けて早々、モカに蘭の提示を要求されたので、ずっと背後に隠れたままだった蘭の背中をやさしく前に押してやった。

 

 

「蘭......」

 

 

ともちゃんがずっと座っていた丸イスから腰を上げる。2人の間の距離は、自然と縮まっていた。

 

それから互いに各々の反省点を曝け出した。

 

 

「改めて言わせてくれ。ホント、あの時のことは悪かった。ごめん」

 

 

 

「あたしも、ご、ごめん。また急に飛び出したりしちゃって......」

 

 

 

「蘭は別に悪くない。蘭の気持ちをちゃんと考えてやれなかったアタシらの方が悪いんだから」

 

 

 

「そ、そんなことない!あたしが気持ちの整理さえできていれば、迷惑かけたりしなかった

んだから......」

 

 

 

「いいや。落ち度があるのはこっちだけで十分だ」

 

 

 

「それじゃダメ!」

 

 

 

(......あれ?なんか脱線してってないか?)

 

 

ともちゃんと蘭の会話は、俺の描いていたハッピーエンドとは程遠い雰囲気になりつつあった。

 

声の大きさも会話を重ねていくごとに大きくなっていく。

 

 

(場所も場所だし、早く止めさせないと......)

 

 

公園など屋外で騒ぐならまだしも病院内でそれはまずいと、2人を止めるべく横槍を挟んだ。

 

 

「おい2人とも。そんなしょうもないことで言い争わないで、早く仲直りして......」

 

 

 

「「しょうもないことぉ?!」」

 

 

 

「え」

 

 

が、それは火に油を注いだ結果となった。

 

 

「あーあ、せいくん余計なことしーだねー」

 

 

 

「だ、だって!このままだと、“ヤツ”が......」

 

 

このままだと“ヤツ”が、来るかもしれない。人こそ違うが、俺がまだ入院していた頃によくお世話になった、ヤツが。どこの病院には少なからず一人はいる、“ヤツ”が......

 

 

 

そんな俺の心配もいざ知らず、ともちゃんと蘭は俺に牙を剥いてきた。

 

 

「あんたにとってはしょうもないことかもしれないけど、あたしらにとっては大事なことなの!」

 

 

 

「そうだぞ!」

 

 

 

「うん。だから巴もいい加減認めてよ」

 

 

 

「はあ!?なんでそうなるんだよ!」

 

 

 

「ちょ、そろそろやめなよ2人ともー!」

 

 

 

「あの、ここ、病室だから...!」

 

 

ずっと見守る側だったひーちゃんとつぐちゃんも仲裁に入る。もはやここまできたら漫才である。

 

......まったく。仲が良いのやら悪いのやら。

 

 

「はあ......もう俺疲れたから部屋の外行ってくる。......ああそうだ。モカ、適当に蘭を怒らせてやってくんないか」

 

 

 

「え?なんでー?」

 

 

 

「なんでも」

 

 

 

「え〜?......まあ、うん。やってみる」

 

 

目まぐるしく変わる状況に追いつけずギブアップすることにし、部屋を出る前にモカに蘭を怒らせるよう頼み込んだ。その理由はすぐにわかる。

 

 

横開きにドアを開け廊下に出る。それが閉まりきってからしばらくした後、音が遮断されているはずの病室から蘭の怒号が聞こえてきた。うまくやってくれたみたいだ。

 

これで準備は整った。あとは“ヤツ”が来るのを備え付けのソファに座って悠然と待つだけ。

 

 

 

病院内である程度の騒ぎを起こさなければならない。だが逆にこの条件さえ達成すれば、自ずと“ヤツ”は現れる。

 

 

 

 

......もうお気づきだろう?ヤツの正体が白い服を見に纏った、病院の看護婦の頂点に君臨している婦長であることを。

 

 

無駄に図体のデカいそいつは、俺の目の前をズカズカと通り過ぎたあと、つぐちゃんの病室へとぬっと入っていった。

 

その直後、先ほどの蘭のものとは比べものにならないくらいの怒号が甲高く響き渡ったのは言うまでもない。

 

 

(利用させてもらったよ、婦長さん......)

 

 

また、それを聞いた俺が、1人成し遂げたような顔をしたのも言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「あはははははっ!」」」」」

 

 

十数分は経っただろうか。白い悪魔が退出したのを見計らって病室へ戻ってみると、意外や意外。みんな腹を抱えて笑っていたので、思わず寒気を覚えた。

 

 

「な、なんで笑っていられるんだよお前ら......」

 

 

気でも狂ったかと心配し、そう問いかけた。

 

 

「いや、いきなり怒られたもんだからさ......ははははは。はぁ......で、アタシら何の話してたんだっけ?」

 

 

 

「さあ?なんだったっけ?」

 

 

 

「忘れちゃったね〜?

でも、めっちゃスッキリした〜」

 

 

 

(無責任にもほどがあるだろこいつら!)

 

 

大声で笑いだしたかと思えば軽い記憶喪失を引き起こす彼女達のあまりの無責任さには、流石に感服せざるを得ない。もちろん皮肉である。ああ感服感服。クソ。

 

 

「......巴」

 

 

 

「なんだ?」

 

 

ひとしきり笑い終えたあと、蘭がともちゃんの名前を呼んだ。

 

和やかな空気の充満していはずの部屋に、一瞬にして緊張が走る。

 

 

「さっき、飛び出す前からちゃんと言いたかった......バンドが続けられるように父さんと話、してみる」

 

 

そんな緊張も押しのけてみせた蘭は、ようやく自分がどうしたいのかをはっきりと伝えることができた。

 

 

「蘭......!」

 

 

 

「素直でよろしい〜」

 

 

 

「ほら、からかうなって。......蘭の気持ちはわかった。話してくれて、ありがとな」

 

 

 

「蘭ちゃんの気持ちがきけて、私も嬉しいよ......!」

 

 

 

「私たち、お互いのことが大事すぎて、今まで言いたいこと言えなかったのかもね?ふふっ。ほんと、仲良すぎ」

 

 

 

「......だな」

 

 

蘭がバンドを続けるためにこれからどうしていくのかを聞けた他のメンバーは、ご満悦のようだ。

 

 

だが、その誰よりも喜びを感じているのは、ほかでもない蘭本人だろう。いつもは強張った彼女の顔が今は珍しく綻んでいるのを見れば、そんなことすぐにわかる。

 

そうして蘭の成長を垣間見た俺も、目を細めて微笑みを浮かべたのだった。

 

 

「ふあ〜。もうお日様も沈んできたし、お腹空いてきちゃったよ〜。みんなで帰り、パン屋さんよってこーよ。今日、菓子パンセールの日なんだよ〜。だからせいくん、おごってくんな〜い?」

 

 

 

「え?セールと何も関係性無いんだけど?てか重い」

 

 

モカに後ろから突拍子も無く飛びかかられた挙句、難癖を付けられてパンもせびられた。

 

 

「蘭をレンタルしたお駄賃として買ってー」

 

 

 

「意味がわからん」

 

 

 

「はは。モカのマイペースさを見ると安心するな。けど、パンは自分で買おうな。流はアタシらのパシリじゃないんだから」

 

 

 

「ちぇー」

 

 

 

「ありがとうともちゃん。助かった」

 

 

ともちゃんが助け舟を用意してくれたおかげで俺は束縛から解放されて、事無きを得ることができた。でもその軽さは、“他のこと”にも由来しているのかもしれない。

 

 

「それじゃ、行くか。今日からまた『いつも通り』だ」

 

 

そうして病室を出て行こうとするともちゃんの後を、俺達は追いかけようとした。

 

 

「わ、私は......っ!?」

 

 

そんな中、1人ベッドの上に置き去りにされたつぐちゃんが叫んだ。

 

 

「つぐはもうちょーっとだけガマン!」

 

 

 

「はーい......」

 

 

どうしてもついて行きたそうだったのだが、退院までおあずけ。とひーちゃんから止められた。

 

 

そんな一幕が、どうにもわがままを言う子供とそれをなだめる親のやりとりのように見えたので、思わず吹き出してしまった。他のメンバーも俺と同じようなことを感じたのか、婦長さんに怒られた時のように、また笑い始めた。 今度はその笑いの渦に、俺も加わった。

 

 

(──晴れの日にはいいことがある、か......)

 

 

呼吸を整え、昨日モカが言っていた言葉を思い出しながら窓の外を見た。

 

 

(......明日も、晴れるといいな)

 

 

オレンジがかった雲とどこまでも続く夕焼け空を見上げ、俺はそう確信した。




いかがだったでしょうか。次回は12月28日の19時30分に投稿予定です。お楽しみに!


最後に、この場をお借りしてお気に入り&しおり使用者様の数の増加のお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。これからも頑張りますので、どうか応援のほど、よろしくお願いします。




ではまた次回お会いしましょう。さいなら!
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