Afterglow〜Episode of Another〜 作:ある@誠心誠意執筆中
ということでみなさんどうも、あるです。先日お伝えしました通り第2章始まります。番外編も第1章のほうに載せときますのでそちらもよろしくお願いします。
では本編どうぞ!
プロローグ 変化
「よし、キリもいいし今日の練習はこのへんにしておくか」
ともちゃんがバチを指でクルクルと器用に回しながらそう言うと、みんなの口から疲れたという言葉の代わりにため息がこぼれた。
今日もいつも通りの練習だった。最近ではライブはご無沙汰なものの、その腕は依然として衰えておらず、それどころかむしろ上達していく一方だ。アシスタントの俺から見てもみんな本当に良くやってくれている。
「みんな、おつかれー!」
「お疲れ様っ!......あ、そういえば、蘭ちゃん」
鞄の中から水を取り出そうとしていると、つぐちゃんの蘭を呼ぶ声が練習部屋に響いた。
「ん、どうしたの?」
「前に流誠くんと商店街を歩いてる時、蘭ちゃんのお父さんに会ったんだけど、最近都合がつかなくてライブに行けないの残念がってたよ」
聞き耳を立てながら水を飲んでいると、自分の名前が挙げられたのを聞いたので、話の内容を思い出しつつ手に持っているペットボトルを口から離した。
たしか商店街でつぐちゃんとたまたま居合わせて、立ち止まったままもアレなのでと歩き出したすぐ後の話だったか。
「ぷはっ......ああ、そういやそうだったな」
「最近は華道の集まりがちょっと忙しくて......ていうか!別に来なくてもいいし!」
「はは......蘭のお父さんがライブに来てくれるのも『いつも通り』だな」
「いらないから、それ」
ともちゃんの冗談混じりの発言に、蘭があからさまに顔をしかめる。それから俺は、これを見たらおじさんはさぞ悲しむことだろうなと、内心がっかりしてそうなおじさんの厳格な顔を思い浮かべた。
......いや、してそうじゃなくて少しくらいは眉を下げるだろうな。実際あの時、そんな顔をしていたような気がするし。
「ちょっと〜、みんな早く片付けてよ〜。特にせいくんはアッシーなんだから、水なんか飲まないでキビキビ働いてさー」
脳内でのおじさんの顔いじりに意外な面白さを見出だし始めたところで、モカが何やら地団駄を踏み始めた。
「ブラック企業かよここは......ていうかそんなに焦ってどうしたんだよ」
「やまぶきベーカリー閉まっちゃうよー」
「モカは相変わらずだな〜。そんなに急がなくたって大丈夫だって」
「1秒でも早く行って、1秒でもゆっくりパンを選びたいんだよ〜」
どうやら自分の食欲を満たしたいらしく、その強さはひーちゃんの慰めにももろともしないほどだった。こいつは一体どこまで、パンに固執しているのだろうか......
「あーわかったわかった。まったく......つーことだみんな。急いで片付けよう」
まだかまだかとギターケースを背負って準備万端な様子のモカの為に、愚痴をこぼしつつもみんなに早急に片付けをするように促した。
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「ありがとうございましたー」
「またくるねー、さーやー」
パンがぎっしり詰められた落ち着く匂いのする紙袋を両手でしっかりと抱えながら、店番をするさーやに別れを告げ、カランコロンと鳴る鈴の付いたドアを開けて店の外へと出た。
「モカちゃん、パン買えてよかったね」
「これもみんなのおかげだよ〜。ありがとー」
外に出てからすぐにつぐから笑顔で話しかけられたので、こちらも感謝を込めて笑いかけた。
一方で他のメンツからは、奇異の目を向けられていた。
「こんなに買って、これホントに一人で全部食べるの?」
「そだよー。夕飯のあとに食べて、明日の朝食べて、明日のお昼前に食べて、学校終わったら食べる」
「それにしたって、おかしい量だろ......」
「だよな......むぐぐ」
「おにぎりくんも人のこと言えないと思いまーす」
「ごくっ......誰がおにぎりくんだパン星人が」
なんとでも言え。そう言わんばかりにあたしは、コンビニのしゃけむすびを貪るせいくんに向けてふんと鼻を鳴らした。
すると、蘭がとある店に視線を向けているのに気がついた。
「......ん?蘭ー?」
「ごめん、ちょっと寄ってもいい?」
蘭が指し示した先には、店内のみならず店先にもずらりと彩りを並べて、街行く人々の気を引くような可憐な香りを垂れ流す花屋があった。
「ん〜、いい香り♪どのお花もかわいいね」
蘭のあとに続いて店内に入ると、誇らしげに咲く色とりどりの花たちが店先で嗅いだような可憐な香りとともにあたしたちをお出迎えしてくれた。
「蘭、どの花が気になってるんだ?」
「あたしは......これかな」
店内を見回っている途中で、ともちんからの問いかけに、蘭はちょうど目の前にあった一つの鉢を手に取った。
そこに咲いていたのは、つくしのような形の赤色の花だった。
「なんか不思議なお花〜。お花っぽくないお花だね」
「これでも一応バラ科なんだよ」
純粋な感想を述べると、その不思議な赤色の花を見つめながら蘭が説明をしてくれた。その意外性に、あたしも含めてみんな興味を示した。
「へー!そうなんだ。なんていうお花?」
つぐちゃんの問いに食いつくように答えを述べようとした。
「これは......」
「ワレモコウ、か」
しかし、せいくんが代答したせいでその役割はかき消されてしまった。
「え、あ、うん......合ってるけど......」
藪から棒な発言に、本来の回答者である蘭は何故知っているのかと言わんばかりに目を丸くして、せいくんを見つめていた。
せいくんはそんな蘭の視線から何が聞きたいのかを察したように「あー」と前置いてから語り始めた。
「孤児院の年少のやつらに読ませてやったりしてんだよ、花の図鑑とか。その過程で自然と花の名前とか覚えたりするからさ。さすがに科とか目はわからなかったけどな」
「だとしてもスゴいよ、流。アタシも時々そういう本とか読んだりするけど、名前とか覚えてらんねえもん」
「うんうん!しかも、下の子のお世話もしてるっていうんだから!スゴイよ!」
「さすがお兄さんって感じだね!」
少し謙遜気味に言い終えたせいくんに、ともちんが感心深く賞賛した。それに続いてつぐとひーちゃんもすごいだの意外だのの一点張りだった。
「......」
一方蘭はと言うと、自分の役割を横取りされ腹を立てたのか、注目を浴びるせいくんをじっと凝視していた。
「おやー蘭ちゃん?拗ねてるのかな〜?」
「す、拗ねてないしっ!」
なので今度は蘭を注目させてあげようと、助け船......という名目の冗談をわざと大きな声で言った。
だが当の4人はあーだこーだとまだ何か話し合っているみたいで、“助け船”は見事に撃沈した。
「あーもう......つぐみ、ちょっと来て」
「えっ!?な、何!?」
蘭が痺れを切らしたように、輪の中にいたつぐの腕を掴んで、その輪から無理やり引っ張り出した。
「さっきのワレモコウのことなんだけど......流誠も知らないことがまだあるんだ。どう?知りたい?」
「え?えーっと......う、うん......?」
「はあ、しょうがないなーつぐみは......まず、ワレモコウって花は───......」
「あちゃー。始まっちゃったよ」
どうやら蘭の競争精神に火が付いたみたいだった。こうなっては彼女は止まらない。
すると、状況を把握しきれていないのか何事かといった様子でせいくんが顔をしかめた。
「おいおい、急にどうしたんだよアイツ......」
「まーまー。ここは見守ってあげましょー」
そうやって無自覚な彼をなだめてから、彼女の一生懸命に説明する姿を遠目に見始めた。
そこには前までは花に対して微塵も興味も示さなかった、むしろ避けていたようにも見える彼女の姿は無く......代わりに、真摯に華道と向き合っているような、彼女の決意の姿勢が見てとれた。
そんな蘭の変化を見てあたしは、心の奥底から異様な虚しさがふつふつと湧き上がってくるのを感じた。
いかがだったでしょうか。次回は1月10日の19時30分に投稿予定です。お楽しみに!
いつも通りかと思っていた日々のなかで著しい変化を見せる蘭に、この先流誠くんたちはどのような展開を見せてくれるのでしょうか。
......なんて具合に第2章始めてみました。拙い部分もあると思いますが、第2章も全力で執筆させていただきます!よろしくお願いします!
最後に、お気に入り登録者数がおかげさまで30人となりました!パチパチー!大変励みになります!ありがとうございます!!!これからも応援してもらえると嬉しいです...!
ついでと言ってはなんですが、評価もできるようになってます。よければそちらの方もよろしくお願いします!
ではまた次回お会いしましょう。さいなら!