Afterglow〜Episode of Another〜   作:ある@誠心誠意執筆中

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どうもあるです。今回も前回に続き、1章のほうに番外編を投稿しておりますので、そちらもご覧くださると幸いです。




それでは本編、どうぞ。(定まらない本編への繋ぎ)







第1話 擦曲

休日の午後、今日も今日とてバンド練習をするべくCiRCLEへと赴いた。

 

 

 

 

「──かあ......久しぶりにいいかもしれないな」

 

 

 

 

自転車を駐輪場に置き、入り口前へ向かう。そこにはすでに他のメンバーが到着しており何やら立ち話をしているようだった。

 

 

 

 

「お待たせしましたーっと」

 

 

 

 

 

「おっ、流。きたか」

 

 

 

 

 

「遅刻だよ〜」

 

 

 

 

 

「ちゃんと時間通りだろうが......それより、何の話してたんだ?」

 

 

 

 

 

「うん。えっとね───......」

 

 

 

 

聞くと、つぐちゃんが間を置いてから説明をしてくれた。どうやら、次のライブをいつにするかについて話し合っていたらしい。

 

 

 

 

「そうだったのか。でもどうして急に?」

 

 

 

 

 

「私達、最近練習ばっかりでしょ?だから久しぶりにライブでもやろうかなーって思って」

 

 

 

 

質問に質問を重ねると、いつもよりもやる気に満ちているように見えるひーちゃんからそう伝えられた。

 

そこから俺は、一つ提案をした。

 

 

 

 

「だったら、新曲を作ってみるのもアリかもな」

 

 

 

 

 

「あっ!それ、いいかも!」

 

 

 

 

 

「なるほど。ナイスアイデアだな」

 

 

 

 

 

「新曲かあ......なんか、久しぶりなことばかりだね」

 

 

 

 

新曲の作成なんて無茶振りっぽい提案だったが、メンバー一同頷いてくれた。

 

 

 

 

「いいねー。この数ヶ月で鍛えられたあたしたちをお客さんにも見せたいしー?」

 

 

 

 

提案をした理由として、モカが言ったような気持ちを俺も抱いていたことが挙げられる。

 

 

 

俺達、Afterglowはガルジャムなどのイベントを通していくうちに、そのファンの数もかなり増やしてきた。だがここ最近の音沙汰の無さに彼らを随分と待たせてしまっているだろうし、であればそれ相応の対応をするのが道理でもある。

 

ただそれはどちらかといえば建前みたいなもので、本命はAfterglowの『変化』を......幼なじみとしても、ミュージシャンとしてもレベルアップした俺たちを見せたいということだ。

 

 

あれから俺たちは変わった。互いに遠慮なく互いの思いを語り合える、心からぶつかりあえる『本当の意味での幼なじみ』へと。その過程で音楽に対する意識も変わった気がする。

 

そんな変化の中でも著しい変化を遂げたように見えるやつがいる。それは蘭だ。

 

 

この前もつぐちゃんにワレモコウの植えられた鉢を両手に持って、必死に華道のことについて説明をしていた。

 

 

 

 

......あの蘭が、だ。普通なら綺麗だ、かぐわしいなどといった感情を花に対して抱くところを逃避行ばかりで何もかも置き去りにしていたあの蘭が、華道の跡取り娘という家の事情とも向き合い、今ではその華道にも積極的な姿勢を見せている。

 

 

 

 

「......あれ?」

 

 

 

 

そんな彼女に今回も作詞と作曲を頼もうと、辺りを見回す。

 

だが、そこに蘭の姿は無かった。

 

 

 

 

「そういえば蘭は?」

 

 

 

 

 

「えー?今さら〜?」

 

 

 

 

いや。最初からいなかった、か。そのことにようやく気付き、モカに肩をすくめられた。

 

 

 

 

「あー。もしかしたらもう先に中に入ってるかもしれないな」

 

 

 

 

誤魔化しついでに一つの可能性を提示する。するとみんな合点がいったように、揃って首を縦に振った。

 

 

 

 

「確かにそうだな。ていうかどのみち練習もあるし、中入るか」

 

 

 

 

それからともちゃんの言葉に続くように、俺たちはCiRCLEへと足を踏み入れていった。

 

 

 

そうするや否や、モカが何かに気がついた。

 

 

 

 

「むっ、あれはもしや」

 

 

 

 

モカの声に足を止める。そしてモカの向いているのと同じ方向へと目を向けた。

 

そこには、何やら気難しい顔をして携帯の画面を見つめている蘭がいた。

 

 

 

 

「蘭。やっぱり先に来てたのか。......当てずっぽうだったけど」

 

 

 

 

 

「あっ、みんな」

 

 

 

 

声をかけると、蘭は先ほどまで眉を寄せていたあの表情は何処へ、今度は意表を突かれたような驚いた様子へと様変わりさせた。すると次に、俺たちより先に到着していたわけを語り始めた。

 

 

 

蘭の話によると練習前に華道の集まりがあったらしく、そのままここに来たところ思ったより時間に余裕ができたとのことだった。

 

 

 

 

「そうだったのか。蘭、お疲れ」

 

 

 

 

 

「それよりさー、なんで携帯に向かって怒ってたりしてたのー?」

 

 

 

 

第一発見者であるモカが携帯とにらめっこしていた理由をまるでからかうような態度で聞いた。一方の蘭はため息を吐きつつも、ちゃんとその理由を答えてくれた。

 

 

 

 

「予定確認してただけ。華道の集まりが入ってたりしてて」

 

 

 

 

 

「へえ。そうだったのか」

 

 

 

 

淡々とその理由を述べる蘭に対して、俺は感心の意を述べた。

 

前も見たが、近頃の蘭の華道に対する姿勢はお世辞抜きで本当に見違えるほど変貌した。それも良い方へと。

 

 

でもそれなら新曲は難しいやもしれない。スケジュールを睨んでいたあの蘭の顔から察するに、相当予定が圧迫されているのだろう。

 

 

 

そんな中で新曲作り......ましてやそれと違って合間あいまにできるようなものではないライブなんて、とてもじゃ───......

 

 

 

 

「───ところで蘭ちゃん。そろそろライブとかやらない?」

 

 

 

 

 

「そうそう。んで、新曲もいいよなーって、さっき外でみんなと話してたんだよ」

 

 

 

 

 

「......っておい!2人とも!」

 

 

 

 

酷な提案を控えようと押し黙る俺に代わってつぐちゃんとともちゃんが口を開いた。それを聞いて、2人に向かって咎めようとした。

 

 

 

 

「いいよ、べつに」

 

 

 

 

だがそれは、提案を受けた本人自らによって止められた。

 

 

 

 

「えっ、いいのかよ」

 

 

 

 

 

「逆に聞くけど、なんでそんな心配するの。華道とかで忙しいけど、あたしだってやれることはやるつもりだから。それがライブとかだったら尚更だよ」

 

 

 

 

首を傾げるも、こうも自分の意思をまっすぐに伝えられるとぐうの音も出なくなる。でもそれは、本当は蘭がどうしたいかを心の底では薄々感づいていたからだ。

 

 

 

......俺もいい加減素直にならなきゃな。

 

 

 

 

「はあ......そうかよ。それは悪うござんした」

 

 

 

 

 

「まったく、これだから素人はー。蘭の扱い方を熟知し直してから......あっ」

 

 

 

 

 

「誰の扱い方だって......?」

 

 

 

 

そう言って怒気のこめられた拳を胸元に掲げた蘭に怯えるモカの姿がどうにもおかしくなり、杞憂に悩まされていた自分なんか忘れて俺は......いや、俺たちは愉快に笑いあった。

 

 

 

 

「んじゃ、そろそろ時間だし練習始めるか。ライブ開催も決まったしな」

 

 

 

 

 

「そだねー」

「ああ!」

「がんばろー!」

「うん!」

「ん」

 

 

 

ひと段落ついたところで区切りをつけると、やる気のこもった返事が返ってきた。それを互いに確認しあい、軽い足取り、同じ足並みでスタジオへと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな。新曲、作ってきたよ」

 

 

 

 

機材のセッティング途中、スタジオ内に勢いの良いドアの開く音と声が響いた。それを聞いて俺はシールドを握っていた手を放し、音の下へと目を向けた。

 

 

 

 

「蘭、今日も華道の集まりだったんだな」

 

 

 

 

 

「うん。そのせいで遅れた。ごめん」

 

 

 

 

 

「ははっ、いいよ別に。むしろおつかれ」

 

 

 

 

 

「うん!蘭ちゃんおつかれ!

 

 

 

 

労いの言葉をかけるともちゃんとつぐちゃんに、蘭は「そんなことより!」と少し照れくさそうに咳払いしながら、背負ったままだったギターケースのポケットから“あのノート”を取り出した。

 

 

 

“あのノート”......というのは、これまで蘭が手がけてきた曲の原案などが記されているノートである。それ以外にも色々とページが使われているみたいなのだが......何故かそこだけは誰にも見せたがらないのだ。

 

ただ教室では席が隣なこともあってか、教室でその例のページを開いているところをチラリと横目にしたことがある。その罪業の代償として、机の上に置いていた俺の手のひらが蘭によってくりだされた鋭利なシャーペンの一撃の犠牲となったのだが。

 

 

 

 

と、ひょんなことを思考しているうちに、蘭はみんなの前に歌詞のページの開かられたノートを無防備にも手渡し、マイクスタンドの前に立っていた。

 

マイクを握るのとは別の手には、アンプにコードを繋いでいる作曲アプリの開かれた携帯が握られていた。

 

 

 

 

「それじゃ、いくよ」

 

 

 

 

蘭が携帯に表示された再生ボタンをクリックした。それから数秒後、作曲アプリらしい機械的なメロディが流れてきた。それに合わせて、蘭も歌い始めたのだった────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高らかに、かつ渋さのあるギターの音を最後に曲と蘭の声が止まった。

 

 

 

 

「......どうだった?」

 

 

 

 

一息ついたところで、蘭からそう聞かれた。

 

 

 

だが、みんなは蘭の望んでいたであろう反応はしなかった。

 

それは俺も同じだった。

 

 

 

 

「あの......沈黙されると気まずいんだけど」

 

 

 

 

それを見て頼り無さげにする蘭に、まずはじめに口を開いたのはつぐちゃんだった。

 

 

 

 

「すっごくかっこいい曲だと思うよ!私はサビ前のところが好き!」

 

 

 

 

言葉ではそう言ったものの、つぐちゃんの顔はどこか曇っているようにも見えた。

 

 

次に、ともちゃんが感想を述べる。

 

 

 

 

「アタシもいい曲だと思うし、これからアレンジしていくのが楽しみだよ。ただ、その......」

 

 

 

 

一瞬躊躇したかのように見えたともちゃん。だが結局、自分の思ったこと全てを、蘭にそのまま伝えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──歌詞がちょっとわからなかったんだ」

 

 

 

 

......今まで、Afterglowに対するお客さんからのいろんな評価、批判を裏から聞いてきた。応援はもちろん励みになったし、少し棘のある評価も芽生えた悔しさをバネにして、それも別の意味での励みになった。

 

 

 

ただ今回に関しては、身内からの、あの幼馴染からの苦い評価......

 

 

このようなことは今まで経験したことがなかった。一番の理解者がお互いだったからだ。

 

 

 

 

「え......」

 

 

 

 

その理解者からの酷評とも言える容赦ないレビューに、蘭は困惑の表情を浮かべた。

 

 

 

 

「私も、難しい歌詞かもって思った。なんだかいつもの蘭が作る歌詞とは違うよね」

 

 

 

 

続くひーちゃんに、蘭は表情を変えずこう聞いた。

 

 

 

 

「そんなつもり、なかったんだけど......どういうところが?」

 

 

 

 

「うーん、なんて言うんだろう......うまく言えないんだけど......」

 

 

 

 

蘭からの質問に、ひーちゃんが言葉を詰まらせる。

 

そんなひーちゃんの気持ちを、「ちょっといいか」とともちゃんが代弁した。

 

 

 

 

「蘭はこれまでさ、アタシたちが経験したこととかをそのまま歌詞にしてきただろ?だからアタシたち自身もしっくりきてたと思うんだけど......」

 

 

 

 

ともちゃんの言う通り、蘭の作る歌詞......つまり、Afterglowの曲は俺たちが経験してきたものを題材としたものが多い。もちろんそれには、ガルジャムで披露したTrue colerも含まれている。だから俺たち以外の人からはあまり共感が得られにくい。批判を受ける要因もそこにあった。

 

 

 

でもそれでいいんだ。それが俺達だから。

 

俺たちがこれまでも、今でも、いつまでも......幼馴染でいられるように。Afterglowはそのために生まれたんだから。

 

 

 

だから俺たちが共感さえできればいいんだ。他人のことなんて気に病まず、俺たちさえ共感できていれば。

 

 

 

 

 

その共感を、今の俺たちはできずにいた。

 

 

 

どうしてもできなかった。

 

 

 

 

 

 

「今回の歌詞、アタシにもちょっと難しくてまだしっくりきてないんだ」

 

 

 

 

 

「雰囲気があってかっこいい歌詞だと思う!でも......わからない部分もあるかも」

 

 

 

つぐちゃんの総評も聞いて、蘭は「そう......」とだけ言った。

 

そしてしばらくの沈黙の後、こう告げた。

 

 

 

 

「ごめん、もう少し歌詞考え直してみる」

 

 

 

 

 

「忙しい中作ってきてくれたのに、ゴメン......ただメロディラインはカッコイイと思う。アタシたちは蘭が歌詞を直している間に、そこをアレンジしていこう」

 

 

 

 

「うんっ、そうだね!」

 

 

 

 

気持ちの切り替えとも言える蘭の言葉に、みんな静かに頷いた。そして、まずは各々のできることからやっていくこととなった。

 

 

 

 

「そうと決まれば、流。試しに叩いてみるからさ、テンポがズレてるかどうか確認してくれないか?」

 

 

 

 

 

「流誠!私もお願いー!」

 

 

 

 

もちろん俺も参加型だ。そして俺も、頼りにされている以上断る余地は無い。

 

 

俺は先ほどのように、静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

そう。頷いたのだ。

 

何も、言わなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......何も、言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「「......」」

 

 

 

 

 

 

俺とモカの2人だけ終始何も言えなかった。

 

ともちゃんたちが言っていたような感想も、提案も。文字通り何もかも......

 

 

 

 

 

 

ずっとあの蘭の不満そうな顔を、傍観することしかできなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭がそうなった理由。

 

 

歌詞が俺達の心を擦り抜けてしまった......それは蘭が、蘭だけが『変わって』しまったからなのではないか......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......そんな疑念を抱きながら。




いかがだったでしょうか。次回は1月13日の19時30分に投稿予定です。お楽しみに。


時間も余りましたので、久々に雑談のコーナー。

皆さんはもうお気づきになられてると思いますが、この作品の題名は全て二字熟語で構成しております!ですがネタが限定かつ不足しがち...なので今回よろしく造語も含まれておりますのでご了承くださいませ。



それではまた次回お会いしましょう。さいなら!
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