Afterglow〜Episode of Another〜   作:ある@誠心誠意執筆中

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どうもあるです。

リアルライブ連動イベント始まりましたね。最初はてっきりガチャキャラは限定のものかと思っていましたが、どうやら恒常のようですね。いやーよかったよかった......
皆さんはガチャは引きましたでしょうか?僕は無事友希那さんをお迎えできました。皆さんにも幸あらんこと、切に願っております。


それでは本編、どうぞ。







第6話 馬鹿

 

 

 

 

「おい流」

 

 

 

 

 

「ん?どうしたのともちゃん」

 

 

 

 

 

練習の休憩中、ペットボトルの水を飲みながらふらふらと歩いていると、窓際の席の方で携帯を見ながら何やら頭を悩ませている流が目に入った。

 

 

 

 

 

「何してんのか気になってさ」

 

 

 

 

 

「ああ......別に大したことじゃないんだ。ただの私情だよ」

 

 

 

 

 

「......そか。ならいいけど」

 

 

 

 

 

そう言いつつさりげなく携帯の電源を落とす流には疑念が募るばかりだったが、ここは彼の言葉を信じてあまり詮索はしてやらないことにした。

 

 

 

 

 

「蘭、頑張ってるかな」

 

 

 

 

 

「まあアイツなりに頑張ってるだろ」

 

 

 

 

 

「はは、そうだな」

 

 

 

 

 

話題は一変して蘭のことについてとなった。蘭は今バンド活動を休止し、華道の作品展に向けての作品作りに専念している。そんな姿を想像しながら、アタシと流は空に浮かぶ雲を窓越しに見つめた。

 

 

 

 

 

「前までは親の仇かっていうぐらい嫌がってたのに、今となっちゃアレだもんな」

 

 

 

 

 

「どっちかというと親が仇だったけどな。でもほんと蘭は成長したよ」

 

 

 

 

 

「ああ。その仇でもある親父がライブに来てもあまりとやかく言わなくもなったしな」

 

 

 

 

 

「あははは。確かに言えてるな────っと、そうだ」

 

 

 

 

 

流は上げた口角を元に戻すや否や何か思い出したように口をつぐんだ。何事かと応答を待っていると、その回答はすぐに返ってきた。

 

 

 

 

 

「そっちはどうなんだ?」

 

 

 

 

 

「ん?どうって?」

 

 

 

 

 

「練習」

 

 

 

 

 

「あぁ!おかげさまで絶好調だよ」

 

 

 

 

 

「ならよかった」

 

 

 

 

 

流は客観的に演奏を見て聴いて、アタシ達の演奏のどこに、いつ、どんな間違いがあったか、どう改善すればよいかを的確に伝えてくれる。これをもとに全体の合わせや個人練習をするのだが、流がアドバイスを加えた後なら大概が数回で上手くいく。流自体が素人なためアドバイスの内容はフィーリング要素が濃いが、幼馴染みなだけあってかそこは流れで不思議とやっていけているのだ。

 

 

 

 

 

「案外適当言ってる気しかなかったけど、まあそう言ってもらえて何よりだよ。にしても最近頑張りすぎじゃないか?」

 

 

 

 

 

「あ?そりゃそうだろ」

 

 

 

 

 

辟易とする流に何を言っているのだと肩をすくめる。その理由にはもちろん蘭の不在のことも含まれているが、もっと根本的なことを言えば“あのライブ”にあった。

 

 

 

 

 

「RAISE A SUILEN......アイツらの演奏はなんかこう、グッとくるものがあってな」

 

 

 

 

 

「もう......それは何回も聞いたよ」

 

 

 

 

 

「何回でも言うさ!あと、グッとくるだけじゃなかった」

 

 

 

 

 

ガールズバンド時代を終わらせると豪語し、会場をざわめき立たせて、好き勝手やって去っていく。アタシには純粋な尊敬以外にも、RAISE A SUILENへの印象がそうとも捉えられた。事実、Afterglow含めた他バンドが培ってきた会場の熱も掻っ攫われてしまった。

 

 

 

 

 

「正直悔しかったんだ......」

 

 

 

 

 

「俺達はいつも通りやればいいだけさ」

 

 

 

 

 

「でもガールズバンドを終わらせるって上から目線で言われたら、アタシ達なんか目じゃないみたいな感じでイヤなんだよ」

 

 

 

 

 

「まあそれもそうだな」

 

 

 

 

 

納得した様子の流にアタシもうんうんと頷いた。流には間近でアタシ達の練習への意気込みっぷりを実演を通して見てもらっているのだから、逆に理解してもらわなかったら困る。

 

流は大きく伸びをしてからすくっと席を立ち上がると、アタシの方を見つめた。

 

 

 

 

 

「言われてみればともちゃん以外もすげえ頑張ってるみたいだし、気持ちは十分にわかるよ。でも、モカまで練習熱心になってたのは意外だったなぁ」

 

 

 

 

 

「わかる!あのモカがあそこまでやる気になるとは思わなかったもんな」

 

 

 

 

 

セッション中でも個人練習の時でも、モカの頑張りは目に見えていた。普通ならアイツは頑張るにしても影で努力するタイプなのだが、最近はいつにもましてアタシ達の前でも真面目に練習を行っているのだ。何があったかと本人に聞いても「別に〜?」といつもの調子で返されただけだったが、アイツにもきっと先日のライブで思ったことがあるに違いない。

 

 

 

 

 

「まさか今も練習してるのか?」

 

 

 

 

 

「たぶんやってると思うぞ。アタシが休憩し始めてからも外に出てきてないし」

 

 

 

 

 

「マジかよ......なんか俺達だけ休憩しといて悪いな」

 

 

 

 

 

「そうだな。時間もちょうど良いし、アタシ達も戻って練習再開するか?」

 

 

 

 

 

アタシの誘いに流は「もちろん」と答えた。その予想通りの答えを聞いて、アタシも先ほどの流と同じように背伸びをした後、2人でスタジオへと向かった。

そういえばモカもそうだったが、つぐとひまりも休憩中外に出てくることはなかった。モカの練習に少し付き合ってから休むと言っていたが、アタシが休憩し始めてから20分弱は経っているため少しどころではない気もするが......

 

訝しみながらもスタジオの扉を開ける。その瞬間に外に漏れ出てくるであろうサウンドに備えてあらかじめ身構えていたが、聞こえてきたのは爆音ではなくひそひそとした話し声だった。

次に、つぐとひまりが心配そうな眼差しをしながらモカの手元を念入りに弄っている光景が目に入った。

 

 

 

 

 

「あれ?どうしたんだ3人とも」

 

 

 

 

 

「あ、せいくん、ともちん」

 

 

 

 

 

「休んでんのか......って!」

 

 

 

 

 

側まで近づいてようやく気がついた。なんと、モカの指から血が垂れ流れていたのだ。つぐとひまりはというと、その手当てをしようと絆創膏だの何だのと慌てていた。

 

 

 

 

 

「どうしたんだよこれ!誰にやられたんだ!?」

 

 

 

 

 

「巴!お、落ち着いて!!これは、えっと......」

 

 

 

 

 

「ひひひまりちゃんこそ落ち着こ!!ね?」

 

 

 

 

 

「速弾きしてたら切っちゃっただけだよー」

 

 

 

 

 

呂律の回らない2人に代わって、怪我した本人であるモカがその原因を教えてくれた。アタシ達に現状を伝えようとしているのかひょうきんにその怪我をした箇所を差し向けてきたが、その傷口から伝う痕跡から見て、すでに結構な量の血が流れ出てしまったようだ。

 

 

 

 

 

「切っちゃったーじゃねえよ!!ちょっと、2人とも絆創膏貸して!!」

 

 

 

 

 

「え?あ、はい!」

 

 

 

 

 

わなわなと震える2人から絆創膏を受け取ると、流は冷静に、かつ迅速にモカの傷の手当てを施した。

2人からもらった2つの絆創膏は剥がれにくくするため、二重に傷口に貼られた。その器用さを間近で見たモカはというと、「おー」と呑気に感嘆の声を漏らした。

 

 

 

 

 

「さんきゅーせいくん」

 

 

 

 

 

「はあ......まったく、心配かけさせやがって」

 

 

 

 

 

そう言ってパンパンと手を払う流に対して、アタシ達もまた多大な感心を抱いた。

 

 

 

 

 

「す、スゴい......!」

 

 

 

 

 

「ありがとう流誠くん......私達、こういうの慣れてなくて」

 

 

 

 

 

「アタシもとっさに動けなかった。ゴメン」

 

 

 

 

 

「ケガの手当ては弟とかにみっちり鍛えられてるからこのくらいどうってことないよ。それより......」

 

 

 

 

 

流の穏やかな声色に緊張感が加えられる。その矛先は、流に優しく手を握られたモカに向けられていた。

 

 

 

 

 

「お前もこんなになるまで無理するなよな」

 

 

 

 

 

「え、あ......うん」

 

 

 

 

 

「めっちゃ血も出て痛いだろうに、大丈夫かよこれ......弦の方は切れなかったのか?」

 

 

 

 

 

「ああそうだった。ごめん、弦も切っちゃったんだよね」

 

 

 

 

 

モカはそう言って、握られていない方の手を使ってスタンドに立てられたギターの方へと指さした。切れていたのは1弦と2弦だった。

 

 

 

 

 

「あっちもあっちでヒドいな......みんな、モカを頼む」

 

 

 

 

 

「おう」

 

 

 

 

 

そそくさとギターの方へと向かう流を見送り、代わるがわるでモカの元へと向かう。さらに近くで見ると、モカのパーカーには赤い斑点がポツポツと出来ているのが伺えた。

 

 

 

 

 

「パーカー汚れちゃったな。モカ、ホントに大丈夫か?」

 

 

 

 

 

「うん、ありがとーともちんー。つぐとひーちゃんもねー」

 

 

 

 

 

「「まだ何もしてあげれてないよ!」」

 

 

 

 

 

己の不甲斐なさを揃って嘆くつぐとひまりを見て、モカはわははと愉快な笑い声をあげた。それを見てアタシも、大事に至らなかったみたいで何よりだと胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

「せいくんには申し訳ないことしたなー」

 

 

 

 

 

情けなさそうに懺悔するモカの視線の先には、淡々と弦の張り替えを行っている流がいた。弦が切れることなんて滅多にないのでてこずっているだろうと思っていたが、案外あと少しすれば終わるというところまで作業は進んでいた。

 

 

 

 

 

「流誠くんって手際良いよね」

 

 

 

 

 

「ほんとだよー!モカはイイ彼氏さん持ったね」

 

 

 

 

 

「────うん、まーね」

 

 

 

 

 

「......?」

 

 

 

 

 

変に間を置いて返事をしたモカはどこか無表情だった。見ての通り流は小回りが効いて気遣いもできる、彼氏として見れば最高のパートナーだ。側から見れば完璧に近いように思えるが、彼女の立場でしかわからないことでもあるのか、モカには流に対して気に入らない点でもあるように思える。

 

 

 

 

 

「まーねって言ってる割には物足りなさそうだけど」

 

 

 

 

 

「あー、別にそういう意味じゃないんだよねー。あたしはただ......」

 

 

 

 

 

「ただ?」

 

 

 

 

 

アタシとモカのやりとりのはずが、周りの2人も口ごもるモカへと興味津々そうに目を丸くさせた。モカはというと、口が滑ったと言わんばかりに「あっ」と呆気ない声をあげた。しかしアタシら3人からの期待も裏切りたくないとも思ったのか、それからすぐに観念したようにはぁとため息をついた後、ゆっくりと口を動かし始めた。

 

 

 

 

 

「......もっと別の言葉をかけてもらいたかったなーって思ってさー」

 

 

 

 

 

「「「別の言葉......?」」」

 

 

 

 

 

「そ、別の言葉。ただそれだけだよ」

 

 

 

 

 

“別の言葉”────。そうモカから告げられた答えを、脳内で反芻させる。しかし、いつまで経ってもその意味を理解することはできなかった。答え合わせをしようとモカに聞こうとするも、彼女はアタシ達が気付かぬうちに、寝息を静かに立てながら夢の世界へと旅立っていた。

 

 

 

ふと、流の方へと視線を向ける。すると弦の張り替えはすでに終わらせていたみたいで、代わりに休憩時のように、再び携帯の画面へと意識を集中させていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────それでね?ロックったら恥ずかしいですー!って言って......』

 

 

 

 

 

「あはは、そうかそうか」

 

 

 

 

 

報告会という名の戸山との電話越しの会話では、もう朝日の話題で持ちきりだった。今日早速様子見で接触したらしいが、先ほど練習中に送られてきた写真から見ても戸山達と一緒に映った朝日の顔はとても晴々としていた。ほとんど朝日が抱きつかれていたりして少々やりすぎな感じもしたが。

 

 

 

 

 

『......ふぅ。あーあ!いっぱい喋った喋ったー!とりあえず今日はこのくらいかな』

 

 

 

 

 

「ほんとありがとな。頼んでもないのに話も聞いてやったりしてくれて」

 

 

 

 

 

『私達がそうしてあげたかっただけだし別にお礼なんていいよ。それに悩みも聞けたし』

 

 

 

 

 

「そうか。......ああそうだ、曲も作ってあげてるんだって?」

 

 

 

 

 

『現在進行中!今はりみりんの歌詞に合わせてメロディライン作ってるんだ。だからもうすぐできるよー』

 

 

 

 

 

俺が戸山に頼んだのは『朝日に勇気を持たせてあげてくれ』、ただそれだけだった。そんな俺の無計画で端的なお願いを戸山達は快く引き受けてくれて、こうして誠心誠意向き合ってくれている。まさかそれがエールソングにまで発展するとは思いもしなかったが。

 

 

 

 

 

「さすがは行動力の塊といったところか......」

 

 

 

 

 

『んー?何か言った?』

 

 

 

 

 

「あいやなんでもない。つかもうだいぶ話したし、今日はこのへんでお開きにしようぜ」

 

 

 

 

 

ライブハウスを出た時にはまだ半身残っていた太陽も沈んでしまい、辺りにはすでに夜の気配が訪れていた。いくら春とはいえ夜は冷える。空に見えるのが一番星だけのうちに早めに孤児院に帰らねば。

 

 

 

 

 

『そうだね、私もこの後みんなと練習あるし』

 

 

 

 

 

「気合い十分だな。頼んだぞ、戸山」

 

 

 

 

 

『まっかせてー!じゃ、またね!』

 

 

 

 

 

「ん、じゃあな」

 

 

 

 

 

別れの挨拶も告げたところで電話を切り、俺はやっとかと言わんばかりにほうとひと息ついた。

こう言っちゃ悪いが、やはり戸山と話すのは少々疲れる。しかし話すといってもどうせこういう時ぐらいしか機会がないだろうから、そこは仕方ないと割り切るように公園のベンチに勢いよく背中を預けた。その衝撃で少しだけむせた。

 

 

 

 

 

「ふぁ〜あ、ねむ......」

 

 

 

 

 

突然の眠気にたまらず欠伸を立てる。心なしか視界もぼやけてきて、なんだか不思議な心地だった。

 

 

 

 

......不思議か。

 

 

 

 

 

「......」

 

 

 

 

 

立ち込む倦怠感のままに、公園の電灯へと視線をおくる。そこに漂う蚊柱をぼーっと見つめながら、今までの自分の行動をふと振り返ってみた。

 

 

不思議なのだ。今までそんなことなかったのに、ここまで幼馴染みや家族以外の他人に尽くそうとする自分のことが。相手が数少ないギター仲間である朝日だからこその行いなのかもしれないが、よくよく考えてみれば理由はそれだけじゃないような気もする。もっと潜在的な『何か』が、あまり他人に関心を示さない俺をここまで突き動かしてくれているのではないかと......

 

 

 

 

 

 

「......いや」

 

 

 

 

 

やめておこう。これ以上考えても頭が痛くなるだけだ。それにもしその『何か』がわかったとして、それが義理人情のようなものだったらまるで俺が恩着せがましい奴に見えて自分で自分が嫌になってしまうかもしれない。

 

 

俺は『流誠(おれ)』だ。ひーちゃんに教えてもらってから変わったんだ。俺はもう簡単に自分を見失いたくない、投げ捨てたくない。『何か』に捉われていてはいけないんだ。

 

 

 

俺は俺の意思で朝日を助けたい。

 

それが、俺の本心だ。

 

 

 

 

 

「────っしょっ、と」

 

 

 

 

 

物思いにもふけ終え、気持ちを切り替えたところでいい加減孤児院に帰ろうかとベンチを立ち上がった。めまいはもう治っていた。

 

自転車の側まで歩み寄り、ポケットからカギを取り出す。その際、同じ所に入れていた携帯がブルブルと震えだした。

カギをまさぐろうとした手で携帯を取り出す。画面には『モカ』という文字と緑と赤の電話のボタンが映っていた。

 

 

 

 

 

「もしもし?」

 

 

 

 

 

『やあせいくん、君の大好きなモカちゃんだよ〜』

 

 

 

 

 

「......切るぞ」

 

 

 

 

 

そう言って俺は耳から携帯を離した。すると案の定モカの慌てふためいた待ったの声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「なんだよ、からかうだけなら明日にでも相手してやるからいいだろ。こっちも早く帰って飯作ってやんなきゃなんだよ」

 

 

 

 

 

『違うってばー!冗談だよぉ〜......冗談じゃないけど』

 

 

 

 

 

「はぁ......で?なんの用?」

 

 

 

 

 

やれやれと肩をすくめつつモカの用件を聞いてやった。

 

 

 

 

 

『今日のギターとかのお礼言おうと思ってさー』

 

 

 

 

 

「なんだそんなことか。つかギターよりお前だよお前。血は止まったのか?」

 

 

 

 

 

『うん。お風呂入る時絆創膏剥がしたらかさぶたになってたよー』

 

 

 

 

 

「そうか。もし自分でやるのが難しいなら親にでも頼んで貼り直しとけよ」

 

 

 

 

 

『はいはーい』

 

 

 

 

 

モカの二つ返事には疑念を抱きかねないが、そこはグッと喉元で呑み込んだ。それよりも優先して伝えるべきことを言っておかなければならなかったからだ。

 

 

 

 

 

「最近無理しすぎなんじゃないのか?ケガしたのだってそのせいだし......ライブ、悔しかったのか?」

 

 

 

 

 

『んまあそんなとこー』

 

 

 

 

 

「そうか......あんま無理すんなよ」

 

 

 

 

 

『......うん、わかった』

 

 

 

 

 

モカは俺の忠告を受けると、ひとつ間を置いてからそう返事した。不思議といつもの調子ではなく元気のないように聞こえた気がするが、気のせいだろうか。でもまあそうなるのも仕方がないことなのかもしれない。

もちろんモカもだが、頑張っているのは彼女だけではない。ともちゃんやつぐちゃんやひーちゃん、もちろん俺だってより一層練習に励んでいる。モカの声が活力がないように聞こえたのはそのせいで疲れたからだろうし、俺だって疲れによって幻聴が聞こえたからなのかもしれない。もし後者なら病院に行った方が良いが。

 

いずれにせよ現段階ではそこまで大事には至っていない。であれば、今のうちに釘を刺しておかねばなるまい。

 

 

 

 

 

「とにかく療養しろよ。体壊しちゃ本末転倒もいいとこだからな」

 

 

 

 

 

『あいあいさー』

 

 

 

 

 

「よし。それじゃあ切るぞ」

 

 

 

 

 

『はーい。バイバーイ』

 

 

 

 

 

モカの声を聞き届け、今度こそ電話を切る。その瞬間、俺の体を肌寒い夜風がふらふらと通り過ぎて行った。

 

それに急かされるままに、俺は孤児院へと自転車を駆り立てた。頭の中は今晩の献立と、朝日のこれからについてでいっぱいだった。

 

 

 

 

 








いかがだったでしょうか。次回は5月6日の20時30分に投稿予定です。お楽しみに!


〜お願い〜
コロナウイルスの感染予防のためにも自宅待機のほどよろしくお願いします。皆さんの心がけ一つで助かる命があります。辛いと思いますが、大切な人のためにも不要不急以外の外出は控えましょう。


それでは今回はここまで、また次回お会いしましょう。さいなら!
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