Afterglow〜Episode of Another〜 作:ある@誠心誠意執筆中
えー、挨拶も済ませたところでみなさんにお詫びと訂正をさせていただきたく存じます。
前回番外編を投稿すると言いましたが、あれは特別章の誤りです。申し訳ございませんでした...
番外編も特別章も一緒に見えますが、厳密にいえば特別章は別の世界線で起こっていることなので番外も何もありません。そのことがうっかり頭から抜けていたようです。今後はしっかりと区別できるように心がけていきたいと思います。改めまして申し訳ございませんでした。
それでは本編、どうぞ。
空を見上げると、満天の夕焼け空が広がっていた。
雲の少ない空は底が抜けているようで、どこまでも突き抜けていくオレンジとダークブルーの黄昏は俺の足を止めるのに十分な魅力を有していた。
「すげぇ......」
筋状に伸びた薄い雲にかかる夕影も、周囲一帯を照らす夕日も、今日の夕焼けは一段と輝いて見えた。目に映るどれもが美しく見える。そんな命が吹き込まれた景色の最端に、一番星を見つけた。太陽系のうち第二惑星に位置づけられている、金星だ。
俺は小さい頃から星が好きだった。暇さえあれば天体図鑑と睨めっこして、夜になると星空に浮かぶ実物を眺める。高校も始まって忙しくなった今でも、気分転換に星を探すことだってある。
しかし、それ以上に好きなものがあった。それがこの夕焼けだ。
星空に比べたら眺める機会など無いに等しいはずの夕焼け。それでも、俺にとっての一番は夕焼け一筋だった。
俺ももとよりおとなしい性格だったので、こんな燃え盛るような空よりも静寂に包まれた星空の方が性に合っているはずだった。それなのに、何をそんなに夕焼けに思いを馳せることがあるのだろうか。
確かに夕焼けは綺麗だ。星空と同じく天気に左右されやすいが、その優美さを拝めることができた時にはいつだって感動させられる。
────ではこの『痛み』も、感動の一種とでもいうのだろうか。
深い思い入れなんて一切ない。なのに、どうしてこんなにも胸が締め付けられるのだろうか。
どうしていつも、涙が溢れてくるのだろうか。
「────......」
頬を伝う熱は放っておいた。どうせ拭ってもまたすぐに流れてくるし、風が乾かせてくれるだろうから。別に感傷に浸りたいわけじゃない。そもそも浸る感傷なんてないわけだし......
なら、この鬱陶しいまでの胸の『痛み』はどう説明すればよいのだろうか。
その答えがないかと、俺ひとりの高台の周囲を見渡した。やはり何もなかった。
あるのは昼と夜の境界線だけで、その世界の一部に俺が在るということを再認識させられただけだった────。
それが気のせいだったことに気がつけたのは、あの眩しいまでの紅を目にした瞬間だった。
「────ぁ」
『何もない』と思われた高台。しかしそこには、俺以外の存在が5名ほど見受けられた。
一人は、おとなしそうな普通の女の子。
一人は、情熱が滾るような女の子。
一人は、面倒見の良さそうな女の子。
一人は、のんびりでおっとりとした女の子。
一人は、夕焼けを閉じ込めたようなメッシュの女の子。
一見して個性はバラバラでも、仲の良さそうな5人だった。かなり距離が空いているため何を喋っているのかは聞こえないが、それだけは確かだった。
......ああ、そうだ。彼女達はきっと幼なじみに違いない。いつも5人で肩を並べて、あの背中に背負ってるギターケースとかだって、みんなといつまでも仲良くいたいからとか、そういう理由でバンドを組んでいるからだろうな。
羨ましいな。俺にもあれぐらい仲の良い友達がいたらな。それこそ、幼なじみのような分け隔てなく気の許し合える友達が。
ここまで初対面の人に憧れを抱くことなんて初めてだ。いつもなら人見知りをかまして見て見ぬフリばかりするのになぜだろうか。これまでで仲良し同士なんて腐るほど見てきたはずなのに、この子達からはなんだか特別なものを感じるのだ。
今目の前に広がっている、この夕焼けと同じような。
そんな、身も心も洗われるような何かが────......
「......あれ」
気がつくと、あの5人組は姿を消していた。
再び俺ひとりとなってしまった空虚なまでの高台には、切なさを感じずにはいられなかった。
そんな感情を抱いたのは、そう、きっと。
......きっと。
「────......あぁ」
やめておこう。見ず知らずの彼女達の関係に俺も関わっていただなんてありもしないことを想像して、一体何になるっていうんだ。この胸の痛みだって......そうだ。これはきっと、喘息の発作が出たからに違いない。
毎回こうして夕焼けを見るたびに苦しくなるのもきっと偶然なんだ。でなきゃ説明がつかない。理解できない。何を根拠に、あの子達につまらぬ情を抱くのか。
......いや、でも。
『つまらぬ情』、か。
初対面である彼女達とのひと時を想像するなんて気色の悪いことだというのはわかっている。でもそれを真に受けるだけで終わらせることが、俺にはどうしてもできなかった。
世の中に遍在する可能性のなかで、彼女達と過ごす日々。
同じ高校に行って、同じバンド活動をして、時にはぶつかって、それでもまたつながりあって────。
俺にはそのどれもが、なぜだか異様なまでに想像できてしまうから。
「......また、会えるかな」
ぽつり、と吐き捨てた言葉は瞬く間に空へと散っていった。やがてそれは水面に落ちた雫のように、波紋を広げながら雲の一部となっていった。
────雲が空を覆っていく。
気づけば夕焼けは、星の輝きも月明かりも届くことのない曇天の夜へと変わっていた。
いかがだったでしょうか。次回は本編で、4月2日の20時30分に投稿予定です。お楽しみに!
今回の世界線では、もしも流誠くんがみんなのことを『一切』忘れていたら、つまりバッドエンドルート的な感じに仕上げてみました。
一切というのは文字通り、事故で記憶障害を患ってしまい、Afterglowのみんなについて何もかもを忘れてしまったということです。
少しだけでも蘭達のことを覚えていた本編とはまた大きく異なっていますが、流誠くんも奥底では何かを予感している、それでも思い出せない。そんな情景を書きたいと思い、この世界線を作りました。切ない。
とまあ今回はこの辺で、また次回お会いしましょう。さいなら!