Afterglow〜Episode of Another〜   作:ある@誠心誠意執筆中

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ただいま!無事日本に帰りましたあるです!これからはいつも通り投稿していくんでどうかご安心を!

あと、修学旅行の片付けなどで投稿時間過ぎてしまいました。誠に申し訳ない......次からは気をつけます。


では、本編どうぞ!







第6話 切願

練習後の帰り道、蘭の異変に気付き始めていた俺たちは気まずさで押しつぶされそうになっていた。

気付いてるなら「何か悩み事か?」と聞いてみればいいのではと思うかもしれない。だが聞いたところで、あの強情で仲間思いの蘭が簡単に口を割ってくれるはずがない。特に今回の件は第三者視点から見た感じ、結構な厄介事っぽいし、それだと尚更蘭は仲間を私情に巻き込んでたまるかという気持ちが増していくだろうから、蘭以外のメンバーはあまり電話の件については蘭の前では触れないようにすることに、暗黙の了解のもと決まった。

 

「おーい、ひまりってば。聞いてるか?」

 

「えっ!?な、何!?」

 

ともちゃんが突然、ひーちゃんの名前を呼びだした。

 

「別になんでもないけど。ずいぶん難しい顔してるからどうしたのかと思って」

 

「あれ!?私そんな顔してたかな?あ、あははー。ちょっと、疲れちゃったかな。だ、大丈夫!なにもないよ!」

 

「んー、そうか?」

 

呼びかけたワケは、どうやらひーちゃんがずっと「難しい顔」のままだったかららしい。

 

(ひーちゃんも電話のこと気になってたのか。流石、俺たちAfterglowのリーダーだ)

 

ひーちゃんが難しい顔をしていた理由を勝手に解釈し自己完結していると、蘭が別れの挨拶をした。

 

「......じゃあ、私はここで」

 

「ああ......じゃあな、蘭。また明日、学校で」

 

それに応えた俺に続いて、他のメンバーも蘭に挨拶をした。こうして残りは、蘭以外の5人だけとなった。

 

 

俺にはその様がとても空虚なものに感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ......今日はいつもよりも、調子が悪かった気がする......」

 

最近頻繁にかかってくる父さんからの電話のせいか、練習中にキーを外してしまうことが多くなった。そのせいでメンバーには心配をかけさせてしまっているかもしれない。

そう思うと、胸が痛くなった。

 

「華道がなんだっていうの......私はみんなと、バンドを続けたいだけなのに......!」

 

募りに募って、今にもはち切れんばかりの父さんに対する怒りを抑えながら、私は家の玄関の扉を開けた。横開きの、見慣れた和風の扉だ。

 

靴を脱いでリビングへ向かうと、父さんが座椅子に座って、私の帰りを待っていた。

 

「......ただいま」

 

「蘭、また今日もこんな遅くまでバンドの練習か?最近は華道の集まりにも顔を出さずに、そんなことばかりして...少しは自分の立場を考えなさい」

 

人に決められた立場なんて、自分のものじゃないのに。

 

あたしの中の淀みがまた、グツグツと煮え立ちだした。

 

「ほっといてよ。父さんには関係ないでしょ」

 

ああダメだ。父さんの言動全て、気に触る。

私はずっと、募った怒りが形をもって体の外部に解き放たれてしまうことを恐れていた。ましてやその凶刃があの大切な幼馴染達に向けられることなど────。

 

 

そんな娘の気持ちなんかいざ知らず、厳格な父親はこう続けた。

 

「関係ないわけないだろう。私はお前の父親であり、美竹流の家元だ。お前はその後継だという自覚があるのか?」

 

この言葉を何度聞かされてきたことか。私はそれに返事をすることすら呆れてしまった。

 

「自覚が足らないようだからもう一度言っておこう。美竹流の後継者であるお前は、もっと積極的に華道に触れるべきだ。だいたい、高校生になったら、本格的に後継者としての勉強が始まると前から言っていただろ。それをお前は......」

 

 

 

言わせておけば、長々と偉そうに......

 

 

 

 

理不尽に突きつけられる運命と、自身に募っていくばかりの拠り所の無い怒りの重圧に耐えられなくなった私は、重たい口を嫌々開いた。

 

「......うるさいな!もう、部屋に戻るから」

 

「待ちなさい、蘭。」と呼び止められたが、知ったことでは無い。華道だってそうだ。

 

二階にある自分の部屋に駆け込んだ私は、入るや否や、ドアに背中を預け座り込んだ。

それから私は、自分の唯一の理解者である幼馴染達のことを脳裏に浮かべていた。

 

(......みんなと、離れたくない......ずっと、一緒にいたい......)

 

切なる願いを込めながら。

 

「モカ、流誠......あたしは──」

 

そして、最も親しみ深い2人の名前を、涙ながらに口に出した。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

(......?モカから、電話......?)

 

 

 

ブーッ、ブーッという携帯のバイブ音がポケットの中から軽快に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の蘭ちゃん、後半少し疲れてそうだったよね...」

 

「ああ。珍しくキーを外してたしな」

 

「本人はそれを長時間の練習のせいだって言ってたけど......原因はそれだけなのかな」

 

「どういうこと?」

 

蘭が途中から家に帰った後、俺達残りの5人は、今日の蘭の様子のことで話題が持ちきりとなっていた。今はその蘭の悩みの原因をみんなで考えているところで、ともちゃんの持論を基に考察している。

 

「最近、蘭が頻繁に誰かと電話してるみたいなんだ。相手は、蘭の親父さんからじゃないのかなって思って」

 

ともちゃん曰く、蘭のお父さんが関係しているらしい。そこで俺は、とある疑問を一つ浮かべた。

 

「ごめん......なんで、蘭のお父さんが関係してくるんだ?」

 

そう。俺は蘭のお父さんについて、まったくの情報を得ていなかったのだ。記憶喪失をした過程で、その情報もトんだだけなのかもしれないが、いずれにせよおいそれと断定することはできない。

 

「あ、そっか......流誠くんはあまり、知らなかったんだったね」

 

と、蘭のお父さんの情報を求めていた俺に、つぐちゃんが親切にも教えてくれた。

 

聞くと蘭のお父さんは、華道の美竹流の当主だそうだ。そんな父親の娘である蘭もいずれは華の道に進むようになる。そんな話も、つぐちゃん自身が近所の人から聞いたことがあることも教えてくれた。そして蘭のお父さんももちろん、その気でいるのだろう。

 

俺が納得した様子を確認したともちゃんが、話を再会し始めた。

 

「前に蘭の親父さんが、高校生くらいになったら蘭に華道の勉強を始めさせたいって言ってたんだ」

 

「だが、当の蘭本人はそれに反対していて華道を継ぐ気も無い......ってとこか」

 

「ああ。だから、その件で親父さんから電話がかかってきてるんじゃないかって思ってさ」

 

自分の人生を奔放に生きている娘と、自分の言いなりにならない娘をどうしても思い通りにさせたい愚かな父親。

今の俺には、蘭と父親の関係がそんな風に見えた。

 

それから、自分とモカの2人で見かけた、あの蘭の電話の最中の風景をみんなに話し始めた。

 

「実は今日、俺とモカで休憩中に抜け出した蘭の後をこっそり追ってみたんだ。前々から蘭から感じてた違和感の正体を、原因を、直接本人から聞こうとして......」

 

けれども蘭はすごい剣幕で誰かと電話しながら、『関係ないでしょ!』とか『ほっといて!』って怒鳴っているのが見えた。そこで俺達は、しばらく観察することにした。それで気付いたことがあるのだが、蘭が電話を切ったあと、何かをこらえるような顔もしていた......

 

 

「その後の練習中も、さっきだってずっとつらそうな顔をしてた。モカは気付いてたよな?」

 

一部始終を語った後、同行していたモカに今日の蘭の様子がどうだったか聞いてみた。

 

が、予想外の答えが返ってきた。

 

「ん〜、そうだった?蘭はいつもあんなカンジじゃん?みんなも分かると思うけど、こう、ムムッ!ってしてるっていうか」

 

共に間近で同じ光景を見ていたはずなのに、感想はまったくの逆のものだった。

そこで、露骨な疑問をアイコンタクトで投げかけてみると、モカからは頷き返されただけだった。ただそれは、「まあ待て」というような意味が込められていそうな頷きだった。

何か考えでもあるのだろうか。

 

「実は私も、流誠と同じように感じてたんだけど......私の勘違いだったのかな?ならいいんだけど......」

 

モカの白白しいようで見抜けない芝居に、ひーちゃんはまんまと自分の見解を捻じ曲げられてしまった。

 

「けれど、心配、だね...」

 

「ま、明日以降もあんなカンジなら、タイミングを見て流たちがやろうとしたように、蘭に直接聞いてみるのも手か。簡単に答えそうにはないけどな」

 

「まあ、やれるだけやってみようぜ」

 

「「「「うん!(おー)」」」」

 

蘭の性格上効果的ではないものの、蘭から直接悩みを聞き出して親身になってその悩みを聞くということになった。

 

 

 

 

 

しばらく歩いた俺達は、それぞれの家に繋がる交差点で別れを告げた。

 

俺とモカだけはそこからの帰り道が途中まで一緒だったので、今日の蘭の様子を2人で、もう一度振り返っていた。

 

「蘭の様子がおかしかったのって、今日だけじゃなかったよな」

 

「うん、この前の練習も、いつもよりムムムッてしてたー」

 

今日のことだけではなく、前の練習でも蘭から違和感を感じていたどうかも聞いてみた。

やはりモカも、薄々勘付いていたらしい。

 

「ムムムッていえばお前、なんでさっきみんなの前で蘭についての話を逸らそうとしてたんだよ」

 

次に、先程のモカの言動でずっと疑問に思っていたことを思い出した俺は、その本意は一体何だったのか聞いてみた。

 

「ありゃりゃ、気付かれてましたかー。あの演技のことなんだけど、あまりみんなに心配かけたくなかったからなんだよねー」

 

「やっぱ演技だったのかよ...でも、そうか。なんだかんだいって、モカもみんなに気を遣ってくれてたんだな」

 

「当たり前ですよー」

 

その点では幼馴染としての経験やAfterglowとしての活動が短い俺に比べて、ベテランのモカの方がよく気が回るのかも。

 

「そのくせ俺は心配を煽り立てるようなこと

言っちまって......はぁ......」

 

「まあまあ。どんまいどんまい。それよりさー、モカちゃん、いいこと思い付いたんだけどー」

 

と、俺の肩をポンポンと叩いた後モカが突然話を切り替えてきた。

 

「いいこと?」

 

「まあまあ、耳を貸してみなさい」

 

「あ、ああ......?」

 

一体何を思い付いたのかと思い、モカの言う通り耳を貸した。

それからモカは、「いいこと」についてこそこそと話し始めた。声と共に出てくる息が、耳にかかってくすぐったい。

 

 

して、その「いいこと」の内容というのは...

 

「“蘭に電話をかける”?」

 

至極単純なものだった。

 

「......耳の近くで話すほどでもなくね?無駄にドキドキした俺がバカだった......」

 

「んー?何にドキドキしたのかなー?」

 

「うるさい......で、蘭に電話して、そこから何の話をするんだよ」

 

「いつも通りの会話をするだけだよー」

 

ひねりのない作戦のひねりのない内容に、俺は最初は肩をすくめていた。

けどよく考えてみれば、それが逆に蘭を少しでも安心させれる良いスパイスになるかもしれないと、次第に思い始めた。

 

「なるほど、な。いつも通り蘭とたわいない

会話をして安心させる、ってことか」

 

「ごめいとー。さすがせいくんだねー。それじゃあ早速、蘭に電話してみよー」

 

「俺、携帯持ってないんだけど......」

 

「しょうがないなー、じゃあモカちゃんの携帯からスピーカー通話で話そうかー」

 

その時携帯を持ち合わせていなかった俺は一言謝罪をはさみ、モカの携帯越しから蘭と会話させてもらうことにした。

 

 

携帯から発信してから蘭が電話に出たのは、ほんの数秒後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電話の発信主がモカだということに気付いて一瞬呆気にとられていたが、すぐに携帯に表示されていた緑の受話器のボタンを押した。

 

「......もしもし」

 

『もしもーし。蘭?ワシワシ、ワシじゃよ。モカじゃよ。なんてねー』

 

「モカ......」

 

『オレオレ詐偽みたいに言うなよ......あ、蘭?聞こえるか?流誠だよ』

 

「って、流誠もいるの?どしたの2人とも。急に電話なんて......」

 

電話から聞こえてきた2人の声を聞いて、体の奥底から込み上げてきていた淀みが消えていくのを感じた。

 

そうして話している安心感と怒りからの解放感からか嗚咽が出そうになったが、それをなんとかこらえて2人からの返答を待った。

 

『それがさー蘭、聞いてよ〜。帰り道せいくんと2人きりになっちゃって、せいくんがいきなりモカちゃんのこと襲ってむぐぐぐ』

 

『はああああお前何言ってんだよ?!蘭さん!?別に襲ってませんからね!?モカの度が過ぎたジョークですからね!?』

 

モカが冤罪をかけられそうになった流誠に口を塞がれたのか、途中で言葉を詰まらせていた。

 

「ふふっ......うん、分かってるよ。モカの声聞いてたらなんとなくそう感じるから。あくまでなんとなくだけどね」

 

濡れ衣を着せられている流誠に追い打ちをかけるようにからかってみると、悲痛な叫び声が返ってきた。ああ、おもしろい。

 

すると正気に戻った(?)モカが後ろのガヤを無視して、電話をかけてきた本当の理由を言いだした。

 

『まあさっきのは冗談として、たまには電話を かけてみるのもいーかなーと思っただけ。

蘭も、モカちゃんやせいくんの声聞いたら元気出てきたでしょ?』

 

「元気出てきたでしょ?」と言われ、華道のことで気付かれているのではと不安がよぎった。が、あまり気にすることはないだろうと、そんなことはすぐに忘れてしまった。

 

「心配しなくても、元から元気だよ」

 

そう、モカたちは心配しなくていい......

私のことは、大丈夫。

 

 

 

だから......

 

『元から元気だって?じゃあこれで元気100倍になったんじゃない?』

 

『アンパ◯マンかよ......』

 

『せいくんはモカちゃんを襲ったことをおとなしく反省してなさーい』

 

『だから襲ってねーよ!』

 

「あはは。2人とも、いつも通りだね。おかげで更に元気になった気がする。流石に100倍はないけど」

 

『それも冗談だってばー。......お、そろそろ家つくから切るねー。それじゃ、明日も元気にいってみましょー。じゃーね』

 

楽しい時間はあっという間だ。

 

『そういうことだ、蘭......また明日、学校でな......はぁ......』

 

「うん。2人ともありがとう。また明日」

 

モカを遇らうのに疲弊しきっていた流誠の挨拶を最後に、私は電話を切った。

 

(......)

 

それからしばらく、華道のことやバンドのことを考えていた。

 

(ひとりで、なんとかしなきゃ......みんなに迷惑かけないためにも......)

 

脳裏にはいつもみんながいた。笑顔で優しく、あたしのことを暖かく迎え入れてくれる、そんなみんなが。

 

 

 

その姿を鮮明にしながら、あたしは身の内に秘めていた決意を更に固めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蘭、やっぱ元気無さそうだったな」

 

「口ではああ言ってたけどねー」

 

俺とモカは、蘭の言った「元から元気」という言葉に説得力を感じられずにいた。電話をしている途中、ただでさえ低い蘭の声の調子が更に低くなっていた気がどことなくしていたからだ。

 

「蘭のやつ、俺たちに気付かれてないとでも

思ってんのか?」

 

「だとしたら、詰めが甘いですなー」

 

「まあこれからは少し様子でも見てみるか。蘭は何かと俺たちに迷惑をかけたがらない性分だし、蘭のできるとこまでは、そっとしておこう」

 

「そーだね。それでもし蘭が耐えられそうになくなったら、私たちで助けてあげよー」

 

俺とモカは蘭の心境を考えた上で、まだ直接には華道のことを聞いたりせず、側からただ見守るだけにすることにした。それでもしも蘭が暴走しかけたら、俺たち5人で、蘭の気持ちを受け止めてあげよう。それでもまだ「なんでもない」なんてしらばっくれても、無理にでも悩みを吐かせてやろう。洗いざらい言いたいこと話させて、スッキリさせてやろう。

 

 

でも、それはあくまでも蘭が暴走しかけた時の話。

 

「「...」」

 

だから、今の俺たちにできることは────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「......頑張れ、蘭」」

 

 

 

蘭の幸運を、ただただひたすらに祈ることだけだった。




いかがだったでしょうか。次の投稿は12月3日の19時30分を予定しております。とうとう12月ですね。風邪には十分お気をつけて!



ではまた次回お会いしましょう。さいなら!
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