天のいとを紡いで   作:コトナガレ ガク

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第22話 乱入者

神への供物。

 一糸纏わぬ姿になった少女は完璧だった。

 染み一つ皺一つ無い生命が溢れ出す瑞瑞しい肌が張り。

 美しい野生動物のように必要最低限の脂肪以外無い引き締まった肢体。

 尖った足の爪先から滑らかな曲線を描いて締まった太股が躍動し、雌豹のように足音一つ立てないしなやかな足裁きにより全く重心がぶれない。

 滑るように進む体幹を支えるのは無駄を削り取られた腹筋と腰のくびれ。それと対比するように柔らかい流線が胸を形作り最後は生命の色に輝くツンと尖った先端に集約する。

 少女から女への脱皮する寸前の体だけが魅せられる美。

 野生の厳しさ母性の優しが混在する神秘的な体。

 この少女にとって服など蛇足、いや美を覆い隠すベールでしかないと言わんばかりだ。

 少女が滑るように前に進んでいく。

 枝毛一つ無い髪が風に攫われ輝き天使の輪が稲穂のように揺れ動き。

 風の無い湖のように澄み切った紺碧の瞳が前を見据える。

 広場に待ち構えていた神官達は自然と頭を垂れて少女を迎える。

 広場の中央にいた他の神官達と違い白地に金の刺繍が施された狩衣を纏っていた神官が少女が前まで来ると跪き少女に一礼する。

 そして一呼吸置いて立ち上がると、少女に向かってバサッバサッと大麻を左右に振る。

「幸魂(さきみたま)奇魂(くしみたま)守給(まもりたまえ)幸給(さきはえたまえ)」

 その声は朗々としこの地下空間に響き渡っていく。

 そして鳥居の方に向き直し祝詞を恭しく唱え出す。

「恐み恐みも白す

 この地に住まう荒ぶる神よ。

 古の契約に従い・・・」

「ぎゃああああああああああああああああああ」

 神官の神聖なる祝詞が絹を裂くような絶叫によって遮られた。

 今までの壮大で精緻な儀式の積み重ねにより醸し出された神秘により一種のトランス状態に入っていた者達の目が覚めてしまい、皆が絶叫の先を見るのであった。

 

 神殿に登る坂の麓の広場にいた衛兵の一人が倒れていく。

 そして衛兵が倒れれば男が立っていた

 白のスーツを纏う180は超える巨漢をはち切れそうなほどに筋肉で覆い、見るだけで草食動物に畏怖を与える肉食動物のような男。

 男の片手には血に濡れた太刀が握られていた。

「きっ貴様は虎噛」

 顔見知りなのか衛兵の一人が恐怖に引き攣った顔で男の名を言う。

「俺の前を塞ぐからこうなる」

 人一人切って男は歯牙にも掛けてない態度。

「なっ何しにきた」

「あっ馬鹿か季節の挨拶にでも来たように見えるのか?」

 虎噛は太刀で方をポンポンと叩きながら獰猛な笑顔で吼える。

「ぐっ、今日は大事な儀式の日これ以上の狼藉は許さぬぞ」

「はっ犬ころ風情が虎に勝てるつもりか?

 死にたくなければ尻尾を巻いて大人しく道を空けろ」

 この場のリーダーらしき壮年の男が虎噛に負けじと吼えるが、そんな気迫など虎噛は鼻であしらう。

「吼えるな。自惚れが過ぎたな一人で勝てると思うなっ。

 我等犬神家の名に懸けて討ち取ってやるわっ、皆のもの今こそ我等犬神家の役目を果たす時ぞ」

「「「おおおっ」」」

 虎噛に呑まれ掛けていた男達だがリーダーの気迫の触発されて本来の自分達の役目を思い出したのか、それぞれ武器を虎噛に対して構える。

「やってみろ。テメエ等如き一人で十分と言いたいが、今日はお前等と遊んでいる暇は無いんでな。

 お前等もういいぞ遠慮はいらねえ蹴散らせ」

「やっと出番ですか」

 ずっと潜んでいたのか広場を囲む木々から屈強な男達が出て来て衛兵達を包囲する形となった。

「何時の間に!?

 まさか自らに注目を集めてその隙に・・・」

「お前がマヌケ過ぎるだけだろ。

 それ犬ころ共を追い払えっ」

「ひゃっほーーーーーーーーー」

 虎噛の部下達は衛兵に襲い掛かり、その混乱の最中虎噛は悠々と坂を登り始めるのであった。

 

 

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