戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー   作:魚介(改)

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第18話

「で、どうでした?いましたか?」

 

「いや、周囲にノイズはいなかった…ところどころに残骸らしき炭の塊は残っていたが…それだけだ」

 

「そうですか…被害者の処置はもう、こっちの人員で対処済みです

お疲れ様でした」

 

しばらくしてから帰ってきた

翼さんにお辞儀をしてから、統慈はその場を離れ、徒歩でリディアンの裏側から入り直して、二課に戻った

 

「…はぁ……」

 

頭の中では考えごとを続けているが

外面的には、何度も何度もノイズに遭遇する己の身を嘆いているように見えるので、周りの大人たちから若干の心配のこもった目で見られている

 

もっとも、統慈はそれに気づいていない

 

(チェンソーみたいに刃をギザつかせた構造の剣を作って撫で斬りにすればより大きく傷をつけられるかもしれん…いや、そもそも人体を相手に攻撃するわけじゃないんだ、スペツナズナイフみたいに刃を射出して刺すのも良い…)

 

頭の中では次の実験に備えた

試験構想を練っていたようだ

 

 

「拍木はいるか?」

 

その声と共に部屋がノックされ

慌てて扉を開く統慈

「いますよ〜?どなたでしょう…司令」

 

「おう!」

 

ドアを開けたその裏にいたのは

我らがOTONA、

この二課の司令官、風鳴弦十郎だった

 

「最近、君が初動対応をやる事になったノイズ群は二回、ほぼ連続でだ…今後も、もしかすればあるかもしらん、それに両方ともシンフォギア装者()が到着する前にほぼ全滅しているからな…それなりの時間耐えて、避難誘導を続けていたんだろうし、精神的な負担もあると思ってな」

 

「それで直接顔を見にきたんですか?」

「あぁ、平たく言えばそうなんだが…それだけじゃないぞ」

 

その表情を見て、何事かと言えるようなことではないと察した統慈は

即座に弦十郎を部屋に入れる

 

「どうぞ、なにもない部屋ですが

それでも茶くらいは出せますよ」

 

「すまんな、気を遣わせて」

「いえ、気にしないでください」

 

統慈はさっと調理台の方に向かい

その裏の棚からガラスのコップを取り出す

 

「緑茶にしますか?紅茶にしますか?」

「緑茶で頼む」

「はい」

 

手早く湯を沸かして、パック品ではなく茶葉から緑茶を淹れる統慈、その手際は悪いとは言えない程度に滑らかで、慣れているように見える

 

「…」

「どうぞ、安物ですが」

「もらおう」

 

一人分というのもそれはそれで礼を失するという事で、ついでに統慈自身の分も淹れられた茶は、やはり強く湯気を立てており、熱湯で手早く煮出した手抜きである事を如実に伝えているのだが

 

それでもわざわざ茶を淹れるあたりを若人なりの気遣いと感じたのか、

感心したような表情になる弦十郎

 

「しかし、今話に来たのはそれではない、一応だが、この話をしておこうと思ってな…」

「何の話ですか?」

 

弦十郎の言葉に興味を示す統慈、そこへ切り出されたのは

 

「以前言われた、稽古の話だ

俺が多忙故に断らせてもらったが、あの話は今でも有効か?」

「はい、もちろんです」

 

「蒸し返すようだが…もし良ければ、引き受けさせてくれないか?」

「ありがとうございます」

 

深々と頭を下げる統慈に

逆に渋い顔になる弦十郎、

 

「最近ノイズの出現回数は目に見えて増えている、君がそれに遭遇した場合

まず逃げるのではなく

避難を誘導しようと動くこともおおよそわかった、であればやはり

君自身が言っていたように、鍛えておくことも重要だと思ってな…幸い

事業は増えたが、そこに優秀な人材が集まってくれてな?

 

仕事はきっちりこなした上で手が余っているからとこちらの仕事にも手を貸してくれている、お陰で俺も手が空いたという訳だ」

 

「なら!」「あぁ、俺で良ければ、な」

「こちらこそお願いします」

 

深く頭を下げる統慈、しかし

 

「少し調べて見たが、俺の鍛錬は…少々、世間一般で言う身体強化の訓練とは掛け離れているようだ、それでもいいのか?」

 

確認のような言葉が放たれる

 

「もちろんです!」

それに即答した統慈は

弦十郎司令の事をこう呼んだ

 

「よろしくお願いします、()()!」

 

それは奇しくも、シンフォギア本編において主人公、立花響が用いたものと同じ呼び方だった

 

「ふっ、師匠か…俺は厳しいぞ?」

「望むところですよ」

 

笑顔で握手する司令と統慈

…統慈の腕はメリメリと音を立てているが、やせ我慢で表情を守っている

 

「よし、そうと決まれば君用の特訓メニューを立てよう、俺と同じでは成り立たんだろうし、真っ当な身体強化の訓練を積まなくてはな

 

茶、うまかったよ、ではこれにて失礼する」

 

弦十郎司令はそのまま帰って行った

「………はぁ………」

 

一方残された統慈は悲鳴をあげる腕を押さえながら、最近新しくもらった冊子に書いてあったところの

『ルル・アメルでもお家でできる!カストディアン流鎮痛剤の作り方』に従って作っていた鎮痛剤を飲む

 

正確には痛みを和らげているのではなく、痛覚を伝達させないようにしているだけらしいが、それでも焼け石を冷やすことは出来る

 

「水でも大量に掛ければ焼け石を冷ます、塵も積もれば山…っても、栄養ドリンクと併用してしっかり治さないとなぁ…」

 

カストディアン流栄養ドリンクと、同じくカストディアン流の鎮痛剤、どちらも成分は薬草や野菜、生薬の類から抽出しているので、もちろんながらに合法

 

決して違法行為ではなく

単なる調理である、凄まじいほどの手間と負担はあるが、それだけである

 

「…今日は寝よう…」

 

起きたら明日の分の栄養ドリンクを作る事を心に決めながら統慈は眠りにつくのだった


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