戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー   作:魚介(改)貧弱卿

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第20話

順当に単位を落とした体育を除いて

すべての教科で80以上の点数を出して一応進級に成功した柏木旋音

 

だが、やはりというかなんというか

彼に現れた身体的な強化は

一般的な筋トレ程度のレベルに収まり、OTONAのレベルには至っていない

 

「まぁ仕方ない…かしら?」

 

この一年ですっかり板に付いている女装も、もう誰の手も煩わせずに

一人で、極めて短時間のうちにできるようになっていた

 

「さて、帰りましょっか」

「はいよ?…今日メック寄る?」

「寄りません、夜に用事があるから、その仕込みで早めに寝るのよ」

 

さっと誘いを遮って

不自然にならない程度に情報を隠したセリフを置いて、そのまま鞄を取る

 

その動作もなんとなく力任せだった昔とは違い、力の向きや勢いなどを制御して

女の子らしく、

上品な動きになっている

 

フィーネは何を努力しているのだろうか

 

「…それじゃあ、帰りますよ」

「はいはーい、で、詩歌達は誘うの?」

「詠奈だけよ、二人はたしか今日委員会の集会があったはずだから」

「そっか…んじゃっ!」

 

荷物を詰め込んだ鞄をガバッと持ち上げるのは、琴乃詠奈(17)

 

かつて友人A(仮称)とされていた

現友人である

美居歌葉(17)

成瀬詩雅(16=遅生まれ)

 

とともに四人でよく一緒にいる

というか、女子の連帯意識は基本的に強く、基本自由時間は一緒にいる

 

「みーちゃんもシガも忙しいんじゃ一緒になるのは二人だけか…寂しいねぇ」

「そうね…一人よりはマシだけど

やっぱりみんな揃ってこそよね」

 

「あーやめやめ!明日一緒に帰れば良いじゃん!辛気臭い空気は出荷よー」

 

「…クスッ…」

「あ!笑った!よし!

今日のスマイルゲット!

…それじゃあ帰ろっか」

 

つい笑ってしまった旋音に指を突きつけてから自分も笑い出す詠奈

 

一仕切り笑い合ったあとに

一緒に教室を離れて

そして共に駅へと向かう

 

「それでね…」

 

詠奈の出す話題は尽きないが、

旋音とて女子向けの話題はちゃんとチェックしている、そんなところでボロを出すわけには行かないからであるが

実を言うと

半分以上、単純に友人達との話が楽しいからもっと話したいと考えているのが原因である

 

「それじゃあ、ここで」

「うん、じゃまぁ…また明…」

 

『また明日』なんの変哲もないその言葉、しかし今日に限ってその言葉は中断された

 

「ノイズ!」

 

詠奈を庇って押し倒し路上を転がって、すんでのところでその手から逃れる二人

 

「…来たか」

原作開始後一番わかりやすい目印である、ツヴァイウィングのライブ後

2年後の新年度のタイミング

 

ノイズ襲来が響の融合症例:ガングニール・ギアの覚醒を告げるその時が

ようやく来た

 

「でもそれより…まずは」

「…なにあれ…なんなの…」

「ノイズです、詠奈!逃げて!」

 

詠奈を強引に立たせて

同時にノイズの方を確認する

(よかった、まだ会話フェーズだ)

 

ノイズの行動として、よく空気を読む

ちゃんと会話中であることを察して待ってくれているのだろう

 

「…早く逃げなさい、詠奈!」

「だからなんなのよ…急に出てきて…なんでノイズ?なんで?」

 

完全に恐慌状態を起こしている詠奈は旋音の話を聞きはしない

 

「…仕方ない」

 

故に選択した、

戦うか逃げるかの二択を

 

「こっちに!」

 

強引に詠奈の手を引き

無理やり走り出す

 

追ってくるノイズを見させないように頻繁に声をかけながら、全力で走り

 

足が限界に来たらしい詠奈が座り込みかけたところで、鞄を放り捨てて詠奈を背負う

 

「んんっ!」「きゃっ!?」

 

「今は逃げることが先決!」

 

語尾や語調の修正はこんな時でも切らさないが、それでも焦りながら

OTONAレベルには至っていない程度の速度で走る

 

体力はあるが、さすがに高2女子一人をそのまま背負ってフルマラソンなんて出来るような自衛隊員レベルの体力ではなく

 

「く…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

ついに肉体側が悲鳴を上げ始めた

「もうやめてよ…置いて行って

置いてけば一人で逃げられるでしょ!?なんでよ!」

「…はぁ…はぁ…置いてく?…はぁ…バカな…事を……」

 

既にノイズに囲まれている状態

変身していなくてもノイズに接触できる統慈=旋音が単独ならともかく、

詠奈が助かる道はない

 

「でも」

「『だっても』『でも』もない!友達だから!その一言で十分だよ!

 

友達を助けるのにそれ以上の理由はいらない!私が一人で逃げたところで!

 

それで私は助からない!友達を見捨てて逃げた卑怯者になって!それで私は!明日笑っていられないから!」

「旋音…」

 

そこでようやく、ノイズが動き出す

再びの二択、今度の選択は…

 

「クラスのみんなには、内緒だよ?

 

sealder leagjarn nshel tron(絶望を封じる箱を開け)

 

右腕から湧き上がる炎が糸を紡ぎ

炎の織布を形成して全身を覆う

それと同時に知覚が拡張された

 

詠奈の方に炎を伸ばして炎の壁で周囲を囲い込み、ノイズが侵入しないように防御した

 

「…殲滅する

 

権限起動:1/9定率 積層変成物理力体」

 

早口と同時に装甲の炎を伸ばして

Rosso=fantasma(ロッソ=ファンタズマ)

 

炎の槍を形成、槍を鞭のように伸張して縦横無尽に撃ち放つ

 

「…ぅぉぉぉっ!」

 

声の偽装を敢えて解き

全力で大暴れする

 

ノイズは未だ数が減らないが

それでも統慈の炎は衰えない

自重しない統慈は自分がスカート姿であることすら忘れて、身長より長い大槍を振るう

 

「やれる…勝てるぞ…

Rosso=fantasma!」

 

再度炎を注ぎ込み、サイズを引き上げて、巨大な槍を斧槍(ハルバード)に変えて

大きく振り回し、さらに巨大化させて

 

「horizontal=wave」

 

視界のノイズを横薙ぎの一撃で完全に撃滅する

 

「…ふぅ…」

 

ノイズ被害と言い張るには明らかに派手すぎる破壊痕が残ってしまったが

友達を守るためなら誤差であろう

統慈は即座に装甲を解除して

炎の障壁を解く

 

即席だがこれの技名は

muro di fuoco(防火壁)…解除」

 

さすがにファイアウォールでは直接的すぎると思ったのか、イタリア語で誤魔化している

 

ほかはほとんど英語なのに

ロッソ=ファンタズマとモーロ ディ フォーコだけはイタリア語なのは

何故なのだろうか

 

「詠奈!」

そこにいた詠奈は…気絶しているのか、倒れていた

 

「っ!」

 

otona塾で習った救命技に則りすぐさま呼吸と心拍を確認して…異常がない事を知り

大きく息をついて落ち着く

 

そして統慈は…再び詠奈を背負って

駅を離れることにした

 

幸にして携帯はポケットに入っていたので、投げ捨てた鞄を探す必要もなく

先に救援を呼んでから…現場を離れる、詠奈の家は把握しているので、そこまで送ろうというつもりだ

 

「…はぁ…ついてない…」

 

結局、帰宅予定の時間に

大幅に遅れてしまった統慈は響の加入パーティーに顔を出すことすらできずに

意気消沈して寝入るのだった

一般通過カルマノイズさんへのカウンターは

  • 転生者追加
  • 新聖遺物覚醒
  • カルマノイズさんは一般なので消えていった
  • カルマノイズの性能、ノイズ3位に下方修正
  • クリス「今回だけだかんな!」
  • フィーネ「メテオール発動承認!」

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