戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー   作:魚介(改)貧弱卿

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第27話 夜半

「……」

 

今現在、統慈は難題に直面していた

 

「……」

「……」

 

夜半、しばらく欠かしてしまった自分の特訓のために公園で素振りをしていたら

二課付近を漁りに来ていた雪音クリス(きねくり)と正面からぶつかってしまったのである

 

「……とりあえず、ジュース飲むか?」

「……もらう」

 

統慈は適当に缶ポカリを購入したところで売り切れたので、隣にあった130円のKOMORI-KNIGHTなる缶飲料を購入

初めて見るやつなので統慈自身が飲むことにした

 

「はい、どーぞ」

 

缶蓋を開けてからポカリをクリスに渡す

指先のパワーが足りないと缶を開けられない仕様は統慈も小学生くらいの時にだいぶ苦労したので、そのあたりは気遣いだ

 

「あぁ」

 

適当に選んだだけあってよくわからないものに当たってしまったようで

炭酸のきついアクエリ、というよくわからない感想を抱く統慈

 

「ごっほっ!……うぅ……」

 

喉に炭酸を入れて咽せた統慈と

その様子をみて

 

「ふふっ!」「おい今笑っただろ!げほ!」

 

咽せている最中に強引に声を出したせいでさらに喉を詰まらせる統慈

 

「なぁ、アンタ」

「ん?」

 

「アタシは……うん、

世界を平和にするのが夢なんだ

そのために、明確な方法をくれた人がいて、そのチャート通りに努力してきた」

 

「……」

「でも、最近なんかよく分からなくなってきた、アタシがやってきたのは

『喧嘩をやめろ』って言って上から殴るような事でさ」

 

「……」

「でもそれじゃ結局、アタシが暴力を振るってるんだよ」

 

淡々と、聞きの姿勢をみせる統慈に

しずかにクリスは語る

 

「アタシは暴力を振るってきたし

痛み以外には暴力を止める手段を知らない、だから無差別にそれを振りまいてきた」

 

「でもさ、こないだこんな事があったんだ

『見たところ同じくらいの歳の男の子と女の子がいて、女の子が泣いていて、女の子に男の子が話しかけている』その状況を見てアタシは、『女の子がいじめられて泣いている』と判断した

でも実際は『2人は兄妹で、迷子になって心細くなって泣いた妹を兄が慰めている』だったんだ」

 

「そうか」

「そう、んでアタシは『女の子を虐めんな』って、兄の方にゲンコツ食らわしちゃってさ、そしたら妹の方が止めに入ってきたんだよ

『お兄ちゃんを虐めないで』ってさ

それって結局、アタシ1人が悪いわけで」

 

表情を変えず、軽い笑顔のままで

クリスは缶飲料を飲み干して

再び語り始める

 

「っぱ……つまり、アタシ1人が勝手にイジメだと判断して『暴力を振るった』

そこにはアタシ以外の『暴力』は存在しないのに

じゃあ、たとえアタシ以外全ての暴力が無くなっても、アタシという『力』がある限り『暴力にさらされる無力な子供』は生まれてしまうんじゃないかって思ったんだ」

「そうだな……」

 

ため息と共に、目線をクリスへと向けた統慈は持論を語り始める

 

「結局、暴力を人から排除することは不可能だ、たとえ四肢を引きちぎって脊髄と脳味噌をえぐり取り、それを水槽に浮かべても、それが意思を有する限りは暴力を行い得る、それは全て『意思』を以って行われるからだ」

「なっ!!」

 

力の否定による平和の実現

それは『圧倒的な兵器による恐怖政治』に終始するがゆえに、兵器を握るものの暗闘が生まれ、兵器そのものは右往左往と揺れ動く

それを平和と呼ぶのだろうか

 

「一言『死ね』と、言う必要すらもない、思い浮かべるだけでそれは立派な攻撃になる

水槽の中でも人は攻撃的になれる

だから、暴力を以って暴力を制することは不可能だ、本質的にはね

なぜなら暴力による支配は必ず恐怖を必要とするからであり、恐怖を排するために人は反抗的に……『攻撃的に』なるからだ」

「…………」

 

一転して、今度は統慈が攻勢に回り

雄弁に語り出す

 

「人は常に手を取り合えるわけではない

言葉を交わせば毒を吐き、拳を交わせば血反吐を吐く、だがそれでも

ごく少数の人間たちなら、同じ方向を向いて走るくらいの事はできるよ」

「そいつは……なんでだ?」

 

「運良く波長が近くて、仲の良い

相性の良い人物同士でより集まっている場合と、組織的に行動している場合だよ

前者は互いに協力した上で行動することができる、『同一の敵』に対処するために強調する。

反対に後者は『報酬と労働』の関係に基づいて上の指示に従う」

「なるほど」

 

つまり、手を取り合える姿勢の人同士なら

それは手を取り合うことができる

ということか。

 

程度の曖昧な理解ではあっただろうが、クリスは統慈の論に理解を示す

 

「じゃあアタシは最初から間違ってたのか

人類がみんな手を取り合うために、『暴力の排除』を目指した時点で」

「そうかもな……だが、俺はその意志を崇高であると認める、無論応援しよう

……非暴力的な手段を取る限りは」

「それじゃ意味ねえじゃねえか!」

 

最初から暴力以外の手段を知らず

それ以外を取って来なかった少女を相手に非暴力的な手段など存在しない

ゆえに応援にも意味はない

 

「まぁ、そんな事だよ、お後がよろしいようで」

「あ、おい!」

 

「あとは自分で決めなさいな

自分で動かなきゃ意味ないよ?」

 

統慈はとっくに空になっていた缶をゴミ箱に放り込み、そのまま走って去って行った

 

「……なんだよアイツ……変なの」

 

クリスもまた、自分の手元に残った空き缶を握って、呟いた

次の敵(デュランダル輸送時)は?

  • 通常クリス(イチイバル)
  • 通常クリス(ネフシュタン)
  • 覚醒クリス(ネフシュタン融合)
  • 一般通過カルマノイズ
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