戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー 作:魚介(改)貧弱卿
現在統慈は訓練の合間の時間に
奏の部屋に来ていた
先のネフシュタンの鎧には奏も翼と共に関わっている、そもそも例のライブそのものがネフシュタンの鎧の起動実験なのだから
その関係者に対する説明義務を果たすため
統慈はこうして栄養ドリンクを渡すと同時に話しているのである
「で、翼さんは昏睡というわけです
幸い、初期対応の応急処置が間に合ったので大事には至りませんでしたが重症です
……長く歌い続けてノイズと戦って
コンディションを落としながらあの完全聖遺物とも戦った、という状況からは『幸い』と言えるでしょう」
「んなセリフで納得できっかよ!」
「うあわぁっ!」
襟首掴み上げられてそのまま揺さぶられる統慈は情けない声を出しながら
窒息を冷静に防止して
奏はそれを容認しながらも揺さぶり続ける
「お前は戦えないってのはわかる!それは無理する部分じゃない!でも翼が大怪我して寝込んでるんだったら!お前は翼を優先しろよ!
なんでこんなところに来てんだよ!」
「仮に翼さんを優先して、ここに来ずにずっと病室にいたら……ぐぅぇ
僕が翼さんに怒られます!
僕が考える翼さんなら、こういう時に『いつも通りにしろ』っていうと思いますからっ!」
「…………チッ!」
心底不服、といった表情のまま
その腕を下ろす奏
ようやく足が地面についた統慈は呼吸を整える
「奏さんの分の栄養ドリンクは今日も作りましたんで、飲んでくださいね
飲んでくれないとすぐに効果が薄れてしまうので、ちゃんと飲んでくださいね!」
統慈が繰り返し念を押したように
カストディアン流栄養ドリンクは薬効が長く持たない、作り置きはできないのだ
「分かってるよバカ!これ飲んだら
翼の見舞いに行くぞ」
「……わかりました」
「お前もくるんだよ統慈!」
「えっ?」
「早くしろっての」
いうが早いかグビグビと水筒の中の薬液を飲み始める奏
その視線はすでに病棟のほうを見据えている
「アタシのガングニールはもう使えないけど、代わりに響が出るんだろ?
なら余り時間でガングニールの装者としての心構えってやつを叩き込んでやる
ガングニールを名乗る以上、半端は許さねぇからな」
「……それ僕に言われても僕はブラックアートの」「お前がサポーターするんだからお前もやれ」
「…………」
どうやら特訓には統慈も付き合わされるようだ
その一日後
「……よし、作戦開始!」
腕輪と腕時計を二重につけた左腕を見ながら、作戦の開始を宣言し
統慈は車に乗った2人と一緒にデュランダル輸送作戦を開始する
休眠状態ながら聖遺物の中でも特に強力な『完全聖遺物』である『
その実体は尽きることのない無限のエネルギーを供給する第一種永久機関であり
聖遺物としての特性は『無限』と『力』
持ち主に力を与え、同時に剣自体の攻撃に用いられるエネルギーも天井知らずに増幅していく
一方仮想敵のネフシュタンの鎧の特性は『無限』と『再生』である
その力はダメージによる損傷で失われたパーツを修復する能力に集約される
パーツの延長線に存在する使用者の肉体も修復するのだが、この際の再生もパーツ同様の交換方式であるため肉体を聖遺物が侵食する
ちなみに鞭パーツも『再生』によって『短くなった部分が回復する』ことで伸びる
敵が使う『ソロモンの杖』の能力は『空間接続』『王権』
現状ではノイズを操る聖遺物という認識だが
本来はバビロンの宝物庫の扉の開閉を司る鍵であり、同時にそこで製造されるノイズのマスター権である
「……来たか!」
考え事をしているその時に車付近のコンクリート舗装路面が爆発する
こうなるということは下方向……つまり地下から攻撃しているのだろう
次々に爆発する路面、爆走する車を追うように、爆破地点と車の相対位置はぴったり同じ
それと全く別の地点に爆発が起こり
先に行っていた護衛の車が吹き飛ばされる
彼我の時速は80キロ、到底無事とは思えない
「このままではいけない、追いつかれますよ!」
〈先には薬品工場がある!そこに逃げ込めッ!〉
通信機越しに聞こえる司令の声に
今度は隣で
「弦十郎君?ちょっとヤバいんじゃない?この先の薬品工場で爆発したら!デュランダルは!」
完全聖遺物とはいえど、破壊力に特化したデュランダルは防御力を持たない
比較的脆い聖遺物だ
一般によく囁かれる『不壊』特性を持つのは『アダマン』系列の素材を用いた神鉄武装の類やデュランダルと同じ匠の手で作られた聖遺物、霊槍ドゥリンダナでありデュランダルは破壊できる
まして聖遺物としての機能を発揮していない休眠状態では、素材である『帝金』と『涙の結晶』の物理耐性すら満足ではないため、叙事詩ローランの歌の一幕よろしく大理石に叩きつければ破壊する事はできるだろう
ましてや車ごとの爆発に巻き込まれれば
どうなるかは明らかだ
「分かっている!さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしているのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう、制御されてると見える!」
その言葉に了子は舌打ちをする
〈狙いがデュランダルの確保なら、敢えて危険な地域に滑り込み、攻め手を封じるって作戦だ!〉
「勝率は!?」
〈思いつきを数字で語れるものかよ!〉
熱く語られる名台詞と共に
工場のそばへと車が滑り込む
先行していた数車両は全滅
後ろにいる藤尭が運転する車は無事だが
名も無きエージェント達は犠牲となった
「っ!まずいっ!」
了子の慌てた声と共に目の前が爆発
衝撃の影響で車の前輪が浮き上がり
そのまま半回転
派手にスライディング着地を決めてしまう
「響ちゃんシートベルト外して!」
「了解っ!」
響は逆さ吊りの姿勢でガチャガチャと手元のベルトを外そうとするも、なかなかうまくいかない
一方了子はというと、今まで何本もベルトを外してきたからなのか
手際良く脱出し、響の代わりに特殊保管トランク(新幹線に轢かれても中のワイングラスが割れない代物)をかかえる
統慈も後部座席から脱出して最後に残される響
「外れないぃっ」
「響ちゃんギア纏って!それなら原子分解で外せるからっ!」
「わかった!Balwisyall nescell gungnir tron」
了子の言葉を聞いて聖詠を歌った響の服と、同時に車の座席やらシートベルトやらダッシュボードの一部やらまでまとめて粉々に原子分解されて消え、それと同時に響がギア装着時のエネルギーを利用して車を爆砕、脱出した
マンホールから出現するノイズ
空中に現れるノイズ
どこからか出現するノイズ
視界を埋めようと言わんばかりの数のノイズばかりが溢れかえる
「よし!はぁぁぁうわっ!」
響は格闘ポーズで覚悟を決めて走り出すが
その直後に重心を崩して転んでしまう
「ヒールが……邪魔だッ!」
かかとの部分を思い切り踏みしめて自らヒールを折り、スニーカータイプにする事で
『状況を受け入れてその環境で動けるようにする』のではなく『状況を否定することで環境そのものを改善する』
しかし、そんなことをしている隙にノイズが飛来し
「フッ!」
了子が響の前に立ち塞がり
体を槍状に変化させたノイズを薄色のバリアで弾き飛ばした
その死角から鳥型ノイズが吐き出した液体を今度は後ろに回り込んだ統慈が♾型をしたオレンジ色のバリアでガードする
「響ちゃん、頑張って」
カキンと言わんばかりの音と共に突撃してきたノイズを弾き飛ばしたフィーネバリアと違って
統慈のバリアは敵の攻撃を受け止めるに留まったが、それで十分
「藤尭さん!ケースをっ!」
通信機に向かって叫び、そのまま了子が置きっぱなしにしたケースを投げ飛ばす
それを緒川さんが空中でキャッチし
「うわっ!」
突然至近距離に出現したノイズに炭化されかけて体勢を崩した
それは
通常透き通る無色であり
一定の連続空間に固定化する事でオレンジ〜青に彩飾される通常のそれを逸脱した
過去に例のない黒色のノイズだった
「まずい!アレはダメよ!緒川くん離れてッ!」
「くっ!」
全力で逃げを打つ緒川さんの速度にすら追随するスピードで、黒いノイズが走る
「間に合えっ!」
響は統慈とフィーネの間から飛び出して
その黒いノイズに拳を叩きつけようとするが
「効いてないッ!」
「やはりか!」
殆どが躱され、当たっても凄まじき硬度を持った体表で弾き返され、まるで意味を成していない
「統慈くん目を閉じてっ!」
了子が目を金色に輝かせながら
左腕に火球を形成し
「
なりふり構わない全力で
黒いノイズを攻撃する
実体化している以上は物理攻撃全てが等しく有効であるはずなのに
明らかに凄まじい威力を秘めていた火球『
「統慈くん最大火力よ!クリスッ!」
「チッ!せっかく隠れてたのに呼びつけやがってぇっ!」
血相を変えた了子が叫んだその先から出現する、
雪音クリス
統慈も万一のために用意された
了子製の
『メビウスの腕輪』を握りしめる
その腕輪に秘められた機能は完全聖遺物と同等……とは言えないが『無限』と『炎』の特性
デュランダルの増加量とは比べるのもおこがましいが、それでも熱エネルギーを無限に増加させる第一種永久機関だ
「了解……開放ッ!」
中央下部の球体を回転させ
その中で飽和しているエネルギーを遠心力で引き出す、取り出された炎のエネルギーが放射状に溢れ出す
「バーストッ!」
炎が高密度に凝集したオレンジ色の光線が、一直線に左腕から放出される
「アルスマグナッ!」
「チッ!ぶっ飛べぇッ!」
黄金の火球とピンク色のプラズマ球が同時に発射され
黒いノイズを押しつぶさんばかりのエネルギー量を持って押し寄せる
それにたじろいだか
黒いノイズは両腕を突き出して耐える姿勢を取り
エネルギーの奔流を抑え込もうとする
「持ってけダブルだ!」
そこに唯一連射が効くクリスのダメ押しが入り
物質化するほどのエネルギーの塊が爆発する
その温度は五十万度にも達し
プラズマが飛散する
巻き込まれた一般エージェントやノイズ達は苦しむまもなく焼失して消える
核爆発に巻き込まれたようなもので
姿形も遺品の一つも残らない
「はぁ……やったか!?」
「あっおい!」「止しなさい!」
2人がクリスを制するよりも早くそのフラグは回収され
ほぼ無傷の黒いノイズが出願する
クリスの真後ろに
「何……」
その直後、クリスの上半身が落下して
ぐちゃりと重い音を立てた
「バーストッ!」
統慈は振り返るよりも早くエネルギーを解放して爆発させ、そのすぐ隣にいた黒いノイズを吹き飛ばす
「まずいわね……統慈くん時間を稼いで!私はネフシュタンをどうにかするわ!」
「りょ!」
ネフシュタンの鎧の特性上
傷は治癒するというより『欠損した部分を補填する』が正しい
多少の切り傷や刺し傷、火傷ならばともかく、体の半分近くが丸ごと喪失したとなれば
その損傷にネフシュタンがどう対応するかは未知数
故に了子は再生能力に任せて強引に人型の聖遺物を作るのではなく、ネフシュタンを除去してから切断されてしまった下半身と上半身を繋ぎ直すことを選び
ひとまずクリスの上半身を抱えて離脱した
一般通過カルマノイズさんへのカウンターは
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転生者追加
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新聖遺物覚醒
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カルマノイズさんは一般なので消えていった
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カルマノイズの性能、ノイズ3位に下方修正
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クリス「今回だけだかんな!」
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フィーネ「メテオール発動承認!」