戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー   作:魚介(改)貧弱卿

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第37話 わんにゃん

「……響ちゃん、大丈夫かい?」

 

「はい、なんとか……未来も助けられましたし……」

 

だいぶ疲労困憊と言った様相の強い響

しかし苦労で済んでいるあたり、この頃から凄まじい体力を秘めているようだ

 

「よし、それじゃあ僕は今回の件を振り返ってみるよ……と、その前に

なんで通信に出てくれなかったの?」

 

「え?通信ですか?」

「通信機、渡していたはずだろ?

いや持ってなかったのは分かってるんだけどさ、携帯端末はちゃんと携帯してくれよ

何のためのポータブルだい?」

 

「……すみません」

「よろしい、まぁ今回はそれで済んだとはいえ、次回になにがあるか分からない

気をつけておくれ」

 

どうやら響はガングニールの通信機能すら無意識にカットしていたらしい、これは響の凄まじい集中力と想いに応えるシンフォギアの基礎機能が組み合わさって生まれてしまった痛ましい事故というわけだ

 

「はぁ……私呪われてるかも……」

 

「次は気を付けておくれよ?」

「はーい!」

 

響を嗜めながら自費で買ったお菓子を与える統慈、それに食いつく響

まるで主人の手から餌を食う犬か何かのような有様だった

 

 

 

「はぁ……クソッ……なんでこんな事に……」

 

一方クリスの側では

過去に廃ビルとなって以降人のいない古いビルに潜り込み、その中に身をひそめていた

 

「……」

 

クリスの脳裏に過ぎるのはふらわーの店主や一時とはいえ言葉を交わした未来、そして立花響のイメージ

 

「生き延びていれば今頃は飯でも食ってんのかね……ハハッ」

 

自分の飯すら危ういのに他人の心配などしていられない

そんな意味なのか、それともただ単純に自らの境遇を哀れんでか、嘲るような声を上げるクリス

 

「……」

 

そして、運命の時が来た

 

「ほらよ」

 

ガサリという、ポリ袋特有の音がなる

それに身構えたクリスが視界に収めたのは

目の前に立つ巨漢の姿

 

「応援は連れてきていない

俺1人だ、君の保護を命じられたのは、もう俺1人になってしまったからな」

 

床に座ってレジ袋の中からアンパンを取り出す巨漢に鋭い目を向けるクリス

 

「バイオリン奏者、雪音雅律とその妻声楽家ソネット・M・ユキネが、難民救済のNGO活動中に戦火に巻き込まれて死亡したのが8年前。

残った1人娘も行方不明となった

その後の国連軍のバルベルデへの介入によって事態は急転する。現地の組織に囚われていた娘は発見され保護、日本に移送される事になった」

 

「…………」

 

自らアンパンと牛乳を少し食して、毒味をやってみせる

 

そこまでしなければ食わないと、確信しているからだ、仮ににもゲリラ組織にいたクリスはそこそこの教育と同時に武器だけでなく振る舞いにも矯正を受けている

ガサツな言行は単なる気質ではなく、ゲリラの連中に由来している

 

「ふん、よく調べているじゃねえか

だがねぇ、そういう詮索……反吐が出る」

 

 

「当時の俺たちは適合者を探す為に

音楽界のサラブレッドに注目していてね、天涯孤独となった身元引き受け先として手を挙げた

ところが少女は帰国直後に消息不明……俺たちも慌てたよ、当時の二課から相当の捜査員が駆り出されたが、この件に関わった者の多くが死亡或いは行方不明という最悪な結末で幕を引く事になった」

 

人馴れない野良猫が噛み付くように

牙を剥き出して叫ぶクリス

 

「何がしたいオッサン!」

 

そんなクリスの問いに巨漢、いや

特機部二の司令官、風鳴弦十郎は表情を殺したまま応える

 

「俺がやりたいのは…君を救い出す事だ、引き受けた仕事をやり遂げるのは『大人の務め』だからな」

 

「ふん!大人の務めときたか!余計な事以外はいつも何もしてくれない大人が偉そうに!!」

 

キレたと言わんばかりに一声叫んで

そのままビルを飛び降りてギアを纏い、底上げされた身体能力で去っていくクリス

 

「……無念……」

 

拳を握りしめて、呟く弦十郎

今なら、いやいつからでも

一度捕捉してしまえば日本中どこであっても追随できるはずの肢体を持ちながら

去りゆくその背を追おうとはしなかった

 


 

「……来たか」

 

アメリカからの特殊部隊

それが今回の客の正体だ

 

つい先日までクリスと共に暮らしていた屋敷に土足で踏み込んでくる連中を見遣って

了子(フィーネ)はため息をつく

 

窓ガラスを破り、カーテンをレールごと打ち壊し、カーペットに足跡を付けてテーブルを蹴倒す

そんな見事な作法を見せつける連中に吐き気を催した、と言わんばかりの表情だ

 

「この家をよくよく汚してくれるものだな、貴様ら」

 

「手前勝手が過ぎたな、業突く張りの頭デッカチ」

 

隊長らしき人物がそう吐き捨てると共に、了子(フィーネ)に銃を向ける

 

異端技術(ブラックアート)の深淵を、覗いてすらもいない青二才のアメ公(アンクルサム)が…!」

「撃て!」

 

隊長の指示に従い、部隊のメンバーたちが発砲する

 

しかし、『十数丁のアサルトライフルに狙われている』そんな程度で死んでいては先史文明の巫女は務まらない

 

「甘いんだよチェリーボーイ」

 

難なくピンク色のバリアで防ぎ

そのまま反撃に転じる

取り出したのは

「ついに起動した完全聖遺物グロウノス(時刻む鎌)、この鎌は鋭いぞっ!」

 

原作に存在しなかった、完全聖遺物の一つ

 

度重なる絶唱のフォニックゲインや戦場跡に残留したエネルギー、そして擬似聖遺物の生み出す力でようやく封印解除に成功した完全聖遺物

その名はグロウノス

 

時と歴史を刻む神、クロノスの所有する漆黒の大鎌である

 

「仕留め」

 

隊長が一言を言い切るよりも前に

その首は既に断ち切られていた

 

そして、連鎖する音と共に

そこにいた隊員全員の身が崩れ落ちる

 

首を切られた者、胴を断たれた者

背が砕かれた者、縦に割られた者

 

さまざまな状態で、みな同時に倒れた

 

「……クリスとの思い出も残っているのだが……仕方ないか」

 

そしてその直後

フィーネの姿は、まるで最初からいなかったかのように掻き消えた

次の話は

  • ストーリー進めろ(40話)
  • 番外編をやろう(設定解説)
  • 書かなくていいよ(更新停止)
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