戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー 作:魚介(改)貧弱卿
「グロウノスの能力は時間操作
……遥か過去に飛ばしてやったが、どこに行ったかは分からんよ……な!」
「もう容赦はせんぞ!了子君ッ!」
瞬間移動してきて全開モードの拳を振り切った弦十郎は、しかしその拳が不可解な感触を受けたことに驚愕する
「時間を停めたのだ、その拳も停まろうというもの」
「なんだと……時間をッ!?」
「そう、この完全聖遺物の力でな!」
しかし、弦十郎もただやられるだけではない
少なくとも防御に関してはたかが打撃無効程度の属性でしかないと判断し、
瞬時にフィーネの後ろに回り込んで拳を叩き込む
瞬きほどなれど、そこに『時』が掛かれば
それはグロウノスの前に永遠と同義である
「くっ!」
「人の身で聖遺物に迫るほどの力を見せる、やはり危険だな」
再びの瞬間移動で距離を取った弦十郎に対してつぶやかれる言葉は
呆れたと言わんばかりのもの
その言葉が終わるより早く弦十郎の拳が空を切る
咄嗟に躱したフィーネの鎧
その一部が砕けるが、すぐに修復されてしまった
「むっ……」
「はぁっ!」
空気の壁を破って音を超え、鍛錬によってさらに磨き上げた拳、それを不完全とは言え聖遺物に頼らない自力で回避されたことに驚愕する弦十郎
しかし、その瞬間
フィーネが時を切り裂いて瞬間移動し鞭で攻撃する
「肉を削いでくれる!!」
鞭を振るったフィーネだが、
それも虚しく、背後からの一撃は掴み取られ
そのまま引き込まれて体勢を崩してしまう
「ふんッ!」
拳がフィーネに突き刺さり、ネフシュタンの防御を貫通してそな身にダメージを通した
「完全聖遺物を退ける…どう言う事だ…!?」
フィーネは異端技術を用いた訳でもないような生身の人間が何故これほどの力を持つのか分からなかった
その問いに弦十郎は答える
「飯食って映画観て寝るッ!男の鍛錬は、そいつで十分よッ!」
「馬鹿な事を言うなぁぁっ!」
激昂のままにフィーネが使ったソロモンの杖
しかしノイズが出現するためのゲートを開くより前に蹴りによって発生したショックウェーブで弾き飛ばされ、杖は天井に突き刺さる
「っ!!」
その瞬間に弦十郎が飛びかかり
「ノイズさえ出てこないのなら、どうとでもなるはずだッ!!」
弦十郎は拳を浴びせようとする
その瞬間
「弦十郎君!」
「ッ!」
弦十郎に一瞬、迷いが生じた
それをフィーネが見逃さない訳がない
グロウノスを使用して時間を切り裂き、瞬間移動でソロモンの杖を回収したフィーネは、そのまま鎌で弦十郎を斬りつけた
「くぅぁっ!?」
なぜか突然、開けた野原に転がっていた
「こんな馬鹿なこと……!」
空間転移の類を疑い、周囲を見渡す統慈
しかし、周囲にはフィーネどころか真っ当な建物すら見えない
「……これは……」
フィーネの攻撃を警戒するのをやめて
周囲に生えた草に目をやる統慈
「ネコジャラシや小麦に似ているが……穂が小さい……いやこの時期ではまだ小麦の穂が出るはずはない!まさか違うもの……?」
「どうしたの?」
「うわっ!?」
屈み込んでいた統慈の横から声がかかり
そちらに視線を向けると
「……?」
長い金髪をポニーにまとめた少女の姿
「大丈夫?」「……あぁ、大丈夫……だと思う」
少女に応えると、その子は心配そうな表情から笑顔になった
「ねぇ、あなたどこから来たの?」
「僕かい?……僕は……多分だけれど、とても遠いところから、それだけだよ
ここがどこなのかも分からない」
しかし、そこから続く言葉に
再び表情を曇らせる少女
「それは……大丈夫じゃないわね
どこから来たのかも分からないのでは、生活もままならないのではなくって?」
「恥ずかしながらその通りだよ
ここはどこなのか、教えてくれるかな?」
「えぇ、ここは神の都バビロニア
の郊外にあるカラの原よ……と言っても分からないわよね?じゃあついてきて
神様にあなたの過去を見てもらいましょう、そうしたらきっと、どこから来たのか、何があったのかも分かるはずよ」
少女は統慈に背を向けて歩き出し
統慈もそれについていく
「分からないこと、知りたいことがあったら質問してね?私もなるべく積極的に説明するけれど、私に取っては当然でも、あなたには分からないこともあると思うわ」「わかった、お願いしよう」
若干機嫌の良さそうな少女についていくと
30分ばかり歩いて、なんだか歴史ありげな感じの巨大な壁が見え始めてきた
「バビロニアってあんな感じになってたのか……」
「外壁はバビロニアの誇る4重防衛機構の一つ、
ほかにも
「なんか格好いい名前だね」
「あら、あなたもそう思うの?
私も格好いいと思うわ、あなたとは仲良くできそうね」
ニコニコと形容するような笑顔を浮かべた少女は、草原の途中で止まって左手を前に出す
「止まって、バビロニアの障壁は視覚的に見える範囲だけじゃなくて、多次元に亘って存在するわ……だから」
「つまり、さっき言っていた外壁の……」「そう、
そっと手を伸ばした少女の指先から波紋が広がり、少女の姿が消失する
「……」
姿が消えた事に一瞬焦ったものの
統慈はすぐに思考を切り替える
(バビロニアとか見慣れない植物を見るに……おそらくここは過去の世界、あるいはシンフォギアとは違う世界、どちらにせよ元の世界に帰らなきゃいけない、まずは違う世界に飛ばされてきた原因を探らなきゃいけないな)
思考は続くが、やはり時間または世界線境界面を超えてきたのは『そういう聖遺物の効果』としか思えないというもの、自然と方法より、タイミングや意図を考えるように動く
(環境を見るにおそらく超古代文明の時代にまで遡ってきている
時間を飛ばす聖遺物で過去に戻ったとするならおそらく一般摂理における時間の連続性に違反した地点に時空が歪んでいるポイントがあるはず
そこに行けば……いや、また歪んだ時の中に漂流すれば今度はどこにたどり着くかわからない、それこそ滅んだ世界とかについてしまったら仕方がないな……)
危険極まる世界漂流など不可能と判断した統慈は思考を切り替える
「……」
(まず言葉は通じるというだけだが利点は得た、現地住民の協力も得られた
まずは一旦拠点を構築して、十分に情報を得る他にない……!)
その瞬間、目の前の空間が揺れて
「おにいさん!連れてきたよー!」
「……はじめまして」
少女と緑色の髪の女性が現れる
「あ、こちらこそはじめまして
先程は言えませんでしたが、私の名は統慈といいます」
「ご丁寧にありがとう、私はカストディアンの一人、文明開化員のトト」
「私は契約者のフィーネ!」
「……まず、一つ教えてもらっていいだろうか」
「もちろん、貴方の質問に答えよう」
緑髪の女性はトトと名乗ったのに対し
明らかに聞き捨てならない名前を名乗った金髪少女
「名を、フィーネ、そう言ったな?」
「ん?うん!私はフィーネだよ!」
(となるとやはりここは過去の可能性が高い、もしかして使った聖遺物は時間を巻き戻す機能に特化していて、『いつ頃に戻すか』は設定できないようなものなのか……?)
「ではトージ、貴方に問います
『貴方はどこから、如何にして来ましたか?』」
「場所はリディアン、道は不明、おそらく遥か未来から」
「……真理を解き明かす権能ですらこれですか……どうやら本当に違う時代から迷い込んでしまった客人のようですね、仕方ない
労働者階級としての扱いでよければ、私の権限で人民登録を行います
どうしますか?」
「ではそれでお願いします」
「承りました、フィーネ」「はい!」
フィーネがプラ板のような薄い板を俺に渡してくる
「個人認証付きの携帯端末よ!貴方には生体埋め込み式の認証ができないから
代用の身分証としてそれが機能するわ、それじゃあこっちに来て……ほら、ここに触れて」
言われるがままに波紋を揺らめかせる端末表面に触れて、一瞬ピリッとした感覚を味わう
「個人認証完了よ、登録ができたらもうゲートは倒れるから、一緒にいきましょ!
バビロニアの都を案内してあげるわ!」
「……フィーネ、あまり迷惑をかけてはいけないよ?時間渡航が禁忌指定されているのはあなたも知っているはずよ」
「は、はい!」
「トージ、貴方もあまり連れ回されるままではいけない、ちょんと主体性を持ちなさい
自分を支配できない人間は周囲を支配できないのですから」
「はい」
やたら含蓄のある諺のようなものを聞かされながらフィーネ(幼体)に引き回される
やがてはフィーネが勤めることになるという神殿や、普段の勉学につかっているという学舎
古い見た目の市場など、様々な場所を見て回る
フィーネ(幼体)が言うには
この街はアヌンナキがもたらした技術によって作られ、人間たちがその中を満たしたということ
外壁や主要建造物の内部には複雑な構造やら金属やらが見られた割に
市場は笊籠に果物を乗せるような典型的な発展途上国の様相であったのは
支配階級と被支配階級の文明力の差が原因であったらしい
「なるほど……」
「私は大人になったら巫女になって
神様と人の間に立つの!
「……」
その果てが気狂いの露出狂なのだから笑い者だが、それで構わないのだろうか
「トト様のところに戻りましょ
あの方はとても優しくて頭がいいの、きっと子供たちのためにおやつを用意しているところだわ!」
「……ありつけるといいけど」
統慈はこの時代の『おやつ』が如何なるものなのかも知らなければ
そもそも早くに帰るつもりだったので食べる気はなかったが、フィーネに手を引かれてトトの祭殿へと向かう
「あぁ、まっていましたよ二人とも
さて皆、彼はトージ、別の時間軸から来た旅人だ、あまり長くは留まらないだろうけれど
ちゃんとご挨拶しなさい」
「「「「はーい!」」」」
そこには……割と数の多い子供達がいて
トト神の指揮の下に集団で向かってくる
「はじめまして、僕は統慈という
先ほど言われた通りの旅人だ」
「ボクはカーボ、よろしく!」
「はじめましてトージさん、私はネルと言います」
「我が名はリンデ、ジークリンデである
跪くがいい!」
「……馬鹿」
トト神がリンデの頭を叩くのに時は掛からなかった
「えっと……私は……」
「どうぞ」
「あっはい、私はフライアと申します
よろしくお願いします」
なぜか神と人の名前を両方聞く
いや、トト神が隔てなく育てているということか
「……ユピター」「よろしく、ユピター君」
ジュピターは木星神
フレイアは金星神
ジークリンデ、ジークフリートの歌に出てくる戦乙女の末裔だったか?
カーボはおそらく音楽記号のダ・カーボ
「以上が私の教える子達だ、今は4名だけだが、2年前まではもう6名いたぞ
その6名はそれぞれが自分の道に進んでいったがね」
「……」
「さて、話を戻すぞ
皆、今日からはトージも共に学ぶことになる、心しておけ
トージ、まずはあなたの学力がどの程度かを判定する必要がある、私から問題を出すので回答して欲しい」
「わかりました」
話はかなり長引いた