戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー 作:魚介(改)貧弱卿
ソロモンの杖とネフシュタンの鎧を両方装備し、遂に姿を現したフィーネの指揮に従って
カディンギルがエレベーターシャフトとしての機能を放棄し、地上へと姿を現した
「リディアンが……っ!?」
翼は半壊した校舎の上に立つ了子の姿を見つけた
「櫻井女史…」
「フィーネ!お前の仕業か!?」
怒りの声を上げるクリスの言葉に反応して
「フフフフフ…ハハハハハ!!!」
悪戯がバレたかの様な顔をして高笑いをするフィーネ
その頃、弦十郎は復帰した緒川と共に
オペレーター組を回収し、地上へと向かっていた
「防衛大臣の殺害手引き…デュランダルの強奪…そして、本部にカモフラージュして建造されたカ・ディンギル…俺達は全て、櫻井了子の掌の上で踊らされていた」
自分達が全てフィーネに利用されていた事を悔やみながら緒川に肩を貸してもらいながら懐中電灯で照らしながら暗い廊下を歩く弦十郎達。
「イチイバルの紛失を始め、他にも疑わしい暗躍もありそうですね」
「了子さんにとって、全てが野望の為に使い捨てる手駒でしかなかったんでしょう…」
緒川達は唯一残った脱出口である手動開閉のみの防火扉からの脱出を目出して
二課本部の廊下を進んでいく
「そんな……嘘でしょ…嘘ですよね?!そんなの嘘ですよね!?だって了子さん私を守ってくれました!」
響は信じられなかった、目の前にいるのは今まで自分を支えてくれた人だ
そんな人がノイズを使ってリディアンを襲うはずがない。信じたくなかった
脳裏に浮かぶあの時自分をノイズからバリアを出して守った事、嘘だと言って欲しい
「あれはデュランダルを守っただけの事。
希少な完全状態の聖遺物だからね」
フィーネは響の言葉を切り捨てる。
「嘘ですよ!了子さんがフィーネと言うのなら、じゃあ…本当の了子さんは?」
「櫻井了子の肉体は先だって食い尽くされた、いや、意識は12年前に死んだと言っていい。
超先史文明の巫女、フィーネは遺伝子に己が意識を刻印し、自身の血を引く者がアウフヴァッヘン波形に接触した際、その身にフィーネとしての記憶・能力が再起動する仕組みを施していたのだ。
12年前、風鳴翼が偶然引き起こした天羽々斬の覚醒は、同時に実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る意思を目覚めさせた。
その目覚めし意識こそが私なのだ。」
つまり、櫻井了子の中に12年前からフィーネの魂が宿っていたのだ。
「貴方が、了子さんを塗り潰して…」
「まるで、過去から蘇る亡霊…!!」
「フフフフフ…!フィーネとして覚醒したのは私1人ではない。歴史に記される偉人…英雄…世界中に散った私達は、パラダイムシフトと呼ばれる技術の大きな転換期にいつも立ち会って来た」
「シンフォギアシステム……!」
「そのようなもの、為政者からコストを捻出させるための副需品に過ぎぬ」
「お前の戯れに、奏は命を散らせたのか!?」
「あたしを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたのも、そいつが理由かよ!!」
激昂する二人だが、それもどこ吹く風と言わんばかりに余裕綽々な様子を見せるフィーネには通じない
「そう!全てはカ・ディンギルの為!」
原作ではここからカ・ディンギルが出てくるが、本作では既に出ているので
フィーネは大きく手を振り上げて塔を指した
「これこそが地より屹立し、天にも届く一撃を放つ荷電粒子砲 カ・ディンギルッ!」
「カ・ディンギル…こいつで、バラバラになった世界が1つになると?」
「ああ。今宵の月を穿つ事によってな。」
そう
フィーネの狙いは月をカ・ディンギルで撃ち抜く事だ
「月を!?」
「穿つと言ったのか?」
「何でだ!?」
3人には理解できない
いや、因果が繋がらない
それもそのはず、そもそも人類の不和とは月に由来するもの、それを知らない現代人には理解できるはずがない
「私はただ、あのお方と並びたかった…
その為にあのお方へと届く塔をシンアルの野に建てようとした。
だがあのお方は、人の身が同じ高みにいたる事を許しはしなかった
あのお方の怒りを買い、雷霆に塔は砕かれたばかりか、人類は交わす言葉まで砕かれ
果てしなき罰…バラルの呪詛をかけられてしまったのだ」
フィーネの言葉に3人は黙り込む。
「月が何故古来より不和の象徴として伝えられてきたか・・・それは!月こそがバラルの呪詛の源だからだ!人類の相互理解を妨げるこの呪いを、月を破壊する事で解いてくれる!そして再び世界を一つに束ねる!」
光に満ちた砲身に目を向けたフィーネにとっては、シンフォギア装者達は既に眼中にない
しかし、その背に向けて怒りを放つものがいた
「呪いを解く…?それは、お前が世界を支配するって事か?安い!安さが爆発しすぎてる!」
「永遠を生きる私が余人に歩みを止められることなどありえない」
笑いながら振り向くフィーネに対して
3人は聖詠を以て相対し
「Balwisyall nescell gungnir tron」
「Imyuteus amenohabakiri tron」
「Killter Ichaival tron」
3人がギアを纏い、色とりどりの光と共に臨戦態勢に入った
クリスはフィーネにミサイルをブチかまし、周囲に被害が出る事も顧みずに撃ちまくり
弾幕を張ってフィーネの注意を集中させ
射程攻撃をもたない響が突撃するための足がかりを作る、同時に翼は飛び上がり
空中からの奇襲を狙う
響の突撃に対応して鞭を飛ばしたフィーネは、その片手間に鎌を振るって時を斬り
NIRVANA GEEDONを連発する
「うわぁぁっ!」「ぐぅぁぁっ!」
至近距離にいた響と翼はそれをモロに受け
凄まじい爆音と共に吹き飛ばされる
朦々と上がる煙の中で、クリスは己のギアを拡大して砲台を構築し
ミサイルを撃ち放つ
フィーネは向かってくる一撃には機敏に対応し、そのミサイルを迎撃するが
「もう一発は!?」
空中にクリスを運ぶ二発目のミサイルには対応しきれなかった
「クリスちゃん!?」
「何のつもりだ!?」
「だが足掻いたところで所詮は玩具!
カ・ディンギルの発射を止める事など!」
「Gatrandis babel」
「 ziggurat edenal」
大きく飛び上がり空中でミサイルを乗り捨てたクリスが歌を変える
「この歌…まさか!」
「絶唱!?」
「何だと…!?」
「Emustolronzen fine el baral zizzl」
涼やかに、軽やかに
少女が歌う、終焉の歌
「Gatrandis babel ziggurat edenal」
少女は自らの両手に握った
自らの死の引き金を引いた
大きく、夜空に広がる蝶の羽
「Emustolronzen fineel zizzl」
光が収束し、巨大に伸長した砲を中心に
数千に至る流星が降り注いだ
カ・ディンギル
超大口径の荷電粒子砲であるその一撃を
力を束ねた光の雨が迎え撃つ
「ハァッ」
ニチャァ、と言わんばかりに笑みを浮かべるフィーネ、クリスの絶唱は本来広域殲滅型
それを一点収束させての一撃では
元来から一点を撃ち抜くためだけに造られたカ・ディンギルこ攻撃力には及ばない
少しずつ、クリスの構えるバスターライフルにヒビが走る
リフレクターは過剰負荷に砕け
ギアそのものも、同時にクリスの命も擦り減っていく
そして、ついに
光条の雨は光の槍に貫かれて散った
「クリスちゃぁん!」
響の叫びよりも早く、動力を失ったイチイバルが落下していく
光の槍は空を駆け抜けて
月の一部を削ぎ取った
「し損ねた!僅かに逸らされたのか!?」
クリスは墜落の一瞬
全力を以って行っていた射撃を中断
アームドギアを放棄して、リフレクターを全面展開、砕け散るまでの僅かな時で
荷電粒子の光を僅かに屈折させることに成功したのだった
「ここで、私は暮らしています
トージくんは男の人で一般階級だから向こうの方の生活区画で暮らすことになるね」
「わかった」
フィーネ幼体から幾らかの説明を受け終わり、業務やらなにやらの合間に
商人の困りごとやちょっとした力仕事などの解決をしていると、少しずつ評判が上がっていき
そしてついには
「トージ、ちょっとウチの柵直してくれよ
木組みが緩んじゃってるみたいでさー」
「もう何度も何度も……自分でやってくださいって前に言ったでしょう?」
「そんなー」
「トージィ!家の電気回線って直せるかー?」
「直せますけど、物によりますね
一度見せてください」
「おっ、頼んだぞー?」
「トージくん、一緒にカフェに行かない?
今日、ちょうど空いてるんだ」
「わかりました、午後からで良ければ」
「もちろん!」
「トウジさん、また遊びを教えてください!」「ん、ベイゴマはもう飽きたか?
じゃあ今度はベイブレードをだな……」
「なにそれ?」
「こうやって三つに分解できるコマを使うんだ、ワンセットのコマと違って頭・胴・足を組み合わせる事で機能や動き方を積み替えることができるぞ、さぁ3.2.1.ゴー……シューッ!」
「なぁトージネジ山の部分を考えないネジ一本の体積ってどう計算すればいいんだ?」
「ネジの先端部分の円錐+ネジ山の最外径を直径とした円柱+ネジ頭の体積です
円形のネジ頭なら円柱、六角なら六角柱で
この場合なら円ですね、
直径8ミリの高さ14ミリの円柱と先端角90°で底面の直径8ミリの円錐と直径15ミリ高さ3ミリの円柱」
「お、おう」
金鉱の鉱山夫という職業からは早々に足を洗って便利屋となっていた
そして
「トージは居ますか?話があります
今後の人生にも関係する重要なことです」
「居ますよ、それでお話とは」
「貴方を私の契約者として選びたい」
「契約者……?フィーネのような、ですか?」
「そう、フィーネはエンキの契約者です
カストディアンはそれぞれ一人ずつ、ルル・アメルの中から専任の契約者を選ぶことができる
そしてその仕事は」
「神と人を繋ぐ鎹、という事ですね」
トージはついに、トト神自らが出向いてスカウトをかけるほどの存在となった
門戸を叩いてきたトト神に応対する統慈に対して、単刀直入に語った内容は紛う事なきスカウト
神と人の間に立ち、その間を繋ぐ楔
神に民意を、人に神託を
それぞれもたらし、その意思を擦り合わせる役としてのスカウトである
「それで、お答えは頂けますか?」
「もちろん、お受けいたしますと言いたい所ですが、しかし、僕には帰るべき場所があります」
トト神は目を閉じて、再びゆっくりと開く
「……無論、貴方は時の果てにある別の場所から飛ばされてきた
それは承知している、ですが
それで良いのではありませんか?
別の時へと流れ着いた者はその時空で一生を終える事も多い、そろそろこの時間軸も、貴方にとって住み良いものとなっているのではありませんか?」
その言葉は、毒
間違いなく強力な毒
事実として、かつて過去に飛ばされてきた時よりも遥かに『馴染んで』いるのは確かだ
この時代の、この世界の人間として過ごすのもまたとても良いのだろうと、統慈は思えているだろう
「しかし、それでも帰りたい
僕はあの場所で、やるべきことがある」
「……分かりました、ですが覚えておいてください、私は貴方を選んだということを
……さて、クロノス神のもとへ向かいますよ」
「え?どういう話ですか?文脈がわからないんですが」
「分からないもなにも当然です、実を言うと、私はここ二年間ずっと、
貴方を試していたのですよ
最後はともかく、その過程は最高でした
ロクに労働者としての経験も教育もないながらに下層階級の労働者という身分を押し付けられて右も左も分からない場所に放り込まれた貴方は、それでいて尚腐ることなく輝き続けてすぐに労働階級を抜け出した
次になにをするかと思えば商人達の中に飛び込んでいき修理や相談を受ける職を『創造』し、ついには神々の間にまで名の聞こえるほどに成り上がって見せた
最後はアレでしたが、私から貴方に褒賞を与えるには良い頃合いではあります
時を司る神であるクロノス神なら貴方の元いた時空を探り当てるくらいは容易いでしょう」
楽しそうに笑う緑の髪の神は
指を遙か彼方へと向ける
一言、それだけで空間が開く
「さぁ、一歩踏み出せばそこは神殿
貴方が別の時間軸に戻るというのなら踏み出しなさい、止まるのなら背後の家に帰りなさい」
「無論」
統慈は躊躇なく、未来へと歩を進めた