戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー 作:魚介(改)貧弱卿
「電源確保急げ!非常用は長く保たん!」
「自分が行きます!シェルターはお願いします!」
「わかりました」
「校舎の方の捜索は任せてください!」
一課、二課の区別なく、人は動く
戦いの中に生まれるものから戦えぬ人々を守るため、命をかけて動き続ける
「みんな何してるの……無駄なんだってわからないの!?
どうせみんな死んじゃうんだよ!」
蹲って泣き噦る少女
「ノイズさえいなければ……!」
歯噛みする自衛官
「生存者をまとめて集めます、急いで
出来る限り守らなくてはいけない!」
「捜索の指揮を取る、捜索班の編成を行うぞ」
そして統制を取り戻さんと務める司令官
血を流し、慟哭し
それでも歌い続ける戦乙女の裏側に
なお暗い戦場は存在した
「もうダメだよ……おしまいなんだ
みんな死ぬしかないじゃない!」
叫びを上げた少女の背後、赤い髪がゆれる
「諦めるな、生きることを
抗うことを諦めるな!」
「そうですよ、我々はどんな絶望的な状況でも、奇跡を信じることが許されている
だから最後まで諦めず、生き抜く努力を続けましょう」
天羽奏、拍木旋音の二人が
地下深くの二課本部から帰還したのだ
「私たちに何が出来るってのよ!
ノイズがバンバン出てきて、わけわかんない事になって校舎も全部無くなっちゃって!
それになにが出来るって言うの!?
どうしてみんな戦うの!?死ぬ為に戦ってるの!?」
「おいおい、ここはリディアンなんだぜ?なら直接戦えなくたって、アタシらに出来ることの一つや二つあるだろう?」
泣き喚く板場に、奏は笑顔を向けた
遠くに座っていた詠奈は、その言葉の意味に気づいたようで、一言呟く
「……応援……ですか」
「あ!体育館の方のレコードならまだ生きてるかも……!」
「放送施設がまだ生きていれば
私が回線を繋げてみせます、そうすれば声を送れるかもしれません」
旋音は奇しくも原作の緒川と同じ事を考え
しかしそれを否定する声が上がる
「配電盤はやられてるからブレーカーを上げないとダメ、でも体育準備室の方は瓦礫で使えなくなっちゃってるわ」
「なら、回線を切り替えて地下シェルターの方に、そこからならマスター回線を使えるはずです」
原作3女子と未来、そして旋音と奏
6人で地下路を進んでいく
「この先に、切り替えレバーがあるの?」
「はい、配線図によるとここが元・回線収束点、要するに電話からスピーカーからあらゆる放送設備や電気回路が集まっている最終到達点です
この先には高圧電源用の発電機もあります」
「でもこの扉は……」
ガンガン、と叩いてみても見るからに堅い鋼鉄の扉は厳重にロックされており
それが開く気配は全くと言っていいほどにない
「クソッ……こんな所で!」
奏がガングニールギアを使えるのなら
1秒と掛けずに斬り開くことができる
しかし、今の奏はLiNKERによる適合率底上げの恩恵を失い、ギアを纏うことはできない
鍵穴も封印された時に潰されたようで
開く事自体ができそうにない
しかし、その扉には
「電源確保用のゲート……これなら!」
「でもこれじゃ小さすぎるよ!」
小さな枠の部分だけは電線を通す為なのか別に開くことができる仕組みがあった
しかし大扉本体を開くことができない関係上、特に小柄でもない旋音、長身の奏は入ることができない
「アタシが行くよ!……大人だと入れなくても、
アタシなら瓦礫の間に入っていける
それに、アニメだとこういうの、ちっこいキャラの役回りだしね……それで響を助けられるなら!」
「でもそれはアニメの話じゃない」
板場の言葉に反論しようとする未来
だが、板場はそれを振り払った
「アニメを真に受けてなにが悪い!
ここでやらなきゃアタシアニメ以下だよ!
非実在青少年にもなれやしない!」
纏めた髪を揺らしながら、未来に強い瞳を向ける
「この先、『響の友達』と胸を張って答えられないじゃない!」
その目に、もはや恐れと怯懦の影はなく
決意を湛えた強い意志の光があった
「nice決断です、私もお手伝いしますわ」
「だね、ビッキーが頑張ってるのに
その友達が頑張らないって事はないよね」
その意志に同調して
ついて来ていた安藤創世と寺島詩織、そして未来も決断した
「……板場さん、聞いてください
貴女の意志はとても尊いものです
確証もない発案一つを根拠に安全な体育館を出てまでここに来て、今また見通しもつかない闇の中に踏み出そうとしている
貴女の勇気を称えます
しかし、蛮勇と勇敢は違う
危険が貴方を脅かす時、周りにいる人を頼る事を忘れてはいけない
隣にいる友達は、貴女にとってどんな存在ですか?守られていて欲しいもの
傷ついて欲しくないもの
だからと言って自分が傷つけばそれは皆の心をも傷つけてしまう」
「…………」
真剣な話として捉えたのか
板場も静かに旋音と目を合わせる
「友達を守りたいのなら貴女もまた傷つかぬように、賢しく振る舞わなければなりません
どうか、勇敢と蛮勇の境界を見極める知恵を持ってください」
「……うん、行ってくる」
「はい、私は戻って回線をつなぎます!」
戻ってきた旋音は可能な限りに急いでコンソールからのシステム介入を続ける
「……来た、動力OK、校庭の放送用スピーカーはまだ生きてる……!」
コンソールの上で
白魚のように美しい指が踊る
電気回線をつなぎ換え、物理的な補修を行ってまで出力を通したスピーカーが
放送の準備を完了させ、そして歌が始まった
「私は!全てを滅ぼす未来を作り出さないために!全てを後に残すために
失われたものを取り戻すッ!」
時の鎌を振り抜いて
時間を破り割いて遡る
時間流の連続性と不可逆の原則を冒涜する涜神の一撃が加えられた瞬間
その黒い刃にヒビが走る
「なにっ!?」
切り裂かれ、劈開した時の流れの中の
停止した世界にヒビが移り広がり
そして砕け散る
その時、世界に時の流れが戻った
「グロウノスが?!どういう事だ!
なにが起こっている!」
理解できない現象
グロウノスは時の中から外れた存在であるが故に破壊できない
決して壊されない永劫不壊の存在
その刃にこうもヒビが入ることなどあり得ない
あり得てはならないはずなのに
だというのにそれが目の前で起こっている
あるはずのない現象が行われている
その事実に混乱したフィーネは周囲に流れる力に気づくのが遅れて
致命的な隙を晒してしまった
(よ、かった)
(私を支えてくれる皆は……いつだって側に……皆が歌ってるんだ…だから……)
バキリ、と土塊を砕きながら
地に打ち捨てられた響が拳を再び握る
「まだ歌える
《You got the qualification》
黄金色の旋律が、周囲の
「まだ戦えるというの?!
なにを支えに立ち上がる
なにを握って力と換える!
お前が纏っているのはなんだ
心は確かに折り砕いたはず
なのに何を纏っている!お前が纏っているものは一体なんだ私が作ったものなのか!?」
立て続けに疑問文を並べるフィーネ
しかしそれら全ては愚問
シンフォギアシステム秘中の秘
高レベルに相転移したフォニックゲインによるシンフォギアの分解再構成
いわば今までのギアにさらに上から装備する形でギアの装甲を増設し
倍率を二重に掛けることで性能上限を超越する圧倒的な出力と負荷の低減を両立する機能
リディアンの生徒達、そして誰よりも率先して歌う
並の歌姫では一生掛かってもなお足りないほどのフォニックゲインがわずか数秒で生産され、湧き上がり溢れ出したこの空間でだけの
人の祈りが成し遂げた奇跡である