戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー   作:魚介(改)貧弱卿

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第45話 一期終了

「……よし」

 

月を見上げた統慈は、それが完全な球形を取り戻したことを確認して大きく息を吐く

 

そして、その直後

パリンと軽い音と共にグロウノスは砕け散った

 

「……ヒビ割れた身では解放の反動に耐えられなかったか……クロノス神、すまない」

 

 

あらゆる時間軸に一本しか存在しない時の鎌が破壊されてしまったと言う事は

つまり作り直したり複製したりはもう二度とできないと言う事だ

統慈の一言も当然と言えよう

 

「……」

 

フィーネの骸は灰となって消え

グロウノスの黒い欠片が辺りの灰の上に散って、統慈はそれを拾い始める

 

聖言による拘束解放(アンバインド)……シンフォギアのエクスドライブ同様、完全聖遺物にもリミッターが存在し、それを聖遺物ごとに異なる聖言によって解除する行為

 

ではあるが、『解放』はそれだけで大きなエネルギーを消耗する上、自壊のリスクすらある文字通りのリミッター解除

休止した完全聖遺物を起動にこぎつけるだけでもクリスが年単位でフォニックゲインを注ぎ続ける必要があるというのに、聖遺物のキャパシティを完全に満たした上でさらに喪われた言語である聖言を詠うとなれば誰が扱うと言うのか

 

「覚醒した解放聖遺物は非常に強力ではあるが……これがなんとも……な」

 

砕けて手の中に残った幾らかの欠片を見つめて、統慈は呟く

そして

 

「おーーいっ!」

(フィーネはそっちにいるのか!?)

 

響の叫びとクリスの念話

それらは単純な呼びかけではあるが

なかなかに混乱させてくれる

 

「はーーい!!

フィーネは……いません、おそらく、死亡したものかと」

 

完全な形を取り戻した月を見上げながら

平然と大嘘を吐く統慈

厳密に言えば嘘ではないが、彼が殺した以上はそのそばに撒かれた灰がフィーネの成れの果てである事はわかり切っているし、おそらくどころか確実に死亡している

 

「……帰りましょう、僕たちの帰るべき場所に」

 

もう、フィーネ(了子)はいない

だが、その魂は統慈の中で生き続けている

 

その薫陶は、その知識は

たしかに統慈が引き継いだのだった

 

 

「……一連の事件解決を祝して……とはいかんよなぁ……」

 

「そもそもお腹に穴開けて何言ってるんですかバカですか?」

 

生き残った数名のエージェントが司令を凝視しながら手だけは止めずに仕事を続ける

その奇怪な様子を眺めながら

事後処理に着いた統慈は聖遺物関連の情報を片付けていた

 

「……山崎さん、バカは言い過ぎです

司令はこういう時アホになるだけです」

「アホ?!」

 

「思い切り言われていますよ司令」

 

「……まぁモノも片付かん内から宴会のことなど正に取らぬ狸、アホと言われても仕方ないが……」

 

なんとなくバツの悪そうな弦十郎

そしてツッコミ役不在でひたすら暗いムードの流れる暫定司令室

 

そんな暫定司令室に、シンフォギア装者達が帰還する

 

「……お疲れ様、おかえりなさい」

 

もともとこれを言う役であった了子(フィーネ)の立場を受け継いだ統慈が

3人に話しかける

 

「おう、帰ってきたぜ」

「お疲れさまです」

「うむ、拍木もお疲れ」

 

ギアを解除した3人は全員私服姿だ

強制解除されると服は戻らないのに、自分で解除した時は服が戻ると言うのはシンフォギアノの機能の中でも謎な部分である

 

「……さて、装者達への慰労もしたいところだが、まずは君たちの今後について説明させてもらう」

「司令は休んでてください、というか病院に行ってください」

 

「し、しかし」「医療スタッフとしてドクターストップさせてもらいます、山崎さん、近場の病院に連行してください」「了解しました」

 

サラリと流されて病院に運ばれていく弦十郎を他所に、統慈と友里が説明を始める

 

「まず、あの月を穿った砲撃については既に日本政府に説明を求める声が多数上がっています、シンフォギアを世界に晒すわけにはいかないので、これについてはごまかす方針で行っていますが

どうしようもないものもあります

まぁ都合よく『月の復元現象』なんてのも起こったので、それに対しての話にカモフラージュする形になると思います

そこでですが、シンフォギア装者の皆さんには……雲隠れしていただきます」

 

「雲隠れだぁ?」

「はい、期限は未定ですが、とにかく今は姿を隠していただかなくてはなりません

さもなくば……」

「世界各国から聖遺物目当ての勧誘拉致脅迫賄賂なんでもござれの大セールが周辺人物含めて押し寄せてくるぞ」

 

友里さんの言葉を引き継ぐように

警備部門のトップである山中さんが言葉を繰り出す、それはあまりにも醜い『おとなのせかい』の一端を現すようなもので、思春期の少女たちに見せるような話ではない

よってそれを止めようとしたのだが

 

「彼女達は知るべきだ、己の力とその危険性、そして力に対する責任を」

 

その一言で押し切られてしまう

 

「……わかりました、とにかく

拠点に篭っていればいいんですね?」

「あぁ、詳しくは……まだ後に決まることだが、ウチで確保している拠点の一つにしばらく居てもらうことになる、とは言っても

数ヶ月程度で済むはずだ

流石に『死亡したこと』には出来ないからな」

 

それをやると翼さんは芸能界引退になるし、社会的な影響と多少ではすまない

そもそも国籍が無いクリスはともかく、響もまた日本国籍が抹消されたりすれば困りごとだ

当然学院も退学になってしまう

 

リディアンが丸ごと崩壊した今となっては大した影響では無いように思えるし

就職も国家機関である二課に頼ればなんとかなるだろうが、それでも充分大事である

 

 

 

「……ひとまずはこれだけを、お疲れ様でした」

 

キリッとした表情の緒川さんが最後に締めた

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