戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー 作:魚介(改)貧弱卿
「響〜っ!」
「未来〜ぅっ!」
超速でノイズを処理して抱き合う響と未来の二人……一期最終話(1話序盤)でいた無銘墓地に続く坂道なのだが
「ひびきぃぃぃぃっ!」
「みくぅぅぅぅっ!」
そこには泣きながら響の名を叫ぶ未来と笑顔でそれに応える響の二人っきりの世界が構築されていた
「これアタシ達要るか?」
「……あまり言いたくは無いが、邪魔だったか……?」
〈いえ、大丈夫です、ノイズ全滅を確認しました、現時点を持って任務を完了と見做します
装者各位は本部に帰還してください〉
《了解》
「響!やっと帰ってきたんだね!」
「うん!未来を置いていけないからね!
まだ流星、見られてないから!」
二人を置いて帰るべきか若干思案するイチイバル=クリス、そして話終わるまで待つ構えのアメノハバキリ=翼
既にガングニールギアを解除した響は未だに感動が去っていないようで
酷く興奮した様子だ
「……なんかヤクでもキメてるみてぇだな」
「私もそう見えてきた」
ひびみくの醸し出す空気に早くもゲンナリした顔になる二人であった……
響達信号機組の帰還からさらに時はすぎ
極秘裏なのは変わらないが二課本部再建や殉職者のリストアップと同時に人員・組織再編、内職と忙しい日々が続いていたのだが
「ソロモンの杖がアメリカに輸送……ですか」
「フィーネが強奪する前の所属では、
苦虫を噛み潰したような顔になる数名の職員に、いつもの表情で説く指令
「……我々が反抗したところでどうということもできませんし、諦めましょう
月とかフィーネとか装者達のことも含めて
無茶を言われないだけで随分マシになる」
「……そうですね」
「輸送後の研究のためにわざわざ担当者が日本に来るってのが最高にバカらしいですけどねぇ……」
「こいつソロモンの杖使ってノイズ出したり死体偽装してそのまま杖パクったりしそうな顔だぜ?本当に大丈夫かよ」
エージェント達のくだらない話をよそに
サクリストS ソロモンの杖の輸送計画が実施される
「列車での輸送というのも成功率で言えばトントンっちゃあそうではあるんですが、やはり無茶ですよこれ、日本政府のプランが一番だったのでは?」
「超音速の戦闘機で一気に横浜基地まで空輸して引き渡す作戦の事ですか?」
作戦全体の統括として参加している友里さんに話しかけると、友里さんは柔らかく微笑んで
「ダミープランはいくつあっても良いものです、それに一見現実性のないプランを使用して敵を欺くというのは良くあることですよ」
「はぁ……」
もちろんそんな言葉一つで落ち着くはずもなく、心配しながら窓の外を眺める統慈
そして
それは現れた
「ノイズ……!?」
ピリピリと皮膚に痺れるような間隔、それと同時に大きく飛び退く統慈
そして
その瞬間、天井を貫通して頭上から降ってきたノイズが床に直撃する
躱していなければ確実に当たっていた位置だ
「きゃぁっ!」
「大丈夫ですか!?」
輸送にまでついてきていたDr.ウェルがソロモンの杖を抱えながら、転倒した友里さんに声をかける
「まだきます!二人は早く先頭車両に!」
現場の最高責任者である友里さんとソロモンの杖輸送担当のDr.ウェルを逃すべく指揮を執る統慈
数人のエージェントが銃を出しているが、やはり効果は薄い
「大変です!すごい数のノイズが来てます!」
「明らかにこっちを狙って来てやがる!」
ルームに入ってきた響とクリスの言葉通り
もはや空を埋めるほどの数と形容するべきノイズの群れが上空に集っていた
「……前の車両に行きましょう!」
「僕がノイズを足止めします」
例の如く貨物列車に偽装した運搬車の中に搭載されていた装置を使って位相差障壁に干渉し、その力を無効化しつつ叫ぶ統慈
その声に背を押されてか
足早に立ち去る4人
「さぁて……お仕事しますかね!」
統慈は左腕に掛けられた腕輪を閃かせ、そこから炎を湧き立たせる
「多数のノイズの反応に混じって高速で移動する反応パターン?!」
「三ヶ月前、世界中に衝撃を与えたルナ・アタックを契機に、日本政府から開示された櫻井理論、その殆どが未だ謎に包まれたままとなっていますが、回収されたこの
世界を脅かす認定特異災害ノイズに対抗するべく新たな可能性を模索することができれば……」
ソロモンの杖を抱えるが故に手を使うことができないDr.ウェルを中段に、後方のノイズを警戒するべくシンフォギア 装者が後方につき、友里さんが先頭に立って前方の車両へと進む
しかしその最中、一番後ろにいたクリスが立ち止まった
「そいつは……ソロモンの杖は
簡単に扱っていいモンじゃねえよ」
「クリスちゃん……?」
「尤も、アタシにとやかく言える資格はねえんだけどな」
顔を背けたクリスの手を背後から響が取って、そのままひっぱる
「うわっ!なんだよお前!」
「大丈夫だよ!」
「お前、ほんとにバカ……」
顔を再び背けるクリスの頬は、僅かに赤い
〈すみません!数匹逃しました!〉
その直後に統慈の声が通ってさえいなければ、そのままの空気を保っていただろう
「了解しました、迎え撃ちます!」
弾を確認した友里が拳銃を構える
その銃弾は特別製の擬似聖遺物、
希少なので上位エージェントと実行班2人の合計20発しかないが、確率操作すらすり抜けて確実に相手を撃ち抜くことができる必中の弾丸、
「うわぁぁっ!」
Dr.ウェルが悲鳴を上げる中
天井を突き抜けて来たノイズを友里が撃ち、4体のノイズを一発の銃弾で射殺して炭化させた
「……ちゃんと効くんですね……」
〈技術向上の賜物です!〉
「行きます!
Balwisyall nescell gungnir tron」
「Killter Ichaival tron」
二人は聖詠を歌うと同時に車外へ飛び出して飛行型ノイズ相手に戦い始める
「悪雀どもがうじゃうじゃと!」
「どんな敵がどれだけ来ようと、今日まで訓練してきた“あの”コンビネーションがあれば!」
「アレはまだ未完成だろぉ
実戦でいきなり突っ込もうだなんておかしな事言うんじゃねーぞ」
アームドギアのクロスボウを展開したクリスがビーム矢を放って周囲のフラストノイズを牽制射撃
無数のノイズは、やはり数を減らしながらも追随してくる
シンフォギアを持ってしてもその速度、数は受けるに難いと言わざるを得ないだろう
「やっべ!」「はぁっ!」
クリスの矢の拡散範囲外から突撃して来たノイズを響が処理、右拳からの
飛行能力を持たない通常型ギアとは思えない見事な動きにエクスドライブモードを思い出したクリスのボヤきは
「ないものねだりはしてらんねぇな!」
拡散弾を収束型に切り替えたクリス自身の叫びに打ち消される
拡散弾の角度をさらに大きく取り
今度こそ逃さんとばかりに広角射撃を再開
しかし、それを躱す機影が現れる
シンフォギアの攻撃はノイズに対しては特効的な威力を発揮してそれを炭へと還す、しかしその攻撃を躱されてはどうという事も無い
「あいつが取り巻きを率いていやがるのか!」
鋭角的なターン、通常型とは一線を画した飛行速度、それだけでなく迷彩機能や急停止と言ったさまざまな能力
それは明らかに上級ノイズだった
〈まずいですよ……!〉
その名はノイズ・ハルファス
巨大なカラスを象った姿は他の上級ノイズすらを凌駕する
〈アレはノイズの中でも特に強力なノイズ、まともに相手するのは危険です!
絶唱並みのパワーをぶつけて一気に撃破する必要があります!〉
「えぇ!?そんなに!?」
〈そんなにです!他の上級ノイズとは比べ物にならない
統慈の声は焦りを隠せない
ソロモンの杖を詳細に解析した統慈の知る知識の中にはそれがどれだけ危険かも含まれているからだ
ソロモンの杖を解放した時にのみ顕れるそれは他の上級ノイズとはまるで違う
なぜならそれらは
現代に再現された、あるいは解析された
失われたままのロストテクノロジー
例えば空間転移、例えば質量消去、例えば時間遡行、表されるものは数多くそれらの未解析・未再現な超技術が組み込まれたノイズは
カルマノイズのそれとは異なる方向性で、強い
「キィイィィィイイィィイイッ!」
超高速で動きながらの急速ターン
鋭角的な軌道を繰り返してクリスの拡散攻撃を回避、どころか直撃弾すらもその装甲は無力化していく
集束の甘い散弾程度の火力では
ノイズ・ハルファスの装甲は砕けない
「クリスちゃん!」
響の拳も届かないほどの遠距離、クリスのガトリング砲による制圧射撃も、ノイズ・クロスセイルを砕いたミサイルによる広範囲消却も
全てを無に帰して飛び続ける大鴉
その直後
トンネルに差し掛かった列車の上に立つ二人はとっさに身を伏せる
そして
「そうだ!師匠の戦術マニュアルによればこんな時は!」
響がある戦術を閃いた
「ふっふ〜ん、こんな時はね
列車の連結器を外して後ろの車両をぶつける!」
「戦術つったってオッサンが見てる映画のトンチキ拳法の話だろそんなの!
それにノイズ相手に物理攻撃なんて!」
「ぶつけるのは車両だけじゃないよ?」
含み笑いと共に、響は前方の車両へと向かい
その連結器を外して
「ちょっと待ってくださぁぁぁい!」
「うぇ!?」
「統慈!?バカお前なんでこんなところに残ってんだよ!」
最後尾の車両に唯一残っていた統慈が遮蔽扉を開けて飛び出す
とはいえ車両は既に切り離されてしまって
「よっと!ごめんなさい!」
残された車両に飛び移った響が統慈を抱えて放り投げ
「うわぁぁっ!?」
「バカ野郎!!」
クリスがアームドギアを放り捨てて受け止める
「よっと!」
身軽な様子で再び飛び移ってきた響に非難の声を上げようとするが、その真剣な表情に統慈は黙らされ
響は列車から跳躍して線路に降りて
右腕のギア装甲部を巨大化させ、さらにアンカージャッキを起動
慣性力で移動してくる後部車両をすり抜けてノイズ・ハルファスが現れた瞬間に
その拳を叩き込む!
「閉鎖空間で相手の機動力を封じた上、遮蔽物の向こう側から重い一撃、あいつどこまで……」
統慈を抱える姿勢のまま呟くクリスは、自分の想定を上回って更に強くなっていく響に驚かされる事になった