戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー 作:魚介(改)貧弱卿
「拍木さんは大丈夫だったんですか!?」
「大丈夫だよ」
その後、念のために休暇を出された統慈は小日向未来と談笑していた
彼女は明るい笑顔のまま奇妙な現象を報告する統慈に対して心配の色を見せるものの、間髪入れずに否定されて落ち着いた顔に戻る
「だって俺、怪我してないもの
海に落ちたせいで意識なかったけど、実際重症化するような怪我を負った跡は微塵もなかったし、それに精密検査の結果は……えげつないくらい項目多かったけど、全然大丈夫だったし」
「はぁ……ならよかったです」
ため息をつきながら視線を戻した未来におどける統慈
「いやぁなんか急にカリウムが足りないって言われてさ、看護師さん何したと思う?」
「え?」
「点滴パックに注射器刺してなんか入れたの、しかもその瞬間に中の液体が蛍光色になってさ、めっちゃ毒々しい色なんだよ
それに点滴から液が入ったときめちゃくちゃ痛くてさ、思わず『痛っ!』て言っちゃったくらい」
「普段から不健康だからじゃないですか!バカなんですか?」
「うわぁ〜バカって言われたわ〜
こーひーちゃんにバカって言われた〜」
「誰がコーヒーですか!」
プリプリと怒る仕草をしているが相変わらず可愛い未来、二課の外部協力者として雇われの身であるため、彼女は現在一部の限定的な機密を除いた基本的情報に対する閲覧権限を持っている
そのため部外者には話せない仕事状況であっても開示することが可能なのである
響達にとっての『ひだまり』である帰るべき場所、日常の象徴たる少女に
ちょっぴり刺激的な話を聞かせながら統慈は笑う
二課本部の上階層にあるカフェテリアでの話であった
「響達は……怪我とかはしてませんか?」
「だあいじょうぶ、体張るのはエージェントの仕事なんだから怪我なんて僕たちがすりゃいいのさ、響ちゃん達は無事だよ
ちょっと翼さんは無理したけど、それも後遺症が残るような事はなかったし」
「そうですか……」
ブラックコーヒーをゆっくりと飲みながら話す統慈と、サンドイッチを眺めるばかりの未来
すこしだけすれ違った二人の会話は、しばらく続いた
「お前等こんなトコにいたのかよ」
「あ、クリス?」
「クリス……?」
「小日向も、ボンヤリしてっと巻き込まれるぞ」
「「え?」」
その直後、昼飯時にありつけた人員がカフェテリアに入ってくる
食堂もちゃんとあるが、軽食の提供もあるカフェテリアに来る人も多いのだ
そしてここが規格外に巨大な潜水艦ともなれば
その人員の人数も多い
「うわわっ」
「離れようか!」
通勤ラッシュ頃の電車のように詰め込まれるというのは流石に女の子にはキツイだろうと判断した統慈は素早くサンドイッチの皿を取って未来を立たせる
「なんでクリスがこんな所に?」
「あ?アタシがカフェに居て悪いかよ
たまたま時間が昼に被っただけだ」
「そうか……こーひーちゃんはどうする?流石に今から下降りても同じだろうけど」
「そうですね……解散、ということにしましょうか」
人の流れ込み方からしておそらく下の食堂も同じような事になっていると察した二人は素早く思考を巡らせ、そしてこれ以上話しては居られないと判断する
「それじゃあまたね、こーひーちゃん」
「もう!その呼び方固定しないでくださいよね!」
こうして未来とはさらっと別れた統慈だが、クリスはそうも行かなかった
「こっち来い」
「うえ?」
店を出た途端にぐい、と手を引かれて
統慈は路地の方へと引き込まれる
「お前、アイツとずいぶん仲良さそうだったな」
「……そうだね、会えば挨拶するくらいの仲だよ?」
「ふーん?」
「……何かあったのか?小日向さんと」
「別に、アイツとは一回だけ会った位だ」
わざとらしい突き放すような言い方
その口調から察した統慈はクリスの表情を観察する
「そんな様子じゃなさそうだけどな」
「どっ……どうでもいいだろそんな事!」
「まぁどうでもいいよ、それで話は?」
「あ?」
突然切り出されたせいか、混乱した表情になるクリス
「……ないんだ」
「あーもーうっせえ!」
とん、と軽い跳躍で距離をとったクリスに対し、聖詠でも使うかと考えた統慈はとっさに
「……なんだったんだ……?」
しばらくのち、リディアンにおける学園祭『秋桜祭』が開催されるという話になった
普通なら文化祭といえば11月辺りになるのだが、なぜかリディアンに於いては9月の時期に行われる
「ねーねー旋音〜」
「静かにしてください」
「つれなーい、可愛くない反応しちゃダメでーす」
統慈/旋音はというと、クラスメイトに弄られていた
唐突に学校を休んだりなんなりと多少騒がれる原因を作ったところはあるが、それにしても正当な理由であるために文句をつけられる所以はない筈だが
どうもクラスメイト達にはなにかが見えているらしい
「彼はどんな人?」
「イケメン紹介して!」
「お金持ちのイケメン彼氏募集中なんだけどさぁ〜いいの知らない?」
「おまネイチャ」
「……私、男の人とあまり関わっている訳ではないのだけど?」
「うっそだー!だってイケメンの人と一緒にいたの見たよ!あの時!」
「あの時……?」
和葉が滔々と語り出したのは
例のフィーネ事件の折の話
別世界の旋音が緒川達と行動を共にしていたタイミングを見られていたらしい
「……全く関係ないではありませんか」
「知らない人じゃん」
熱心に騒いでいた数名以外はあの事件の話に冷めた反応を返して
「あのイケメン紹介してよー!」
「だから知らない人なんですって」
騒がしい話ばかりが、クラスの中では続いていく
ちなみにクラス全体での出し物はボトルジュースの出店になった