戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー 作:魚介(改)貧弱卿
「なんだあれ?煙?」
「火事かもしれねぇな!」
「おい……もう帰ろうぜ……」
リディアン に拍手が響くその頃、煙を上げる倉庫の元に中学生頃の子供達がたどり着いていた
「見てみようって!」
「おい……」
「なんだよたけし、ビビってんのか!?」
少年達は秘匿されるべきその内へと近づいていき、そして見つかってしまった
貴方が深淵を覗く時、深淵もまた貴方を覗く
好奇心の代償はなによりも大きく、そして厳しいものであった
「なにを見てるんですかぁ?」
女の声、高く、深く、そして柔らかな女の声に誘われ、それを直視してしまう
ソロモンの杖を握った、白衣の女の姿を
「死んじゃえよ、モブ」
「よせ!少年達は関係ないっ!」
嘲るような言葉とともに、ソロモンの杖で召喚されたノイズ達
しかし、彗星の如く迫る一撃がノイズ達を遮った
ノイズは展開される瞬間、存在比率が現実側に大きく傾く
その一瞬を狙ったウェルの一撃がノイズを打ち据え、三体のノイズを炭の山へと換えた
「逃げるんだ!早くっ!」
ウェルは叫びながら自らの杖を抜き
同時に拳銃を左手に持ち替える
「え?なんだよなに言ってんだよ!」
「おい逃げるぞ!」
タケシと呼ばれた少年は一目散に走り、それに釣られてメガネの少年も走り出した
しかし帽子の少年だけは状況が読めていないのか、ノイズだった炭を茫然と眺めている
「君ッ!」
「アハッ!」
ウェルが視線を逸らした瞬間、ノイズがウェルの目の前に出現
ウェルを炭化するべく襲い掛かる
が、ウェルはそれを見抜いていたかのように杖を突き込み、その腹部を貫通させることで機能停止に追い込む
しかし、少年はそうもいかない
ウェルの目の前にノイズが出現したその瞬間、ノイズに気を取られたウェルが意識を正面に集中させたそのタイミングで
少年の前にもノイズが出現していたのだ
「いかんっ!」
「ヒイィイイイィッ!!」
杖を正面に突いた姿勢では拳銃は満足に照準できず、たとえ当てたとしてもその裏には少年がいる、少年に銃弾が当たれば重傷を負わせてしまう
ウェルが動けなくなる一瞬を見越した複数のフェイントによる正面奇襲は見事に成功し
少年は無残にも炭へと換えられる
「くっ……何故殺したっ!」
「え?そんなの当然見られたからだよ?」
ウェルの激しい問いに対して
にへら、と笑ったままの女が何も変わらない鈴のような声で答える
「それ以上に理由は必要ないじゃない」
戦場に似合わない、華のような笑顔で
「……貴様……っ!」
「あら怖いわ、Dr.は私のことがお嫌いなのかしら?」
戯けながらも鋭い視線がウェルを打つ
その左手にはソロモンの杖
拳銃の残り弾数は10発、少ない
「仕方ない……逃げますよ、ノイズを出した以上は感知されたと思うべきだ」
「そうね、ネフィリムの餌をまた失ってしまう事になるけれど」
「また集める他にない……!」
ギリギリと音がなるほどに銃を握り締めながら、それでも世界のために
ウェルは亡骸に背を向けた
一方その頃、旋音は二人組のすぐ後の立ち位置となってしまったため、
二人が歌い終えたあとという針の筵に座らされながらも演奏を開始する
「メイド服……!?」
「あのこすっごい……」
遠くからざわつく声が聞こえる
リディアンの学園祭だけあって観客も多く、また姉妹校のファリネッリ男子音楽院からも参加者がいるため男性も少なからずいる、
アニメキャラの仮装やドレスなど、さまざまな服装の参加者はあれど
直前は一般的な服装だっただけに
堂々とメイド服の美少女が登場すればどよめきもあろうというものだ
「……」
すっと観客席に向かって一礼し、そのまま
右手をキーボードに
左手は鍵盤に、両の脚はペダルへと添えられる
その異様な構えに観客も注目し
最初の一音が奏でられる
仮面ライダーディケイドのオープニング曲、Journey through the Decadeが始まった
リズムを足で作り、主旋律を片手で奏で、半自動化された伴奏旋律に乗りながら時折に合成音のエフェクトを使ってバリエーションを出す
それでいて歌唱にも手を抜かず、座った姿勢でありながら完璧な男声で歌い上げる
十年期を意味するディケイドの名を冠するライダーのオープニングだけあって所々に10番目に関連するワードが入ってはいるが、意味に疑問を持たれるよりも早く歌い終える事でそれらを封殺し、演奏が終了した
「…………」
機械の中から立ち上がったメイド服の少女は楚々とした動作で一礼し、先ほどまで自分を囲い埋めていた機械と共にステージから袖へと去っていくのだった