鬼狩り抜刀斎   作:チチオマコト

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この作品では真菰はしのぶと剣心の同期という設定です。


狐面と手鬼と緋色

 

 

 

 

 

 

『安心しろ真菰。俺も義勇も必ず生きて帰る』

 

 

―それが彼の最後の言葉だった。

 

 

 私には二人の兄弟子がいる。

 正確に言えば二人いた、と言うべきか・・・

 一人は今も無事に生きて鬼殺隊の剣士として活動している冨岡義勇。

 そしてもう一人。

 義勇と一緒に鬼殺隊最終選別へ赴き帰らぬ人となった錆兎。

 話に聞く限りどうやら錆兎は他の最終選別参加者を護って死んだらしい。

 私はすぐにその話を信じることが出来なかった。

 だって錆兎は私たち三人の中で一番強くて、何より約束を守る人だったから。

 でも一人最終選別から帰ってきた義勇の状態を見て、それが真実なんだって理解させられて・・・

 

 私は泣いた。

 嘘つき! そう叫びながら・・・

 

 錆兎は私にとって友達であり、兄の様な存在だった。

 人は自身にとって大事な人はいなくならないという間違った思い込みをしてしまう。

 だけどその時私は思い出した。

 そんなものは幻想であると。

 私の両親もそうだ。何気ない日常の中を鬼によって破壊されて殺されてしまっていたではないか。

 

 

 

 義勇は最終選別から帰ってきてから人が変わった。

 まるで何かに取り憑かれてしまったかのように鍛錬に取り組み、自分の体のことなんてお構いなしに鬼を狩りに行くようになってしまった。

 

 そして私も最終選別に向けて更に厳しい鍛錬を己に課した。

 全ては錆兎の敵を討つため。

 

 などというのは単なる建前だ。

 実際の所常に何かをしていないと錆兎のことを思い出してしまって、辛くなるから・・・

 辛いことから逃げ出すために無茶をしていただけ。

 私は錆兎のように強くないから・・・

 

 そうやって月日が経ち、遂に私も最終選別に参加する時がやってきた。

 錆兎が居なくなった寂しさからも立ち直れ始めたことで、私たちの育手であり、親でもある鱗滝さんから最終選別に参加することを許可されたのだ。

 

「いいか真菰。決して無理をするな。他人の身を案ずるよりもまずは自分の身を護れ」

 

 最終選別に向かう日鱗滝さんから厄除の面と私の身を案じた言葉を貰った。

 鱗滝さんが不安になるのもわかる。

 だって鱗滝さんの今までの子供たちの中で一番強かったという錆兎ですら最終選別で命を落としているのだから。

 でも

 

「大丈夫だよ鱗滝さん。私は絶対に生きて帰ってくるから!」

 

 この言葉が嘗ての錆兎の最後の言葉と重なることを理解しながらも、私は大好きな鱗滝さんにそう伝えることしか出来なくて。

 

「・・・そうか。ならば必ず生きて帰ってこい」

 

「はい!」

 

 鱗滝さんの言葉に頷きながら返事をして

 

「それじゃあ行ってきます!」

 

 私は山を下り最終選別の地へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終選別の地、藤襲山。

 季節を問わず藤の花が咲き乱れ、鬼殺隊の隊士達が選別試験のために生け捕りにした鬼が閉じ込められている。

 この山で一週間生き残ることこそが試験の内容。

 

 言葉にすると簡単だが実戦の経験のない者たちが、一週間もの間鬼に囲まれながら生き残らなければならない。

 それは日に日に気力と体力を消耗して、いずれ鬼に喰われる事になる者が殆どだろう。

 錆兎もきっとこの試験の厳しさを理解して、だからこそ多くのほかの参加者を庇いながら戦った。

 でも私はそうする気はない。

 だって私は鱗滝さんの下に帰らないといけないから。

 何よりも優先するのは自分が最終選別に生きて帰ること。

 

 そんなことを考えている私の目に他の二人の参加者が映った。

 

 一人は私と同じかそれ以下の歳の位の蝶の形をした髪飾りを付けた女の子で、まるで何か使命の様なものに駆られているのか、凄く思い詰めた顔をしながら試験の開始を待っていた。

 私がその子を気になった理由は体の小ささだろう。

 私も体は鬼殺の剣士としては小さい。だけれどその女の子はそんな私よりも背丈が低かったのだ。

 あれだけ剣士としての体格に恵まれていないとなると鬼殺の要である鬼の頸を斬ることは難しいのではないかと思ったから。

 まぁ体格に恵まれていないにも関わらず選別に参加しているのだから、何かしらの対策を用意しているのだろうと思うが。

 

 そしてもう一人の参加者はまた私と同じかそれ以下の歳の今度は男の子だった。

 緋色の珍しい髪色をしている少年で、この子も背丈が低く私と殆ど変わらないか少し低いくらい。

 だけどそんな事が気になったのではない。

 この少年は他のどの参加者とも匂い(・・・)が違ったのだ。

 

 私は生まれつき鼻が利いた。

 それは鱗滝さんも同じで、鱗滝さんの下で修練を重ねるうちにいろいろな物の匂いを嗅ぎ分けれるようになった。

 

 そして緋色の髪の少年から発せられる匂いは紛れもなく強者の匂い。

 既に鬼殺隊の一員として多くの鬼を狩っている義勇でも彼ほどの匂いをさせていない。

 

 この選別の参加者の中で彼は酷く異質な存在だった。

 

「皆様今宵は最終選別にお集まりくださって、ありがとうございます」

 

 私が少年に気を取られている隙に、いつの間にか集合場所に一人の女性が現れていた。

 

「私の名前は産屋敷あまね。これより皆様が参加する最終選別についての説明をさせて頂きます」

 

 あまねと名乗った女性はどうやらこの最終選別における進行役のようであり、選別内容を参加者全員に説明していく。

 

「この山には鬼殺の隊士の皆様が捕獲した鬼が数多く捕えられており、最終選別はこの藤襲山にて一週間生き残ることになります」

 

 説明の内容は私が知っていた通りであり、特に今回の選別において変更点などはないようだ。

 

「それでは皆さんどうか御気を付けて行ってらっしゃいませ」

 

 その言葉と共に私たちは皆一斉に動き出す。

 

 最終選別が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終選別に参加して二日経過した日私は困惑してしまった。

 確かに多くの鬼がおり、少しずつだが体力が低下してきている。

 でも本当にそれだけなのだ。

 体力の低下もこのペースなら十分一週間持つであろうし、何より鬼の強さが全くもって大したことなかったのだ。

 

「おかしい・・・」

 

 そうおかしい。

 何体かの鬼を狩ったが、総じて実力が低い。

 この程度の鬼なら例え誰かを庇いながら戦っても負けることはないだろう。

 

 

 ―ではなぜ錆兎は死んだ? 

 

 

 わからない。

 この程度の鬼たちにあの錆兎が敗れたのか? 

 いや、やはり考えられない。

 例え人を庇いながら此処の鬼に複数で襲われても彼ならどうとでも対処できた筈・・・

 

「・・・うっ!! 何この匂い!」

 

 錆兎の死因について考えていた時、突如強烈な異臭が襲い掛かってきた。

 

「匂いがこっちに近づいてきている?」

 

 どうもこの匂いは一つの場所で発生してるものではなく、移動できる何かが放っているもののようだ。

 そうなるとこんな大量の肉が腐ったかのような匂いをさせる存在は一つしかない。

 

「見つけたぁ。俺の可愛い可愛い狐ちゃん」

 

 そこに現れた鬼は巨大な体躯に何本もの太い腕がまとわりついていて、それまでの鬼とは一際異なる異形の姿をしていた。

 

「嘘・・・何で最終選別にこんな大型の異形の鬼が・・・」

 

 鬼の強さとは原則的に喰らった人間の数に依存する。

 より多くの人間を喰らった鬼は肉体を変化させ、更に特異な術 血気術を使用できるようになる。

 だがこの藤襲山には人間を2,3人喰べた程度の鬼しかいない筈であり、こんな大型の異形に肉体を変化させれる鬼などいる筈がないのだ。

 

「狐娘。今の年号はなんだ?」

 

「年号? 今は明治だけど・・・」

 

 突然の鬼からの問いに私は戸惑いながらも返事を返す。

 

「そうか。まだ明治か・・・」

 

 鬼は私の返答にそう呟くと、

 

 

「なら死ねぇぇぇぇえ!!!!!」

 

 体に巻き付いている無数の腕を私にめがけて放ってきた。

 

「いや、意味が分からないんだけど!?」

 

 突然の鬼の攻撃と言動に私はつい声を荒げながらも、その攻撃を回避する。

 だが鬼は私が回避した方向に目掛けて更に腕を放ってきた。

 

 "水の呼吸 参ノ型 流流舞い"

 

 それを私は水流のごとく流れるような足運びによって回避と攻撃を同時に行い対処するが、

 

(か、硬い!)

 

 腕を切断するために放った攻撃の殆どは鬼に僅かな傷を負わせる程度で切断には至らず、結果回避に専念せざる得なくなってしまった。

 

「ほぉ・・・今度の狐は随分すばしっこいな」

 

 辛うじて攻撃をすべて回避した私に鬼は感心したような声を漏らす。

 だが、私はそれ以上に気になることがあった。

 

「・・・さっきもアナタ言っていたけど・・・その狐って何のことを言ってるの?」

 

 この鬼が言っている狐。

 最初は人間のことをこいつがそう呼称してるだけかとも思った。

 だけど違う。

 こいつは私が鱗滝さんから貰った厄除の面を見ながら狐と言っているのだ。

 

 一つの考えが脳裏を掠める。

 当たっていて欲しいようで、当たっていて欲しくない考え。

 

「ああ? 狐が何のことだって?」

 

 だけど現実はそんな私の葛藤なんてまるで考慮してくれない。

 

「決まってるだろ!! お前たち鱗滝の弟子のことだよ!!」

 

 ああ、やっぱり。

 

「俺はあいつに捕まえられて此処にいるんだ! 忘れもしない! 今からもう四十年以上も前のことだ!!」

 

 四十年・・・

 なるほど此奴はそれだけの期間この山で生き残ってきたのか・・・

 

「その狐の面は目印なんだよ。鱗滝が彫った面の木目は俺はよく覚えてるからな」

 

「もういい・・・黙って」

 

「厄除の面って言ったか? それを付けてるせいでアイツの弟子は皆俺が喰ったんだよ」

 

「うるさい・・・」

 

「最近で言えば珍しい髪色をした口元に傷のあるガキを喰ったな。今までで一番強い奴だった」

 

 その言葉が致命打となってしまった。

 

「お前がぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!」

 

 私は今までの人生で発したことの無いであろう声を振り絞りながら鬼に向かって突貫する。

 

 "水の呼吸 拾ノ型 生生流転"

 

 この技は刃を回転させながらの放つ連撃技。

 一撃目より二撃目の、二撃目より三撃目の威力が上がっていく性質を持っている。

 これならばアイツの体がどれだけ硬かろうと切り裂ける! 

 

 そして私は襲い掛かる無数の腕を斬り飛ばしながら奴に向かって一直線に進む。

 

「馬鹿め!」

 

 鬼から発せられた言葉と土の中から生じてる匂いに気づいたのは殆ど同時。

 だけどそれはすでに遅く。

 

「ぐっ・・・」

 

 土から出てきた腕によって私は吹き飛ばされ、山に生えている大木に背中をぶつける。

 

「がっ!」

 

 背中を強打したことで口から体中の酸素が抜け落ちたかのような状態になる。

 

 全集中の呼吸を操る剣士にとって体内の酸素はそれだけでも武器に等しい。

 私はなんとか体に酸素を取り込もうとするも痛みで上手く集中できない。

 

「ここまでだな。安心しろすぐには殺さない。お前は手足を引きちぎってから、ゆっくり味わって喰ってやるからなぁ」

 

 

 

 鱗滝さん・・・

 義勇・・・

 

 ごめんなさい。

 どうやら私はここまでみたい・・・

 

 いまだに体は痛みで立ち上がることが出来ず、刀も気づいたら手から失われていた。

 

 ああ・・・私・・・死んだら錆兎に会えるのかな? 

 

 鱗滝さんや義勇とお別れするのは寂しいけど、また錆兎に会えるなら、それもいいかな・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諦めるな真菰! どれだけ苦しくても最後まで足掻いて見せろ!』

 

 それは嘗て私が鍛錬に挫折しそうになった時に、錆兎から掛けられた言葉。

 

 他でもない錆兎の仇に殺されそうになって、錆兎の事を思い出しながら抗う事を諦めたら思い出した過去の記憶。

 

 でも・・・

 それだけの事なのに・・・

 

「う、あぁ、ぁぁぁぁあ!!」

 

「なっ?!」

 

 たったそれだけの事が私に立ち上がる力をくれた。

 

「チッ! 立ち上がったからって何だって言うんだ! もうお前に戦う力がないのは明白だ!」

 

 こいつの言うとおりだ。

 未だに体中の痛みは収まらず、足もまともに動かない。

 立ち上がった所で今の私に何かが出来る訳じゃない。

 

 けれども惨めに倒れ伏しながら殺されるのだけは御免だ! 

 

 私はせめてもの意地で鬼を睨みつける。

 

「何なんだその眼は・・・気に入らない、気に入らん! もういい!! お前は早々に死ね!!」

 

 そう言って鬼は自身の腕の一つを私に向かって放った。

 

 駄目だ。

 避けられない。

 

 もう此れで本当にお終い・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・そうなる筈だった。

 

 

 "龍の呼吸 壱ノ型 龍槌閃"

 

「・・・えっ?」

 

 鬼の腕は突如上空から現れた剣士の一撃によって切断された。

 そして腕を斬った剣士は私と鬼の間に立つ。

 

 この剣士は知っている。

 最終選別の集合場所にて最も異質だった緋色の髪の少年。

 

 だけど鬼から私を護るように立つその背中はあの人と重なって・・・

 

「錆兎・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 最終選別初日に鬼を見的必殺! 

 見敵必殺(サーチアンドデストロイ)! ってしてたら二日目から一切遭遇しなくなりました・・・

 

 マジで暇だなーって思ってたら草むらからゴソゴソと音がした。

 

「・・・鬼か?」

 

 ヒャッハー!! 

 もしそうなら暇つぶしに新しく修得した飛天御剣流(偽)の実験台だー!!!! 

 

 

 

 出てきたのは可愛いウサギさんでした。

 

 え? なぜに? 

 この山ウサギなんているの? 

 

 呆然とウサギを見つめてしまう。

 マジかー、こんな殺伐とした山にウサギがいるとは

 まぁ鬼って基本人以外喰わないみたいだしウサギが居てもおかしくはないのか? 

 

 ああ。

 でもなんかこのキュートな小動物を見てると心が癒やされるなぁ〜

 

 やっぱり鬼ばっかり狩ってても心荒んじゃうし、たまには何かで癒やされないとな! 

 

 そう思ってると俺の癒やしのウサギちゃんは急に何処かへと跳んでった。

 

 えー!! 

 ちょっと待ってよ!! 

 今から君で心の回復しようとしてたのに!! 

 

 逃さぬ! 

 絶対にとっ捕まえてモフってやるからな!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何かウサギ追っかけてたら腕だらけの気持ち悪い鬼見つけた。

 ちなみにウサギは完全に見失った・・・

 

 許さん・・・

 俺の癒やしを邪魔した悪鬼は我が愛刀の錆としてくれるわ!! (完全な八つ当たりです)

 

 "龍の呼吸 壱ノ型 龍槌閃"

 

 まずはそのキモい腕から切り飛ばしてくれるわぁ! 

 

 そうやって龍槌閃でキモい腕ぶった切って鬼の正面に立ったら、俺の後ろに狐のお面を着けた女の子がいた。

 

 あっ先客いたのね。

 

 ・・・これって俺思いっきり邪魔した? 

 間違いなく邪魔したよね!! 

 絶対今からこの子が腕だらけのキモ鬼ぶち殺そうとしてたとこだよね! 

 

 やっちまったぁ・・・

 抜刀斎ロールプレイしている身でありながら、この空気をまるで読んでない行動。

 

 

 

 よし! 此処は開き直って、いっちょカッコよく鬼ぶち殺そう! 

 

「錆兎・・・」

 

 どうやって鬼を料理してやろうか考えてると後ろの女の子が急に誰かの名前を読んだ。

 

 サビト? 

 さびと、さび、錆、錆兎? 

 

 もしかしてあの原作開始前に死んだ義勇さんの親友の錆兎か? 

 

 え、待ってよ。

 そうなるとこの子は真菰?! 

 マジか! もしかして原作キャラに初のエンカウント!? 

 

 となると目の前の鬼は手鬼?! 

 

 

 よっしゃぁーー!! 

 それなら何の遠慮もいらないな! 

 まずは真菰ちゃんに適当に安心させる為の言葉をかけてと。

 

 

 さぁ見敵必殺(サーチアンドデストロイ)だ! 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく俺が来るまで持ちこたえてくれた。後は任せろ」

 

 緋色の髪の少年は私に向かって表情を変えずに放った言葉。

 その言葉は彼の表情とは異なりとても暖かくって優しい匂いがした。

 

「おいお前。何を邪魔してくれてるんだ? 今から俺がその狐娘を喰ってやろうとしてたのに!」

 

「黙れ」

 

 瞬間辺りの気温が一気に下がったかのような感覚に陥る。

 

「貴様の御託に付き合う気はないんだ。殺してやるからかかって来い」

 

 原因は彼から発せられた殺気。

 先程まであった優しい匂いは既に消え失せて、まるで全てを凍てつかせる氷結のような匂いが辺りを充満させる。

 

「ふっ、な、舐めるなぁ!!」

 

 そして激怒した鬼は彼に無数の腕を放つ。

 その速度は私に放ったとき以上であり、少なくとも私では避けきることは出来ない。

 

 "龍の呼吸 参ノ型 龍巣閃"

 

 だけど彼にとって何ら脅威になり得ず、鬼の腕は瞬く間に全て切伏せられた。

 

「そ、そんな馬鹿な!!」

 

 鬼は一瞬にして自分の腕が全て切り伏せられた事に動揺した。

 かくいう私も彼の技を見て呆然としてしまう。

 剣の速さの次元が違い過ぎる。

 そしてその速さによって生じる破壊力もまた桁違いだった。

 

「・・・これで終わりだ」

 

 私と鬼が驚愕している隙に彼はいつの間にか鬼のすぐ近くの間合いまで移動していた。

 

 "龍の呼吸 弍ノ型 龍翔閃"

 

 そして繰り出された技は下から鬼の頸目掛けて放たれる斬撃。

 鬼の頸をまるで豆腐でも斬るかのようにアッサリと切断した。

 

 強すぎる・・・! 

 最初に見た時から私達とは違うことは理解していたけど、まさかここまで別次元の強さだったなんて・・・

 

 私は少年の後ろ姿と鬼が塵になって消えていく様をただただ見つめていると、彼は私の方を振り返り

 

「体の状態はどうだ?」

 

 既に彼から殺気は発せられておらず、そこには先程と同じ優しい匂いがあった。

 

「う、うん。まだ体は少し痛むけど、多分問題ないと思う」

 

「そうか・・・それなら此処から離れて南の方へ向かえ。そこならば既に俺が殆ど鬼を片付けたから比較的安全だ。体が完全に回復するまではそこで休息を取るのがいい」

 

 そう言って彼は私にまた背中を向けると何処かへと行こうとする。

 恐らく私と同じように鬼に襲われて劣勢になっている人がいないか探しに行くのだろう。

 

「ま、待って!」

 

 ただこのまま彼と離れたら次はいつ会えるかわからない。

 

「助けてくれてありがとう!」

 

 だからせめてお礼を伝えると、彼は少し立ち止まり

 

「・・・気にするな」

 

 振り返ることなく返事をし、この場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後私は特にこれといった危機もなく最終選別を突破して鬼殺隊の隊士となり、更にそれから二年後あの緋色の髪の剣士と再会するのだった。

 

 

 

 

 




いやー、真菰の性格って正直分かりづらいんですよね。
原作でもそれ程登場シーンがある訳ではないので・・・

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