ペニントンの話を参考にpip-boyの衛星マップに監督官のC.A.M.P.のおおよその位置をピン設定をして、それを見ながら荒れた道を歩いている。
荒れているとはいえ舗装はされている故、アリサカの車椅子でも苦労せずに進む事ができる。
しかしやはり不便なのに変わりはなかった。
探索をする上で必ずしもこうした舗装道路を行けるわけではないのだから。
例えば先ほどの製材所。
そこに行き着くまでに車椅子ではかなり苦労した。車椅子はスチュワートが、アリサカはハヤトが負ぶって探索を行ったので行動にやや難が生じたのだった。
ギルマンという男がかつては所有していた製材所だったが、その荒れようからは少なくとも5年以上前に手放されていると見えた。
爺はその元の所有者であるギルマンに会いに訪ねたのだが、あるのは崩れ落ちた事務所と切り出された木材ばかりであった。
例えばその向かいの農家。
民家を訪ねるもやはり「人」は居なかった。こちらではアビーという人物のバンカーの存在が明らかになったがそれ以上の情報はなく、長きにわたって放置された家屋の中の僅かな資材や調度品を拝借するに留まった。
しかし最も目を奪われたのはそれらではない。
舗装された道に入ったことでアリサカは再び車椅子に座り、ハヤトが車椅子を押して気持ちゆっくりと合流を目指す中、爺は思案する。
—一体なんだ
と。
先程「『人』は居なかった」と記したことに由来する。「人型」と表現するのが近しいか、それはともかくとしてあの悍ましい姿の人のことである。また、製材所内に群れを成していたあの大型のダニのことでもある。
--UMAか?でかいダニだけならそう笑って済ませたものをあんな
核攻撃がアパラチアに行われた可能性というのは認識があった。Vault内で監督官がその可能性について触れる講義を開いていたのだから。しかしあれらが果たして核攻撃だけによるモノであるのか、という話である。
—まさかそんな...いや、否定はできないか。
未知がありすぎるのだった。
そんな爺の右斜め後にはアリサカとハヤトがいる。
角材にパイプを据え付けたような雑な拵えのハンドガンを手にしてハヤトは右側を、パーティの左側はスチュワートが周辺警戒をしつつ正面を張る爺の後に続く。ちょうど三角形に位置を取り周囲を見つつ進むパーティでは先程の戦闘からピリついた空気が停滞している。
アリサカは先の戦闘のあとで爺から「自衛用に」と手渡されたショーテッドライフルを膝の上に置いて指でなぞりつつ、目蓋の裏に移った人型を忘れようと努力していた。
ショートバレルの散弾銃よりやや小さいくらいにカットされたこのライフル。ハンドガンのような木製のグリップをしておりハンティングライフルより取り回しがしやすい。しかしその反面に反動のコントロールには慣れが必要で、なおかつボルトが左側に倒れるので前の大戦の軍用ライフルのようなスムーズなコッキングとはいかないだろう。
と、そんなことを思って見るがそれでもやはり消えないのだ。
全身が赤く焼け爛れ、なにやら緑色に発光する棘によって内部から貫かれた人型。もとはやはり人間だったのだろう、時折り言葉を口にする。
真っ黄色になって白黒の区別がつかず、目蓋がなくなって剥き出しに鎮座する眼球。
口周りの薄い肉もところどころ穴が開いて歯が見えた。
また、その周囲にあった同じく緑色に発光する部位が見られる石像。頭を抱え、膝をつき、這いつくばって必死に耐えるようなすがたの石像郡。
—あの人型にそっくりな石像はもしかしたら...
そこまで考えて寒気に襲われ、腕を摩って一瞬浮かびかけた信じたくない考察から目を背けた。
木造の橋を渡る。
下には小川が流れており、水のせせらぎを聞いた。
まるであのいたましい現実を隠匿してしまうようなそんな音に聞こえた。
途中で重さに耐えられなかったか床を突き抜けたトラックがあったがさして問題にはならず、木造の橋を渡ったその先の右手で他のvault 76民の姿が見えた。ランタンか何かの黄色い光が見えている。
「おっ?あそこが監督官のC.A.M.P.じゃないか?」
思考の沼地から出た爺が明るい声でそう言えば、緊迫した空気は幾らか晴れたようでスチュワートがpip-boyを確認して続いた。
「んん?あぁそのようですね。ちょうどペニントンが話していた辺りですから間違い無いでしょう。」
「あっ本当ですね!やっとハルロさんたちに追いつきましたか。」
「...まだ止まっていてくれていたらいいのだけど」
「なぁに
爺に笑いが戻った。
低い丘の上に設営されたC.A.M.P.にのぼるとすぐに声がかかった。件の彼である。
「なんだ爺さん案外遅かったじゃないか?普段から
「そらみろ居るだろう?ハッハッハッハ、言ってくれるじゃないかハルロ。なぁにただ
C.A.M.P.にはハルロ・ウィリアムペアの他にも当然ながらパーティが居る。爺には前夜祭で聞き覚えのある声がかかった。
「あら、Mr.アダム。あなたやっぱり断ったじゃないの。」
「む、なっMs.クリプトンっ...!」
覚えているだろうか。爺をあの宴会で誘った女性がいたのであるが、台詞は割愛され名前しか出ていないのである。はじめまして。
ダネル・クリプトン、ある大手不動産会社社長のご令嬢である。本社とともにワシントンD.C.に屋敷があったが、vault-tecに申し込んだ際に入居シェルターがウェストヴァージニア州都アパラチアのvault 76に自動設定されたらしい。またそのために共に入居する最小限のお世話係の他に余分に連れて来ず、シェルター入居式の際には目立たずにいたという小噺がある。彼女自身は真面目な性格ゆえに「むしろ喜ばしい」と話したのだとか。
「全く失礼な反応を。まぁいいですわ、私は元より屋敷にいた者たちと行く予定だったのですから。」
「ご指名いただき感謝の極みです、お嬢様。」
クリプトン家ではダネル専属のメイドだったフローリィが続く。専属のメイドとは言ったものの彼女はダネルの3つ上の37歳である。教育係などもいたが歳の近さから親しまれていた。
「アダム、我らが猟友会の本領発揮だなぁ!いやもう私は楽しみで楽しみで...ッ!」
少々テンションの高いこの男性はマック・ハミルトンという。歳は76、爺とは猟友会仲間でアパラチアには馴染みがある男だ。クリプトン家では料理人を務めていた。ダネルパーティのシェフである。なお猟友会では親しみを込めて「コック」と呼ばれていた。屈強な男性で白いシャツの上からエプロンをかけ手には斧を、ベルトには—恐らくウィリアムが作った—ホルスターにパイプボルトアクションピストルを入れている。
「おぉコック!たしかに、我らが猟友会の狩り技術は全面的に役立ちそうだな?ハッハッハッ」
ダネルパーティは以上の3名である。
ハルロが切り出す。
「さて、ここにいる我々2組は監督官を追って隣町のフラットウッズに向かうんだがそっちはどうするんだ爺さん?」
「そうかそうかそりゃちょうどいいな。おれ達もそちらに向かうつもりだったのさ。旅は道連れ、共に行こうじゃないか。ところで他の連中はどうしたんだ?」
「他か?連中はアパラチアの探索にそれぞれのパーティで散開していったよ。Pip-boyのマップで他のpip-boyの位置が白い丸で表示されるから大体の位置は把握できるぜ?」
「そうなのか...ッ!こりゃあ便利だな。この表示の意味が分からなくて無駄に警戒していたぞ...」
「ハッハッハーそりゃいいや。爺さんところでベンのやつは見なかったか?」
「ベンか?見てないな。奴のことだから寝坊でもしたんじゃないか?セレモニーでは見なかったぞ?」
「!そうだったのか。奴が俺を『監督官を追わないか?』と誘ったくせしやがってからに...」
「ハッハッハッハッまったく良くも悪くもベンらしいじゃないか。まぁ奴のことだ、そのうち追いつくさ。暫くここに止まるのか?」
「あぁそうするつもりだ。フラットウッズまではどの程度掛かるんだ?」
「昼過ぎには着くだろうな。飯を途中で食うなりする必要はありそうだがそこは猟友会にまかせなされ。」
「そうさハルロ!我々猟友会が居ればそのくらいは軽いもんさ。」
「元気な爺さん方なこって。それじゃあ暫く準備したのち出発するとしよう。」
ラストに名前だけ登場した「ベン」。彼が本作におけるゲーム主人公となります。
誤字報告、感想などお待ちしてます。