砂漠化が広がった大地の上、沈み掛けの太陽が青年───遊城十代を淡く照らす。
砂道をずっと歩き続けたせいか、足が悲鳴をあげている。
異世界でユベルと融合を遂げてからというものの、疲労を感じることなくなっていたはずなのだが、どうにも身体が重い。十代は、久しく感じる疲労感に苦い表情を浮かべる。
「……隠れてないで出てこいよ。いるのは分かっている」
そんな時、岩陰から影が飛び出した。その数は実に三。影の正体はフードを目深に被った男たちで、十代を睨めつけている。疲労感で足が覚束無いものの、僅かに残った気力で地面を踏みしながら、男たちを見やる。
「……俺に何の用だ?」
言い放つと、男たちは十代を囲むように移動し、腕につけられたデュエルディスクを構える。十代はため息をつくと、片目を瞑る。
「……
十代は古びたデュエルディスクを展開、乾いた空気を吸い込む。
「───かかって来い。纏めて相手してやる」
その時、十代の瞳が琥珀色から黄金と翡翠のオッドアイに変化。デュエルディスクにカードを装填すると、十代と男たちは闘いを始める言葉を紡いだ。
「「「「
結果は、十代の圧勝であった。敗れた男たちは地面に伏せながら、怨嗟の言葉を綴っている。その光景を冷めた目で見下ろしながら、十代は呟く。
「……消えろ。俺の気が変わらないうちにな」
その言葉に男たちは首を縦に振ると、慌てて立ち去って行く。遠くなっていく後ろ姿を見ながら十代は小さく呟く。
「……嗚呼、一体俺は───」
何をしているのだろうか。楽しくも何も無い。これでは、ただの───。
“楽しいデュエル”とは何処へ。行われたのは一方的な蹂躙と圧倒的なまでの暴虐だった。
遠い昔、憧れていた武藤遊戯がこの
「……みんな、今頃何してんだろうな」
デュエルアカデミアを卒業してからもう何年が経っただろうか。
五〇年を超えたあたりから数えることをやめて、いつまでも変わらない自分の姿と時が経過するにつれ、老いて姿が変わっていく仲間たちを見るのが辛くて。連絡手段が取れるものはすべて破棄した。
───そこからだろうか。心の中で燃え続けていた炎がどんどんと小さくなっていくのを感じ始めたのは。
同時に、精霊を見る能力が衰えていき、今では精霊の声は愚か、通常時では姿を確認することすら叶わない。しかし、モンスターを実体化させる能力と人外じみた能力だけは残っており、
ふと、自分のデッキを取り出す。
幼い頃の自分が見たらどう思うだろうか───と思うと、自虐的な笑みが顔に現れる。
十代は砂を払って立ち上がると、先の見えない道を再び歩み始める。
砂漠にはさほど大きくのない足跡が幾つも刻まれ、風が吹くと砂に埋もれて消えた。