沈痛の決闘者   作:天野菊乃

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完結まで残り3話。実は最初は各地を転々としながらデュエルするというssでした。
でもそれだと他の作者様と変わらないので、敢えてこういう展開にしています。
あと、デュエル描写をちょっと入れました。まあ、終盤ですけどね。


寂寥の戦士

 ───刹那、爆音が鳴り響いた。

 突然の爆音に目を覚ました遊星は、跳ねるようにしてソファから飛び起きると周囲を見渡した。どうやら、拠点としているこの場所ではなく、外部からの音らしい。背もたれにかけていた上着を羽織るなり、遊星は外へ飛び出した。

 

「……!煙の臭いッ。何処から───」

 

 再度、爆音。爆風が巻き起こり、遊星は咄嗟に顔を守るように腕を交差する。

 

「───こっちか!」

 

 遊星は路地裏の方から煙が立ち上っているのを確認すると、自らその現場へと駆け出した。

 そして、そこで行われていたのは───

 

「ッ!?」

 

 やはりと言うべきか、決闘(デュエル)が繰り広げられていた。片方のフィールドにはモンスターはおらず、伏せカードが一枚。対して、もう片方のフィールドには攻撃力2600の『E・HERO ノヴァマスター』と攻撃力1600の『E・HERO スパークマン』がいた。

 どうやら、先程の爆音はモンスターが破壊された音だったようだ。現に、片方のライフは400ほど削られてしまっている。だが、それも些細な差だ。相手のライフは既に風前の灯だった。

 

「……どこまで俺をコケにするつもりだ、お前は」

 

 爆煙が晴れると、憤怒の形相に顔を歪めた遊城十代が立っていた。ライフは僅かに減っているものの、その毅然とした表情は崩れていない。

 黒い歪な形をした決闘盤(デュエルディスク)を構え、闇の中でも爛々と輝くその黄金の瞳で目前の人間を睨めつける。

 目前の人間は、フードを目深に被っていて正体は分からない。ただ、分かるのはE・HEROというデッキを使っていることのみ───

 フードの人間が手を振るうと、『E・HERO ノヴァマスター』は声を上げて火球を放つ。あれを喰らえばいくら十代といえど、一溜りもないだろう。

 

「───トラップ発動、ドレインシールド。ノヴァマスターの攻撃を無効化し、俺のライフを回復する。ノヴァマスターの攻撃力は2600。よって、俺のライフは6200となる」

 

 ドレインシールドを発動させた十代は、眉間に皺を寄せながら息を吐く。

 

「……所詮はこの程度か。お前のような正義では、俺を打ち負かすには足りない」

 

 十代はデッキからカードをドローし、そのカードを見つめると目を伏せた。

 

「これが俺とお前の差だ。淡い光を追い続けるお前と、光の道を捨て闇の道を選んだ俺の───お前のフィールドにいるE・HERO2体を生贄に、来い。溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムッ!!」

 

 2体のE・HEROを生贄にして顕現したのは、巨大な溶岩の魔神。

 虚ろな瞳でフードの人間を見下ろしながら、苦痛な声を漏らす。

 フードの人間が驚愕している中、十代は黄金の瞳を細めて言い放つ。

 

「お前の光は淡すぎる。お前がどんな理想を抱いているかは知らないが、もし、くだらない幻想を抱いているのならば……その理想を抱いてとっとと失せろ───俺はこれでターンエンドだ」

 

 自分のターンがやってきたフードの人間。しかし、そのデュエルは直ぐに終わった。

 ラヴァ・ゴーレムの体が溶けたかと思うと、フードの人間に襲い掛かる。そして、風前の灯だったライフを削り切った。

 最後の方だけを見ていた遊星は思わず顔を顰めた。

 なんて悲しいデュエルするのだろう。かつての彼は、あんなにワクワクしながら決闘(デュエル)をしていたというのに。

 

「……何が貴方をそんなにしたのですか」

 

 遊星は歯を食いしばりながらそう言った。

 

 

 

 

「ふん」

 

 怒りの表情を浮かべた十代はフードの人間の決闘盤に収められたデッキを抜くと、カードを確認する。

 

「……ヒーロー主体、か。くだらない」

 

 意外にも丁寧にデッキをフードの人間の手元に置くと、被っているフードの人間に手を掛けた。

 

「何処の誰なんだ、お前は。その顔見せてもらうぜ」

 

 十代が剥がすようにしてそのフードの人間を奪い取る。フードの人間から零れるのはブルーの長い髪。十代は、思わず目を丸くした。

 

「そんな、お前、は……」

 

 記憶はすべてない。何も覚えていない。その筈だ。それだというのに、知らず口から零れていた。

 

「……レイ?」

 

 十代の目前に居たのは、この時代ではいるはずのない人間。早乙女レイであった。




ちなみに作者は十代さん以外ですと、ユベルとレイさんが好きです。

歪んでいる?

今更じゃないですか。

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