蛇足なので好き勝手します。
本編だって好き勝手にしてたじゃないか? 知らない子ですね。
~蘇生~
巡ヶ丘学院高等学校
放送室前
そこには幾人かの生徒と兵士の死体が放置されていた。
動く者が居なくなり、静寂の中、一つの屍の指が微かに動く。
────が欲しいか?
(俺は…死ぬのか…)
その者の体は確かに生命活動を停止していた。急所である咽喉元を大きく斬られ、とめどなく血が流れ、心の臓はその鼓動を停止していた。
そもそも、その者が倒れてから3時間余りが経過していた。
仮に即死していなくともその出血量でそれだけ放置されていれば確実に涅槃へと旅立っているだろう。
───だが、そうはならなかった。
夥しい血を流していたその傷跡はいつの間にか出血が止まり、無惨な痕を残しながらも傷口は塞がろうと蠢いていた。
(嫌だ…死にたくない…)
倒れてから全く動かない体、微かに聞こえてくる周りの声、悲鳴、怒号、戦闘音。
そして自分たちの死を悼む先生や同輩の声。
立ち去る足音。
ヘリや駆け寄ってくる人の声。
首元に手が当てられる感触。
「脈拍無し───こいつもダメか。生存者はゼロ。撤収する」
(待って! 待ってくれ! 俺はまだ生きてる! 置いていかないでくれ!)
何度も叫び、起き上がろうとするが、その意に反して体は一寸も動かない。
やがてヘリが飛び立つ音がして…そして彼は失意の底にいた。
そんな時、彼の脳裏に一つの声が響く。
───力が欲しいか?
(え? 何だ)
───力が欲しいか!!
(力ってなんだよ? 生き返れるのか?)
───我は■■■■■■
(■■■…■■■…)
───力が欲しいのなら くれてやろう!!
ズクンッ!
仰向けに倒れた彼の胸が跳ね上がる。
ドクンッ───ドクンッ───
今まで完全に停止していた心臓が膨張し、周りの血管が体表に浮き出る勢いで血液を全身に送り出す
ドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッドクンッ
その鼓動は止まることなく───
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
勢いは更に激しさを増し早鐘のように打ち鳴らす。
其の度に彼の体は激しく脈打ち、体の傷は急速に癒えていく。
全身の筋肉は膨大な血流を流し込まれ膨張し、ある一点を超えた所で急激に元の太さまで引き締まり、細いながらも力強い高密度の肉体を形成する。
(ガ…ガァ…グァァ…)
全身がまるで別の物体に作り替えられているような不快感が彼を襲う。
「グァァァアアアアアアア!!」
今までどれだけ声を出そうと音を発しなかった口から苦悶の声を上げる。
そして、気付いた時には彼は上半身を起こして荒く息をついていた。
今まで感じていた不快感は消え、体は不思議なほどに痛みも気だるさもなく、ぐっすりと休養を取った後のような快調さだった。
「そうだ、みんなは!」
彼は、倒れていた廊下を見渡す。
そこには彼の仲間である生徒たち、そして倒れる前に戦っていた兵士たちの遺体があった。放送室を覗いても、そこにあるのは銃で撃ち殺された遺体だけだった。
「みんな…やられたのか?」
いや、めぐねぇや何人かが見当たらないな。
倒れている間に聞いた声が夢じゃないんなら、あの後救助が来てみんな脱出したってことか。まさか置いて行かれるとはなぁ…いや、さっきまで心臓止まってたみたいだし、しょうがないか。でも一人っきりってのは辛いな、何か武器は…残ってないな、持ってかれたか。
放送室に置いてあった食料や医薬品が入ったバッグも無くなっていた。
他には何か…おっなんだこれ?
倒れた椅子の陰、植木鉢に生えた緑色のハーブがあった。
こんなんでも腹の足しにはなるか。
俺はその生えたハーブの葉を摘んで、身に着けていたウエストポーチに入れた。
どっかでバッグ探さないとな。
───待っ…て…
放送室を出ようとした時、か細い、こんな静寂の中でなければ、そして以前より強化された五感がなければ気付かないような小さな声が聞こえた。
「え? 誰の声だ」
微かに聞こえた声の方を探す。
そこには3人の遺体が折り重なっていた。
おそらく後から来た救助(?)の奴らが放送室を漁る時にひとまとめにしたのだろう。
そこから、またか細い声が聞こえた。
「待ってろ! 今助けるからな」
こいつか? いや違う、こっち? 一番下の奴か!
俺は積み重なってる遺体をどけながら声の主を探す。上の二人は頭部がなかったり、大きく破損しているため違う。一番下の女子生徒が声の主だった。
その子も頭部に2発、止めのように銃弾を受けた痕と夥しい血痕があったが、何故か傷口は癒着したように塞がっている。
そして口が微かに震えるように動いていた。
「お前…柚村…だっけか」
たしか同じ3年生。別のクラスだったからよく知らないけど首元に巻いたチョーカーが特徴的で名前を憶えていた。
生き残った仲間だけど、まだ1日しか一緒に居なく、女子にはあまり興味がなかったためうろ覚えだった。
「そう…だよ。うぅ…お前はディーノだよな」
「そうだ、巡ヶ丘最強の四天王ディーノ様だ。俺が来た。だから安心しろ」
柚村の傷は塞がっていたが、未だに起き上がれる体力は無いようだ。
ちょっとごめんな、そう謝罪をして彼女の体を持ち上げる。なんだ? まるで羽毛みたいだな。まったく重さを感じないぞ。
俺は柚村を米袋のように肩に担ぐ。
「ちょ…おまえ…そこはお姫様抱っこだろう…普通なら」
柚村が不機嫌そうな声で文句を言う。
「馬鹿言うなよ。俺がお姫様抱っこする奴は後にも先にも栄太だけだ」
「この…ホモ野郎が…」
「ホモじゃねーよ、友情だ!」
俺はよくホモと勘違いされるが、そんなんじゃない。あいつらとは血よりも濃い友情で結ばれているだけだ。それに栄太の体は温かくて抱き心地最高なんだぞ。
それに俺はホモと違ってちゃんと女性が好きだ。理想の女性はママンみたいな優しくて包容力のある大人の女性だ。早く帰ってママンのパインサラダが食べたい。
とにかく文句を言う柚村を無視して肩に担いだまま放送室をでる。お姫様抱っこだと両手が塞がるからな。
とりあえずどうするか。「ちょっとディーノ!後ろ!」俺はゾンビ化して起き上がる兵士の顔面に裏拳かまして破裂させながら今後の事を考える。
まずは武器だな。武器がないとゾンビ出た時勝てねーもんな。「何っ!うそっ!キャッ!」噛みつこうと飛び掛かってくる生徒たちを片手で投げ飛ばし「下!下にも!」足にしがみ付いてくるやつは頭を踏み砕いていく。
なんか柚村が騒がしいな。大事なことを考えてるんだから静かにしろよ。
兵士が持っていた銃は全部回収されているみたいだ。頭部のなくなった兵士の持ち物を漁るが、バックパックも持ち去られているし、銃も予備弾倉もナイフすら残っていない。
おっと、チョコレート発見。尻ポケットにチョコバーが入っていた。ちょっと砕けているが軍用チョコレートらしく溶けてはいない。
貴重な高エネルギー非常食だ。貰っていこう。俺は騒がしい柚村の口に半分に割れたチョコバーを突っ込んで、残りを大事にしまう。
後は、小型の折り畳みナイフが見つかったが、工作用には使えるが戦闘には役に立ちそうもないな。一応持っていくけど。
とりあえず、何か武器は無いか。
放送室を出た後、斜め前にある化学実験室を覗いたら、ちょうど良さそうな鈍器があることに気付いた。
人体模型のジョージ君(俺命名)だ。
ちょうど大きさもよく、頑丈なジョージ君。持ってみると発泡スチロール並みの軽さなのに丈夫で足を持って振り回すとブオンブオンと良い風切り音が鳴る。
あんまり重い物だと片手で使えないからこれでいいか。これからよろしく頼むぜ、ジョージ君。
ちなみに腹の中の奴は落ちないように同じく化学実験室にあったガムテープでグルグル巻きにして固定しておいた。
やっぱりガムテープは最高だぜ。
よし、準備は上々。
それじゃ、最強の巡ヶ丘四天王の生き汚さってやつを見せてやるぜ。
「ンンンンゥ!ングゥングゥンンンングゥ!(何このチョコ!不味いし生暖かいしやたら硬くて飲み込めない!)」
「ここは日本だ日本語をしゃべれ」
柚村は本当に落ち着きのないやつだな、ママンの爪の垢を飲ませてやりたい。
お約束の蛇足編です。
蛇足なので続くかどうか不明。
追記:生徒会室になってたので放送室に修正しました。