雪山の洞窟に着いた。その中は、とてつもなく広い。
「この中にスノーマンがいるって事で間違いないんだな?」
「ああ、そうだ。しっかしこんな時火魔法は便利だな。」
フウマはそう答えて、手のひらにボウッと火をともす。フウマって、「風魔」じゃなかったんだ。
「はい、コート。フウマはいらないでしょ?」
「ああ、いらん。そんなのあったら逆に邪魔だ。」
僕は三人分のコートをポケットから引っ張り出した。
「私は良い。二人が使ってくれ。」
「いや、でも寒そうだから。」
断るフェルナを押し切ってコートを着せた。
「でも、薄気味悪いな。いくら進んでも、物音がしない。」
言われてみれば確かにそうだ。自分たちの音以外、何も聞こえはしなかった。
「おーい、誰かいないかー?」
フウマの声は反響しながらあちこちを飛んで、なかなか消えようとしなかった。
周りが薄く白銀に輝く雪と透き通ったつららのみの洞窟は、中から見ればこれ以上無いほどに神秘的だった。
ただ、討伐目的で無ければ、楽しめたのに。あとここまで寒くなければ。
「討伐は、20匹のスノーマン、だったよな?」
俺は二人にきいた。
「ああ、そうだ。そろそろ出てくるはずだぞ?」
フウマがそういった、まさにそのときだった。待っていましたとでも言わんばかりに、真っ白なゴリラが出てきた。
「ウホウホ、人間ウホ。リーダー、どうするウホか?」
「ウホホ、隊長様のところまで連れて行くウホ。生け捕りウホよ。」
隊長様って、普通リーダーの方が上でしょ。どうなってんのかなぁ?それとも、人間と感覚がずれてるのかな?もしくはあちらと。
「何だお前ら、さっきから聞いていれば勝てるようなことを言う。」
フェルナがずいっと一歩前に出た。
「お前らが勝てるかどうか、戦ってみれば分かるぞ?生け捕るどころか、生け捕られるってな。」
戦いになった瞬間に、急に積極的で、楽しそうになった。
ちなみに俺はというと、スライムのことを思い出していて嫌気がさした。と、マコは。
「はばっ。あひゅう・・・」隣で泡を吹いていた。
「お、おい、マコ!しっかりしろ!しっかりしろってば!」
「ああ、川の向こうからコウガさんの声がする。なんで、手を振ってるんですか?」
「勝手に殺すな!起きろォォォォ!!!」
俺はマコを首ががっくんがっくんと成るくらい激しく揺すった。
「ウホるさいウホ」
「ウホウホ。アホウホね。」
ウホるさいって何だよ。アホウホってなんかめっちゃアホそう。
「おしゃべりはそこまでだ」フェルナが剣を構えた。
「ここは私が相手する。先に行っておけ!」
フェルナの一括で俺等三人は走り出した。
「さて、{祭}をはじめようじゃないか」フェルナは奥へつながる穴の前に立ち塞がった。
「まとめて相手してやる。かかってこい!」
「ウホホ。甘いウホねえ。お前を生け捕ってやるウホ!」
リーダーがつららをもぎ取り、フェルナがいる方に向けて投げ飛ばした。
しかし、それはギリギリでフェルナの横を飛んでいき、後ろの三人を刺そうとしていた。
「おっと」フェルナはそれを蹴りで撥ね返した。リーダーの隣のスノーマンが、ほおにかすり傷を作った。
「浮気しないでもらおうか。」もう一度、剣を構えた。
俺たちは、最奥部に向けて懸命に走っていた。
「大丈夫なのか、フェルナは」
「あんな奴に負けるほど弱くねえよ!」
フウマはそう言っているが、やはり心配だ。
「アイツは、何が出来ると言うんだ。」あんな奴に。自信しか持ち合わせていない、「成功者」に。
「フェルナの魔法は、禁式だ。」
フゥーッと息を吐いて、足に力をためるフェルナ。そして次の瞬間、ものすごい速さでとんだ。
「ウホ!?消えたウホ!」
スノーマンがキョロキョロと辺りを見回す。その後ろに、フェルナが背を向けて立っていた。
「瞬間移動ウホか?でも残念だったウホね!おいらは無傷ウホ!」
フェルナは、不敵に笑うと天井を指さした。
「上を見てみな。」
「うほ?」
リーダーの上には、先ほどまで隣にいたスノーマンがめり込んでぶら下がっていた。
「{禁式}リダクション・ギア。自身の周りの時の流れを減速させ、さらに全能力を極限まで引き出す。素でも強いやつがそんな物使ったら、大抵の敵は吹き飛ばせるよ。」
リーダーは、取り残される形となった。
「う、ウホホ・・・そ、その先ほどは、大変失礼しました。」
リーダーが逃げようとする。
「そうはさせないに決まっているだろう?」
剣を片手に、ゆっくり近づいていく。
「うひー!」
ついに、背を向けて走り出した。
「ディゲムブレッサ!」
「うほひ・・・」
リーダーのからだは、バラバラに切り裂かれていた。
フェルナはあたりを見渡した。「雪山ー」
(戻ってこい!おい!)(汝に力を授けよう)(疲れた。疲れたよ)
頭の中で、とぐろを巻くように思い出がぐるぐると回り始めた。
(おお、お前さんみたいなちびっ子が、また増えるのか。そなたの名は何という?)(ーフェルナ。)
フェルナは唇をかんだ。「もう二度と、あんなこと。」
「さてと」
俺たち三人は、もうすぐ最奥部というところまで来ていた。マコはようやく目覚めて、隣で震えている。
「行くぞ!」フウマの合図で二人はなだれ込んだ。ん?二人?
入り口を見やると、マコが震えている。
「ああうあうあうああうあ~」
え~。やっぱり、こういうとこでキまらないんだよな。
「何だお前達?」中には、スノーマンがぎっしり。
「答えろ。しばらく前に、ガトーって言う男が来ただろ?」
スノーマンはニヤニヤ笑っていた。
「ウホホ、知らないウホね?」
「知らないウホね」
「そうか」フウマはそう言うと、一番近くの一匹をいきなりぶっ飛ばした。
「これでもか?」
スノーマンの間に、ざわめきが走る。
「お、お前、人間ウホよね?」
「そうウホでござる」
こいつ、口調がめちゃくちゃだ。
「ウホウホ、ゴリラだけに吠え面かかしてやるウホ。」
顔の上下を両手でかくあの仕草をしながら、フウマが挑発する。
「それはこっちの台詞ウホ!」
一匹のスノーマンが飛びかかってくる。
「うおらぁ!」フウマの拳が腹をめがけて飛んでいく。
「「と見せかけて」」
「は?」
前のスノーマンが横に移動し、後ろから別のスノーマンが出てきた。
しゃがんだ状態から足をバネにして、フウマに飛びかかる。
「うおっ」とっさにガードの体勢になるフウマ。
「「「と見せかけてからの?」」」
今度は横から腹を殴られた。
「うはっ!」フウマがかなりの勢いで吹っ飛ぶ。
「だーもう、こざかしいんだよ!ゴリラのくせしてフェイントかけてくるんじゃネー!」
ごもっともで。下手すれば、フウマより頭良いかもしれないなこいつら。とか思いながら。
「うっほっほ、まだまだウホね。」
スノーマンの中でも一番重そうなのが前に進み出てきた。
「どウホするっすか、こいつ?」
「おで、男、嫌い。女、好き。ソイツ、男。いらないうほ。」
「りょウホかいッす」
ジャンピングプレスをかまそうと、スノーマンが飛び上がる。
「よけろ!」
「ウッホッホ!」
氷に、体がめり込む。
「袋ウホ!」
俺はポケットから妖刀を引っ張り出した。
「うらぁ!」
スノーマンはぴょんと跳んでよけた。
「ウッホホ、そんな大ぶり当たらんウホよ」
くそ、どうすればいいんだ。
「ウホホふぉう!]
「だーもううっとおしいんだよお前らあ!」
全身から炎が噴き出し、スノーマン達を丸焦げにした。ええ~、マジでか。
「あとお前だけだ」
隊長は取り残される形となったわけで、一瞬だけぽかんとしていたが瞬時に状況を判断した。
「わ、分かったウホ!取引ウホ!人間は返すから、命だけはご勘弁ウホ!」
「お、なかなか物わかりが良いじゃねえか。どこにいるんだ?」
土下座の体勢から起き上がると、今度はペコペコしながら手で示した。
「こ、こっちですウホ。」
フウマが、言われたとおりに進む。
「どこだ?」
そこには、どうやら天然の窓があるようだった。
スノーマンが、にやりと笑う。
ー罠だ。
俺はそう直感した。
「下がれフウマ!」
「え?てうわっ!」
フウマが突き落とされる。
「フウマー!」
俺は窓に駆けつけた。そこが見えない。深い闇だ。
「おで、男、嫌い。女、好き。デュフェフェデュフェフェフェデュッフェッフェ。ウホ。」
そんな、こんな序盤で。
「ずいぶん長くて、迷ったかと思ったが、ここで間違いなさそうだな。」
その声に振り向くと、フェルナが立っていた。
「ウホホ、女が増えたウホ♪」
フェルナはあたりを見渡した。「フウマは?」
「アイツに、突き落とされたんだ。」
フェルナはちっとも驚かなかったし、焦りもしなかった。ただ一言、「そうか。」とだけつぶやいた。
「なら、お前が敵だな。祭をはじめようじゃないか。」
祭?何を言っているんだ?仲間が死んでも、ショックじゃないのか?これが、-これがギルドなのか?
慌てふためくマコの方が、まだ仲間らしい。やっぱり、成功者なんてそんなものなんだ。
いかがでした?感想・アドバイスお待ちしております。(出来れば推薦)なお、僕の小説「仮面ライダーmath(マス)」も併せてよろしくお願いします。それと、今回から次回予告をいれていきたいと思っています。
フェルナにつきまとう雪山の過去、落とされたフウマ、葛藤するコウガ、そして特に何もないマコ。それぞれの運命は?次回、ちょっと魔王を倒してくるわ、「VSスノーマン(決着編)」お楽しみに!