ちょっと魔王を倒してくるわ(略して魔っちょ)   作:イノさん

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マコの剣の秘密が暴かれる。


神代(かみ)の世と呪われた力

「これが、勇者の剣の力・・・」

体中がガタガタと震えている。どうしてもおさまる気配は無い。

「すさまじいな」横で声がーあれ?全員気絶してなかった?

横に二人が立っていた。

「お前ら、気絶してなかった?」

「いや、滑って転んだだけだ」

「私はバランスを崩した」

えぇ・・・

「おい、緊急看護班いるか?」

「今は私以外は留守よ。どうしたの」

クロノが受付席から出てきた。

「ひどい怪我じゃない。もしかして剣を抜かせたの?」

え?どういうことだ?

「何でそのことを知ってる?」

「まあ、マスターと私だけ、気づいたのよ。この子の正体。」

「正体って?」

手際よく治療しながら、クロノはその言葉を口にした。

「勇者の子孫なんでしょ。分かるわよ」

「「え?」」

「うむ、その異様な魔力を見ればな」

奥の部屋からマスターも出てきた。

「聞いてたんですか」

「まあの。そんなことはどうでもええわい。よっと」

マスターはテーブルの上に飛び乗った。

「おまえさんは神話をしっとるか?」

「神話?」

「そう。この世界が出来る前、いや、正確には『この世界がこの世界になる』よりもずっと昔の出来事を綴った、それはもう壮大なおとぎ話の事じゃ」

この世界がこの世界になる前?おとぎ話?マスターの言葉は荒唐無稽でてんでバラバラだ。

「おとぎ話を聞いてる暇は無い。そんなことより大事なことが目の前にあるのに」

「まあ、そういうな。物語を野原にほっぽり出したらどうなる?どこでどう暴れるのか、わからんではないか」

確かに、その通りだ。俺は諦めて、黙って聞くことにした。

「それは昔、どれほど前かも分からないほど昔の事じゃ」

マスターは、おとぎ話をはじめた。

まだ神々が平気な顔で地上を歩いていた頃。『神代』と呼ばれる時代に、偉大なる人物がいた。名前は男神『輝日大神』(かぐひのおおかみ)と女神『月暗の大神』(つきくらのおおかみ)の二人じゃ。

二人は幸せじゃった。その日が来るまでは。

二人の末の子である大蛇は体に高熱をまとっておるため、生まれる瞬間に母親にひどいやけどを負わせてしまった。もちろん父は怒り狂い、大蛇を切り捨てた。

するとどうじゃろう、大蛇の血をたっぷり浴びたその剣は、大蛇の力と感情を宿し、怒りにまかせて暴れはじめたではないか。母君ばかりを愛しおって、息子はどうでもいいのかと涙を浮かべながら訴えた。その剣は泣きに泣いた。涙は雨に、叫びは雷となり、海を作り嵐を起こした。やがてその剣は『大蛇ノ剣』と呼ばれるようになる。

その一方で、母である月暗の大神は、療養のために地下にこもろうとしていた。しかし坂を下りる途中でふと思い直して、四人の我が子の依り代を作った。その後洞窟の入り口を岩で塞ぎ、そのまま出ては来なかった。

四つの依り代に、一つずつの魂が入った。真っ赤に燃えていた地上は、大蛇の涙で巨大な岩と化していた。そこに四振りの刀が突き刺さった。そのうちの一つ、叔父の『鬼砕ノ獄』はまだ一つだった岩を七つに割った。その姉に当たる『破天丸』は風を作った。双子の姉の『夜叉ノ太刀』は命を生んだ。長男の『髪斬』は死と生き返りを生んだ。そして、四刀は大蛇を押さえにかかる。

それからかなりたった頃、地上には、神を信じん者さえいた頃。あるところに、一人の男がおった。男は生活状況が悪くなる一方の中で、どうにかして改善できないかと考えておった。そこで、好きなときに好きな物を空気や水、大地の中から取り出す装置を作った。目に見えないほど小さく、周りの物からエネルギーを吸収し、自分で自分のコピーを作るため、ほぼ永久的に使用できる。人々はそれを「魔法」と呼んだ。そして、回りからエネルギーを取るためスタミナのことを俗に「魔力」と呼ぶようになった。じゃがその世界は長くは続かんかった。集まりすぎたエネルギーが爆発を起こしたからじゃ。そのときのエネルギーで宇宙の外にまで機械は飛び出し、時間軸がずれてあり得ないスピードで時が進み、次元軸がずれて二つの世界が融合し、それぞれの世界で同じ役を担っていた者同士がとけあって一人となった。ただ二人を除いて。その一人が『大蛇』じゃ。向こうの大蛇は人であった。溶け合う人はおらず、かといって剣には先客がおる上に溶け合うすべを持っておらなんだ。このままでは、魂だけになってしまう。そんな大蛇の前に、ある人物が現れる。

それが、初代の勇者じゃ。名を「ティアズ」、彼女は向こうの世界に存在せんかった。何故なら、彼女は女神の生まれ変わりだったからじゃ。勇者のことをたまに半身と呼ぶ者がおる。半分だけ人、という意味での。半分神の人間と半分神の人間、それが溶け合って合わさったのが勇者じゃ。元々大蛇でありその母であるのだから、大蛇ノ剣は喜び舞いあがった。しかし大蛇は、愛する者ほど傷つけるという自分の本性を忘れておった。抱きついたときに力の一部が漏れ出た。彼女もまた、愛する者ほど傷つけるようになってしまった。命を慈しめば触れた草を、草に触れた鹿を、しかを追いかけるライオンを二つに裂いてしまった。水をいたわれば川を、海を引き裂いた。愛しい半身にして我が子の大蛇は、触れないと出てこれないのに、触れると傷つけてしまった。それを見た人々は、恐れ、おののき、こう呼んだ。『異端者』と。

マスターの話は、そこで終わった。

「つまりソイツは、破壊をもたらす者じゃ。異端者じゃ。勇者にして、たたえられるべき者にして、また、忌むべき者じゃ」

「この力は、どうやったら操れるようになる?」

「簡単じゃよ。大蛇を飲み込め。飲まれることで、飲み込め。牙を外に出してはならぬ。体の内に牙を持て」

「飲み込むとはどういうことだ?」

「もちろん、物理的にではない。マコよ、おぬしが、『牙の主』となるのじゃ。また、ソナタはすでに牙を飲み込んでおる。身に覚えは無いかね?」

牙の主?俺が?すでに?

「妖刀なら、たしかに触った。でも、契約は交わしていない」

「触れられたと言うことは、気に入られたという事じゃ。レガリアは、主の血筋が途絶えるか、主を見限ると、新たな主を探し出す。ソイツはお前さんを気に入ったんじゃ。レガリア鬼砕ノ獄。身体のみではなく、魂や炎と言った物まで腐らせ打ち砕き破壊する。代償として、主には鬼が宿る。身に覚えは無いかね?」

鬼?じゃあ、やはりあれは妖刀なのか?いや、違う。妖刀と出会う前から、あいつは俺に話しかけてきた。確かはじめて握ったときはー

「はじめて握ったとき、人型の魔物を切ったんだ。そしたら、全然胸が痛まなくて。全身に窮屈なよろいを着けたような圧迫感があって、体が火照って、勝手に動いて。比喩では無く、本当に勝手に動いて。それでどこかー開放感があった。楽しいとさえ感じていた自分がいた。ゾクゾクして、たまらなかったんだ。身震いが止まらなかった。寒さのせいじゃない」

「それは鬼じゃ。鬼がお前の体を動かしたんじゃ。そいつが気に入るのは、心の中に深く大きい悩みを持った人間のみ。お前さん、ここに来る前、一体何があったんじゃ」

脳裏によみがえる光景。気からぶら下がる人影、泣きじゃくる小さな女の子、部屋のカーペットに大きく書かれた「あ」の文字。

「今は、まだ・・・話したくない」

俺は、まだ傷が癒えきっていないことに気づいた。馬鹿だな、全く。あれからどれだけたったと思ってる?そろそろ、こんな感情風化してしまって良いはずだ。そうあってほしい。

「そうか。ま、どうせここはそんな奴のためのギルドじゃ。そのうちでかまわんよ」

マスターは瓶底に残っていた酒をラッパ飲みした。

「それはそうと、今はマコのことについてじゃ。この力は使うべきか、使わないべきか。ワシは出来れば使わんでほしいがな」

「俺も、そう思う。マコにはまだ、人間でいてほしい。

「俺も賛成だ」

「何を言っている?力を持ちながら使わないのは、悪だ。邪悪とおんなじだ。魔王共と同等になれというのか?仲間ではないのか」

フェルナだけが、反対した。

「私は、どっちでも良いけどね。本人の意思を聞いてからじゃない?」

マコが、ちょうど目が覚めたようだ。

「あの、ここは?私、あれからどうなって?」

「マコは、どう思う」

「へ?ギルド?気絶してた?それくらい自分で考えろって事ですか?」

「違う。力だ。使いたいか、使いたくないか」

マコは、すべてを察したような顔をした。少しためらいながらしゃべりはじめる。

「出来れば、使いたくないです。誰も、傷つけたくない。でも、使わないと、何一つ守れない。だから、あの子を手なずけたいんです」

マスターははぁとため息を吐いた。

「今ちょうどそのことについて話しておった。手なずけるのは無理じゃ。神じゃからの。その力を扱うためには、おぬしが大蛇の『牙の主』となるほかは無い。そのことを考えておくれ」

「で、でも、どうやったらなれるんです?」

マスターはにいと意地悪い笑みを浮かべた。

「古典にはこう書かれておる。『名を捨てよ、おのれを捨てよ。名も無き者に名前無し、名の無い名の無い扉を開け。扉の鍵は勇者なり、扉の上は龍となり、そなたの助けとなるであろう。おとぎ話のヘンゼルとグレーテル、像を釜にくべるだろう。これは遠い予言なり、真実は謎を解け』と。ここはノーキンばかりでの、お前が真実にたどり着けるかどうか」

「必ず、たどり着きます」

不思議と、力がこもっていた。




いかがでした?感想・アドバイスお待ちしております。(出来れば推薦)なお、仮面ライダーmathも併せてお願いします。
次回予告
『おとぎ話のヘンゼルとグレーテル、像を釜にくべるだろう。』古典に残された謎の予言、ヘンゼルとはー魔物と化した人間だった。次回魔っちょ、「雪の町に潜む影」お楽しみに!
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