ちょっと魔王を倒してくるわ(略して魔っちょ)   作:イノさん

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動き出す黒幕。その思惑は?


ZADNA計画forZ
始動!ZADNA(ザドゥーナ)計画


コンコンとドアがノックされる。

「誰だい?」

「サドです」

「ああ、入りなさい」

涙を流した青い仮面をつけた男が部屋に入ってきた。

「アングリーから伝言です。「Z」と「メイン」が接触した模様」

「へえ、面白いことになりそうな組み合わせじゃん。じゃあ、例のアレを置いてきて」

「分かりました」

「んー、わかってない」

男はサドの腹を蹴った。派手に吹っ飛び、壁にめり込むサド。やがてどさっと音がした。

「かっ、はっ・・・」

  ・・・・・・・・

「『かしこまりました』だろーがッ!」

「か、かしこまりました」

「よし、合格。出てっていいよ」

仮面の男が出て行ったあとで、男はニタァと笑った。

「さあて。楽しもうじゃないか」

心の底から楽しんでいることを証明するように、くっくっくと笑いを漏らす。

「終わりのォ!、始まりだァ!」

部屋の中に、声が反響する。

「始めようじゃないか、ZADNA計画を」

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

「なあ、象って言われて、思いつくことはあるか?」

ヘンゼルは横目でにらんできた。

「なんで知ってる?」

「よし、あるんだな」

「・・・ないことはないと言うだけの話だ」

「じゃあ、はいてもらおうか」

「グレーテルに、象のぬいぐるみをプレゼントした」

このいかつい見た目でぬいぐるみ・・・これがギャップ萌えというやつか。

「どんな象だ?」

「白い」

「・・・それだけ?」

「丸い」

「・・・ほかは?」

「・・・」

ダメだ。こいつ、話したがらない。

あ、とマコがつぶやいた。

「白くて丸いといえば、コウガさんとフウマさんが出てるとき、こんなもの拾ったんですよ」

何かの卵のようなものだった。かなり大きい。

「何の卵だ?」

「さあ。わかりません」

おい、わかるか?

(「不思議な卵」 命が宿っている。もうすぐ生まれそうだ)

え?そんだけかよ。

(だって仕方ないじゃん、興味ねーし)

お前医療の神だろ、生物ぐらい覚えとけ。

(・・・アァァァでぃおす!)

あ、逃げやがったあいつ。

まあ、オッサンはほっといて、この卵だが・・・

「育てるのか?」

「はい!」

「大丈夫か?」

「はい!」

「多分魔物だぞ」

「・・・ハイ」

大丈夫か、これ?

「・・・チッ」

ヘンゼルが急に立ち上がった。

「どこへ行くのじゃ?」

「さあな。グレーテルを探してくる」

「そうか」

「止めるのか?」

「いや、止めぬ。ただー夕飯までに帰ってこい」

「・・・フンッ」

                              ・・・

(どうやら気づいているようだな。まあ、別にいい。ここを出て、その先は分からねーだろ。)

「・・・残念じゃったな。すべてお見通しじゃよ。ただ、わしには止めれんだけじゃ。犯罪を演じようとする手品師など」

「あれ?マスター何か言いました?」

「・・・・・・」

いくら待っても質問に返答がない。顔をのぞくと、腕組みをしてあぐらをかいたまま寝息を立てていた。

「あらら。寝ちゃいましたか」

その声とほぼ同時に扉が開いた。

「おい!大変だ!」

「どうしたの?」

「帰ってきた!帰ってきたんだよあいつらが!」

「まあ!ていうことはもしかして・・・」

「ああ、あるかもな!」

「何じゃもう騒がしい。せっかく気持ちよく寝ておったのに」

マスターは外に目をやった。

「おお、帰ってきよったか」

外には四人、人影があった。

ギルド内がしんと静まる。

「あー、お嬢さん、ちょっとお聞きしていいですか?」

「は、はいぃぃ」

マコは震えを必死に押さえている。素人目でも見ただけで分かるほどの圧倒的な力を感じる。無理もない。

「し、知らないおじさん・・・」

そこかよ。

「そんなおびえなくていいよ。ここらに前までフェンリルブレイブってギルドなかった?」

「こ、ここです」

「え?ここ?」

リーダー格らしきおじさんが辺りを見回す。

「あー!ここか!ずいぶん変わったなぁ!嬢ちゃんは新入りか?」

「は、はいぃぃ」

「ちょっと怖がってるでしょ。だからひげを剃れっていつもいってやってんのに。顔が怖いんだよ、おじさんは」

後ろの十代ぐらいに見える女の子がおじさんをこづいた。

「いやいや、男は心だ!」

「おい!遊ぼうぜ!」

フウマが飛びかかる・・・てなにしてんのあいつ?

「ああ、あとでな」

きれいに投げ飛ばされた。本当に何してんだ。

「久しぶりにあったが、何も変っとらんようじゃのう、フィリオス」

「お、そういうじっちゃんも元気そうだな」

フィリオスと呼ばれた男は笑った。

「で?どうだったんじゃ、依頼の方は」

「いやー、ハハハ」

ガシガシと頭をかいた

「ダメだったわ」

ギルド内がざわついた。

「そんな。あいつらでダメなんて・・・」

おい、全くついて行けないぞ。

「なあ、あの三人ってどんな依頼を受けてたんだ?」

「ああ、二人は知らないわよね。討伐クエストだったんだけどね、成功すれば永遠の名声と地位と島を作れるくらいの金がもらえるっていわれてるようなクエストなのよ」

島を買うじゃなくて、作る?

「でも、誰も受けないのよ。この千年、あらゆる英雄や強豪って言われる人たちが挑戦したけど誰も帰ってこなかったの。だから、これは十分偉業なのよ」

改めて思う。なんてところに入ってしまったんだ。

「それにしても、フウマもクロノもお前ら15年前から全く変わらないじゃないか」

「変わってないもの」

「それに比べて、老けたなエド」

「うっせー。これは男の証なんだよ」

「その子は?」

「フェミーナだ。うちの子だ」

「結婚したの?」

「いんにゃ、拾った」

フェミーナはフウマのほうをじーっと見ている。

「なんだよ?」

「お前、弱いな」

「なっ」

「父さんに投げ飛ばされてたじゃないか。ぼくでももうすこしたえるよ?」

フウマはぷるぷる震えている。

「なら、証明してみせろやー!」

フウマの腕が燃え始める。

「鬼炎爪!」

「水鏡」

フウマが見えないバリア的なもので跳ね返された。

「なっ・・・」

「かなわないっていってるでしょ」

「まだまだ!鬼炎脚!」

「影置き」

フウマの蹴りは貫通した。

「は!?」

「残念でしたー」

後ろからフェミーナが現れる。

「鬼炎弾!」

炎の玉はまた貫通した。

「ーまたハズレ」

フェミーナが死角からフウマの首に腕を回す。いつの間にかケーキくっとるし。

「あれ!?俺のとっておきのケーキ!給料三か月分はたいて六時間並んだのにぃぃ!」

どんまいっす。俺は心の中で合掌した。

「これがもしナイフだったら」

フォークを首の上で滑らせた。

「アンタは死んでた」

「くっ・・・」

「ハッ!」

「くそうるせー!」

フウマの全身が燃える。フェミーナはすぐに手を離した。

「誰が誰より弱いってぇ?言ったよな!俺が依頼をクリアしたらお前は俺の部下だぞ!」

「冗談でもやめとけよ」

今まで一言もしゃべっていなかった男がしゃべった。影薄いなあ。

「お前なんかに勝てない。フィリオスに教えてもらえ」

「はあ!?なんで俺が「ガキは嫌いなんだよ」

言い切る前に男は声をかぶせていった。

フィリオスはしばらくガシガシとかいてため息をついてからフウマにいった。

「この後、俺の家に来い。お前の仲間も一緒にだ。いいな?」

その言葉には圧があった。誰にもノーとは言わせない強さがこもっていた。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

コンコンと軽くノックする。

「おう、入れ」

部屋にはフェミーナとフィリオスがいた。

「じゃあ、フェミーナはお茶を入れてきてくれ」

「はいはい」

フェミーナが部屋を出て行った。残されたのは、フィリオス、フウマ、マコ、俺、フェルナ、クロノの6人だ。ヘンゼルはどこに行ったのだろう?

「さてと、依頼の内容は覚えてるか?」

「確か人型の怪物の集落の破壊と殲滅だろ?」

「そうだ。その人型の怪物の正体。それはー」

いったん言葉を切って小声に変えた。

「鬼だ」

鬼。前世(?)では縁もゆかりもなかったが、この世界ではなぜか俺は鬼と関係するものによく合う。

「なら、モモタロウのフウマには楽勝なんじゃないか?」

「いいか、モモタロウはあくまで、余ダメージが増えるだけ。免疫はゼロなんだよ」

なんかゲームみたいな言い方だ。

「いいか、これを見ろ」

フィリオスは服をたくし上げた。現れたのは、えぐられた跡の残る腹。

「鬼にやられた。これだけじゃない。両手、両足、そして左目もだ」

フィリオスが義手を目に入れるとかしゃん、こつんと音がした。

「俺はもう娘の頭をなでる感触が一生分からない。いいか、鬼にとって人間は、俺らにとっての鶏同然なんだよ。食料だから、食うのが当たり前。そういうことだ」

俺たちは黙ってしまった。

「そうだ、ついでに伝言だ。マスターより、クロノに占ってほしいことがあると」

「なぁに?」

「新しく入ったらしい、ヘンゼルとか言うやつの居場所だ」

「はいはーい」

カードを出すとシャッフルしてその中から一枚引いた。

「場所は『カワノ平野』みたいね」

「なら、そこに行ってくれ」

「私は受付があるわ」

「私も急ぎの仕事が」

「わ、私は『出かけたら鬼に食べられちゃう病が・・・」

おい、最後。どこの長っパナ狙撃手だよ。

「じゃあ、三人で行ってくれ」

「い、いや、だから・・・あっあいたたたた腹痛がっ!腹痛がぁぁぁぁぁぁぁ!」

「そんだけ叫べたら大丈夫だ」

「うう・・・」

その頃、当のヘンゼルは洋館に入るところだった。バタンと音を立てて扉が閉まる。

「俺は、ただ笑いたかっただけなのに。グレーテルに、喜んでほしいだけなのに。馬鹿みたいに笑えば、誰も気味悪がらないだろうか。食べ物を売ってくれるだろうか。馬鹿みたいに・・・そう、ちょうど」

ヘンゼルは写真を撮りだした。そこには、大口を開けて笑うフウマが写っていた。

「ーこんな風に」




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次回予告
ヘンゼルが笑いを求める理由。そして、三人の運命は?
                        次回魔っちょ「時の流れの中で」
                                 お楽しみに!
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