――式根島。
伊豆諸島を構成する島の一つであり、新島の南西に位置する面積3.9平方キロメートルの島である。
ここに、現在エリア11で対立する2つの勢力が集まっていた。
ブリタニア軍と黒の騎士団である。
ブリタニア軍側では、式根島を訪れる第2皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアを出迎えるために、第3皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアと彼女の騎士である枢木スザク、そして彼が所属する特派の面々が訪れていた。
その面々の中にはライも含まれていた。
先日のチョウフでの一件でナイトメアの騎乗資格を停止されていたが、スザクとセシルが『気分転換になるから』と言って強引に連れてきたのだった。
「でも、本当に僕が来ちゃってもよかったんですか?いざというときにナイトメアにも乗れないですし……」
「いいのよ、あなたはここに休暇に来たとでも思っていてくれれば」
「そうだよ、ライ。ここは海も青く澄んでいるし、空も綺麗に見える。体を休めるにはもってこいのところだと思うけどね」
「君ね、役に立たないなんて大間違いだよ?君はスザク君並の身体能力があるんだから、万が一スザク君がランスロットで出撃中にテロリストが来ても、その身体能力で皇女殿下をお守りできるんだよ?」
ライの身のことを気にかけているスザクとセシルとは裏腹に、ロイドはあくまでもライの能力だけを見て声をかけた。
いつも通りにそれを聞いたセシルがロイドに説教を始める。
ライとスザクはそれを苦笑いしながら眺めていた。
「ライ。カレンと話はできた?」
「……いや、まだだ」
ルルーシュとミレイに自分の本当の仕事を告げたあの日から後は、スザクの騎士就任の準備や事務作業に追われて学園に行くことすらままならなかった。
そのため、カレンが学園に顔を出していたとしても直接あって話をすることもできず、また、メールでの連絡は依然としてとれないままであった。
「だったら、今日は誘わないほうが良かったかもしれないね」
「いや。いいんだよスザク。さっき君が言ったように、ここにいるとなんだか心が安らぐんだ。それに、何か自分が変われる気がするんだ」
「どういうこと?」
「さぁね。ただ、ふとそう思っただけさ」
そう二人が話していると、遠くから爆発音が聞こえてきた。
「!?なんだ、今のは?」
二人が音のしたほうを見ると、黒煙が立ち上っているのが見える。
明らかに何かが燃えているような色。
それもただの火事のようなものではない。
ライは、煙の見える方角と、事前に調べた式根島の地理情報を照らし合わせた。
(あの方角……まさか……!)
「何事ですか?」
音を聞いて外に出てきたのであろう、ユーフェミアが近くの軍人に問いただした。
「皇女殿下!?危険です、一度船の中にお戻りください!!」
すぐに皇女の身を守ろうとしたのは、彼女の騎士であるスザクだった。
しかし、彼女はそんなこともかまわずにその場にい続けて軍人からの説明を待つ。
「守備隊の司令部がテロリストの奇襲を受けているようです」
「そんな!?なぜいままで察知できなかったんですか?」
「特殊なジャミングを使われているようで、直前まで探知できなかったようです」
ブリタニア皇族を巻き込みかねない危険事態に、軍人たちは急遽対応策を練り始めた。
「ご安心下さい。皇女殿下の事は、自分が守ります」
スザクはすぐに自分の主君であるユーフェミアの警護を名乗り出た。
「いえ、あなたは司令部の救援に向ってください。せっかくの戦力をここで私一人のために遊ばせておくわけにはいきません」
「しかし……」
「枢木スザク、私を守りたいと言うのなら、速やかに敵を追い払い、私の元に戻ってきてください」
「……イエス、ユア・ハイネス!」
「スザク。さっきロイドさんが言ったように、いざとなったら僕が殿下を守るから。君が戻ってくるまでの安全は任せてくれ」
「……ありがとう、ライ」
ライの言葉を受け取ってスザクはランスロットに乗り込み、司令部に急行した。
紅月カレンは紅蓮弐式に乗っていた。
先日、ゼロから告げられた『ライという少年は、先日のチョウフの一件でナイトメアの騎乗資格が停止させられているらしい』という言葉。
それを聞いてこの作戦で紅蓮に乗ることは承知したものの、やはり以前と違ってためらいなくブリタニアのナイトメアを破壊できなくなっていた。
白兜をおびき寄せるための司令部強襲の作戦中でも、輻射波動の使用頻度が激減し、呂号乙型特斬刀での駆動系を破壊する、パイロットの命を奪うことないような攻撃を続けていた。
そしてスザクの乗る白兜が現れ、ゼロの乗る無頼を追いかけ始める。
「ライ…………」
その機影を見て、カレンはここ最近メールすらも無視している彼氏のことを思い出す。
自分が彼を心配させていることはちゃんとわかっている。
それでも、黒の騎士団としての自分とブリタニア軍人としての彼が存在している以上、安易に連絡を取ることはできなかった。
『どうした紅月?!我々も早く集合地点に向うぞ!』
「わかりました!」
藤堂の言葉に、しばらく呆然として白兜とゼロの無頼を見ていたカレンは紅蓮を集合地点――ラクシャータによるゲフィオンディスターバーが設置されている砂地へと向った。
『枢木スザク、出てきてくれないか?話し合いに乗らない場合、君は四方から銃撃を受けることになるが?』
カレンの乗る紅蓮の前に広がるくぼ地の中で、ゲフィオンディスターバーによって動きを止められた白兜と無頼が対峙していた。
ゼロは既に無頼を降り、その姿を現している。
スザクもそれに応じ、コクピットから降り立つ。
何かを話しているようだが、コクピット内にいるカレンには聞こえない。
しかし突如スザクがゼロから銃を奪い、羽交い絞めにして彼を拘束した。
「あいつ!」
『動くな。力場の干渉を受けるぞ』
「でも!」
ライと戦うことには抵抗はあっても、目の前にいるスザクと戦うことにはそれはない。
自分達に日本解放という夢を見せてくれたゼロをみすみすと殺させるようなことをするのなら、スザクを殺すこともいとわなかった。
しかし場合が場合であるためにゼロを助けられないことが、ゼロの親衛隊隊長であるカレンにとって辛いことだった。
『藤堂さん!レーダーに多数のミサイルの反応が!』
その通信を聞き、カレンもレーダーに目を走らせる。
(多すぎる……ゼロを助けないと!!)
カレンが行動に移ろうとしたちょうどそのとき、林の中から黒の騎士団のものでない1機のナイトメアが現れた。
(嘘……なんで……?)
白いナイトメア。
カレンの愛する人が乗る機体だった。
それを見て、黒の騎士団のナイトメアが一斉に臨戦態勢を取る。
『待ってくれ!交戦の意志はない!ミサイル迎撃に協力する!』
オープンチャンネルで告げられるその声は、間違いなく彼のものだった。
カレンが唖然として動けない間に藤堂の機体がほかの期待を制止し、通信をかえした。
『なるほど。命令より戦友を選ぶか。承知した。そちらが手を出さない限り貴公の行動には干渉しない』
(良かった……)
藤堂の言葉にカレンは感謝した。
あやうく、愛する人を失いかけたのだから。
藤堂の言葉を受け、白いナイトメアはアサルトライフルを狙撃モードに切り替えて射撃を開始した。
半分ほどまでミサイルが減ったところで、ライは射撃をやめた。
(エナジーが足りない……これでは通常射撃も無理だな……)
「すまない!こっちはここまでのようだ。後を頼む!」
ライの言葉に返答はなかったが、藤堂のナイトメアは左腕を空に向けた。
それに追従するように黒の騎士団のナイトメアがそれぞれの武器を空へ向ける。
藤堂の指揮の下、黒の騎士団のナイトメアは全力で対空射撃を開始した。
(だが……ミサイルの数が多すぎる)
スザクはゼロをランスロットのコクピットにゼロを押し込んだまま動かない。
あくまでも命令に従うつもりで、その身を犠牲にしようとしているようだった。
ミサイル着弾まであと少し。
残されている時間はない。
同じように感じ取ったのか、紅いナイトメアが動きだしてゼロを救出しようとする。
しかしそのナイトメアも、ランスロットと同じように機能を停止してしまった。
そしてナイトメアから一人の紅い髪をした少女が飛び出す。
「スザク!ゼロを離せ!私は……私は、生徒会のカレン・シュタットフェルトだ!こっちを見ろ!!」
(カレン!?なぜここに!?いや、それよりもこのままでは彼女が危ない!!)
ライは反射的にコクピットを飛び出して、ユーフェミアのことをも忘れて彼女のもとへと向かっていた。
驚きよりも、主君の事よりも、彼女の命を守らなくてはならないという気持ちが彼を彼女のもとへと動かしていた。
「カレン!!」
ライの声にカレンは彼の姿を見て足を止めた。
「どうして!?どうしてあなたも出てきちゃうのよ!!」
「それは――」
ライが言葉を発しようとした瞬間、辺りを闇が包んだ。
正体を探ろうと空を見上げると、そこには1隻の戦艦が飛んでいた。
「空飛ぶ……戦艦?」
ライの隣では、カレンも呆然と立ち尽くしている。
黒の騎士団のナイトメアの軍勢がいっせいに攻撃を開始するが、ランスロットやクラブと同じブレイズルミナスによって全て防がれていた。
その数瞬後、空中戦間の下部ハッチが開き、そこから赤黒い光が放たれて辺りは光で包まれた。
そして光が晴れたときには、そこにいたはずの5人の姿は見えなくなっていた。
昔某スレで掲載していたときは、この話はもう少し長かったのですが、ここで区切りがよくなったので、少し短いですがここでこの話を終了にします。