「それで まもられいたのは そとにいる みんなの ほうだった!」
「ハ … ハ ハ … 」
―――ソウルの割れる音がする。
―――そして塵。
同じ言葉。もう聞き飽きた。そんな言葉では私には響かない。止められない。変えられない。
仕方のない物だとは知っているけれど。
すっかり静かになってしまったこの空間に、おもちゃのナイフを持ち、リボンを無造作に付けた子供が一人。
子供には驚くほど似合わない顔をして、ただ、前へと進んで行く。
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縞の入った服にピンクのリボンを付けた子供。これがモンスターたちを傷つけた犯人の特徴らしい。
これはナプスタから聞いた情報だ。ナプスタはゴーストだからダメージを負う事はないのだが、そのふりをしていたらしい。
子供が犯人とは驚いた。本当なのだろうか?
飴をなめて、遺跡の中を歩きながら考える。
ちなみにこの飴はずっと踊っているモンスターから貰った。やっぱり傷が癒えていく。モンスターの食べ物はそういう物なのか?
今、周りにはたくさんの柱やいろんな色のスイッチがある。これも何かの仕掛けなんだろうけど、全て解かれているので横を素通りして行く。
奥に来てから塵を全然見かけなくなった。もちろん隅々まで確認しているが。
きっと、遺跡の入り口辺りでの危険を察して、ここら辺にいたモンスターたちは逃げたんだろう。
特に何もなく、広い空間に出る。落ち葉がたくさんと、葉も花も実も何もついていない大きな木が、その空間のど真ん中に居座っている。
その奥にあるのは…家?
遺跡なのに小綺麗なこの場所もそうだが、それ以上に、遺跡の中にこんな清潔感のある家があるのもだいぶおかしい。
誰か住んでいるのだろうか?
ドアは私の身長を大きく越しているため、今まで会ってきたようなモンスターたちが住んでいるわけではなさそうだ。
ドアの上には「ホーム」と書かれている。
他の道も全て見てまわったが、全て行き止まりだった。
他に行っていない場所というと、途中の物置きのような場所から見えた、使われていないらしい家々。それと、今目の前にある大きな家。
この家は他と違って使われている感じがする。どこか温かみがあるというか…
という訳で、行く所はここ意外にはないのだ。もしかしたら、この家の先に道があるかもしれない。いや、そんな気がする。
「あの…誰かいませんか?」
声をかける。
――――――返事はない。
「お邪魔します…」
家の中に入る。
その瞬間、温かさが身を包む。ずっとここに居たくなるような、この温かさに体を預けてしまいたくなる。そんな温かさ。
それと同時に感じたのはある香り。香ばしくて、甘くて、優しくて、懐かしくて、…そして、切ない。そんな香り。
部屋をまわる。
誰もいない。
ダイニングに入る。
誰もいない。
キッチンに入る。
誰もいない。
誰かそこにいてくれることを願うように、走って探した。
誰もいなかった。
入り口のすぐ前にあった、下へと続く階段の先は、やはり道があった。
階段を下りる。
もう、あの温かさは感じられない。
もう、あの香りは感じられない。
戻りたくなるけれど、戻れない。
背中を押されているからだ。
他の誰でもない、自分に。
焦燥感でもなく、怒りでもなく、悲しみでもなく、哀れみでもない。
これは『ケツイ』だ。
いつかの私のケツイが、私の背中を押す。
私は
長い廊下を突き進んだ先にあったのは、大きく、重たそうな扉。そしてその前にあるのは…
一際大きな塊の塵。
黙って側まで寄る。
―――――――――助けたい。
―――何かが動く。自分のものである何かと、自分のものではない何かが。
何かが光る。
――――――何も起きない。
どうして?どうしてできない?助けなければいけないのに。
焦りが大きくなる。
助けられないだなんて嫌だ。このモンスターにも大切な物があるかもしれないのに。
話しができないなんて嫌だ。友達になれたかもしれないのに。
会えないだなんて嫌だ。こんなに悲しいのに。
嫌だ。諦めるもんか。
何かが光って―――
「―――っ…」
息が詰まる。
体を起こして居られなくなり、遺跡の硬い床に倒れ伏す。
瞼が重い。いや、体全体が重い。
意識が遠のき、冷たい床だけが感じられる。
ケツイがみなぎった。