サムい
バアンと音を立て、扉が閉まる。遺跡の中で反響した音が外からでも聞こえる。
私は今、遺跡の外へ出た。遺跡の外、というだけであって地上ではない。
というか寒い。もの凄く凄く寒い。
足元を見ると雪が積もっている。道理で寒い訳だ。地下というのは勝手に暑い場所だと思っていたけど、そんな事はないらしい。日差しが通らないからかもしれない。
体を暖める為にも少し小走りになりながら、気味が悪いほど静かな雪の小道を進んで行く。
そう言えば、ママはどうして魔法が使えなくなってたんだろう。ちなみに魔法はモンスターなら皆使えるらしく、私が触れるとダメージを受ける、モンスターたちが飛ばしてきたあれだ。
ママの様子からして、魔法が使えなくなるのはよくあるような事ではないのはわかった。そして私が助けた後に使えなくなったんだから――
私の『助ける』力の副作用的な物…?
思えば、ママを助けた後、全身がだるくなってその後の記憶がない。気を失ってたとママが言ってた気がする。今までそんな事なかったのに。
前を見ると、木でできた橋のような、ゲートのような物が小道の先にある。これも何かしらの仕掛けなのかもしれないけど何も起きない。
これも誰かが解いた後なのか?
だとするとやっぱり例の子供だろうか…
遺跡の中には仕掛けと、落ち葉と、あと机にくっついたチーズぐらいしかなかったけど、遺跡の外はそうでもないらしい。
雪は勿論の事、針葉樹がたくさん。川もあったし、小屋とかランプとか、何も入ってなかったけど箱だとか。モンスターの写真が釣り針の所に付いた釣り竿もあった。
人工物に関してはどれも使用用途が分からない。
そんな中で、その箱の近くの雪が盛り上がっていた。
…いや雪が盛り上がっているんじゃない。
雪の上に塵が乗っかっているんだ。
「―――助けなきゃ。」
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「…いよっと。」
寒さに震えながらも魔法を避ける。
「こんなゆきで ふるえとったら さきゆきわるいで。 」
「お気遣いありがとう。でも走ってるからちょっと暖かくなったかも。」
「わらうところやで、 ここ。 」
「えっ?」
鳥のモンスターの口がへの字に曲がる。そして魔法が飛び交う。三日月型の雪の欠片のような魔法だ。
動きが読めてきた。十分避けられる。
鳥のモンスターがこちらをジトっと見る。
「 “ゆき” のだじゃれや! だじゃれ! 」
「…あっ。」
鳥のモンスターが私に失望したような、悔しいような目を向ける。
「ごめんね!いや私はその…そういう事に疎いから! …でも分かるモンスターには、きっと受けると思うよ?」
そう言うとすぐに、鳥のモンスターはパアっと表情を明るくする。
「おもしろいやろ!? オヤジめ! きいたか! 」
「あーうん、何事も自信がある方が良いよ。」
取り敢えず『助ける』力は問題なく使えるようだ。この鳥のモンスターも普通に魔法が使えてるようだし、私自身に不調もない。
どうしてママの時だけ?
オワライチョウというらしい鳥のモンスターには危険について知らせ、隠れるように促した。オワライチョウも例の子供について覚えているらしかったが、思い出した時に顔色が一瞬で悪くなったので、わざわざ掘り返しはしなかった。
周りを見渡す。
雪が一面に積もっている中、塵がないかどうか探すのはかなり大変そうだ。
でも、ちゃんと見つけてあげなきゃ。
自分の中で、意志がかたまる。
「助けたい。」
――――――何かが動く。自分のものである何かと、自分のものでない何かが。
それらが温もりを持ち、感情が溢れる。
自分に慣れ親しんだものがある。
知らないものがある。
悪を許せない気持ちがある。
意志を貫き通す精神がある。
何かが光って―――
皆を助ける意志がかたまり、ケツイがみなぎった。