飛ンデ日二入ル夏ノ蝶   作:TouA(とーあ)

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お久しぶりです!
遅れてしまい申し訳ありません!
就活中なのでご勘弁!

では楽しんでいただけたら幸いです!
どうぞ!


第參話 手紙ノ行方

 

 

「今日も今日とて良い天気だなぁ……」

「ですねぇ……」

 

 玉露入りの熱いお茶をズズッと啜る二人。

 まるで熟年夫婦の様相であり、穏やかな時間が流れている。

 

 日柱・竈門炭治郎と胡蝶しのぶ。

 

 ちょっとしたすれ違いが解消され、以前の様な朗らかな雰囲気となった二人は時間があれば蝶屋敷の縁側に座り、空白の時間を埋める様に取り留めのない話を交わした。

 

「そう言えば炭治郎さん」

「ん?」

「禰豆子さんとあれから会いましたか?」

 

 痛い所をつかれたのか微動だにしない炭治郎。

 その様子からしのぶは察した。まだこの兄妹はすれ違いというか諍いを続けているのだと。

 

「そりゃ会いたいけど……」

「兄妹喧嘩も程々に、ですよ?」

「分かってる。手紙は書いてるし、返事も来る。だけど会うっってなるとなぁ……」

 

 優しさ故、なのか。

 しのぶは二人の兄妹を憂慮する。彼だけでなく、彼女も彼女で素直じゃないところが頭を悩ませる点なのだ。

 

 確かあれは────。

 二人の兄妹のすれ違いの切っ掛けを思い出す様に、少しだけ過去の記憶を辿ってみる────。

 

 

 

☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓

 

 

 

『何で分かってくれないの!』

『駄目なものは駄目だ!』

 

 数年前、いつかの蝶屋敷。

 あの時も、今みたく炭治郎さんが怪我を負ったことで蝶屋敷で安静にしていた日だった。

 その日突然、蝶屋敷の一画で怒号が飛び交った。

 実際は思いの丈のぶつかり合いなのだけど、そう捉えてしまうほどに激しいものだった。

 

 それが竈門兄妹であると脳が理解するのにえらく時間が掛かったことを覚えている。

 兄妹の理想像、そう呼べるほど彼らは仲睦まじい。そのことは鬼殺隊でも周知の事実だった。

 

 炭治郎さんの妹────竈門禰豆子。

 禰豆子さんは私にとって数少ない友人の一人だ。年が近いことは勿論、どちらも妹であり上に兄・姉がいる共通点からも話がよく弾んだ。勝手ながら親友……とも思っている。

 彼ら兄妹は私達姉妹同様、家族を鬼に殺されている。私達は両親を、彼らは弟妹と母親を。

 悲しみの度合いなんてそんなものは無いけれど、お互いにそれを乗り越えようと前へ一歩踏み出せたのは生き残った肉親のお蔭であったと思う。

 互いに支え合い、助け合い、そうして生きてきた。

 

 私と禰豆子さんが出会ったのは、私が最終選別を通過して暫くあとの事だった。

 それ以前に炭治郎さんには出会っていたのだけど、それはまぁ置いておくとして。

 蝶屋敷に怪我をして運び込まれた炭治郎さんの御見舞に禰豆子さんがいらっしゃったことが初めての出会いだった。

 

 ────貴女が胡蝶しのぶさん? 

 ────では貴女が禰豆子さん……ですか? 

 

 炭治郎さんを介して、互いに互いの事を知っている、初めて会ったのにも関わらずいつの間にか長い付き合いの友人みたくなっていた。それが可笑しくて可笑しくて私達は暫く笑っていた。

 鬼殺隊に入って、初めて出来た同年代の女の子で大切な友人。それが竈門禰豆子さんだった。

 

 それから、禰豆子さんは住み込みで蝶屋敷で私の仕事を手伝ってくれた。

 どうやらここに来る前も『鱗滝さん』という元水柱の方の手伝いをしており、近辺に住む御老人の介護を含めたお世話をしていたという。

 手慣れていたこともあって、仕事の覚えも早かった。何より、兄が身を投じて無辜の民を守ることの高尚さを支えたいという気持ちも大きかったに違いない。

 

 そんな彼女が声を荒らげて敬愛する兄に切実な想いを訴えていた。

 その部屋の傍らで私は耳を(そばだ)てる。

 私は薄々、禰豆子さんがそう言い出すのではないかと思っていた。同時に、その想いを兄である炭治郎さんは否定することも────。

 

『私も鬼殺隊に入りたい!』

『駄目だ! どうして急にそんなことを言い出すんだ!』

『お兄ちゃんの力になりたいからだよ!』

『それならもうなってる! 俺は……俺は、禰豆子が蝶屋敷(こ こ)で待ってくれてるだけで良いんだ……禰豆子までが鬼殺隊(こちら側)に来る必要は無いんだよ……!』

 

 悲痛な声で訴えかける炭治郎さん。

 だが、聞く耳をもたない、というよりは既に心を決めていた禰豆子さんは考えを変えなかった。頑固な所は兄妹似ているなぁと場違いな考えが頭を過る。

 

『私はね、お兄ちゃん。お兄ちゃんが私を守ってくれる様に私もお兄ちゃんを守りたいの。私も……ほら、長女だからさ』

『違う……違うんだよ禰豆子。俺は竹雄、花子、茂、六太、……みんなに、みんなにしてやれなかった事を全部お前に────』

『前にも言ったでしょ? 私の幸せは私が決める。お兄ちゃんが背負っているものを、私にも背負わせてよ。もう……守られるだけは嫌なんだ』

『禰豆子ッ話はまだ! 禰豆痛ッッッ────!?!?』

 

 禰豆子さんが部屋を飛び出すのと同時に、私は無理をしてまでその歩みを止めようとする炭治郎さんを支えに部屋へ。

 無理をしないで下さい、軽傷じゃないんですから、そう口にしながら体を布団へと戻す。

 それでも私は、肩を持つのは禰豆子さんの方だった。妹として、禰豆子さんの気持ちは十二分に理解できるから。

 

『俺がもっともっと強かったら……! 禰豆子に心配させることもなかったのに……! 俺は俺は……!!』

 

 彼は────。

 不甲斐ない自分に。

 情けない自分に。

 力のない自分に。

 悔しくて悔しくて、涙がこぼれそうになるほど悔しくて、止めどなく溢れそうになる激情を噛み殺していた。

 

 炭治郎さんは禰豆子さんの心中を全て理解していた。そのよくきく鼻も嗅ぎ取っていたのだと思う。だが理解していたが納得はできてなかった。出来る筈もない、唯一の肉親を戦地に送るのだ。はいそうですか、と簡単に納得がいくものでもないことは妹の私でもわかる。

 互いに互いを想っているからこその結果。

 不器用なところも兄妹似ているのだと、第三者だからこそそう感じてしまった。

 

 それから────。

 禰豆子さんは炭治郎さんの兄弟子にあたる、水柱・冨岡義勇さんの継子として。

 炭治郎さんは脇目もふらず強さだけを、無辜の民を守り抜くためだけの強さを、大切な人を守るために強さを、それだけを追い求めて、遂には【柱】にまで昇り詰めた。

 

 彼ら兄妹に共通していることは、互いを想い合っていること。

 そして────蝶屋敷に足を運ぶことが無くなったことだった。

 

 

 

☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓

 

 

 

「炭治郎さん」

「……ん?」

「想いをぶつけないと伝わらないことも多いと思います。私達みたいに」

「そうだよなぁ……うん、一度面と向かって話すよ。ありがとう、しのぶ」

「いいえ。私も彼女の友人として当然のことをしたまでです。はやく仲直りして下さいね」

 

 ────でないと寂しいじゃないですか。

 そんなこっ恥ずかしい言葉は呑み込んで、しのぶは恩人の背中を押す。余計なお世話だと言われようがこちらも親友と会えないのは不安であるし大変心寂しいのだ。

 

 そんな時、一羽の[[rb: 鎹鴉> カスガイガラス]]が庭へ降り立った。指令だ。

 

『カカァァァー!! 音柱・宇髄天元ヨリ要請! 花柱・胡蝶カナエ、シノブ姉妹ニ救援求ム! 遊郭ニテ十二鬼月ト思ワレル鬼ガ潜伏シテイル可能性アリ!』

 

「私に? なぜ?」

 

『原因不明ノ毒ニ侵サレテイル住民ガイル模様! 宇髄天元ノ持ツ解毒剤ガ効カナイ事カラ恐ラク血鬼術ト思ワレル! カァー!』

 

「それで薬学に長けたしのぶが選ばれたってことか。それなら俺も────」

 

『日柱・竈門炭治郎ハ【上弦丿壱】ニヤラレタ傷ヲ癒ヤスノガ優先デアル! カァァァー! 他ニ恋柱・甘露寺蜜璃モ既ニ向カッテイル! 心配スルナ! ケケッ』

 

「今、鴉に鼻で笑われたのか俺……」

「ま、まぁ甘露寺さんも向かっているのなら、たとえ上弦であっても柱が三人居ますし、必ず勝てます!」

「……うん」

 

 柱だけあって実力は折り紙付き。

 それでも不安は拭えない。簡単な話、相手は鬼だからである。どんな手を打ってくるのか分からない。それが上弦となると……炭治郎は身をもって知っていた。

 

『胡蝶シノブ! 急グノダ! 時間ガナイ! カァァァ!』

「はっはい!」

 

 バタバタと医務室の方へ向かうしのぶの背中は、炭治郎にとって大きな安心感を得るものの一つとなっていた。

 治療などの裏方の支援ができる隊士が一人いるだけで戦況は幾らでも好転する。そのことは実戦を経て何度も経験したことである。

 それがしのぶだと殊更に安心する。誰よりも人の為に動ける者がしのぶだからである。

 願わくば、全員が無事に帰るべき場所に帰れるよう、居るのか居ないのかも分からない神に祈るばかりが炭治郎にできる事だった。

 

 

 数刻後。

 カナエとしのぶは準備を終え、遊郭に向かおうとしていた。

 お見送りは炭治郎とアオイ。

 若輩ながらしっかり者のアオイが門で切火を行い、炭治郎はオニギリの包みを手渡した。炭治郎の料理は『オカン』の愛称に裏切らぬ、見事な出来だということは鬼殺隊ではかなり知られている。さすがは火仕事の家系、といったところだ。

 

「じゃあ行ってくるわね〜。アオイと炭治郎くん、お留守番宜しくお願いします」

「はい! カナエ様としのぶ様に代わって私が精一杯、ここを命を賭して守ります!」

「もう〜そうやって肩肘張らないの。アオイらしく私達の帰りを待ってて頂戴。炭治郎くんも───」

「はい! カナエさんとしのぶの帰るべき場所は必ず俺が守ります!」

「ふふふ、似た者同士ね〜」

 

 優しく微笑むカナエ。

 戦場に行く様なものなのにこの落ち着き具合は【柱】であるから……ではなく元来備わっていたものだということをしのぶは知っていた。悪く言えば緊張感がない、よく言えば戦場であっても普段通りでいられる、緊張がほぐれるということでもある。

 

「炭治郎さん」

「どうしたの?」

「手紙……書きます」

「うん! 待ってるよ。あっ、しのぶから手紙を貰うのは初めてだなぁ」

「ですから炭治郎さんも禰豆子さんに……」

「分かってる! 必ず書く!」

 

 約束です、そう口にしなくても二人は目で交わし合う。

 その様子を見たカナエは嬉しそうに笑う。

 

「仲直りできたのねぇ……姉さん嬉しい」

「はい! 全部しのぶのお蔭です! 今度は禰豆子とも!」

「そう……! また皆でご飯を食べましょう! どこかへ遊びにも行きましょう! 沢山お喋りしましょう! 今から楽しみだわぁ……」

「えぇ必ず! 約束です!」

「そうね! 約束!」

 

 天真爛漫な長男・長女が約束を交わす。

 それを傍から見る二人の少女は少しだけ呆れたように微笑んだ。

 

 みんなが笑って暮らしている、そんな未来を思い描いて────。

 

 

 

 

☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓

 

 

 

 

 炭治郎は二人が発って直ぐに手紙を書き、禰豆子のもとへ手紙を送った。

 しのぶからの手紙、禰豆子からの手紙、この二つを炭治郎は心待ちにしていた。カナエがいう幸せな未来を描きながら。

 

 そして一週間後、炭治郎に手紙が届いた。

 

 二通とも同時に────。

 

 

 

 

 

 

「あぁ……あぁ……ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【死亡告知書】

 

 花柱・胡蝶カナエ

 

 遊郭(花町)にて、音柱・宇髄天元と恋柱・甘露寺蜜璃の加勢のもと【上弦ノ陸】を討ち取ったが、突如現れた【上弦ノ弐】と連戦。後進と町の民が一人たりとも命を奪われる事なく守り抜く。

 

 後、鬼化した竈門禰豆子隊士との戦闘にて戦死せられましたことを御通知致します。

 尚、鬼化した竈門禰豆子隊士は隊律違反のため同じく隊士である胡蝶しのぶにより討伐されたことを御承知置き下さい。

 

 大正 年 月 日

 

 

 

 




次回はこの戦闘の裏側から、かと思います。



ではまた次回! 
感想と評価お待ちしております。
こういう展開どうなんでしょうね、低評価沢山つきそう(小並感)
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