サモナーさん関連短編集   作:cohaku

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此処からはオリジナル妄想展開があります。


鬼滅の刃クロス(2)

あの紐なしバンジージャンプを終え、川を下流に下っていき、ある程度流れが緩やかになったら岸に上がった。

事前に用意していたそこらの一般人が着る様な着物に見せかけたちょっと丈夫な布で作った着物に着替え、元々着ていた着物は適当な動物の血を振りかけて再度川に流す。

 

「……ヴォルフ、逢魔」

「ガゥ」

「………」

「逢魔は、普通の着物に着替えて」

 

その言葉に嫌そうにしながらも影から送られた着物を着ていく逢魔。本来の戦闘スタイルを考えれば嫌がるのも分かるが一般人に紛れ込むにはどうしようもない。

 

「とりあえず、継国の領地から出よう。後は、日本全国周ってテレポートできる場所を増やす。寝る場所は召魔の森があるし、食料にも困らない、せっかく自由になったんだから観光するのもいい」

 

戦いたいなら召魔の森などで戦えばいい。だがせっかく転生して、しかも昔の日本、戦国時代となれば現代の日本で潰されてしまった自然や当時名をはせていた偉人などもいるはずだ。

それらを見て周り、戦いたくなったら戦うものいいのではないかと思う。

前の時と違いに発作も頻度が少なくなっている。まぁこれが召魔の森などが無ければ戦いに飢えた餓鬼になっていたかもしれないが問題ないのならそんなIFのことなど考えない方がいい。

 

「グルルゥ」

 

だが、考え事をしていると聞こえたヴォルフの唸り声に考え事をやめヴォルフを見る。これは何か悪いものがいるときのヴォルフの声だ。敵だったり、獲物だったり、PKだったり様々な場面でヴォルフの索敵能力は俺を救った。

逢魔も警戒して、構えを取り周りを警戒している。

 

「…」

 

その様子に息を吸い、集中する。五感を高めるように、些細な気配も見逃さないように、この身になって産まれてから当たり前のようにしていた呼吸はそれを可能とする。

 

キィン、ガキンッ

 

金属同士がぶつかり合うような音が聞こえる。血の匂いが香る。ドロリとした殺気とまるでネズミを食らう間に弄ぶ猫の様な残忍な気配。

 

「行くよ」

 

声を掛ければ音もなく動き出す。森の中だから「フォレスト・ウォーク」をかけてさらに音がしないようにして駆ける。

 

「人間風情が!鬼に勝てる訳ねぇだろうが!!」

「グッ!」

 

たどり着いた光景は、まるでアニメや漫画のようであった。異形の化け物とそのバケモノに刀一本で戦いを挑む人間。その周りには倒されてしまったのか血濡れの複数の人間たちがいた。

 

「ヴォルフ!逢魔!」

 

ヴォルフと装備を整えた逢魔が駆けだす。

 

「ガアッ!」

「ッ!」

「な、なんだこいつらは!?」

 

突然襲い掛かった2匹の狼に怪物は声を上げ抵抗しようと腕を振り上げる。だが2匹の俊敏値はあの程度の愚鈍な存在に捕らえられるほど低くない。

 

(倒れているのは5人か)

 

一先ず一番近くにいる者の傷を確かめる。

 

(チッ!致命傷か!)

 

まだこの世界で回復呪文は試せていない。ぶっつけ本番で致命傷の治療は危険だ。

 

(ほかの者も似たようなものだな…神霊の桃を使うしかないか)

 

アイテムボックスから5つ桃を取り出す。それを倒れている人たちに当てればたちまち傷がいえていく。

 

「さて」

 

先ほどから横目で見ていた戦いを見る。化け物と対峙していた日本では珍しい金色の髪色をした男は、限界だったのか気絶している。その男にも桃を投げ、倒れていた者達を一か所にかためて置いた。

ヴォルフと逢魔に襲われている怪物はいまだ健在。自己再生能力が高いのか瞬時に傷が回復される。

 

「何か弱点があるのか、倒すのに条件があるのか、どっちだろう?」

 

渋い色の灰色の縄を取り出し、そっと忍び寄る。近づいていた主人に気が付いたのかヴォルフと逢魔は怪物の気をそらそうと更なる猛攻を仕掛け始めた。

 

「ぐっ!この犬畜生共が!!」

 

いつまでも引きはがせないヴォルフ達に苛立ちさらに大振りになった攻撃。それらを潜り抜け魔後ろから忍び寄る。

 

「ガッ!?」

 

首に縄をかけて一気につるし上げる。

 

「アァァァァァァァ!?」

 

捕縛縄、神すらも拘束するグレイプニルには、流石の怪物も抗えないのか大人しく吊り上げられる。いつまでも持っているのもつらいので人間形態に戻った逢魔とつるし上げるのを交代してもらう。

 

「うっ」

 

一番傷の浅かった金髪の男から声がした。

 

「ハッ!お、鬼は!?」

(鬼?)

 

ガバッ!と体を起こした男の言葉に、ついっとつるし上げられている怪物を見やる。抜け出そうと足掻く事も出来ずつるし上げられプラーンプラーンと揺れている。

 

「は!?」

 

そのつるし上げられている鬼を見て目を見開いて凝視している男。

 

「お兄さん?」

「む!な、何故子供がこのような山の中に!しかも今は鬼が蠢く夜!危険ではないか!」

「これ、鬼って呼ばれてるんだ。どうやったら殺せるのでしょうか?」

「鬼は日の光にあてるか、この特殊な鉄で作った刀を使って頸を落とさねば死なない!」

 

男はそう言って手に持った刀にしては異色の刃が赤い刀を手に持ち鬼に向かった。

 

ガキンッ

 

「ぐ、やはり硬い!」

 

まるで金属を切ろうとして失敗したような音が響く。見れば普通の生き物の様なのにまるで鉄のように固いようだ。

まぁ弱点を固くするのは生物としてはありな事なのだろう。

 

「どうやって斬るの?」

「…いや、このまま抜け出せない様なら日の出まで待って焼き殺したほうが確実だろう」

「……」

 

諦めたように刀を下ろした男。地面に散らばっているだろうまだ目を覚まさない男の仲間だろう者たちが使っていただろう刀の中で一番マシな状態の黒い刃の刀を手に持つ。

 

「何を?」

 

戸惑ったような男の声を無視して、鬼と呼ばれる怪物の頸に狙いを定め

 

ザンッ

 

まるで紙を切る様に抵抗も感じることもなくその頸を切り落とした。

 

「そこまで硬くないような?」

「なんと!鬼の頸をこうも簡単に!」

 

予想よりも簡単に切れたことに驚いていると、金髪の男の方も驚きの声を上げた。

そして頸を斬られた鬼は、灰のように体が崩れ消えていく。

 

「……」

「き、君今のはどうやったのだ!鬼の頸は強くなれば強くなるほど固く鬼専用に誂えたこの日輪刀でも頸を落とすのは至難の業!だが君は当然のことのようにやってのけた!」

 

問い詰める様な言葉を並べる男を無視して刀を手放しグレイプニルを回収した逢魔のもとへヴォルフと共に移動する。

 

「ま、待ってくれ!」

「うわっ」

 

ガシッと肩を掴まれるとまだ子供の体はバランスを崩し後ろに倒れそうになってしまった。

 

バシッ

 

「お、逢魔」

 

倒れそうになった体を逢魔が支えていた。後ろに目線をむけると手から血を流した男と

 

「ガァァァァ!」

 

完全に威嚇通り越して戦闘態勢に入り唸り声を上げているヴォルフが男をギリッと睨み付けていた。

 

「……」

 

逢魔も男に向かって人間形態でなければ牙をむけていただろう殺気をむけて睨み付けている。

 

「も、申し訳ない!」

 

男は謝るが、ヴォルフと逢魔の目つきは変わらない。むしろより鋭くなっているように見える。

 

「……はぁ」

 

戦闘態勢に入っている2匹を止めるために手を上げ制し

 

「ヴォルフ」

 

ヴォルフの名前を呼ぶと攻撃態勢を解き、こちらに戻ってきた。

 

「で、なんの御用ですか?」

 

ヴォルフの背に乗り、男を見下ろす。男の手には鋭い爪痕がありそこから血が流れ出ている、ヴォルフが攻撃した痕だろう。本気で攻撃すれば腕を落とせるので最低限の理性は働いていたと思う。

 

「俺達は、あの鬼達を狩るため動いている!だが、鬼の力は強く傷が治るのも早い、そして鬼は日の光を浴びれば死んでしまうので奴らが動くのは奴らの時間である太陽が沈んだ夜だけ!

強くなればなるほど頸を斬るのも難儀してしまう!頼む、俺たちに鬼の頸を容易く切った技を教えて欲しい!」

「?あれがいて何か問題が?」

「…いや、君は知らないのだったな。まず鬼は人を食らう、人を食らわねば生きていけぬ生き物なのだ。そしてアレは元が人なのだ」

「人?」

「1人の鬼が人を鬼にしてその数を増やしている。鬼になった人間の最初の犠牲者は大体共に暮らしている家族や村のものだ。

それから鬼は人を食らい続け、力を増していく、次第に鬼の身体能力も頚の硬さも上がっていき、血鬼術という血を媒体とした特殊な能力を使う様になる」

 

男の言葉に考え込む。人を怪物にして誕生する鬼という生き物、人を食らい人外の力を発揮する。

 

「なぜあなた達はアレを殺そうと?明らかに人間が相手取るには手の余る怪物ではないでしょうか?」

「俺達の大半は、鬼に身内を殺されたものだ。言ってしまえば復讐だろうな…」

「その刀は?そんな特殊な鋼を使った刀をある程度供給するのは一個人では難しいはず」

「俺達を支援してくれる産屋敷家という家がある。彼らも鬼を倒す理由がある、産屋敷家は平安の頃から呪われており、その呪いを解くには鬼の首領を倒さねば呪いが解けぬと言われている。

呪いのせいで産屋敷家は短命で20を超えられればいい方だ」

 

復讐に呪い、いや目の前の男に復讐者特有のドロリとした負の感情は感じられない。復讐もあるだろうが、自分たちの様な犠牲者を出したくないという思いもあるかもしれない。

復讐と言えば、ゼータ君になったラムダ君を思い出す。復讐者という職業になりPKKとしてPKを狩りながら仇を探しそれを成し遂げた。

 

(だけど)

 

そっと男と未だ意識を失っている男の仲間たちを見る。ラムダ君は復讐者という職業の恩恵があった、他のPKK職だって無力な存在だったわけでもない。

ゲームの世界と違い、この世界で人間は魔法も武技も高いステータスもない。ただあるのは鬼を殺せる武器だけだ。

 

(そうか、そうかもしれない)

 

自分は産まれながら普通の人と違う呼吸をしている。それが鬼を狩るための武技であるのかもしれない。

 

「頼む、俺たちに君の技術を教えてくれ!」

「…産屋敷という者に面通りを。あなた達の後ろ盾がどのような人物か分からなければ判断できません」

「了解した!俺達と戻ってほしい!」

「分かりました」

 

そして旅の目的は一時変更して、男たちと一緒に産屋敷という者に会いに行くことになった。




ここら辺は本誌で掲載ないのでほぼほぼ妄想です。

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