サモナーさん関連短編集   作:cohaku

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召喚士とゼロ2

「………他に何か聞きたいことはある?」

「いや、大体は分かった」

 

ルイズの部屋に案内されて、この世界の常識的な事を教えてもらっていた。

この国トリステインと隣国ガリア、天空の国アルビオンは王族を頂点とした完全なる貴族社会であり平民の地位は限りなく低く、貴族の不興を買えばその場で殺されることもあるらしいという社会だ。

その3つの国にロマリア連合皇国は、始祖ブリミルを信仰するブリミル教の教皇をトップとした宗教国家を加えた4つの国のトップがブリミルの力を継いだ血脈だそうだ。

そして新興国家ゲルマニア、実力と金さえあれば平民だろうと貴族になれて歴史の浅い野蛮な国だそうだ。

他にも色々と教えてもらったが重要なのはこれ位だろう。

 

「それで貴方は“宮廷魔導師”って奴に選ばれる位なんだから魔法は使えるの?」

「ん?大体の魔法は使えるんじゃないか?」

「え?」

「俺は無節操だからほぼ全ての属性は使えるようになったし」

「え、ほぼ全ての属性?」

「ああ、火・水・土・風・光・闇の6つの基本属性と派生属性の雷・氷・塵・溶・灼・木・時空に特殊属性の封印術・英霊召喚・禁呪も使えるし“サモナー”だけが使える召喚魔法も使えるしな」

「サモナーってなに?」

「サモナーというのは、召喚モンスターを従えて戦う魔法使いの事だ」

 

試しに見せようとリストから召喚モンスターを選ぶ。

 

「サモン・モンスター!」

 

呼び出したのは、比較的小さく可愛らしい白い毛並を持った狐だ。

 

「うわぁ」

「俺の配下のモンスターの一匹ナインテイルだ。後方支援を得意としている」

 

ナインテイルは、呼びされて早速とばかりに空を飛んでキースの肩に乗る。

 

「相変わらず、ちゃっかりなやつだ」

「何これすっごく可愛い!この子ちょうだい!」

「俺と契約しているから、譲渡は無理だぞ?」

「えぇーーー!」

 

残念そうなルイズに苦笑して、肩に乗っているナインテイルを撫でた。目を細め、もっと撫でてくれとばかりにすり寄ってくるナインテイルを観察しつつ、ルイズを見る。

 

「これが俺の召喚魔法だ。他にも色々いるが室内に呼べる奴なんてあまりいないからなぁ」

「へぇ、そんなに大きいんだ」

「デカい奴だと山位デカいからな」

「……嘘」

「ま、そいつらを出すような事態にならないことを祈るさ」

 

ルイズに見せ終わったのでナインテイルを帰還させる。

 

「さてと、使い魔の役目の内1つめの視界の共有とかは出来ないみたいだが、秘薬の材料の用意とかなら調べれば取ってこれると思う、護衛もこれでも腕には自信がある心配しないでくれ」

「それは疑ってないわ、王家の護衛に選ばれる位だもの。薬草とかも国が違うなら全く違うかもしれないし必要な物があったら図書館で事前に調べましょう」

「理解が早くて助かる。それで私は何処で過ごせばいい、流石に女性の部屋で寝る事は…」

「あ、そっか…どうしよう?」

「まぁ、それは後で学院長とかに相談するとして今日は野宿でもしよう。テントとかならあるからな」

「そ、それは駄目よ!あなたは一応他国からの客人なのよ!」

「構わないさ、新大陸の開拓中はほとんどテント暮らしだ。いつものことだ」

「でも」

「私は気にしてないんだからいいんだ。いつも通りの方が気楽だしな」

 

キースは、部屋の出口へと向かう。

 

「もう夜だ。私はもう寝る事にしよう、また明日」

 

そう言ってキースは外に出て行った。

 

「月が二つか…」

 

外に出て空を飛び、屋根に上がったキースは空に浮かぶ2つの月を見てため息を吐いた。

 

「ちょっと、調べてみるか…と、その前に召喚しておくか」

 

サモン・モンスターでキレート・イグニス・スパッタ・ナインテイル・ノワールを召喚する。

 

「キレートは、ルイズの護衛を頼む」

 

そう指示を出すとキレートは影の中へ消えて行った。

 

「よし、これで大丈夫だ」

 

“フライ”と“アクロバティック・フライト”を唱え、宙に浮きあがる。

 

「それじゃあ、周り見るついでに拠点でも探すか」

 

アイテム・ボックスの中には、愚者の石版と野菜の種などもあったので拠点を作るついでにポータルガードを配備して何かあった時の拠点を作る予定だ。

 

「流石に周りへの影響を考えて、迷宮の設置とかはしないけどな」

 

そしてキースは、空を飛ぶ。モンスター達もキースを追って空を飛ぶ。

真っ直ぐ飛べば、城がある街があったが夜なのでスルーして空を飛ぶ。しばらく空を飛んでいると海にたどり着いた。

 

「海に拠点を作るか、下手に誰かにばれるよりはマシだな」

 

海にあるそこそこ大きさの無人島に拠点を作る事にした。

 

「ここだな」

 

適度に森があり平原があり、浜がある島が見つかった。

 

「…ちょっと調べるか」

 

ノワールたちを帰還させて、ヴォルフ・シリウス・フローリン・逢魔を召喚する。

 

「この島に魔物とかがいないかどうか調べてきてくれ」

 

その言葉にヴォルフ以外の召喚モンスターが各方面へ散った。

 

「じゃ、俺達も行くか」

 

ヴォルフを伴い島を見て歩く。数刻もすれば島全体を調べ終わり此処に魔物の類などはおらず動物などが少数生息していることが分かった。

 

「愚者の石版を設置して、強化は最大。使用権限は自分とそのパーティーだけっと」

 

島の中心部にある草原の真ん中あたりに石板を設置する。今現時点で出来る強化を最大にしておく。

 

「ポータルガードは水中専門と人形組と空中戦闘が可能なモンスターが数匹でいいだろう」

 

次々とモンスターを配備していく。

配備したモンスターは、テイラー・アプネア・アウターリーフ・ロジット・プリプレグ・スーラジ・久重・蝶丸・網代・クーチュリエ・スパーク・クラック・獅子吼・雷文・スコーチの15匹を配備した。

 

「じゃ、後は頼む」

 

召魔の森に置いてあったアイテム・ボックスに持ち歩いていたアイテム・ボックスから皮などいまは使えない素材などを移しておく、宝石などもいらない何個かを残してすべて移す。

 

「お金がいるかもしれないからな」

 

大体の準備を終えて、試しにテレポートの呪文を選択する。

 

「あ、魔法学院がテレポート先になっている。中継ポータル扱いなのか?」

 

そのまま魔法学院を選択して実行する。

 

「お、大丈夫みたいだな」

 

無事魔法学院に付いたキースは、ヴォルフ達を帰還させる。

 

「さて、ログアウトできるか試すか」

 

テントを設営して、中で横になる。

 

「…ログアウトが出来ないか、本当になんなんだ。寝るしかないか」

 

やる事もないのでテントで寝る事にした。

 

何故か表示される時計表示で午前5時、。

 

「あ~ぁ、一体これは何なんだ」

 

もしかしたらバグか何かで寝ている間に修正されるかと思ったが修正されいない状態に思わずため息が出る。

 

「何かバグか何かと思ったが違うんだな」

 

どうすれば、元の場所に戻れるのか分からない。

 

「当分は様子見だな」

 

起き上りテントを片付ける。

 

「さて、起きているかな。シンクロセンス」

 

キレートと視覚などの感覚を共有する。すると視界にルイズの部屋が写る。

 

(まだ寝ているようだな…どうやって暇をつぶすかな?)

 

何時ものような対戦をしたり、召喚モンスターを愛でてもいいが使用人たちを怯えさせる可能性もある。

 

 

「素振りでもするか」

 

アイテム・ボックスから木刀を取出し構える。

それから基本的な方の素振りを始めた。相手がいないからそこまで派手ではないが見る者が見ればその高い技術力がよく分かるだろう。

シンクロセンスで視覚共有をしてルイズの様子を見ながら起きるまで素振りをし続ける。

 

(お、起きたか)

 

ルイズが起きたのを確認して、素振りとシンクロセンスをやめた。

 

「じゃ、ゆっくりと行くか…着替えた方がいいか」

 

木刀を仕舞い、アイテムボックスにしまってある儀礼用の装備を取り出し装備を取り換えてからルイズの部屋へと向かう。

途中で使用人たちを見るが、彼女たちは此方をチラチラと見るだけで声をかけたりはしない。恐らく見た事もない大人の男を怪しんでいるのだろう。

 

「ルイズ、起きているか?」

「あっ、キース今着替えているから待ってて」

「分かった」

 

ドアの横でルイズが出てくるのを待っていると

 

ガチャッ

 

近くのドアが開いて、中から真っ赤な髪と褐色の肌を持ちプロポーションの良い少女が出てきた。

 

「あら、あなたルイズの使い魔?」

「一応そうだな」

「へぇ、本当に人間なのね!凄いじゃない!」

「まぁ、使い魔に人間というのは珍しいだろうな」

 

キースは、少女の言葉に頷いた。

 

「おはよう、キース」

「ああ、おはようルイズ」

「おはよう、ルイズ」

「キュ、キュルケ!?」

「なぁに驚いているのよ、部屋が近いんだからほとんど毎朝会っているじゃない。

しっかし、“サモン・サーヴァント”で平民を喚んじゃうなんて貴方らしいわね!流石は、ゼロのルイズ!」

「あんたねぇ!キースは、他の国の王家の剣術指南役よ!平民だなんて呼ぶんじゃないわよ!」

「え?」

 

ルイズの言葉にきゅるけと呼ばれた少女がキースの顔を見た。

 

「け、剣術指南役…しかも王家の?」

「師は“宮廷魔導師”に推薦していたがな」

 

サーッとキュルケの顔色が悪くなった。その姿にルイズがドヤ顔を浮かべて笑う。

 

「あんたもゲルマニアからの留学生なら一応気を付けなさい。私だっていつ外交問題に発展するか怖いのにあんたの態度で問題になっても困るのよ?」

「も、申し訳ございませんわ。ミスタ…まさか王家ゆかりの者だとは思わず」

「普段は、大陸への派遣兵だからな分からないのも無理はない。私は気にしていないよ」

「お礼を言いますわ、ミスタ」

 

キュルケが青い顔をしたまま頭を下げるのでキースは笑って不問にすると告げる。

 

「それでキースを笑ったんだからアンタの使い魔はさぞ優秀なんでしょうね?」

「も、勿論よ。フレイム!」

 

キュルケが名前を呼ぶと大きなトカゲが部屋から出てきた。

 

「これってサラマンダー?」

「そうよ、火トカゲ!見て、この尻尾。ここまで鮮やか大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?

ブランドものよ、好事家に見せたら値段なんかつかないわよ」

「へぇ、サラマンダーか」

 

勢いを取り戻したのか使い魔の自慢を始めるキュルケだが、そのサラマンダー・フレイムはキースを凝視して固まっている。

 

「あ、あらどうしたのかしら?」

「固まっているわね?」

(これはまた、リアルな)

 

キースの力を感じ取って、恐れているだろうフレイムに苦笑いを浮かべる。

 

「そろそろ食堂に行かないといけないのではないか?」

「あ、朝食に間に合わなくなっちゃうわ!」

「急ぐわよ、キース!」

 

キースに指摘されて話を切り上げて食堂に向かう二人を微笑ましく見送り

 

「ほら、固まっていないで行くぞ」

「キュ~」

 

サラマンダーを動かしてその背を追った。

 

トリステイン魔法学院の食堂は、楽員の食堂とは思えぬほど豪奢であった。学年ごとに分かれたテーブルには豪華な飾り付けが成され、幾つものローソクが部屋を照らし、瑞々しい花が飾られ、テーブルの上には果物が盛られた籠や朝食とは思えぬ豪華な食事が用意されていた。

 

「ここ、トリステイン魔法学院で教えるのは魔法だけじゃなく、『貴族は魔法をもってしてその精神となす』というモットーの元、貴族たるべき教育も受けます。

だから、食堂も貴族の食卓に相応しいものになっております」

「成程、だからこれほど素晴らしいものが多いんだね」

 

ルイズが座ろうとしていた椅子を引いて促せば、自然とそこに優美に座り、周りを見ていたキースの様子に気づいてこの食堂の説明をしてくれた。

それに頷き、

 

「ミス・ヴァリエール、隣に座っても?」

「ええ、どうぞ」

 

断って座り、周りを見れば3つのテーブルにそれぞれ違う色のマントを身に着けた生徒たちが座っている。学年ごとに見分けがつけやすくするためなのだろう。

そして視線を上に動かせば、ロフトの中階があり、そこに教師陣達が集まり談笑していた。

 

「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」

 

祈りの声が、唱和される。ルイズも目をつむってそれに加わっているのでキースもそれに倣う。

それが終われば食事だ。流石貴族、誰も彼もテーブルマナーを守って食事をしている。暫く食べずに観察し、自分が教えられたものと大差ないことを確認してキースも食べ始めた。

 

(母さんの息子だってわかった時に、ゲルタ婆様に礼法を叩き込まれたけどさっそく役に立ったな)

 

サビーネ陛下の国では、母であるジュナさんは枢機卿という高い地位を持っていた。血が繋がっていないとはいえ正体を明かして、実は並行世界でのつながりで家族でしたと分かり、新たな妹弟が生まれた時にそういう集まりにも連れ出される事を予測して(押し付けようと)ゲルタ婆様に徹底的にテーブルマナーからダンス、礼法などなど色々な物を叩き込まれた。

今では、ジュナさんや師匠たちの代わりに国に派遣されることも少なくない。(面倒からと押し付けられたともいう)

そして、大体親睦を深めるために開かれるのは食事会と舞踏会などのパーティーだ。運よくこの世界でも食事に使う食器や順番に差がないのでそこまでおかしくは見えないだろう。一応、キースの世界では国王との会食でも使えるマナーだからだ。

 

 

魔法学院の教室は、大学の講義室のような作りだった。講義を行う魔法使いの先生が一番下の段に位置し、階段のように席が続いている。

キースとルイズが入ると、先に教室に入っていた全員が一斉に振り向いた。

そしてひそひそと話し始める。「おい本当に人たぞ」とか「どっかの国の王族の関係者らしいぜ」とか色々だ。先ほどのキュルケと名乗っていた少女は大勢の男子生徒に囲まれていた。

あのプロモーションと美しさなら、多感な時期の男子なら誘蛾灯に誘われる蛾の如く群がるだろう。

皆が皆、昨日召喚した使い魔を連れている。一体一体識別を駆けるがやはりレベル表記はない。

 

(…足があるタイプのバジリスクか?)

 

自分の知っている物との違いを確かめているとルイズが席に座った。食事の時と違い、隣には座らない。

少し経つと一人の中年の女性が入ってきた。紫色のローブに身を包み帽子を被っているふくよかで優しげな雰囲気を漂わせている。

彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑む。

 

「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ」

 

その言葉に、ある一人の男子生徒が反応する。

 

「ゼロのルイズ!召喚できないからって、その辺歩いていた平民を連れてくるなよ!」

 

恐らく召喚の時にその場からいなかったか、信じていないのかそうヤジを飛ばし来た男子生徒の言葉にルイズは目を見開いて立ち上がる。

 

「あんた!その言葉の意味わかっていっているんでしょうね!」

 

生徒の約半分と教師の顔色が一気に悪くなる。キースの立場を人伝であっても聞いていたりしていた者達だろう。

 

「サモン・モンスター」

 

キースは、未だ何か言いそうな男子生徒に一瞬視線を向けため息を吐くとそっと片手を伸ばす。その片手の手の平に魔方陣が浮かび上がり、一つの存在が現れる。

 

「黒曜、あいさつを」

「ホー」

 

そこに現れたのは大きなシロフクロウだ。黄金に輝く瞳で周りを一瞥し、先が僅かに黒と灰が混ざっている羽をバサバサと動かすそのシロフクロウは、グルリと教室を一瞥すると先ほどまでヤジを飛ばしていた男子生徒をジッと見つめた。

 

「…何か?」

「イ、イエ…ナンデモアリマセン」

「そうか、今後そのような軽率な発言がないことを願うよ。黒曜、今日は流石に頭はやめてくれよ」

「ホー」

 

男子生徒やそれに乗ろうとしていた生徒たちも顔色を悪くして神妙に席に座りなおした。それを見てキースは満足そうに頷き、黒曜はキースの方に移動した。

 

「おっほん、ミスタ・マリコルヌ。彼に失礼な態度を取らない様になさいなさい。さて、授業を始めましょう。

私の二つの名は、『赤土』。赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年皆さんに講義いたします。

魔法の4大系統は御存じですね?ミスタ・マンコリヌ」

「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。『火』『水』『土』『風』の4つです!」

 

シュヴルーズは頷いた。

 

「今は失われた系統である『虚無』を合わせて5つの系統がある事は皆さんも知っての通りです。その5つの系統の中で『土』はもっとも重要なポジションを締めていると私は考えます。

それは私が『土』系統だから、というわけではありませんよ。私の単なる身びいきではありません」

 

シュヴルーズは、再び重々しく咳をした。

 

「『土』系統の魔法は、万物の組成を司る重要な魔法であるのです。この魔法が無ければ重要な金属を作り出すことも、加工することも出来ません。大きな石を切り出して建物を建造できなければ、農作物の収穫も今より手間取る事でしょう。

このように『土』系統の魔法は皆さんの生活に密接に関わっているのです」

(錬金術と土と木の合成か?そういえば錬成ってやったことないな)

 

話を聞いていて、生産技能の錬金術の錬成を試したことがないことを思い出したキースはアイテムボックスからなぜか残っていた石ころを取り出し握りしめウィンドウを操作して錬成を使ってみる。

 

(ふ~ん、結構制約があるんだな)

 

確認している間に話し終わったシュヴルーズは、机の上に置いておいた石ころの杖を振り上げる。そして小さく呪文を唱えると、石ころが光だし、光が収まるとただの石ころがピカピカ光る金属に変わっていた。

 

「ゴゴ、ゴールドですか!?ミセス・シュブルーズ!」

 

キュルケが身を乗り出して質問する。他の生徒たちも興味津々だ。

 

「違います、ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの…」

(石ころから真鍮…錬成はこっちの方が自由度があるな。しかし、スクウェア?こちらの言葉では英語で正方形の意味だな。どういう意味があるんだ?)

「『トライアングル』ですから…」

(三角形の英語、3つの点がある物と4つの点がある物。つまり何かを三つ繋げられるのがトライアングルで4つ繋げられるのがスクウェアという解釈でいいのだろうか?)

 

ルイズに聞きたいが授業中ならば私語は咎められるだろう。急ぐものでもないし、授業が終わった後聞けばいいと考えて一先ず疑問を棚に上げた。

 

「では、実際にやってもらいましょう。誰がやりたい人はいますか?」

 

それからは、一人の男子生徒が躍り出て青銅に石ころを変え、時間いっぱい生徒が前に出て呪文を試していく。

こういう時に率先として前に出そうなルイズだが、ずっと俯いたままで前に出ようともしない。

 

(?何かあるのか?)

 

「…後は、ああ。ミス・ヴァリエールがまだでしたね」

 

シュヴルーズが教室を見回して最後に残ったルイズに視線をやると生徒たちが一斉に顔色を変え、一部は椅子から床に座り込んでいた。

 

「先生、やめておいた方がいいと思いますけど…」

「どうしてですか?」

「危険です」

 

キュルケがきっぱりと言った。教室の他の生徒たちも頷いている。

 

「危険?どうしてですか?」

「ルイズを教えるのは初めてですよね?」

「ええ、でも彼女が努力家という事は聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、何もできませんよ?」

「ルイズ、やめて」

 

あんなにルイズに対して挑発していたキュルケだが今は蒼白になり懇願するようにルイズを見つめている。

しかし、ルイズは立ち上がった。

 

「やります」

 

そして緊張した顔で、つかつかと教室の前へと歩いていった。

隣に立ったシュヴルーズは、にっこりと笑いかける。

 

「ミス・ヴァリエール、錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」

 

こっくりと頷いてルイズは、杖を振り上げ

 

(!?まずい!)

 

呪文を選択し実行。ルイズが呪文を唱え杖を振り下ろすと石ころが爆発した。

 

「間に合ったか…」

 

しかし、被害は驚くほど少なかった。音は大きかったが被害は石ころが置いてあった机一つルイズとシュヴルーズは、いつの間に移動したのか二人の後ろにいたキースに抱え込まれたまま後ろに下がり石ころと机は不可視の壁に四方を囲まれ、その周りには黒い球体が浮かび上がっていた。

 

「ミセス・シュブルーズとルイズ、怪我はありませんか?」

「え、ええ。ミスタ・キースのおかげで傷1つありません」

「わ、私もよ」

「それはよかった」

 

そっと二人の腰に回した手を解き、展開していた魔法を解除する。

 

「机はもう使い物になりませんね。本来なら拡散する爆発を一点に集中したせいで威力が上がってしまったようです。申し訳ございません」

「いえ、あのまま爆発していれば怪我をしていたかもしれませんからそれは大丈夫なのですが、今のは一体何が?」

「そのルイズのせいですよ!」

「そうだよ!ヴァリエールは退学にしてくれよ!」

「いつだって成功確率ゼロ!失敗したら大爆発!」

「だからお前はゼロのルイズなんだ!!」

 

生徒たちの言葉に「成程、だからゼロのルイズか」と納得し毎回あの爆発が起きていれば嫌われるのも無理はないなとも思う。

今回はキースがうまく収めたとはいえ、これがしょっちゅうなら大迷惑な授業妨害だ。

 

「…ミス・ヴァリエール。貴方は席に戻りなさい、そして授業で杖を使う事を禁止します」

「え!?」

「今回は、ミスタ・キースの補助もあり机一つの被害で済みましたがもしもなければ授業が進まなくなります。

皆さんもごめんなさいね。あなた方は忠告してくれていたのに知らぬとはいえこんなことになるなんて。幸い、ミスタのおかげで被害は最小限に収まりました。授業を再開いたしましょう」

 

その後の授業も別の先生の授業でもルイズは実技は免除というか禁止され授業を受けるしかなかった。

ルイズはその間も散々からかわれていた。ルイズの言葉を信じるならば、貴族は魔法が使えて当たり前のようだからそれもそうかとも思う。

極論だが、魔法が使えないルイズは貴族ではないと言われてもおかしくもないのだ。流石に公爵令嬢の事を貴族ではないというバカもいないし、一応使い魔召喚と契約は成功させたので魔法が使えないこともないことを証明しているからまだそこまで言われてはいないらしい。

 

「呆れたでしょ、貴方を召喚したメイジが魔法一つ満足に使えないなんて」

 

昼休みに入り、昼食に向かおうと食堂までの道を歩いているとルイズがボソッと呟いた。

 

「ん~、でも使い魔召喚と契約はできただろ?つまり、一応ゼロではなくなったってわけだ」

「それは!……そうだけど」

「後な、あの爆発の時なんで私が即座に動けたか分かるか?」

「それが何?」

「一応ここは私の知らないところだから魔力の流れとかを感知する呪文を使っていたんだが、ルイズが魔法を使おうとしたとき物凄い魔力が杖に集まっているのを見て暴発か何かするんじゃないかと思って動いたから対応できたんだ。

他の奴らが1だとしたらルイズは100ぐらいの量を注ぎ込んでたからな」

 

他の生徒たちと比べてもその量は段違いだった。目が眩むかというほどの光が杖に収束し暴発すると分かるほど制御されてなかったのだ。

 

「多分推測だが、ルイズは自分に合ったものが見つけられていないっていう印象を受けたな」

「自分に合った?」

「ああ、ルイズはさっきのたとえ話だと常時100かそれ以上の魔力が必要な魔法が適正でその適正以外の適性がないんだと思う。

そうだな、例えばの話として4大系統がコップだとしたらルイズに合うのは壺か鍋サイズの大きさの器がある系統じゃないか?」

「4大以外ってもう伝説の虚無しかないじゃない」

「あ、そういえばそうだな。こういうものは巡るものだしいつか虚無の魔法に出会うかもな」

「ふふふ、何それ。でもそうね、そうなったらいいわね」

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