2人に連れてこられた場所は、例えるならば校長室だろうか?秘書である美人の女性とひげを蓄えた老人。
「さて君がミス・ルイズが召喚した使い魔かね?」
「さぁ?」
キースは、老人の言葉に肩をすくめる。
「ちょ、オスマン校長になんて口を「使い魔やらと言われても何も説明されていないもので、何の事だか」聞いて」
ルイズがキースを戒めようとするが、それにかぶせてキースが言葉を紡ぐ。
「そちらには“サモン・サーヴァント”の呪文が無いのかね?」
「我らの国には、使い魔…いいえ召魔を従える“サモナー”という職業があるので魔法使いが使い魔を持つことはあまりありませんね」
「なんと、それならば“サモン・サーヴァント”の説明からせねばらるまいな」
それから説明されたことは、“アナザー・リンク・オンライン”の設定から大きく外れた話だった。
“サモン・サーヴァント”…それは魔法使い、いやメイジと分類されている貴族が生涯の友にして従者である存在を召喚する儀式であるらしい。
メイジは、コモン・火・水・風・土・虚無の内コモンは基本的に誰でも使える魔法であり火・水・風・土の内どの属性が最も適性のあるのか“サモン・サーヴァント”とで知る事が出来るらしい。それを指標に事業の内容を決める為、2年生への進級試験は“サモン・サーヴァント”の魔法を使った使い魔召喚を題材にしているそうだ。
その中で最も異質なのか虚無であり、始祖であり全てのメイジの始まりと呼ばれるメイジ以外には発現していない伝説の系統。どんな呪文があるのかさえ分からないと言う謎の系統。
その基礎のコモンを除いた5つの属性のみで、複数の属性を組み合わせたり掛け合わせることで氷や雷などの属性を扱う。
随分と自分達が動いていたゲームの設定から外れた話だ。
(ますます怪しくなってきたな)
「して、君は王家の剣術指南役だと聞いたが?」
「はい、我が師には“宮廷魔導師”に推薦していただいていたのですが当時姫君であるサビーネ王女に剣の指南をした折に肩書を貰い受けました」
「ほう、“宮廷魔導師”とな?」
「我が国では、貴族が必ず魔法を使えるとは限らないのです。大陸が違えば魔法の成り立ちも変わります、私はいざとなれば前衛にて戦える接近戦闘能力と後方にて支援できる魔法戦闘能力が高いと評価されていまして王族の護衛として任を受けた時にその実力を買われたのです」
「それが“剣術指南役”という立場かの?」
「はい、サビーネ王女は王女でありながら騎士でもあるお方で魔法よりも剣の方が得意で未熟な所をつい指摘して稽古をつけてしまいまして」
「成程のう」
オスマンと呼ばれている老人は、キースの言葉にその立派な髭を撫でた。
「王族の方々には、どれ位の頻度で会うのかね?」
「あ~、今は死んでしまった王族の方々に変わり国を治めるのに忙しく稽古をつけている時間が無いのであまり会いませんね。つい数年前まで内乱がありまして」
「なんと、それは大変じゃったのう」
「まぁ、師匠方々や私の知り合いの者達も味方しましたのでそれほど大きな被害はなかったのですが、反撃するまでの間の民の犠牲が多く…」
「それは…」
実際、国の奪還間に魔人に魅入られた人々は救えないと師匠は言っていた。一部をスケルトンにされたり、魅了で意識を無くして肉壁にしていたりと民への被害は大きかった。
それを治めたりしていて、サビーネ王女たちは大忙しらしい。それこそ年単位で。
「その間は、基本的に王家が進出したがっている大陸に常駐し未知の魔物の排除や拠点の作成を知人たちと共に行っております」
「大陸…」
「随分前に文明が滅びたそうで残っている人口なんて雀の涙ほどしかない大陸ですが資源も豊富で見逃す手はないと内乱の前から手を出していましたから、もうすでに王家の手助けが無くてもある程度は動ける体制があったんです」
「成程」
「ですから、数年ならば行方をくらませても「ああ、強敵を求めてどこかに行ったな」位しか思われないんでしょうが…」
「何ぞ、問題があるのかね?」
「まだ嘗ての内乱の敵の首領を全て捕縛していないんです、いざとなれば戦場へ参上しその首領を殺すまたは捕獲するのが私の役目なんですよね」
「つまり、戦が始まる前に戻らないと問題があると」
「私以外には師匠たちが戦えるでしょうが、師匠たちは王族の護衛として後方にいてもらっていますので必然的に私にお鉢が回ってくるわけです」
キースの言葉にオスマンが顎に手を当てて考え込んだ。
(信じるならば、この人物は仕える国の最高戦力に当たる存在ということかの?先ほどの言葉、接近戦闘能力と魔法戦闘能力ということは武器も使えて魔法も使えるという事そんな人材そうそういないはずじゃ)
そう考えているオスマンだが、キースのいたゲームの世界ではそういうプレイをしていた人物は少数ながら存在はしている。キースの様にありえない位凄いリアルスキルを持って最強の一角だと数えられている存在が稀なだけである。
「君の国は何処にあるかわかるかね?」
「さぁ?使い魔として無理やり召喚されたみたいで詳しい現在地なんて分かるわけありませんし、もしかしたらすごく遠くかもしれませんね」
「むぅ」
「帰る手段も今のところ分かりませんし、どうすればいいですかね?」
「そうじゃのう…」(しかし本当にどうするか、いくら遠くの国であってもその国の最高戦力を事故とはいえ勝手に誘拐したようなものじゃし)
使い魔との契約は、一生もの。勝手に他国に属する者に契約を強制などしたら外交問題になりかねない。
「せっかくミス・ヴァリエールが成功した魔法なのじゃがなぁ、使い魔の契約は一生もの。使い魔が死ぬまで契約は切れん代物じゃ。もう一度召喚させたとしてキース殿の前に召喚の門がまた開かれてしまう可能性がある…どうしたものか」
「………」(さて、どうするべきか)
そんな2人の会話を聞いていて涙目を浮かべていた少女がいた。言わずもがなキースを召喚したルイズである。
(なんで、なんで…召喚した使い魔がただの平民だと思っていたのに)
ルイズは貴族としてのプライドが高い、そして自分が招いた外交問題になるかもしれないという事態に泣きそうになっていた。
凄い使い魔を召喚して今まで馬鹿にしていた奴らを見返す。「メイジの実力を見るなら使い魔を見よ」魔法が全く使えないルイズの評価を改めさせるには万人が凄いと認める使い魔を召喚することが一番簡単で確実にできる事なのだ。
だがいくら使い魔を召喚出来たとはいえ“コンタクト・サーヴァント”が出来なければ完了した事にならず進級も出来ない。それがさらにルイズの心に闇を落としていた。
(王家の剣術指南役?宮廷魔導師?何よそれ)
使い魔とは、メイジの生涯の友であり仲間であり下僕だ。その下僕が貴族の自分よりもかの国でははるか上の地位にいるという事も宮廷魔導師という職に選ばれるほどに魔法が使えると言うのも何もかもが下僕よりも自分が劣っていることを感じさせていた。
(何で、何でなのよぉ)
何時も魔法が失敗して、馬鹿にされてきた。魔法成功確率ゼロ、だから『ゼロのルイズ』と呼ばれていた。
使い魔として召喚した男は、魔法が使えるのに自分は全く使えない。唯一成功したのが男を召喚した“サモン・サーヴァント”のみだ。
やっと魔法が成功して、周りの奴らを見返せると思ったら召喚したのは他国の王族の関係者。外交問題に発展するかもしれない人物だ。
それらの事実がルイズを追い詰めていく。
「…済みませんが、試したいことがるので契約?という奴をしてもらってもよろしいですか?」
「試したいこと?」
「ええ、これが成功すればまぁ当面の問題は解決できるでしょう」
「うむ、内容は教えてもらっても?」
「あなた方の魔法にはないようですが、我々の国の魔法には魔法の効果を打ち消す魔法があります。その魔法が効果があれば国への帰還までならば彼女の使い魔として働いても私は構いません」
「!?……そんな魔法が」
「まぁ、成功するかどうかは半々でしょうけど」
「う~む、ならば儂の使い魔で試しましょう。もし解除されてももう一度契約を結び直せばいいだけじゃし。
モートソグニル!」
オスマンの呼びかけに答え、モートソグニルと名付けられているネズミがオスマンの机の上に上がった。
「こやつが儂の使い魔の、モートソグニルじゃ」
「では、試してみても?」
「構わん、実験は大切じゃからの」
「お言葉に甘えて」
キースは、無音詠唱と詠唱破棄のスキルを控えに回して「ディスペル・マジック」の呪文詠唱を行う。
「ディスペル・マジック!」
キースの魔法が発動するとモートソグニルが白い光に包まれ
キィン
何かが割れた澄んだ音が響いた。
「…………」
「が、学院長?」
オスマンは、目を見開きキースに逃げないように捕獲されているモートソグニルを凝視していた。その姿に秘書である女が声をかけた事でオスマンの目に驚愕の色が現れる。
「つ、使い魔の契約が切れておる」
「「なんですって!?」」
その事実にコルベールと秘書の女が声を上げた。本来なら解除できない契約を解除したのだその驚愕は当たり前だろう。
「す、すごい!そんなすごい魔法がこの世にはあるのか!」
「しかし、これで当面の問題は解決じゃな。キース殿の祖国が見つかるまではミス・ヴァリエールの使い魔を引き受けてもらえますかな?」
「構いませんよ、どうせする事もないでしょうから」
キースは、なにか違和感を感じていた先ほどからフレンド登録しているプレイヤーと連絡を取ろうとしたが取れないし、「テレポート」の呪文を使おうと思っても今まで行っていたはずのエリアポータルの一覧が出ない。
まずは、現状を確認するためにこの魔法学院という情報が沢山ありそうな場所に一時的に厄介になりたいと思っていたのだ。
いつでも解除できるなら使い魔になる事も苦ではない為了承する事にした。
「では、ミス・ヴァリエール」
「…は、はい!?」
「キース殿と“コンタクト・サーヴァント”を行いなさい。ただし、キース殿はくれぐれも不当な扱いをせず動物などと同じように躾けようとしないように」
「あ、当たり前です!」
「ならば、よし。では、“コンタクト・サーヴァント”を」
ルイズとキースが向かい合う。
「それで“コンタクト・サーヴァント”ってのはどうやるんだ?」
「こうやるのよ。
我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
杖を持ち呪文を唱えると
グイッ、チュ
「!?」
ルイズに無理やり頭を下げられキスされてしまったキースは、目を見開いた。
「こ、これが“コンタクト・サーヴァント”よ!」
「え、ななな!?」(垢BANになるはずなのにその警告類がない!?)
キースは、突然の事態に大慌てになるが
「グッ!」
突然灼熱の鏝を当てられたような痛みが左手を中心に体を襲った。こんな事で悲鳴を上げるような無様を起すような事もなく歯を食いしばり痛みに耐えるキース。
「これは、なんだ?」
「使い魔の証たる、ルーンを刻んでおるのじゃ。痛みはすぐに消えるじゃろう」
オスマンの言うとおり痛みはすぐに消え、左手に見た事もない模様が刻まれていた。
「ほほう、これはまた珍しい形のルーンですね。スケッチさせてもらっても?」
「構わない」
コルベールにルーンが刻まれた左手を差し出す。サラサラとコルベールは手早くルーンをスケッチしていく。
「では、キース殿。儂は、お主の祖国について調べるので帰還方法がわかるまではミス・ヴァリエールの事をよろしく頼みます」
「了解しました」
「ミス・ヴァリエールは、今日の授業を休みキース殿にトリステインなどこの国での一般的な常識を教えて差し上げなさい。幸い君は座学では優秀な生徒じゃからな」
「わ、分かりました。オスマン学院長!」
そしてキースとルイズは、学院長室を退室した。
「………他に何か聞きたいことはある?」
「いや、大体は分かった」
ルイズの部屋に案内されて、この世界の常識的な事を教えてもらっていた。
この国トリステインと隣国ガリア、天空の国アルビオンは王族を頂点とした完全なる貴族社会であり平民の地位は限りなく低く、貴族の不興を買えばその場で殺されることもあるらしいという社会だ。
その3つの国にロマリア連合皇国は、始祖ブリミルを信仰するブリミル教の教皇をトップとした宗教国家を加えた4つの国のトップがブリミルの力を継いだ血脈だそうだ。
そして新興国家ゲルマニア、実力と金さえあれば平民だろうと貴族になれて歴史の浅い野蛮な国だそうだ。
他にも色々と教えてもらったが重要なのはこれ位だろう。
「それであんた“宮廷魔導師”って奴に選ばれる位なんだから魔法は使えるの?」
「ん?大体の魔法は使えるんじゃないか?」
「え?」
「俺は無節操だからほぼ全ての属性は使えるようになったし」
「え、ほぼ全ての属性?」
「ああ、火・水・土・風・光・闇の6つの基本属性と派生属性の雷・氷・塵・溶・灼・木・時空に特殊属性の封印術・英霊召喚・禁呪も使えるし“サモナー”だけが使える召喚魔法も使えるしな」
「サモナーってなに?」
「サモナーというのは、召喚モンスターを従えて戦う魔法使いの事だ」
試しに見せようとリストから召喚モンスターを選ぶ。
「サモン・モンスター!」
呼び出したのは、比較的小さく可愛らしい白い毛並を持った狐だ。
「うわぁ」
「俺の配下のモンスターの一匹ナインテイルだ。後方支援を得意としている」
ナインテイルは、呼びされて早速とばかりに空を飛んでキースの肩に乗る。
「相変わらず、ちゃっかりなやつだ」
「何これすっごく可愛い!この子ちょうだい!」
「俺と契約しているから、譲渡は無理だぞ?」
「えぇーーー!」
残念そうなルイズに苦笑して、肩に乗っているナインテイルを撫でた。目を細め、もっと撫でてくれとばかりにすり寄ってくるナインテイルを観察しつつ、ルイズを見る。
「これが俺の召喚魔法だ。他にも色々いるが室内に呼べる奴なんてあまりいないからなぁ」
「へぇ、そんなに大きいんだ」
「デカい奴だと山位デカいからな」
「……嘘」
「ま、そいつらを出すような事態にならないことを祈るさ」
ルイズに見せ終わったのでナインテイルを帰還させる。
「さてと、使い魔の役目の内1つめの視界の共有とかは出来ないみたいだが、秘薬の材料の用意とかなら調べれば取ってこれると思う、護衛もこれでも腕には自信がある心配しないでくれ」
「それは疑ってないわ、王家の護衛に選ばれる位だもの。薬草とかも国が違うなら全く違うかもしれないし必要な物があったら図書館で事前に調べましょう」
「理解が早くて助かる。それで私は何処で過ごせばいい、流石に女性の部屋で寝る事は…」
「あ、そっか…どうしよう?」
「まぁ、それは後で学院長とかに相談するとして今日は野宿でもしよう。テントとかならあるからな」
「そ、それは駄目よ!あなたは一応他国からの客人なのよ!」
「構わないさ、新大陸の開拓中はほとんどテント暮らしだ。いつものことだ」
「でも」
「私は気にしてないんだからいいんだ。いつも通りの方が気楽だしな」
キースは、部屋の出口へと向かう。
「もう夜だ。私はもう寝る事にしよう、また明日」
そう言ってキースは外に出て行った。
「月が二つか…」
外に出て空を飛び、屋根に上がったキースは空に浮かぶ2つの月を見てため息を吐いた。
「ちょっと、調べてみるか…と、その前に召喚しておくか」
サモン・モンスターでキレート・イグニス・スパッタ・ナインテイル・ノワールを召喚する。
「キレートは、ルイズの護衛を頼む」
そう指示を出すとキレートは影の中へ消えて行った。
「よし、これで大丈夫だ」
“フライ”と“アクロバティック・フライト”を唱え、宙に浮きあがる。
「それじゃあ、周り見るついでに拠点でも探すか」
アイテム・ボックスの中には、愚者の石版と野菜の種などもあったので拠点を作るついでにポータルガードを配備して何かあった時の拠点を作る予定だ。
「流石に周りへの影響を考えて、迷宮の設置とかはしないけどな」
そしてキースは、空を飛ぶ。モンスター達もキースを追って空を飛ぶ。
真っ直ぐ飛べば、城がある街があったが夜なのでスルーして空を飛ぶ。しばらく空を飛んでいると海にたどり着いた。
「海に拠点を作るか、下手に誰かにばれるよりはマシだな」
海にあるそこそこ大きさの無人島に拠点を作る事にした。
「ここだな」
適度に森があり平原があり、浜がある島が見つかった。
「…ちょっと調べるか」
ノワールたちを帰還させて、ヴォルフ・シリウス・フローリン・逢魔を召喚する。
「この島に魔物とかがいないかどうか調べてきてくれ」
その言葉にヴォルフ以外の召喚モンスターが各方面へ散った。
「じゃ、俺達も行くか」
ヴォルフを伴い島を見て歩く。数刻もすれば島全体を調べ終わり此処に魔物の類などはおらず動物などが少数生息していることが分かった。
「愚者の石版を設置して、強化は最大。使用権限は自分とそのパーティーだけっと」
島の中心部にある草原の真ん中あたりに石板を設置する。今現時点で出来る強化を最大にしておく。
「ポータルガードは水中専門と人形組と空中戦闘が可能なモンスターが数匹でいいだろう」
次々とモンスターを配備していく。
配備したモンスターは、テイラー・アプネア・アウターリーフ・ロジット・プリプレグ・スラージ・久重・蝶丸・網代・クーチュリエ・スパーク・クラック・獅子吼・雷文・スコーチの15匹を配備した。
「じゃ、後は頼む」
召魔の森に置いてあったアイテム・ボックスに持ち歩いていたアイテム・ボックスから皮などいまは使えない素材などを移しておく、宝石などもいらない何個かを残してすべて移す。
「お金がいるかもしれないからな」
大体の準備を終えて、試しにテレポートの呪文を選択する。
「あ、魔法学院がテレポート先になっている。中継ポータル扱いなのか?」
そのまま魔法学院を選択して実行する。
「お、大丈夫みたいだな」
無事魔法学院に付いたキースは、ヴォルフ達を帰還させる。
「さて、ログアウトできるか試すか」
テントを設営して、中で横になる。
「あ、ログアウトできる。本当になんなんだ」
やる事もないのでいつもより早く今日はログアウトした。
午前5時、今日はいつもより遅くログインする。
「あ~ぁ、何で戻れないんだ」
ログインすれば、ログアウトする前の光景がしっかりとあった。
「何かバグか何かと思ったが違うんだな」
どうすれば、元の場所に戻れるのか分からない。
「当分は様子見だな」
起き上りテントを片付ける。
「さて、起きているかな。シンクロセンス」
キレートと視覚などの感覚を共有する。すると視界にルイズの部屋が写る。
(まだ寝ているようだな…どうやって暇をつぶすかな?)
何時ものような対戦をしたり、召喚モンスターを愛でてもいいが使用人たちを怯えさせる可能性もある。
「素振りでもするか」
アイテム・ボックスから木刀を取出し構える。
それから基本的な方の素振りを始めた。相手がいないからそこまで派手ではないが見る者が見ればその高い技術力がよく分かるだろう。
シンクロセンスで視覚共有をしてルイズの様子を見ながら起きるまで素振りをし続ける。
(お、起きたか)
ルイズが起きたのを確認して、素振りとシンクロセンスをやめた。
「じゃ、ゆっくりと行くか」
木刀を仕舞い、ルイズの部屋へと向かう。
途中で使用人たちを見るが、彼女たちは此方をチラチラと見るだけで声をかけたりはしない。恐らく見た事もない大人の男を怪しんでいるのだろう。
「ルイズ、起きているか?」
「あっ、キース今着替えているから待ってて」
「分かった」
ドアの横でルイズが出てくるのを待っていると
ガチャッ
近くのドアが開いて、中から真っ赤な髪と褐色の肌を持ちプロポーションの良い少女が出てきた。
「あら、あなたルイズの使い魔?」
「一応そうだな」
「へぇ、本当に人間なのね!凄いじゃない!」
「まぁ、使い魔に人間というのは珍しいだろうな」
キースは、少女の言葉に頷いた。
「おはよう、キース」
「ああ、おはようルイズ」
「おはよう、ルイズ」
「キュ、キュルケ!?」
「なぁに驚いているのよ、部屋が近いんだからほとんど毎朝会っているじゃない。
しっかし、“サモン・サーヴァント”で平民を喚んじゃうなんて貴方らしいわね!流石は、ゼロのルイズ!」
「あんたねぇ!キースは、他の国の王家の剣術指南役よ!平民だなんて呼ぶんじゃないわよ!」
「え?」
ルイズの言葉にきゅるけと呼ばれた少女がキースの顔を見た。
「け、剣術指南役…しかも王家の?」
「師は“宮廷魔導師”に推薦していたがな」
サーッとキュルケの顔色が悪くなった。その姿にルイズがドヤ顔を浮かべて笑う。
「あんたもゲルマニアからの留学生なら一応気を付けなさい。私だっていつ外交問題に発展するか怖いのにあんたの態度で問題になっても困るのよ?」
「も、申し訳ございませんわ。ミスタ…まさか王家ゆかりの者だとは思わず」
「普段は、大陸への派遣兵だからな分からないのも無理はない。私は気にしていないよ」
「お礼を言いますわ、ミスタ」
キュルケが青い顔をしたまま頭を下げるのでキースは笑って不問にすると告げる。
「それでキースを笑ったんだからアンタの使い魔はさぞ優秀なんでしょうね?」
「も、勿論よ。フレイム!」
キュルケが名前を呼ぶと大きなトカゲが部屋から出てきた。
「これってサラマンダー?」
「そうよ、火トカゲ!見て、この尻尾。ここまで鮮やか大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?
ブランドものよ、好事家に見せたら値段なんかつかないわよ」
「へぇ、サラマンダーか」
勢いを取り戻したのか使い魔の自慢を始めるキュルケだが、そのサラマンダー・フレイムはキースを凝視して固まっている。
「あ、あらどうしたのかしら?」
「固まっているわね?」
(これはまた、リアルな)
キースの力を感じ取って、恐れているだろうフレイムに苦笑いを浮かべる。
「そろそろ食堂に行かないといけないのではないか?」
「あ、授業に間に合わなくなっちゃうわ!」
「急ぐわよ、キース!」
キースに指摘されて話を切り上げて食堂に向かう二人。