機械の体が壊れた。運営の建設されていた基地に潜入し破壊活動をしていたところで記憶が途切れている。
そして今、何故か死んだはずの自分の意識がある。
「…?」
目を覚ませばそこは小さな和室。
「…………」
ぼーっと呆けていれば継国縁壱という少年の記憶が頭に流れ込んできた。それはスルリスルリと頭の中に溶け込み何の抵抗もなく受け入れられた。
「生まれ変わった?」
突然のことに思考が働かない。
今の名は継国縁壱、継国家の双子の弟で醜い痣を持つ忌み子。母の庇護が無ければ殺されていた子供。
前の名前は○○○○、ゲームでの名はキース。機械の体を敵の残骸でアップグレードしながら運営を追いかけて基地に強襲した途中で記憶が途切れている。
「死んで生まれ変わった」
少しずつ事態を飲み込んでいく。記憶を思い出して何か変わったことがあるのかと確認するために思い出した記憶を再度時系列に思い出そうとして
「サモン・モンスター」
つい、ゲームの中で最も唱えただろう呪文を声に出して唱えてしまった。
「!?」
それと同時に召喚リストが脳内に表示される。
「まさか」
次に思い浮かべるのは時空魔法リスト、それも脳内に表示される。そこから一つの呪文を選ぶ。
(テレポート)
選択画面は出なかった。しかし心に強く思い描いていた風景があった。
ASOで最も強化が進み最も発展していると言われた自分の拠点。
「あ…」
気が付けば懐かしい場所に立っていた。もう城と言ってもいいような白亜の城館を見上げる。
「ガウ」
「ヴォルフ…」
いつのまにいたのかすぐそばに見慣れたけれど久しぶりの最初の相棒の姿があった。そしてさらに視線を動かすといつの間に現れたのか、召喚した覚えもないのにそこには自分の召喚モンス達が全員揃って小さな子供になっている自分を見下ろしていた。
『ふむ、やっと目覚めた様じゃなキースよ』
「煙晶竜」
『ふふふ、我だけではないぞ』
いつの間にやらビーコンとしての偽装を解いた転生煙晶竜が上から自分を見下ろしていた。煙晶竜に視線を合わせるように空を見上げると
ザンッ
『おお、ついに目覚めたか久しぶりだなキースよ』
「水晶竜」
快晴の空から水晶の輝きを放つ竜が降り立つ。
『他の者達もいたのだが、全員で押し掛けるのは流石に遠慮した方がいいのではないかという事になってなとりあえず此度の挨拶は我で行う事にしたのだ。
何より、キースの配下たちが自分たちを差し置いて最初に我らが会うのは嫌だと言ってな。流石に直属の配下にそういわれては配慮しなければな』
「ガウッ!ガウガウ!!」
『む、確かに目覚めたばかりで我ら全員と合わせるのは確かに酷ではあるな。特に今のキースは幼子であるからな。
さて、キースよ。其方の目覚めを我らは祝おう。我が盟友、我が小さき友よ、また今世もよろしく頼むぞ』
「…うん、よろしく」
水晶竜は、俺の返事を聞くとニヤリッと笑みを浮かべたような雰囲気に変わると空へと飛び立っていった。
ヒョイ
「うあ」
『さて、さっそく話をと言いたいところだが、その前に食事をしようかの。あの家のものどもキースにまともな物を食べさせておらんかったからな。
赤ん坊のころなど、腹をすかせたキースに乳母もつけずにほぼ放置。母親の方も其方が生まれてまもなく病に侵され其方の面倒が満足に見れぬと来た。余りにもあんまりな状況なのでアマルテイア達の乳を飲ませ黄金の林檎や桃を食べさせたお陰でなんともなかったようだが。
なにこれからは、キチンと食事を用意する故心配するな。ナイアス達も其方に食べさせる料理を常に試作していたほどだ』
ナイアスに抱き上げられ、いつの間にかビーコンの姿になった転生煙晶竜が他の配下のモンス達を率いて移動する。
「な、ないあす?」
声を掛ければナイアスは魅力的な笑みをこちらに向けてくれる。ぎゅっと抱きしめられればナイアスの魅力的な胸を存分に堪能出来てかつてなら大興奮だが、悲しきかな今の体は5歳児の子供であるそこまでの性欲の芽は少しも目覚めていなかった。
連れられてこられたのはいつの間に作られたのか、そこは様々な花が美しく咲き乱れる庭園で、その中央にテーブルと椅子がありそこに下された。
『さて食事をしながらでもよいから聞くのじゃぞキース』
いつの間に離れていいたのか久重が普段碌な物を食べさせてもらえない俺に配慮したのか出汁香る卵と鶏肉の雑炊が出させる。
今は戦国時代でかつ家に疎まれている俺には絶対に出されないと言える豪勢な料理でもある。
『まずはこの世界はキースを起点とした異界となっておる。キースの拠点である此処と海の島、そしてキースと関係の深い者たちの拠点も合わさった異界であるな』
「…ドラゴン達とアポロン?」
『ふむ、それらが主だな。まぁそれはおいおい知っていけばよかろう』
雑炊を食べていた手を止める。キョトりっと煙晶竜を見た。
「他に変化は?」
『我らは特にないな、お主が生まれてから5年。周りの魔物どもを相手に戦ったが特に変化はなかった。ただ、キースに召喚されなくとも力技でこの異界の中なら実体を出来るようになったのと、影の転移でお主の傍に行ける事。ただこれは力技のようでな最大2体までしかあちら側には行けなかった。
お主が目覚めたらもしかしたら増えているかもしれんな』
「だから皆出ているのか」
食べ終わった雑炊の器はスーラジが片付けていく。足元にヴォルフやシリウス、頭にナインテイルが陣取った。
膝の上に頭を載せてきたシリウスの頭を優しく撫でると満足そうに目を細める。
「ガウ」
「うん、ごめん」
不満そうに声を上げたヴォルフの頭をなでてやるとこっちも気持ちよさそうに目を細める。
『キースの方はこれから確認するしかあるまい。夜などの周りに人がいない時間をこちらで能力の検証などに使うとよいのではないか?』
「そう、うん…待宵、キレート」
灰色のマネキン姿に似た待宵という名を持つ召魔と半透明の姿が分からないキレートいう名を持つ召魔が前に進み出る。
「待宵は俺に化けてあの部屋に、キレートは待宵と共にあの部屋に待機して母上か兄上が来たら教えて」
「……」
「……」
その指示に答える声はない、だが待宵の姿が自分になり影に沈み半透明のキレートも沈んでいくのを見届ける。
「じゃ、とりあえず食後の運動をしよう!」
この家で疎まれている縁壱を構うものは少ない。産まれた縁壱を殺すと決めた父に烈火の如く怒りその方針を返させた母と何もかもを自分と差をつけて育てられる縁壱を哀れに思い合いに来るようになった兄・厳勝だけで使用人も臣下達も不吉な双子で不気味な痣を持つ縁壱を遠目に色々と噂している。
「そろそろ」
記憶を思い出す前、縁壱は言葉をしゃべらず耳が聞こえていないのかと思われていた。そのまま思われていた方がめんどくさい継国家の当主になるという事がないと思い記憶を思い出したからも続けている。
そしてこの家にいられる期限も近い。母上の死期が近いからだ。あと少し、あと少しでここを穏便に出る事が出来るそう思っていた。
「兄上!」
それは誰の差し金だったのか、何故かその日は兄上に連れられて遠乗りに出かけた。今世では初めて出た城の外、その嘗ての世界では見る事の出来ないだろう自然あふれる光景に感動していた。
だが、それも長くは続かなかった。
ヒッヒーーーーン
「なっ!」
何処からともなく二人で乗っていた馬に弓矢が撃ち込まれる。突然の攻撃に馬が暴れ出し、二人そろって馬の背から振り落とされる。
狙ったかのように道の片方は断崖絶壁で下の川は激流で巻き込まれれば人間は生き残ることは難しい。
「っ!」
とっさに同じように投げ出されている兄上の手を握り
「縁壱!?」
「兄上、受け身を!」
この体になっていつの間にか行うようになっていた特殊な呼吸法は、人間以上の力をこの小さな子供に与える。
それを利用して兄上を元の道に向かって放り投げる。
「!?」
投げられ地面に投げ捨てられ目を白黒させている兄上を見て、次に暴れている馬に
(九曜封印)
無詠唱で相手の動きそのものを阻害する呪文を行使する。馬はそれに抗えず、暴れていた馬は身動き一つできなくなる。
「縁壱!縁壱ーーーーーー!!」
兄上が崖の上から顔を出し手を伸ばしている。それを掴める位置にはいない。そのまま自分は激流に飲み込まれた。
(アンダー・ウォーター)
水中呼吸の呪文を唱え、激流の中を進む。
(うん、これはこれでアリだな。これなら死んだと思われるだろう)
目の前で弟が死んだ兄上は気の毒だが、どうせもう少しすれば寺に行くと見せかけて行方不明になる予定だったのだ、それが少し早くなっただけだと思おう。
(さようなら、兄上)
・「兄上の夢は、この国で一番の侍になることですか?」と厳勝とのファースト会話をする前に記憶を思い出した縁壱inキース。
・なので父親の輩下を叩きのめしてもいない
・兄に嫉妬もされてないけど母親が死んだ後の日記を見られたら少しは嫉妬されるかも
今のところの原作との変更点