タツミは思い出していた……まだ、帝都の来る前の時の事を貧しくとも人が人であれた日々の事を、生きて会う事の出来なかった二人の墓の前で……。
【私達三人死ぬ時は同じと誓わん!】
【おう!帝都で出世して金稼ぎだ!】
【俺達でこの貧乏故郷を救うんだ‼】
「……とか言ってたのによ、俺………一人になっちまったじゃねぇか………。」
希望に湧き恐れすら知らなかった時の楽天的過ぎた自分が、今は忌々しく思える程タツミの心に影を落としていた。
「何を世迷言を言っている、まだ俺が居るだろ……。」
暗く陰鬱な表情のタツミの横にイッセイが傍に立つ、その手には花束が四つ持っていた。
「あれからもう三日だ、いい加減意識を切り替えろ。」
手に持つ花を二人の墓と一緒にある二つ並んだ誰かの墓の前の置くと、タツミの方は見ずにそう諭す。
「そんなに簡単に出来るかよ……ずっと一緒だったんだ。」
イッセイの言葉にタツミは晴れない表情を浮かべたまま反論した、兄と離れていた年月を共に過ごした二人の喪失は思ったよりも応えている。
「いつまでウジウジと……サヨとイエヤスが今のお前を見たら落胆するだろうな。」
「何だと!」
これまでの経緯を知っていれば凡そ出てこないであろうセリフをイッセイは躊躇する事無く吐いた、そして単純で直情的な性格をしているタツミは弾かれたようにイッセイに反目する。
「なんだ?本当の事だろ、サヨもイエヤスもお前に後を託して逝った、そのお前がここで塞ぎ込んでいるんだ落胆だってしたくなる。」
「んぐぅ……だったら!如何すれいいんだよこれから⁉軍には入れず、死んだと思った兄貴は殺し屋になてって……俺は……俺は、如何したらいいんだよ……。」
イッセイの無神経ともいえる言い分に反論するが、怒りで荒げていた声も次第に小さくなり最後の方は消え入りそうなほどか細くなる。
「自分で考えろタツミもう子供じゃないだろ。」
「うぅぅぅ。」
飽く迄厳格な姿勢を貫くイッセイの態度に、遂にタツミは感情の制御が出来なくなり泣き始めた。
「……あぁハイハイ!もう終わり!」
二人の事を心配して近くに隠れて見ていたレオーネは、その非情としか言えないイッセイとタツミの空気に耐えられずに割って入った。
「レオーネ?見ていたのか……。」
「見ていたのか?じゃないですよ副長!傷心中の弟の追い込んでどうするんですか?激励したいならもっと言葉を選んでください!ほら大丈夫だよ弟くん、苦しいときは我慢しないで良いんだから。」
「お姐さん……。」
二人の間に入ったレオーネはイッセイを叱責すると、塞ぎ込むタツミを優しく宥める。
「ほら立って、ここに居たんじゃ気が落ち着かないでしょ?よかったらアジトの中を案内しようか?」
「……うん。」
レオーネが相手だと素直に従うタツミは、彼女に連れら断崖の下に建つ建物へと誘導されていく。
「……やれやれ、余りタツミを甘やかさないでくれよ。」
その後ろ姿を見ていたイッセイは呆れた様子で見送ると、三つの墓の前に向き直した。
「久しぶりだなサヨ、イエヤス……迎えに行けず、済まなかった。」
二人の墓で頭を下げ謝罪の言葉を掛ける、そして三つ目の墓の前で片膝をついた。
「ユウナそれにアサカ、二人の事を頼んだ……君達なら、戦意を失った弟にどう向き合ってくれたんだろうな?」
墓の主ユウナとアサカと呼ばれた人は故人である故に返答できない事は、イッセイも理解しているがそれでも聞かずにはいられなかった。
「………………変な事を聞いたな、もう戻るよ……。」
束の間の沈黙の時が流れる、まるで懺悔でもしているかのように強く閉じた瞼の内に何を思うのか、窺い知るとこは出来ない。
やがて、目を開けたイッセイ穏やかな表情でユウナの墓を見つめて立ち上がり体をアジトへ向けた、その目は強い覚悟が宿り静かな執念の火が揺らめてい見えた。
「……え?まだ仲間になる決心ついてなかったんですか?」
アジトの中の会議室で一人で本を読んでいた眼鏡の女性が、レオーネに連れられたタツミを不思議そうに見つめながら話してくる。
「そうなんだよシェーレ、弟くんも頑固でね……何か暖かい言葉を掛けてあげてくれない?」
レオーネはタツミの頭に手を乗せて、シェーレと呼んだ女性にも彼の説得の協力を仰ぐ。
「ん~そもそもアジトの位置を知った以上、仲間にならないなら殺されちゃいますよ?」
「暖かすぎて涙が出るぜ……。」
シェーレは天然なのか確信犯なのか、傷心中の身の上のタツミに身も蓋もない事を告げてくれる。
シェーレの余りにドライな対応に一周回って、感傷に沈んでいた気持ちも持ち直したようではあるが。
「よく考えた方がいいですよ。」
そう言って会話を切り上げるとまた読書に戻る、余りに熱心に読んでいるものだからタツミは読んでいる本の表紙を覗き見た。
『……やっぱり変人の集まりなのか?』
[天然ボケを直す100の方法]とか書かれた表紙を見たタツミは、一瞬ここが本当に殺し屋たちのあじとなのかとうたがってしまう。
「あーっ‼」
会議室での何とも言えない一幕の余韻を切り裂く元気のいい甲高い声が響いたので、そちらに視線を送るとそこにはアリアの邸宅での襲撃の時にも居たピンクの髪の利発そうな少女が目を吊り上げこちらを指差し。
「ちょっとレオーネ!なんでソイツ、アジトに入れてんの⁉」
自棄に当たりきつい気がするのは気のせいでは無いだろう、まるで縄張り入った余所者を威嚇する猫である。
「だって副長が手元に置くって言ってたし、もう仲間みたいなものでしょ?」
「イッセイさんが勝手に言ってるだけでしょ⁉まだ仲間じゃないわよ!それにボスの許可も下りてないんだから!」
そんな少女の反応などどこ吹く風とレオーネはさも当然の様にタツミを受け入れいる、その状況が面白くないのか全身の毛を逆立てるが如く怒り焚ける。
『?』
その様子を見ていたタツミは急に此方の方を向き、穴が開くほど凝視する少女の顔を不思議そうに見つめ返した。
「不合格ね、とてもプロフェッショナルなわたし達と仕事出来る雰囲気じゃないわ……顔立ちは置いといて!」
「なっ‼?」
凝視するだけしての不躾な物言いに、思わず絶句したタツミ。
「なんだと手前ぇ!」
「はいはい気にしない、マインは誰にでもこうなんだよ。」
兄の時とは違い同じ年の頃の人間と接するような幼い怒り方をするタツミを、今日何度目か分からないレオーネが宥める。
「フン!」
そしてマインと呼ばれた少女は、癇癪を起こしてるタツミに反目するように不機嫌そうに顔をそらした。
「どぉぉぉりゃあああああ!」
次に連れてこられたの訓練場だった、そこではリーゼントヘアーの大男が上半身を裸のまま槍の鍛錬に勤しんでいた。
「でやでやでやでやっ!」
「ここは訓練という名のストレス発散所だよ。」
大声で訓練を続ける大男を脇に置いて、レオーネが訓練場をについて説明してくる、傍から見てもカオスな状況なのにタツミは気にした様子がない。
「んで……あそこにいる、見るからに汗臭そうなのがブラート。」
「ぬおおおおおおお!」
漸く大男ブラートに触れたレオーネの示された指の先では、ブラートが咽かえるほど暑苦しい闘気を滾らせ槍を奔らせていた。
『……凄ぇ!なんて槍さばきだ!』
ある程度は実力があるタツミでも圧倒される槍捌き、それは記憶に有る兄イッセイと並ぶとも劣らぬ見事な動きだった。
「ふぅーっ」
やがて鍛錬が一段落したのか、ブラートは柄を端を地に落とし大きく息を吐いた。
「おっ、レオーネじゃん!とそこの少年は……この間のイッセイの弟か!」
レオーネたちに気が付いたブラートは、訓練で火照って汗を掻きそれが日に当たってキラキラと反射する体をこちらに向けた。
「なんで俺のことを?」
「ん?この姿は初めてだっけ?初対面の時に鎧に包まれてた奴だよ。」
初対面の筈なのになぜか自分を知っていたブラートに不思議そうにしていると、ブラートは初対面の時の自分の立ち姿を教えた。
「あ、ああ!」
そう言われると直ぐに該当の人物が、目の前のブラートであると理解できた。
「ブラートだ、ヨロシクな!」
「ド……ドモ。」
快活な熱血漢と言った印象を受けるブラートに握手を求められ、遠慮がちに応じるタツミの手を強く握り返した。
「気をつけてね、ブラートは男色の気があるから。」
その横で悪戯っ子の顔をしたレオーネがとんでもないことを耳打ちしてきた、最初は驚いたが質の悪い冗談だと思いブラートを方を見た。
「オイオイ、誤解されちゃうだろ?なぁ。」
『否定してくれよ‼』
何故だか頬を染めいい笑顔でこちらに熱視線を送るブラートに、我が身の貞操の危機を感じ取ったタツミだった。
その後、何故かアジトを離れ草むらを分け入った先で緑の髪とゴーグルが印象的な若い男が、泉が良く見える見晴らしのいい場所に陣取っていた、その男は呼吸が荒く凄く興奮しているようだった。
「そろそろレオーネ姐さんも水浴びの時間だ、俺はあの胸を見る為なら危険を省みない!」
その性格は相当な好色家のようでここに居たのも、レオーネの水浴びを覗くことが目的だったようだ。
「じゃあ指二本貰うね。」
「ばぁああああああ‼」
しかも本人は本気で命懸けらしく天晴なスケベ根性である、最もその目的の人物が自分の背後に居るとは考えつかなかったようだが。
「懲りないな~ラバは。」
「クソッ、まだいける!」
指を折られ相当な激痛に感じてる筈だが、まだ余裕があるようで抵抗して見せるのは殺し屋故の我慢強さから来るものだろうか。
「じゃあ次は腕一本ね……と言う訳で、このバカはラバックね!」
制裁が足りなかったと思ったのか今度は腰を踏みつけ腕を捻じる、それでもラバックと呼ばれた男は音を上げないのだから大したスケベ男だ。
ラバックを締め上げながら紹介を続けるレオーネに、タツミはこれまで抱いていたイメージが崩れる音が聞こえて気がした。
「次は……河原かな?」
次なる人物が居ると思われる場所へ向かう為、川辺を歩くタツミはここまで個性的過ぎる人物達の圧倒されくたびれてしまっていた。
「なんかもう、お腹いっぱいなんだが……。」
「アハハ……次は美少女だし、あたし達の中では真面な方だから安心して。」
げんなりしてるタツミを気遣いながら、レオーネは目的の人物の元へ案内していた。
「ホラ、あそこにいるのがアカメだよ、可愛いでしょ?」
目的の人物を見つけタツミに指で指示した、そこには件のアカメもいたが火で炙られた絶賛食われて最中の危険種の方が目を引いた。
『どこがー!!!』
その危険種を前にして黙々と貪り食う見覚えのある黒髪、アリアの屋敷でタツミと対峙した相手である少女だった。
「!アイツが食ってんのエビルバード⁉一人で殺ったのか⁉」
それよりもアカメが食べていた危険種に目が行くタツミ、その危険種は一体で村を食い滅ぼすとも言われる大食いで故郷に居た頃、タツミはサヨとイエヤスの三人で漸く討伐できた程危険な相手だった、最もイッセイは一人で複数匹を狩って準備運動位だったらしいのだが……。
「アカメはねぇ、アレで野生児だからね。」
見た目に似合わない逞しさを見せつけるアカメを、朗らかな視線で見つめしみじみと語るレオーネ。
「レオーネも喰え。」
「あっ!ありがと。」
黙々と獲物を食べていたアカメがレオーネにも投げ渡してくれる、もう一つ焼かれたばかりの湯気が上る肉を手にしジッとタツミを見つめる。
「お前……仲間になったのか?」
「いや……。」
終始無言だったアカメが漸く発した質問に、タツミは否定の意を返す。
「じゃあまだ、この肉をやる訳にはいかない。」
『いらねぇ‼』
如何やら仲間になっていたら分けて貰えたらしい、だがタツミの方もそれを欲してないようだ。
「ハハハ……残念だったね弟くん。」
レオーネは苦笑いを浮かべながら、受け取った肉を咀嚼し始める。
『コイツ……俺を二度も殺そうとした……苦手だぜ……。』
口数も少なく表情の変化も僅かで感情が見えないアカメは、直情的で単純な性格のタツミには理解しがたい人種の人間だった。
「それにしても、今日は奮発したね?」
「ボスが帰ってきてる。」
「よっ。」
レオーネはいつもより獲物が豪華である事に疑問を感じアカメに理由を聞いてみると、彼女たちのボスが帰還していると答える、それに片腕が義手の女性が手を挙げて応えた。
「ボス‼」
その女性を視認したレオーネの反応を見ると、如何やらこの人物がナイトレイドのボスで間違いないらしい。
「お帰りなさいボス、何かお土産あります?」
「それよりレオーネ、お前三日前の仕事で……作戦時間オーバーしたそうだな?」
『……まず!』
上機嫌で話題を振るレオーネの表情の明るさに対して、彼女たちのボスの醸し出す雰囲気は穏やかではない事を、レオーネは敏感に察知しその場で背を向け逃げ出した。
「ひいいいいいいいっ。」
だが逃げるレオーネの背に向けて射出された義手に腕を掴まれ逃走は失敗に終わる、ギリギリと伸ばしたリールを巻き戻す音が無暗に恐怖心を煽られる。
「強敵との戦いを楽しみすぎるのは良くない……そのクセをなんとか直すんだ。」
「分かりましたからそのギリギリ音を止めてください。」
「………何してるんですかナジェンダさん?」
薄い笑みを浮かべた顔で淡々と説教を静かなだけども人を恐れさせるだけの威圧感のある声で語る姿に、目の端に涙を溜めて懇願するレオーネ、その様子を此方に歩み寄りながら無言で見ていたイッセイがボスの事をナジェンダ呼び質問した。
「ん?あぁイッセイか、帰還の報告がまだだったな今戻った。」
「っ!助けて副長!」
レオーネを義手で拘束したまま此方に向かってくるイッセイの姿に帰った事を伝えるナジェンダ、そしてこの状況を何とかしてほしいレオーネは救済を求めた。
「全く…毎度になりますが、戻っているなら直ぐ此方に顔を出してくださいよ……あと、レオーネを早く解放してやってください。」
「すまんすまん……レオーネ、今言ったことを今後に活かして反省しろよ。」
「はい……副長⁉」
「……睨むな、分かっているさ。」
漸く解放されてほっと安堵の表情になるがそもそもタイムロスの原因がイッセイであると思い出したレオーネは、イッセイの顔を恨めしそうに睨む。
イッセイもレオーネの視線の意図には気付いているのか、視線をそらさずに受け止めて返した。
「ところでそこの少年は?」
二人でだけの視線のやり取りをしていた傍で、ボスの興味はその場に居たタツミに移っていた。
「あっ、そうだボス!この子は副長の弟君なんだけど、うちで雇いましょう!」
「オイ!だから勝手に!」
「イッセイの弟?見込みはあるのか?」
「ありますよ。」
話題が切り替わったのを感じたレオーネはここぞとばかりにタツミを売り込む、しかし当の本人であるタツミは自分を置いて話が進むことに反抗しているが、そんなタツミの抵抗も虚しく話はどんどん先へ先へと進んでいく。
「まぁ、物は試しにやってみなよ。」
「バイトかよ!」
「時給も高い。」
「バイトかよっ!」
「仕事以外は自由にできる時間も多いぞ。」
「だからバイトかよぉぉぉぉ!」
状況的にほぼ強制で仲間に加えられそうな空気になってきた事で、頭がこんがらがっているのか突っ込みの切れもいい。
「……アカメ……会議室に皆を集めろ、この少年いやイッセイの弟の件も含め前作戦の結果を詳しく聞きたい。」
荒ぶるタツミの姿をじっと観察していたナジェンダが、椅子の背もたれに架けていた上着を肩に着てアジトの方向へ進みだした。
アジトの会議室の中では召集されたナイトレイドの面々とタツミが先程までナジェンダに、三日前の作戦のあらましと細かい状況の説明をしていた。
「成る程、事情はすべて理解した。」
全ての報告を聞き終えて理解したナジェンダは一旦話を区切ると、部屋の中心に立つタツミに視線を向ける。
「タツミ……ナイトレイドに加わる気はないか?」
内情を知ったうえでナジェンダからも勧誘されたタツミ、だがタツミの表情は硬く困惑しているように見える。
「断ったらあの世行きだって言われたんだけど?」
「いやそれはない……だが返す訳にもいかないからな、我々の工房で作業員として働いてもらう事になる。」
少し前にシェーレの言われたセリフを思い出しながらここで断った時の生き残れる可能性を探るタツミ、しかしその心配はなく軟禁状態になるとはいえ延命はさせて貰えるらしくひとまず安堵の意気を漏らす。
「とにかく断っても死にはせん、それを踏まえた上で……どうだ?」
命の心配がなくなり幾分か警戒が解かれたと察しもう一度加入を勧める。
暫く無言で俯いていたタツミは顔をイッセイに向けると、ゆっくりとだが決意を示すような声音で語りだした。
「……俺は……帝都に出て兄貴の下で出世して、貧困に苦しむ村を俺も一緒に救うつもりだったんだ……。」
兄が帝都で軍人として活躍していると信じていた、確か便りはよこされなかったが仕送りは上がる事もなかった下がる事もなく毎月決まった額が送られてた、だから便りが無いのは書く暇もないほど忙しいのだと思っていた。
「ところが帝都は腐りきっていて、兄貴は殺し屋になってるじゃねぇか!」
世も可笑しいがそれ以上に兄も変わっていた、今まで村の中で鍛錬と狩りをして貧しくも穏やかな生活を送っていたタツミには到底予測など付かない事態である。
「中央が腐ってるから地方が貧乏で辛いんだよ、その腐ってる根源をとっぱらいたくんねえか?男として!それに、イッセイには帝国を裏切った理由が……。」
「ブラート……!」
柱に背を預けて立つブラートがタツミに語る彼の言い分も最もだった、そしてイッセイが軍を離れここに居る訳を話そうとするが途中でイッセイ本人に遮られる。
「………。」
「……へいへい、それ以上は語るなだろ。」
イッセイが目を細めてブラートを睨むと、ブラートは両手を上げてそれ以上は語ろうとしなかった、親しい間柄のようでタツミが知らない過去のイッセイを知っているらしい。
「……イッセイはすでに知っていると思うがブラートも元は有能な軍人でイッセイとは同期だった、だが帝都の腐敗を知り我々の仲間になったんだ。」
タツミに詮索させないために話題を切り替えるナジェンダ、同じ戦場を駆けた同志だからこそある程度の事は把握していると言っているらしい。
「俺達の仕事は帝都の悪人を始末することだからな、腐った連中の元で働くよりずっといい。」
「……俺は、違う目的もあるがかつて犯した過ちを濯ぐ為にも参加してる。」
二人もこれ以上詳しくは語りたくはないらしく、ナジェンダの話を継ぎ足して有耶無耶にする。
「……でも、悪い奴らボチボチ殺していったところで、世の中大きく変わらないだろ?それじゃあ辺境にある俺達の村みたいな所は、結局救われねぇよ。」
流石に続きを聞ける雰囲気でもないと感じ取ったタツミは、イッセイ達の過去を気しつつ話の内容を合わせる事にした。
「成る程、ならば余計にナイトレイドにピッタリだ。」
「なんでそうなるんだ?」
タツミの抱いた懸念は誰しもが当然思い至る事だと思っていた、だからこそナイトレイドと云う組織には向いていると断言したナジェンダに疑問を感じその訳を問う。
「帝都のはるか南に反帝国勢力である革命軍のアジトがある。」
「……革命軍?」
聞き慣れぬその言葉に思わず範唱するタツミ、彼が故郷にいる間は声も形もその噂すら流れてはこなかったその革命軍とは如何なる存在なのかそしてナイトレイドとの関係性はなのか興味が湧いてくる。
「初めは小さかった革命軍も今は大規模な組織に成長してきた、すると必然的に情報の収集や暗殺など日の当たらない仕事をこなす部隊が作られた……それが我々ナイトレイドだ。」
ナジェンダの話を要約すると革命軍とはこの国を現状を憂いた有志達が集い決起したレジスタンスであると言う事であり、ナイトレイドはその革命軍の隠密活動を専門としているチームであるらしい。
「今は帝都のダニを退治しているが、軍が決起した際の混乱に乗じて不敗の根源である大臣を……この手で討つ!」
「……大臣を打つ……⁉」
タツミは目の前に広がる景色が開けて明瞭になっていく感覚を覚えていた、彼にとっての世間は精々故郷の村とその周囲の過酷な自然だけだった、だが目の前で聞いていた話はそれより広く大きいスケールだったからだ。
「それが我々の目的だ他にも個々で其々に目的もあるが今は置いておく、決起の時期については詳しい事は言えんが……勝つための作は用意してある、その時が来れば確実にこの国は変わる。」
ボスは勝機を確信している自身に満ち溢れた声と目力でタツミを見据えた。
「………その新しい国は……ちゃんと民にも優しいだろうな?」
話を聞き終えてから暫く沈黙を続けたタツミは、躊躇いながら短い質問をする。
「無論だ。」
その為の革命軍であると言いうが如く、タツミの質問にハッキリと肯定した。
「成る程、スゲェ……じゃあ今の殺しも悪い奴らを狙ってゴミ掃除してるだけで……いわゆる正義の殺し屋ってヤツじゃねぇか!」
タツミは興奮していた何故なら、聞いていたそれは正に空想の物語の中に登場するダークヒーローのそれを連想させたからである。
「…………プッ」
「「「あははははは!」」」
一人暑苦しいほどの情熱に燃えるタツミに周りに居たメンバーは沈黙していた、だが不意に誰かが噴き出すと堪えが効かずに笑い出した、イッセイを除いて。
「ふぅ……よく聞けタツミ、理由がどうあれ人殺しは罪だ……例え今の時代が搾取と困窮が当たり前で虐殺と略奪そして非道な行いが皇帝の錦の旗のもとに堂々と執り行わていても、人の命を奪う事はどんな立場にあっても許されない罪なんだ、人を殺める事を大義の為と是とするならば……あの屋敷でサヨとイエヤスを殺したあの一家と同じだ。」
「「「っ!」」」
「……え?」
笑いもせず苦々しい険しい表情で佇むイッセイは、重苦しい程の気配を発して周囲を黙らせ静かにタツミに語り掛けた。
さっきまでとは違う部屋の空気に戸惑いながら、自分を真っ直ぐ見つめて視線を動かさないイッセイの顔には深い影が差していた。
「……戦う理由は人それぞれだが皆覚悟はできてる……それでも意見は変わらないか?」
イッセイに続きナジェンダもシリアスな表情で確認してくる、二人の雰囲気からここに居るメンバーがどれほどの覚悟の上でナイトレイドに身を寄せているか肌で感じたタツミ。
「……報酬は貰えるんだろうな?」
「あぁ、しっかり働けば故郷の一つは救えるだろう。」
僅かな間、思案を巡らせていたが意を決した様子で最期の確認の為なのか念押しして聞くと、ナジェンダは先程と変わらず断言した。
「だったらやる!俺をナイトレイドに入れてくれ‼そういう大きな目的の為ならサヨもイエヤスもきっとそうしてる!」
「村には大手をふって帰れなくなるかもよ?」
微塵の迷いも感じさせない表情と声でタツミは自身の決断を高らかに宣言した、そんな彼にマインはそう語りかける気遣いから来る言葉なのかそれとも半端者を受け入れたくないだけか、審議は分からないがそれでも連れを失ったタツミに多少思うところがあったのだろう。
「決まりだな……修羅の道へようこそタツミ。」
タツミがナイトレイドへの加入の意思を聞き届けたナジェンダが義手の腕をタツミに向けて歓迎の意思を見せたまさにその時、ラバックの腕に填まっているグローブから糸が巻き戻された様な音が鳴りだした。
「⁉ナジェンダさん!」
「侵入者……8人か男が7で女が1……気配を消すのが上手いようだアジト近辺まで接近されてる。」
「……。」
ラバックがその反応を見て慌てた様子でナジェンダに呼び掛けたが、それよりも早くイッセイが詳細な情報を言ってしまう、その様子を見てた他のメンバーがラバックに同情の念の籠った視線を送った。
「手強いなここを嗅ぎつけてくるとは……恐らく異民族の傭兵だろう。」
ラバックが一人役目を奪われたことに落ち込んでいるが事態は急を要する、その事を考えるよりも早く理解したメンバーの顔つきが変わった。
「仕方ない……緊急出動だ、全員生きて帰すな。」
ナジェンダの瞳から熱が消え視線を合わせただけで心臓の鼓動を止めれる程に、冷酷な表情でメンバーを見据えて指示を出した。
『雰囲気が……急に変わりやがった。』
タツミはその変貌ぶりに戦慄した、玄人の殺し屋の纏う空気を肌で感じ背に冷や汗が伝い体が強張る。
「行け!」
「え…あ……アレ?」
ナジェンダの檄が飛ぶと皆其々弾かれた様に駆け出しタツミとイッセイそしてナジェンダだけがその場に残された。
「何をボヤボヤしている。」
「いてっ!」
場の空気の変化に対応できずに置いてきぼりをくらい途方に暮れていると、ナジェンダが義手の方の腕で頭を叩かれる。
「初陣だ、始末してこい!」
怖い笑みを浮かべたナジェンダに急かされタツミは慌てて先に行ったメンバーの後を追った。
「ブラートさん!」
アジトを出てからメンバーの誰かの気配を頼りにして追いかけたタツミ、そうしてブラートの背を見つけて足を止めずに声を掛けた。
「ん?おおタツミか!一緒に行くか?」
「ハイ!」
傍まで追いついたタツミにブラートが快活な口調で同行するかを聞いてくると、彼はその問いに元気よく肯定した。
「あと俺のことは兄貴かハンサムって呼びな!」
「えぇっと……ハイ!ブラート兄!」
ブラートに呼称のリクエストをされたが正直、ハンサムは普段だと呼びにくいし兄貴ではイッセイと被るためタツミになりに考えて答えた。
「ん?………まぁ、それ良いか!」
望んだ返答ではなかったが存外悪くない回答だったのか、少し思案していた割には表情は明るい。
「よぉしっいい気分だ‼お礼にいいモノ見せてやる、ちょっと離れてな!」
「?」
タツミの事が相当気に入ったブラートは、彼に自分の取って置きを見せてやろと足を止めた。
「インクルシオォォォォ‼」
地面に手を付き気合の込められた声で何か叫ぶと、彼の背後から人の姿をした大きな鎧が姿を見せた。
「⁉」
現れた鎧はブラートの体を包み彼と一体となっり、あの日の屋敷でも見たあの姿へと変化していた。
「おおおおお!カッケエ!」
「だろ?コレは帝具インクルシオ。」
その一部始終を見ていたタツミは興奮して感激していた、その様子を満足そうに眺めながら鎧について簡単な説明してくれたが……。
「てーぐ?よく分かんないけど燃えるな!」
「分ってくれるかコイツの良さ!」
帝具を知らないタツミにはフィーリングでその秘めたる力を感じ取る、そして人間としての波長が合うのかブラートとは反りが良い。
「さて……そこでそんな君に初仕事を言い渡す!……重要だぞ?」
「お、おお!」
鎧姿のブラートが腰に手を当てタツミを指さしながらそう告げると、気分が上がったタツミはそのテンションのまま返事を返した。
その頃、アジト近くを流れる川の畔でアカメと三人の賊と相対していた。
「コイツがここにいるってことは、やはりアジトの近くのようだな……地道に探したかいがあったぜ。」
賊の一人が手配書にもあったアカメの姿を見ると、自身の読みが確かであったと確信してニヤリと口角を釣り上げた。
「それにしても可愛い女だな。」
別の一人がアカメの整った容姿を淫欲に染まった目で観察してながらそう口にする。
「殺った後も楽しめそうだ、あまり体は傷つけるなよ……。」
その言葉に便乗した一人が声を発した時、さっきまで目の前に居た筈にアカメがいつの間にか背後に移動していた。
「あ。」
「え?」
「お前達、敵地で余裕持ちすぎだ……。」
所作は一瞬故に何が起きたのそして何をされたのか、それに気づいた時にはすで喉を切られていた。
「そんな……。」
「速すぎ…る……。」
「クソッ!せめて相打ち…に……⁉」
僅かな間をおいて三人の内の二人が倒れ伏せた、その様相を見ていた残りの一人は二人と同じように喉を切られていたが抵抗の意思は残っていた、だがその一人にも異変が起きた。
「傷口から呪……?毒……?」
アカメの刀で切られた傷口からいつの間にか流し込まれた呪毒が、彼の体を蝕んで心臓を止めるにはそこまで時間が掛からなかった。
「一撃必殺。」
獲物を鞘に戻したアカメは一人となった岸辺でそう呟いた……。
また別の場所でも静かにだが確実に戦いが始まっていた、それは森の中を賊の一人がひた走っていた時にもである。
『相手に侵入を気取られた!だがここにアジトがあるのは確定……!この情報だけでも莫大な価値がある……‼逃げのびて帝国に報告だ‼』
この国での移民系の人間の立場は劣悪と言っていい、差別は当たり前ながら時には奴隷の様に扱われ酷い場所では娯楽の為に殺されることも間々にではあったが存在した、彼もそう言った境遇から患者に身を窶したのかもしれない、だが理由はどうあれ彼らがナイトレイドに関わったのは悪手だった。
「かなり遠くまで逃げてるわ、アレを撃ちぬく為にはこうして姿をさらすしかないわ。」
狙撃手のマインが逃げる賊に標準を合わせる為、見晴らしのいい立地にその姿を見せた時だった。
「貰った!」
待ち伏せていた賊が躍り出て背後からマインを狙う、だが彼の背後にはシェーレがいた。
「すいません。」
人の胴体ですら両断できるほど巨大で鋭利な鋏が賊の体を上半身と下半身に分断する、そしてそれやった本人は感情の見えない目で譫言のように謝罪の意を口にする。
誰に向けられた謝罪だったのか、いや誰にも向けられてはいないのだろうもしかしたら、彼女が人を殺めた時に無意識に行ってしまう癖なのかもしれない。
「ありがとシェーレ。」
虚ろな目をしたシェーレに救援の礼を言ったマインは、背後に向けていた視線を前方に戻し標的を見定めた。
「ナイスピンチ、このリスクで充分届く……!」
不敵な笑みを浮かべたマインの持つ銃の先端にエネルギーが収束を始めると、その銃口から放たれたとは思えない圧倒的な太さの閃光が放射された。
「⁉なっ……。」
回避など不可能何処に逃げようとも直撃は免れない光波に狙われた賊は、辺り一面に生い茂る木々と共に灰も残さず消え去った。
「よし!命中!ピンチになる程アタシは強い!」
狙撃と言うよりは砲撃に近いかもしれない、それでもマインは得意気に笑うのだった。
「おっ!」
そして、その攻撃によって爆撃音が辺りに響き、賊の一人を始末し終えて一息ついていたレオーネの耳にも届いた。
「今のはマインのパンプキンか、よくあんな面倒くさい帝具使うな~その点こっちは、獣になって殴殺……分かり易い。」
整った顔に薄い笑いを浮かべ、殺った相手の血で汚れた手に力を籠めた。
襲撃者に回った者たちにとって追手を振り切る事は何より優先させなければならない、だが追手が後から来るもと高を括るってはいけない。
「う……ぐ……。」
ここは鍾乳石が氷柱となって天井から垂れ下がる洞窟の中、そこに糸に絡め捕られ自由を封じられた賊と思わしき少女がいた。
「糸の手応え、軽いと思ったら女の子かよ……まさか俺の所に来るなんてな。」
グローブからのびる糸を手繰って拘束を強めながら、ラバックが自身の運の無さを嘆く。
「お願い!助けて!なんでもするから!」
少女は必死な表情で命乞いをする、ラバックの言動から篭絡できる相手だと思ったのかもしれない。
「だーめ、色香に惑わされて死んだ奴を知ってるんでね。」
だがラバックもそう甘い男ではない、ナイトレイドと言う組織に居る以上彼も一流の殺し屋なのだ、少女は絡んだ糸が絞め上がりその体を傷つけながら首の気道を圧迫され止めを刺された。
「あぁ勿体ねぇ!こういう時、切ない稼業だよなぁぁ!」
死んだ事を確認すして拘束していた糸を戻すと、宙づりになっていた少女の亡骸が地面に落ちる、力なく横たわる遺体の顔を見遣ったラバックは、その心情をボヤキながらその場を去った。
ここまでで7人が討たれ残るは一人となった、それ知らないタツミはブラートに与えられた役割を果たすため身を隠していた。
【いいか……敵が逃げてくるとしたらここを通る可能性大だ、足止めでもいいから応戦しろ。】
そう言われ指定の場所で身を潜めるタツミ、平たく言ってしまえば見張り役である。
「いかにも新人の役回りだな、本当に敵なんて来るの……⁉」
ブラートの指示でこの場所を張ってはいるものの、その判断をいまいち信用できず疑問を口にしていた時、突然目の前に逃げていた最後の一人が現れた。
「ここにも人を配置していたのか!」
「通す訳にはいかねーな。」
ブラートの読みが当たり内心驚いたタツミだったが、それは向こうも同じ寧ろ逃げ切れると安心していた分その反動は大きい、相手の動揺した素振りを見て一転冷静になったタツミは剣を抜いて立ち塞がる。
『なんの恨みもない奴を斬るのか……だがここで迷えば……死ぬ。』
「少年といえど……手加減はせんぞ‼」
タツミの心に過ぎった一瞬の迷いは……獲物を抜き放った相手を見据えた時に露と消えた。
「あのイッセイさんの弟、タツミだっけ?死んだかしらね。」
アジトヘの帰路の途中マインはふとタツミの話題をシェーレに振った、タツミに足して否定的な態度を見せていたマインはここでも辛辣な意見を述べる。
「問題ないと思いますよ。」
「めずらしいわねシェーレが評価するなんて、アイツがイッセイさんの弟だから?」
だがそんなマインとは違いシェーレは肯定的な返答を示した、その反応に少し驚いた普段何を考えてるか分からないシェーレだが、その性格は素直で思ったことを直ぐに口にしてしまう勿論それが悪い方向に働く事の方が多いが、逆にこういう場合は脚色の無い純粋な評価であると判断できた。
「それもありますけど、アカメと戦って生きのびてますからね。」
「まぁそれは確かにね。」
彼女たちにとってもアカメとイッセイは別格の存在だった、だからこそ一方の身内でありもう一方と相対しても存命していた事実はタツミに否定的なマイン認めざる負えない。
「それに……剣を交えたアカメが言うには、伸びしろの塊鍛えていけば兄を凌ぐ将軍級の器と……。」
その頃最後の一人と剣を交えていたタツミの戦いが賊に一太刀あびせる事で決着ついた、それはまるでシェーレの言葉と同調するようだった。
「……どうだ……これが……サヨと……イエヤスと……三人で……鍛え上げた剣技だ‼!」
感情の昂ぶりが発する声にも現れ倒した相手に、見栄を切り大声で言い放つ。
「頼むっ!見逃してくれ!俺が死んだら里が……!」
『コイツも故郷の為に?でも……。』
タツミの実力を見誤り焦る賊は最後に苦し紛れで命乞いをする、故郷を救うために帝都まで出て来た彼はその境遇を知って僅かに躊躇う。
「ハハハ甘いな少年!一族の為に死んで貰うぞ‼」
タツミが迷いの感情を見せた時、その隙を好機と捉えた賊が地面の落ちた刃を手に取り振りかざしたその時、頭上から現れたアカメに背中から刺され倒れ伏せた。
「迷うな……とどめは迅速に刺すことだ。」
『コイツ……顔色一つ変えずに……。』
一体どれほどの修羅場を超えればこの表情が出来るのだろうか、今さっき一人殺すもの躊躇ったタツミは自身のあまさを悔やみアカメの冷徹さに戦慄した。
「トゥッ!敵がこっちに逃げてきただろう⁉後は俺に任せなっ!」
「もうおわった。」
「へ?」
タツミとアカメの間に流れる緊張感が、ブラートの登場によって霧散しアカメもいつもの調子に戻る。
侵入してきた族がすべて打ち取られると、各々に標的を追跡していたメンバーたちがアジトに戻って来る。
「初陣ご苦労だったなタツミ。」
初仕事を終えて戻ってきたタツミを、ナジェンダが労いの言葉を送った。
「あ、ああ……。」
だが非常に成り切れなかったタツミは、覇気のない生返事を返してしまう。
「だが、アカメの報告を聞き不安なところもある、イッセイもその事を心配していたしな……お前が生き抜く為には、誰かに色々と教えて貰う必要があるとイッセイと話しあった、結論から言わせてもらうアカメと組んで勉強しろ。」
「いいっ‼」
ここには居ないがイッセイもタツミの事は気にかけている、それは有り難い事だが感情の読めないアカメに苦手意識があるタツミは顔を引き攣らせた。
「いいなアカメ。」
「うん。」
『アッサリ⁉』
そんな表情のタツミの事を余所に、ナジェンダとアカメで話はまとまっていく。
「足手まといになる様なら斬っていいぞ。」
「うん分かった。」
『分かったのかよ!』
さらに追加事項として生死与奪の権限まで与えられ、タツミは戦々恐々である。
「可愛い子に教えて貰えるなんてついてるな、殺されない様に頑張れ!」
励ましにもならない脅迫を伴った激励に、タツミの顔色は悪くなる。
『この娘と……これから一緒に組むのか⁉」
ともあれ覚悟を決めなければならない状況に、相変わらず何を考えてるのか読めないアカメの顔を見つめこれからの事を案じるタツミだった。