珍しく堅苦しい前置きをしました、Earnestです。
今回は現役Vtuberである暇神ユキさん、骸見ヤグさん、の御二人を題材としたお話です。
10流作家もどきが書く世界を、どうぞご堪能ください。
歌が聞こえる。
遠い遠い、とても遠くから響く歌が。
とても綺麗な歌だ。
綺麗で神々しくて、どこか切ない。そんな歌。
その歌に呼ばれる様に、僕はここがどこかも分からないまま歩いている。
周りは白い。
一面、白い世界だ。
ただただ白く、広い場所だ。
太陽も月も、地面も空もない。
そんな空間を歩き続けている。
どれくらい歩いたのだろう。
たったの数分か、それとも数日か。
この場所では時の流れを知ることもできない。
歩いて歩いて、歩き続けて。
ふと気づいた時には、歌が良く聴こえる場所にたどり着いていた。
ここは草原、いやわずかに白く残る雪を見るに元は雪原だろうか。
冬が去り、花々が芽吹き始める春の草原といった様子だ。
空から暖かな光がさし、風が舞う草原。その中央に、一本の巨木が立っている。
歌は、そこから聞こえる。
巨木の下へ、歩みを進める。
歌はより鮮明になり、少しずつ冷たくなり肌を刺す風に乗り、その調べを運んでくる。
「『ああ友よ。なぜ君は逝ってしまうのか。
その魂を死神に抱かれ
なぜ君は私と友になったのか。その理由を君に問う機会は、もうない。
ああ友よ。どうして涙が出るのだろう。
人の子の旅立ちなど幾度も見てきたというのに、なぜ嗚咽が出るのだろう。
ああ友よ。どうして僕を1人にするのか。
ずっと一緒にいると、共にそう誓ったはずなのに。どうして。
ああ、友よ。
なぜ、君は逝ってしまうのか』」
歌を乗せた風が、吹雪が、拒絶する様に吹き荒ぶ。
だが、突き進む。
歌が、呼んでいる。
僕を、呼んでいる。
無我夢中に風をかき分け、嵐を抜けた先は巨木の下だった。
暖かい春の原っぱだ。
独り立つその根本には歌の主が、1人の誰かがいた。
首の後ろで一本に結ばれた水色の髪。右眼は同じく水色で、左眼はエメラルドを思わせる緑。そして黒の和服はゆったりと体を包んでおり、青年と思われる彼をその幼げな顔立ちも相まって、まるで少女の様に見せている。
木に腰掛け歌を紡ぐその姿は凛としており、神々しい。
僕は彼に歩み寄り、彼はその気配に気づいたのかこちらに顔を向ける。
「おや…ここに人の子とは珍しいな。また『夢』のヤツが適当な仕事したのかな…」
少し困った表情を浮かべる彼に、あなたは誰かと僕は問う。
「僕は君たち人の子の神様。神様だよ神様。偉いんだぜ?」
えらい、かみさま。
なぜかフワフワして回らない頭で彼の言葉を飲み込もうとする。
「そう、神様さ。そしてここは僕の大事な場所。君は今、僕の大事な場所に誘われた夢を見ているんだ」
ゆめのなか?
僕は子供の様に首を傾げる。
そうだよと、彼は微笑む。
「そう、ここは夢の中。そしてそれに気づいた君は、もう目覚めないといけないよ」
彼がそう告げる同時に、僕の体がフワリと浮いていく。
空の眩しい光が、僕を包んでいく。
待って。
そう言って彼に手を伸ばすけれど、体は手放した風船の様に空へ昇っていく。
目も眩む光の中、最後に見た彼の姿は。
「夢は、覚めるものだから」
少し、寂しそうだった。
いかがでしたか?
お楽しみいただけたのなら幸いです。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次の話も、頑張ります!