Fate/Grand 莠コ逅?┥蜊エ迚ゥ隱   作:来栖川有栖

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第15節:決着

 数分にも及ぶ沈黙。

 下の方で一度轟音がしたが、この緊張状態が解けることはなかった。

 それを破ったのは、ムーンキャンサーの声だった。

 

「終わった……?」

「いや、まだだ」

「そうだね。お互いに終わらせるわけにはいかないからね」

 

 俺は終わらせたいのだが。

 ……ここまで来たんだ。

 もう、いいだろう。

 

「頼む、もう諦めてくれ」

「……私は……ここまで来たんだ。だからこそ、尚更諦めたくない」

 

 俺はトリガーを引く。

 俺は狙ったのか、無意識だったのか、もうわからなかった。

 だが、それが功を成しこちらに向けていた銃を弾き飛ばした。

 それを受けてため息をつく。

 

「はぁ……出会った時に殺しとけばよかった。短時間でここまでなるとはね……」

 

 流石にもう、できることはないようだった。

 そこまで言うと、近づいてくる。

 俺は銃を向けるが、手が震えて狙いが定まらない。

 治った、治ったはずなのに……! 

 

「……正直に言うとね、驚いてる」

「何をだ……?」

「勿論、ここまで来たこと。もっと早く死ぬと思ってたからさ」

 

 そう言うとため息をついて、ポケットに手をやる。

 俺はトリガーに手をかけると、片手を差し出して俺を止める。

 

「最後の一服、それぐらいさしてくれないかな」

 

 タバコを一本取り出すと、ルーンを描いて火をつける。

 空に煙が立ち上る。

 背景には、綺麗な太陽が存在していた。

 

「……私の負けだ。いいよ、聖杯……あげる」

 

 そう言うと両手を挙げて、ヒラヒラと動かす。

 勝った、勝ったんだ。

 一つ目の、防衛杭は、終わったんだ。

 

 俺は後ろを振り向き、聖杯に向かって手を……。

 

「ダメだッ!! 殺さ」

 

 そこでムーンキャンサーの声が途切れる。

 充電が切れたのだろう。

 俺は後ろを振り向いて銃を向けた。

 

 1発の銃声が、輝く蒼天にて響き渡る。

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 刀と素手、差は圧倒的と言ってもいいだろう。

 だが、私はひたすらそれを受け止め避けて殴る。

 攻撃、と呼べるかもわからない。

 もはや攻防ですらないのかもしれない。

 

 無茶苦茶、やりすぎた。

 霊基再臨、それを上回る力で奴は押してきた。

 それに合わせるように、私は力を無理やり上げる。

 能力上では奴の勝ちだろうな。

 

 既にここは壊滅しており、少しでも下手やるとこのビル全体が崩壊するだろう。

 ここまで来たお互いはもうボロボロだった。

 だから、だからこそ、終わりは目前だった。

 

「……ぐがぁ……」

「ふぅ──……やるじゃないですか」

 

 奴は一息ついて構える。

 

 私自身、このバーサーカー状態を維持するのはきつい。

 もう数分する保たないだろう。

 

 私は腰を低く落とす。

 奴は刀持つ手の力を抜く。

 

 構えすら、していない。

 いや、あれは……あれが構えなのか。

『新撰組』と言う一つの、行き着いたものなのか。

 あれを、乗り越える。

 

 それは不可能に近いことだろう。

 いや、実質不可能と言っても過言ではない。

 何百人と言う人が積み上げてきた、剣術。

 それをたった一人である私が乗り越えるのは不可能だ。

 

 故に……最後の宝具と行こう。

 

 仮面を手に取り、外す。

 手を掲げると、羽織が手に落ちてくる。

 それを着て、奴の前に立つ。

 

「……準備は、できてんぞ……」

「……『霊核直結』」

 

 奴の刀が一際大きな輝きを放つ。

 霊核直結、奴は自身の命を賭して私を殺す気のようだ。

 いい、覚悟だ。

 

 私も、全力で行こう。

 刀を腰に鞘に納め、両手を広げる。

 

「我が友よッ!! 我が声を聞けッ!!」

「我ら新撰組、魂はここにあり」

 

「幻想に於いて語られるは、夢幻の城塞ッ!!」

「数々の研鑽の果て、輝き募るは我が身に引いて」

 

「三千束ねる、我が要塞ッ!!」

「全てを打ち砕いてくれよう」

 

「『妖魔城塞:百鬼劣紅』ッ!!」

「『新撰組:此度にて剣極に至れり』」

 

 縮地、奴は一瞬で私の目の前に来る。

 剣を引きしぼり、放つ。

 究極の、神を撃ち落とすが如く最強の一撃を。

 それは見ただけでわかる。

 

 かつて仲間たちを呼び出し、塊として壁を成す。

 それを借りて呼び覚ます、かつての城。

 一塊として、いくつもの敵を打ち倒してきた。

 最強の防壁。第3宝具だ。

 

 故に、矛盾。

 

「ぬぐっ……ぅぉぉおおおおおおおおッッ!!!!」

「……ぉぉぉぉおおおおおおおおおッッッ!!!!!」

 

 奴の刀が、私の防壁にぶつかる。

 だった一瞬、だが一生のような時間が流れる。

 壁が、崩壊し始めた。

 

 全てを込めた一撃、だからこそどんな防壁だって吹き飛ばすだろう。

 私の防壁は、もう吹き飛んでいた。

 

 半身が、吹き飛んだ。

 それでも私は、立っていられた。

 立ち続けられていた。

 

 理由は、わからない。

 ますたぁのためなのか。

 それとも……。

 

 結果として耐えた、それは私の勝利を意味さす。

 

「……私、負けたんですね」

「……がふっ……私も、死にそーだがな」

 

 私の体は既に、消えかけていた。

 耐えた、と思ったのだが。

 

「……これ、持って行ってください」

 

 そう言うと、刀を鞘に納め、投げ渡す。

 私はそれを受け取る。

 

「これ……」

「それで、生き残れるでしょう……天狐、と言いましたよね? 成し遂げてください。私の代わりに」

 

 そう言って、消えて行った。

 私は、刀とともに受け取った()()に入ってる液体を飲み干す。

 そして、ますたぁのところに向かって駆け出した。


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