ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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連投だぜ。
どうも皆さん、ジャズです。

今回からオリジナル回となります。どうぞお楽しみ下さい。


十二話 素材集め

第四十八層 リンダース

 

この層は、アインクラッドの中で最も武具屋・鍛冶屋の多い層で、攻略組を含めた多くのプレイヤーはこの層で自身の武器のメンテナンスや制作依頼を注文する。

 

そして今日、この層に二人のプレイヤーがやって来た。

 

「さて……ここにあんだよな?隠れた名店ってのは」

 

転移門が青白く光り、中から二人のプレイヤーが現れた。

赤髪の男性剣士はついた瞬間周りを見渡しながらそう呟く。彼の名は《ジェネシス》だ。

 

「そうみたいだね。情報だと、この街から圏外ギリギリのところに店を構えているみたいだよ」

 

ジェネシスにそう教えるのは、銀髪に白マント、そして腰に一振りの日本刀を差した女性剣士、《ティア》だ。

 

何故彼らがここにいるのか、時は数日前に遡る。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

その日、攻略を終えた二人は拠点にしている宿へと帰宅途中だった。

だがその途中、何気なくメニューからスキル欄を見ていたジェネシスが何かを見つけた。

 

「ん……?」

 

そこにあるのは、両手剣スキル・追跡・隠蔽など普段見慣れたものの間に、《暗黒剣》と表示されていた。

 

「何だこりゃあ……?」

 

《暗黒剣》などと言うスキルは間違いなく見たことも聞いたこともない。

 

「どうしたの、久弥?」

 

ティアがジェネシスの方を見て訝しんだ表情で尋ねる。

 

「いや、なんか見慣れねぇスキルがあってな……」

 

ジェネシスがそう言うと、ティアはジェネシスのメニュー欄を覗き込む。

 

「《暗黒剣》?そんなスキルこの世界にあったっけ?」

 

「知らね。少なくとも俺は見たことがねぇな……」

 

するとティアは何かを思い出したように「あっ!」と手を打ち、メニューを操作する。

 

「実は私にもあるの。ちょっと気になるスキルが……」

 

そう言ってティアはジェネシスにそのスキルを見せた。

 

「……んん?《抜刀術》?」

 

名前からして間違いなく刀ーー特に日本刀に関するスキルだが、刀スキルは既に実在しているし、そもそもこの世界の刀スキルは、曲刀スキルを極限まで高めたことによって初めて出現するエクストラスキルだ。

 

「ん〜〜……うし、軽く試してみるか」

 

ジェネシスの提案にティアは頷き、迷宮区の誰もいない所へと足を運んだ。

 

適当な場所へ進むと、丁度目の前にモンスターがポップした。現れたのはゴブリン型のモンスター。

 

「じゃあ、まずは私から行くね」

 

そう言ってティアはメニュー欄から《抜刀術》を選択し、発動状態にする。

 

そして集中力を研ぎ澄まし、左半身を後ろに引き、右手を刀の柄に添える。所謂抜刀術の構えだ。

その瞬間、ティアの刀に青い光がともり、ソードスキル発動状態となる。

ゴブリンはティアに向けて棍棒を振り上げながら急接近する。

 

「────ふっ!!」

 

小さな、それでいて力強い掛け声と同時に、ティアは勢いよく刀を引き抜き、そのままゴブリンのがら空きだった腹部を一閃する。

 

「うおっ……!」

 

ジェネシスはティアが見せた一撃に思わず唸り声を上げる。

たった一撃、されどそれは今まで見てきたティアのスキルと比べても規格外の速さ、正確さ、そして破壊力を有するのは一目瞭然だった。

抜刀術ソードスキル《蓮華》だ。

 

ゴブリンのHPはティアの一撃で既に半分に陥っている。

一撃だけで最前線の、それも迷宮区のモンスターのHPを半分も消しとばすなど、通常の刀スキルでは有り得ない事だ。

 

「すごい……」

 

ティアも思わずそう呟いた。

 

だが、まだ半分のHPが残っているゴブリンはお返しとばかりに棍棒で再び攻撃を仕掛ける。

だが、ティアはそれを危なげなく躱し、再びソードスキルを発動する。

ティアの刀は先ほどのものより更に青い光を放ち始める。

 

「はっっ!!」

 

そしてティアは、刀を一思いに振り抜いた。

その瞬間、ティアの放った斬撃が青い弧を描いたままゴブリンに接近する。

しかし直後、目を疑う光景が二人を襲った。

 

斬撃がゴブリンに命中する直前、一つだった青い弧はそこから十に分裂し、ゴブリンを包囲する形で次々と叩き込まれた。

 

抜刀術ソードスキル《真蒼》

 

一振りの斬撃で十連撃に分裂する範囲技だが、今回は敵が一体だけだったためそれらは全て標的のゴブリンに命中する事となった。

が、範囲技の攻撃である為本来なら複数のモンスターに当たる筈の攻撃が全て一体のモンスターに命中すればどうなるか。

そう、オーバーキルである。

まあ、オーバーキルは特にペナルティや罰則が与えられるわけでもない為問題は無いのだが。

 

「……たった二回の攻撃で最前線のモンスターをオーバーキルたぁ……たまげたなぁ」

 

ジェネシスが感嘆の声をあげる。

 

「そうだね……それじゃ、今度はそっちのを見せてよ」

 

ジェネシスは頷くと、スキル欄から《暗黒剣》を選択。

直後、今度は三体のオーク型モンスターがポップした。

両手剣スキルは一体多数の戦闘に向いている為、この状況はジェネシスにとってもってこいといえる。

 

「行くぜ……」

 

ジェネシスは大剣を肩に担いだ。

普段ならば突進系スキル《アバランシュ》が発動されるのだが、今回は明らかに違った。

ジェネシスの剣から、赤黒いオーラが発せられているのだ。

 

オーク達はそんなジェネシスに構う事なく、右手に携えた片刃の剣を振りかぶる。

 

「うおぉらあ!!!」

 

その瞬間、ジェネシスは大剣を横薙ぎし、そのまま反対方向へもう一度一閃した。

 

この二連撃の攻撃で、三体のオークはその身をガラス片に変えて消滅した。

 

暗黒剣ソードスキル《ヘイル・ストライク》

 

「おいおい、たった二連撃だぞ……?」

 

ジェネシスは今の自分の攻撃にあっけにとられている様子だった。

幾ら攻撃力に長けた両手剣スキルとは言え、流石に二連撃だけで最前線のモンスターを消し飛ばせるほどの攻撃力はない。

 

「これは……中々の威力だね」

 

ティアもジェネシスの攻撃に少し苦笑していた。

 

「……しっかし、結局こいつぁ一体何なんだろうな?」

 

ジェネシスは大剣を背中に収めると、もう一度スキル欄を開いて確認する。

 

「エクストラスキルだとは思うんだけど……それにしては攻撃力とかスキル補正が高すぎるよね?」

 

ティアも抜刀術の文字を見て疑問符を浮かべている。

そこでジェネシスはとある事を思い出す。

 

「そういやあいつ……血盟騎士団の団長もすげぇやつ使ってたな」

 

「ああ、ヒースクリフ団長の……《神聖剣》だね」

 

ヒースクリフ……今や最強ギルドと謳われる血盟騎士団の団長にして、《聖騎士》の異名で知られるプレイヤー。

彼が使用するのは十字剣と盾。

そしていつの日か彼が豪語したヒースクリフ専用のスキル《神聖剣》。

 

「もしかしたら、この二つも神聖剣と同じ、私たち専用のユニークスキルだったりするのかな…?」

 

「かもな……んじゃ、とりあえずは新しい武器つくらねぇと」

 

「え?」

 

疑問符を浮かべるティアに対し、ジェネシスは大剣をもう一度引き抜き、その刃を見せる。

それは先程まであった光沢感のある刃ではなく、完全に刃が溢れ刀身にいくつものヒビが入っているボロボロの刃だった。

 

「……見ろ、さっきの一撃だけでもうこんなボロボロだ。このスキルを使うには、それに耐えられるくれぇの頑丈な剣を作らなきゃいけねぇだろ?」

 

そう言われてティアも自身の刀を確認する。

ティアの刀もまた、激しい刃こぼれが発生し、刀身の真ん中には大きなヒビが入っており、いつ折れてもおかしくない状態だった。

 

「そっか……そうだね。どっちにしても、もうこの刀は使えないし」

 

ティアは苦笑し、メニュー欄から良さげな武具店を検索する。

 

「にしても、《暗黒剣》か……《暗黒の剣士》の俺にゃ御誂え向きのスキルじゃねぇか」

 

ジェネシスはスキル欄の《暗黒剣》を見ながらそう呟いた。

 

 

 

 

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そして現在に戻る。

今彼らは四十八層のリンダース主街区を歩き目的の武具店へと足を運んでいる。

 

やがて道に並ぶ建物が減っていき、徐々に人通りの少ない道に到達したところで、少し離れた丘の上に一軒の小屋と、大きな煙を吐く煙突が見えた。

 

恐らくあれが、今回ジェネシス達が目的としている店だ。

 

そして、いよいよ店の扉の前に到着する。

建物は煉瓦造りで、大きさはさほど大きくはなく、人一人が生活できるくらいの大きさの建物だった。

 

そして店の看板に書かれているのは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《七色の武具店》

 

ジェネシスは早速ドアを開けた。

 

中には一つのカウンターと、壁には幾多の武器が飾られたいた。

その一つ一つが見ただけで業物と取れるほどの武器であり、この店の店主の鍛治スキルの腕前の高さをこれでもかと感じさせた。

 

「いらっしゃいませ〜!」

 

中から元気な少女の声が響き、カウンター奥に据え付けられたドアが開かれる。

中から出てきたのは、グレーの長髪にまるでどこかのアイドルのようなドレスを身につけた少女だった。

 

Привет(プリヴィエート)、お客様。《七色の武具店》へようこそ!」

 

「え?ぷ、ぷり……なんだって?」

 

ジェネシスは聞きなれない単語に疑問符を浮かべる。

 

「プリヴィエートはロシア語での挨拶だ」

 

そこにティアが説明を加える。

 

「その通りです、お客様。詳しいんですね〜」

 

目の前のグレーの長髪の少女は感嘆の声を上げる。

 

「ああ、まあ小さい頃に少し習ってな」

 

ティアは苦笑しながらそれに応じる。

 

「あー、そんな事より…あんたがこの店の店主さんか?」

 

ジェネシスの問いに対し、

 

「その通りです。申し遅れました、《七色の武具店》の店主、《レイン》と申します!」

 

そう言ってレインという少女は人の良さそうな笑顔で会釈した。

 

「そっか、んじゃ早速なんだが店主さんよ、オーダーメイドを頼みたいんだが……」

 

するとレインは少し申し訳なさそうに

 

「ああ〜、申し訳ありませんお客様。今少し、金属の相場が上がっておりまして……」

 

「予算なら気にしないでくれ。今ある最高の剣と刀を打って欲しいんだ」

 

ティアがレインにそう言うが、

 

「成る程……では、具体的な数値などをおっしゃって頂けますか?」

 

と尋ねる。

 

「具体的な数値……って言われてもなぁ〜」

 

ジェネシスは少し困ったような顔で、背中からもうボロボロになった大剣を差し出す。

 

「んじゃ、こいつよりも遥かに高い数値で」

 

そう言って差し出し、レインはその剣をゆっくり丁寧に引き抜く。

 

「うわっ?!ちょっとお客様…もうボロボロじゃないですか!!剣のメンテナンスはしていなかったんですか?!」

 

レインはその剣のダメージ状態を見てギョッとした顔で叫んだ。

 

「いや〜、メンテナンスはちゃんとしてたよ?けどまあ、ちょっと事情があってな……」

 

ジェネシスは申し訳なさそうに頭をさすりながら答える。

 

「うーん、この状態だと修復は不可能ですね……あ、因みに数値は……ふんふん成る程」

 

レインは剣の数値を確認し、納得したように頷く。

 

「よく分かりました。ただ、この剣よりも更に強い剣を作るには、今店に材料が無くて……」

 

「あー、そっか。なら取りに行かなきゃだな」

 

「なら、私達で取ってくるが?」

 

ジェネシス取ってティアが説明そう提案するが、

 

「そうも行かないんですよね。金属を撮るには、マスタースミスが居ないと……」

そう言った直後、レインは顎に手を当て思案する。

 

「……よし!じゃあ一緒に取りに行きましょう!」

 

両手をポンと叩き、そう提案する。

 

「え?いや、俺たちは全然いいんだけど、店はどーすんだよ?」

 

「金属が取れるまでは暫くお休みです。どちらにしても、材料が無ければ店はやっていけませんからね」

 

「そうか……済まないな」

 

ティアが申し訳なさそうに言うが、レインは両手をブンブンと振って

 

「いえいえ!お客様の剣の為でもありますし、こちらもいい材料が手に入るチャンスですので!」

 

満面の笑みでそう告げた。

 

「何から何まで済まねえな。俺は《ジェネシス》だ。

ま、暫く一緒に行動する仲だ、敬語は無しにして、よろしく頼むわ」

 

「私はティアだ」

 

「ジェネシスさ………ジェネシスにティアね!うん、わかった!」

 

その後、数分間でレインは出発の支度を整え、店の戸締りをして早速出発した。

 

「それで、素材のアテはあるのか?」

 

「五十九層の山岳地帯に、かなりレアな鉱石があるんだけど……」

 

レインはそこまで言うと口籠った。

 

「五十九層の山岳地帯……確かあそこは、様々なオレンジギルドや犯罪者プレイヤー達が潜むSAOの中でもかなり治安が悪い場所ではなかったか?」

 

そう。目当ての鉱石がある場所は、レア鉱石がわんさか出る場所であるだけに、犯罪者プレイヤーやその他様々な悪徳プレイヤーが独占していることが多く、鍛治プレイヤー達は特にそこでの金属採取を避けていた。

 

だが、そこで取れる鉱石は現状では最高級の質があり、危険を冒してでもそこへ取りに行くプレイヤーは後を絶たない。

 

「本当は私も避けたかったんだけど、ジェネシス達がお望みの剣を作るには、もうあそこへ取りに行くしかないんだよね……」

 

「そっか。なら、仕方ねぇな」

 

ジェネシスは納得したように頷く。

 

「ごめんね?二人を危険なところに行かせることになっちゃって……」

 

「気にすんな。寧ろ謝んのはこっちの方だぜ。俺たちの剣のために、わざわざ店閉めて同行してくれんだからな」

 

「ああ。それに、もしオレンジ達に遭遇したとしても、絶対にレインに危害を与えることはさせないと約束する。だから安心してくれ」

 

ジェネシスとティアは笑顔でそう言い、レインも頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

五十九層の目的の山岳地帯に到着した一行。

そこは木々や草花などは全くなく、山肌が露わとなっている。

地面の所々に無数の窪みがあり、恐らくそこでプレイヤー達は鉱石を採掘したのだろう。

 

「さてと……行くか」

 

そう言ってジェネシスが歩きだし、ティアとレインがそれに続く。

道無き道をゆっくりと進んでいき、地面に転がる岩を避けながら足場を確かめ慎重に進む。

そうして歩くこと数十分。

レインが何かを見つけ「あっ!」と叫ぶと、そこから数メートル先まで駆け出した。

 

レインが見つけたのは、地面から僅かに突き出ている一つの金の石。それは太陽光を反射して煌々と輝いている。

 

「あった!これが目当ての鉱石……《ゴルドクリスタルインゴット》だよ!」

 

ジェネシスが近くに寄ってそれを覗き込む。

 

「案外簡単に見つかったな」

 

「ああ。ただ歩いてただけだったな」

 

ティアもジェネシスの後ろから覗きながら言う。

 

「でも、ここは特にオレンジプレイヤーが多いから、早く取って帰らないと」

 

「どんくらい掛かるんだ?」

 

「う〜ん、大体五分かな」

 

「うし分かった。その間周り見とくから、ちゃちゃっと取っといてくれ」

 

「分かった!」

 

ジェネシスとレインはそうやり取りしたあと、レインは小道具を取り出して鉱石採掘に取りかかり、ジェネシスとティアは予備の武器を取り出して警戒に入った。

 

そして約5分が経ち、レインがもう少しで鉱石を取り終わる段階まで来た時だった。

 

「おい」

 

突如、ジェネシスのものではない男性の声が響く。

そしてそこから二メートルくらい離れた場所にある岩陰から複数のプレイヤーがぞろぞろと姿を現した。

彼らのカーソルは皆─────オレンジ。

 

「テメェら見ねえ顔だが……俺たちのシマで何やってんだぁ?」

 

肩に斧を担いだ男が問いかけた。

 

「見ての通り鉱石採掘だ。なんか問題あるか?」

 

ジェネシスは悪びれることも無く答える。

 

「ふざけんな!俺たちの許可なく勝手な事してんじゃねえ!!」

 

もう一人のオレンジプレイヤーはそう叫んだ。

 

「お前達こそ誰の許可を得てここを独占している?茅場晶彦にでも許可を取ったか?」

 

今度はティアがオレンジ達を睨みながら問い掛ける。

 

「あ゛あ゛っ?!」

「テメェらやる気か?!」

 

オレンジ達は図星を突かれたのか逆上して今にもジェネシス達に斬りかかろうという勢いだ。

 

「ふ、二人とも!今は引こう?ここで戦う必要は無いよ!」

 

後ろから様子を伺っていたレインが言う。

 

「……おいレイン。あとどんくらいかかりそうだ?」

 

「え?あともう少しだけど……」

 

その答えを聞くと、ジェネシスは大剣を構えた。

 

「よし。レインは早く鉱石を取っちまえ。時間は俺たちが稼ぐ」

 

ジェネシスの言葉にレインは目を見開いた。

 

「そ、そんな無茶だよ!いくら君達が強くても、この人数を二人で相手取るなんて……」

 

「心配するなレイン。私たちを信じて、お前はお前の今やるべき事をやれ」

 

そう言ってティアも腰の刀を引き抜き構えた。

 

「こいつらぁ……!」

「構わん!てめぇらやっちまえ!!」

 

肩に斧を担いだ男がジェネシス達を鋭い目つきで睨み付け、その隣にいる者がほかのメンバーを扇動した。

 

「おおぉらあああーー!!」

「死ねやああぁーーー!!」

 

などと罵声を上げて飛びかかるオレンジ達を、ジェネシスとティアは的確に応戦していく。

勿論殺したりはせず、以前のラフコフ戦のように部位欠損ダメージやスタン状態に持ち込み戦闘不能にしていく。

 

レインは二人の鮮やかな剣技に一瞬見とれていたが、すぐにティアから言われた事を思い出し、一刻も早く採掘作業を終わらせることに専念した。

 

ジェネシスとティアはオレンジ達を決してレインの方に行かせず、かつオレンジを殺害しない程度で仕留めていたが、何せレベルは揃って中層ゾーンでも高い方、加えて自分たちが使っている武器は中層でやっと通じるレベルの代物。とてもここで通用するレベルのものではない。

はっきり言って、今の状況は悪いと言えた。

それでも攻略組随一の実力者である二人の技量でなんとか持ちこたえてはいたものの、腕前だけでは武器の耐久値はカバーできない。

 

突如、ジェネシスの剣が甲高い音を立ててガラス片と化し消滅したのだ。

 

「っ、くそが!!」

 

ジェネシスは思わずそう毒づいた。

そしてそれはティアも同じようで、ティアの方を見るといつのまにか彼女の刀は消えていた。

この混戦状況下で悠長にメニュー欄から武器を取り出している暇はない。

仕方なくジェネシスとティアは徒手空拳で戦うしかなかった。

 

だが武器を無くした二人を見てチャンスと踏んだのか、オレンジ達の攻撃は一層激しさを増した。

ジェネシスとティアの身体に切り傷が徐々に増えていき、HPもそれに伴って削られていく。

 

「ジェネシス、ティア!!」

 

その時、漸く鉱石の採掘が終わったレインが叫び、腰から片手剣を引き抜いて助けに入ろうと駆け出した。

 

 

 

 

─────その時だった。

 

 

レインの頭上を何かが通過し、そのままジェネシスとティアに群がっていたオレンジの元へと落下、そして大爆発を引き起こした。

 

「な、何だ?!」

 

突然の出来事にジェネシスは目を見開いて辺りを見渡す。

 

すると、レインの数メートル先に人影が見えた。

 

目を凝らすと、そこにいたのは女性プレイヤーだった。

 

黒く艶のある長髪をたなびかせ、純白のロングコートに白いスカートを身につけ、その手に持っているのは…………

何と、《弓》。《ソードアート・オンライン》という名の通り、剣の世界である筈のここにはあり得ない、射撃武器。

 

ジェネシスはその光景に目を丸くしていると、今度は彼の後方で爆発が起き、オレンジ達が吹き飛ばされた。

 

その方を見ると、そこにも新手のプレイヤーがいた。

 

それは男性プレイヤーだった。

黒……いや、黒に近い濃紺のロングコートを纏い、手に握られているのは、片手剣────ではなく、その柄の先端からまた同じ形状の剣が生えている。

そう、世にも珍しい《双頭剣》だ。

 

「ああ……やべぇよ」

 

ふと、オレンジの一人が声を震わせながら後ずさった。

 

「《黒の双剣士》に《純白の射手》……こいつら、オレンジ狩りの《黒白の兄妹》だ!!」

 

 




お読みいただきありがとうございます。
多分読者の皆さんの多くは、「あーこれ次はリズベットが出るんだろうな〜」と思っていた事でしょう。
残念、レインちゃんでした。

そして最後に出てきた《黒白の兄妹》。これは、とあるユーザー様から頂いた本作オリキャラとなります。
次回、彼らには大いに暴れてもらう予定です。

では、次回もよろしくお願いします。
評価、感想などお待ちしております。
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